ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』稽古場レポート 市村正親「1人8役はウエンツのため!」
前列左から、春風ひとみ、宮澤エマ、シルビア・グラブ、市村正親、ウエンツ瑛士、柿澤勇人。後列はカンパニーキャスト12名。
2014年にトニー賞四冠に輝いたミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』の日本版が4月8日(土)にいよいよ開幕する。物語の舞台は1900年ごろのイギリス。自分が伯爵継承順位8番目であると知ったモンティ(ウエンツ瑛士/柿澤勇人)が、莫大な遺産と城を手に入れようと、あの手この手で継承順位上位の邪魔者たち(市村正親)を殺めていくブラックユーモアたっぷりのドタバタコメディだ。殺される8人を市村が演じ分けるのも見どころの一つ。稽古中盤を迎えたという3月12日(日)、都内で公開稽古が行われ、囲み取材と共に3場面がお披露目となった。
冒頭から「帰った方がいい」とまさかの警告!?
1幕プロローグ「観客への警告」より。
物語のプロローグを飾るのは「観客への警告」というナンバー。ブラックユーモアあふれる作品であることを逆手にとり、男女総勢12人のカンパニーキャストがこれから恐ろしいことが起こるから心臓が悪い人や血を見るのが怖い人は帰った方がいいと観客に警告する。客席に向かって「早く逃げてー」とシニカル&ユーモラスに歌いかけるが、「帰った方がいい」とまで言われると逆に怖いもの見たさで見たくなるのが人間の心理。これから目の前で繰り広げられる物語への期待が高まる一場面だ。
稽古ファーストキスは超濃厚!
1幕2場「あなたがいなきゃ」より。モンティ(柿澤)とシベラ(シルビア)の軽妙な掛け合いが見もの。
1幕2場「あなたがいなきゃ」より。
お次は、モンティ(柿澤)が想いを寄せるシビラ(シルビア・グラブ)に意気揚々と大富豪ダイスクイス家の末裔であることを伝える場面。「お金持ちと地位のある人としか結婚しない」というシビラに、モンティは爵位継承者であることを知らせるも相手にしてもらえない。そうかと思うと、明るいワルツ調のナンバー「あなたがいなきゃ」を歌いながら、「モンティが必要なの」とモンティを翻弄するシビラ。モンティとシビラのキュートな掛け合いが面白おかしく、特に熱烈なキスシーンは必見だ。
1幕2場「あなたがいなきゃ」より。濃厚&熱烈なキスシーン!
シルビア・グラブは「あれが今回の稽古でのファーストキスです」と告白。相手役の柿澤は「最高でした。ちゃんと歯磨きもして準備して頑張りました」と笑顔で答えた。
モンティ役を柿澤とWキャストで務めるウエンツは、このキスシーンを見て、「あんな濃厚だとは思わず、『えーっ!』ってなっていました。いい意味で下品。笑える下品です」とコメント。さらに、報道陣へのサービス精神から、共演シーンがある宮澤エマにキスシーンを提案したことを明かし、「でも本当に断られて『それマジでやめてください』って言われました」と笑いを誘った。
恋愛と殺人が“表と裏”で同時進行!
1幕9場「裏を表に」より。舞台初共演となるウエンツ(左)と市村(右)。
最後は、今回の公開稽古で唯一の殺人シーン。モンティ(ウエンツ)が狙う3人目のターゲット、養蜂が趣味の若者ヘンリー(市村)の屋敷での場面だ。モンティは殺人を決行しつつも、ヘンリーの妹フィービー(宮澤)と出会い、惹かれ合う。ラブソング「裏を表に」を2人でしっとりと歌う中、その後ろでは死にゆくヘンリーの姿が見え隠れし、そのギャップに笑わずにはいられない。
1幕9場「裏を表に」より。
宮澤は「私とモンティが一生懸命歌っている後ろで、市村さんがめちゃくちゃ面白いんですよ。今日皆さんの前でやってみて、たぶん本番は笑い声で(会場が)埋まるんだろうなというのを感じました」と見せ場を持って行かれることにちょっぴり嫉妬している様子。すると市村は「前で2人がすごくいいラブソングを歌っているのに邪魔しちゃいけないとは思うんだけど、台本に忠実な俳優としてはやらなくちゃいけなくて。一番高い声を出すでしょ。あれが僕の出番の合図だなと思っています」と皮肉を交えながら弁明した。
1人8役はウエンツのために
囲み取材は、終始笑いが絶えずに続いた。
今回の公開稽古でただ一人見る側となった春風ひとみは、「今日は自分が出ていることを忘れて、コーヒーを片手に横から楽しく見ていました。もっと大きい声で笑いたかったくらい。市村さんとは初めてで、エネルギーもオーラもある方ですけど、役者としてキュートなところが大好き。今回は8人役が楽しみでなりません」と、観客気分で楽しんだ模様。
稽古に合流して3日目という市村は、期待される1人8役について「(稽古で)まだ2人しか死んでないので、これからが大変。本当に肉体的には重労働だなという気はしています。だから、面白くしつつも力の抜けた面白さが出たらいいですね。何とか千秋楽までたどり着きたいです」と意気込みを語った。
プライベートでも親交がある市村とウエンツだが、舞台での共演は初めて。「僕は(共演を)避けていたんだけど、今回ウエンツが主役だというので、僕が脇を8役固めました。ウエンツのためです」と市村が冗談交じりに言うと、ウエンツは「発言が重くてしょうがない(笑)。でも、舞台でご一緒することが一番勉強になると思っていたので、すごくいい刺激をもらっています」と共演を素直に喜んだ。
市村を称えるカンパニーの面々。
最後に市村が「歌のテクニシャンが多いので、とても面白い作品をお見せすることができるのではないかと自負しています。ぜひ笑いに来てください」とアピールし、公開稽古は終了した。
ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』は、4月8日(土)から30日(日)まで日生劇場で上演。その後、大阪、福岡、愛知を巡る。
取材・文・写真撮影:岩本恵美
■会場:日生劇場 (東京都)
■日程:2017年4月8日(土)~4月30日(日)
<大阪>
■会場:梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
■日程:2017年5月4日(木・祝)~5月7日(日)
■会場:キャナルシティ劇場(福岡県)
■日程:2017年5月12日(金)~5月14日(日)
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県)
■日程:2017年5月19日(金)~5月21日(日)
■音楽・歌詞:スティーブン・ルトバク
■出演:市村正親、ウエンツ瑛士/柿澤勇人(Wキャスト)、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみ
阿部裕、小原和彦、香取新一、神田恭兵、照井裕隆、安福毅、彩橋みゆ、折井理子、可知寛子、伽藍琳、高谷あゆみ、RiRiKA(五十音順)