伊阪達也、荒木健太朗を迎えて新作上演! 劇団イヌッコロ『まわれ!無敵のマーダーケース』インタビュー
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前列/伊阪達也、荒木健太朗 後列/小野友広、長谷川哲朗、森訓久
劇団イヌッコロとは、俳優の長谷川哲朗と森訓久、作・演出の羽仁修が中心となって、2010年1月1日から正式に活動を開始。毎回ワンシチュエーションのコメディにこだわり、様々な作品を発表してきた。今回、その11回目となる『まわれ!無敵のマーダーケース』が、3月21日~26日まで中野ザ・ポケットで上演される。
出演者には、長谷川と森、小野友広などの劇団員以外に、様々な舞台で活躍中の伊阪達也、荒木健太朗をはじめとする客演を招き、今までに観たことのないコメディとなるはずだ。
【あらすじ】
作家・藤澤智彦(伊阪達也)は書いたことのないサスペンス物の仕事を引き受けてしまった。何日経ってもいっこうにアイディアは浮かんでこない。それどころか根本的な描写の仕方すらわからない。それほど藤澤はサスペンスに疎かったのだ。そんな中、彼はとんでもないことを思い付く。「そうだ! 嘘の殺人事件を起こして、人間のリアルな反応を見よー!!」
編集者の末國(大塚真矢)に協力を仰ぎ、人里離れたペンションを探し、売れない役者を雇い、知人を招き、いざ計画を実行したのだが、そこに本物の殺人鬼(荒木健太朗)が現れて…。
公演初日に向けて、熱く繰り広げられる稽古の合間を縫って、伊阪達也、荒木健太朗、長谷川哲朗、森訓久、小野友広がこの作品について、語ってくれた。
お客さんにじゃれて喜んでもらおうと命名
──まず、演劇集団イヌッコロとはどういう劇団か、メンバーから語っていただきたいのですが。
長谷川 ラフな劇団です。
小野 って、それだけ!? イヌッコロという劇団だけに、お客様にじゃれ合う雰囲気のある劇団ですね。
伊阪 僕は大型犬っぽいねって言われますよ。
4人 わかる、わかる。
小野 話がずれてきた(笑)。真面目に「楽しく」じゃれ合うんです。
荒木 真面目に「適当」にじゃれ合うんですよね?
小野 適当、まあ、そう言われれば。いやいや真剣に笑いに打ち込むストイックな部分もあったりするんですよ。
荒木 計算で笑いをとる。決して偶然ではないんです。面白いものをワンシュチュエーションとしてやっているイメージがありますね。
長谷川 今、そう思いました。
森 リーダーやん(笑)。最初は映像、舞台、声優というジャンルの仲の良い役者メンツで、草野球チーム「ハトス」をやっていたところから始まったんです。
4人 へー!
森 (長谷川を見ながら)君も驚いてどうする!? 長谷川くんと僕が初めに立ち上げて、作・演出をしている羽仁修が脚本を書いてくれました。基本的にワンシチュエーションのコメディにこだわって、お客さんに笑ってもらいたいな、お客さんにじゃれて喜んでもらおうというコンセプトがありました。
荒木 どうしてイヌッコロという名前にしたんですか?
小野 これは諸説ありますね。僕は最後に入ったのでわからないな。
森 僕が入る頃には名前が決まってましたね。
長谷川 羽仁修とファミレスで適当に決めました。
小野 やっぱり適当かい(笑)。
「いいかげん」ではなくて「いい、加減」
──伊阪さんと荒木さんから見て劇団イヌッコロの印象は?
伊阪 劇団員はみんな適当なんです。適当ですけれど、作品はしっかりしています。みんなでお客さんを笑わそうとしますから。
森 「適当」は、「適」時に「当」たるという意味ですから良い意味なんですよ。
伊阪 しかも個性的なんです。それぞれ役割があって、作品の中で役割分担ができていて、バランスがいいですね。今回、客演として入らせていただいてますが、すごく居心地が良いんです。引っ張っていってくれるところは引っ張ってくれる。それから、演技はこういう方向性だよと教えてくれたりします。みんなそれぞれの仕事があるし、素敵な劇団だなと思いながらも……稽古はきついです(笑)。
小野 伊阪くんは主役だからね。みんなをうまく回したり、見なくちゃいけないから。
伊阪 痩せました。
森 コメディですから、主人公がてんやわんやするのが基本ベースにあるので、膨大なリアクションとセリフを主役が担わなくちゃいけない。
荒木 コメディは本当に気を抜く瞬間がないですよね。
森 お客さんはずっといろんなリアクションを見ているので、新しいワードが出た時に、主役の伊阪くんがどんな反応するのか、全方向から観ることになるので、映像と違って、フォーカスが当たってない部分をどう演じるか、その面白さと難しさがありますね。
荒木 僕は去年の今頃、『トラベルモード』出ていたこともありますし、何度か拝見させていただいたんですけど、雑に見えるけれど、すごく計算されていて、適当という言葉ではないですけど、「いいかげん」ではなくて「いい、加減」ななんですね。
4人 うまーい。
荒木 ワンシュチュエーションコメディは、今の演劇の中で減っています。その中では稀有な劇団だと思います。真面目にやるのが大前提でコメディとして成り立させているから、嘘がないように見えますね。
長谷川 公演を観てくれて出たいと言ってくれた人でも、やってみると大変だという人もいますから。
伊阪 僕は楽しいですよ!
小野 確かに大変だけど、狙った通りに笑いが来たらとても気持ちいいんです。
伊阪 お客さんがいると、また色々と見えてくるものが多そうですね。
森 公演ごとに発見があります。特に初日ですね。本読みの時に感じていたものが、稽古をやっていると慣れもあって薄れるんです。それが初日は、お客さんの前に立つことで新鮮な気分になって、それで新たなことに気づくことが多いです。作・演出家の羽仁(修)とも「お客さん、ここでこういう反応来るんだね」と違った発見に驚くこともあります。また、客演の方によってさらに違うテイストが出るので、それも楽しいんです。荒木くんと伊阪くんの2人のシーンは、イヌッコロのメンバーにはない感じで面白いですし、今回の2人はとても頼もしいです。
伊阪・荒木 ありがとうございます。
笑わせることが第一目標で最終目標
──今回の台本を最初に読んだ時の印象は?
長谷川 面白いなって思いました。
小野 客か!? グルメリポーターにもなれないね。
長谷川 うん。グルメレポーターのオーディションに落ちたことがある(笑)。
──どういったところが面白いなと?
長谷川 これまで僕はサスペンス的なお話をやったことがないんですよ。
小野 僕も今回、どんな笑いになるかなと思っていましたが、どの部分も面白くなる雰囲気を感じました。
森 イヌッコロの脚本ミーティングは、みんなで話すのですが、その中で、今回サスペンスにしようとなった時に、いつものイヌッコロのパターンを想像していたんです。でも、今回はいつもと違う形になります。最後の仕掛けでどういう風にコメディにするのか、楽しみにしていてください。
荒木 羽仁さんが、9割がコメディで1割をサスペンスにしたいとおっしゃって。僕はサスペンス側をやらなければいけないけれど、台本を読んで初見の時に笑ってしまって、「これ笑わないで耐えられるかな?」と思ったほどです(笑)。荒木健太朗になってしまわないようにしないと。
森 荒木くんは殺人鬼役ですけれど、主人公で作家の伊阪くんとのやり合いが面白いんですよね。
伊阪 僕も初見で笑ってしまったんです。そんなことあまりないから嬉しかったし、シチュエーションコメディというのはこういうことかと。事件が起きている状況の中で、てんやわんやがあって、その中で笑いを取るのが、シチュエーションコメディなんだなと。演じる上でセリフにも幅があって、どういう風になるのか想像すると楽しみです。とにかく第一目標はお客さんを笑わせるだけです。
小野 うん。第一目標で最終目標ですね。
2回目も来たくなるように盛り沢山な工夫が
──それぞれの役柄についても教えてください。
伊阪 藤澤という作家で、サスペンスを書くことになったけれど、書き方がわからない。だから、役者さんをよんで、実際に殺人事件をドッキリでやる。でも、その中に本物の殺人鬼が紛れ込んでいて、彼に翻弄されつつ、ドッキリのみんなのリアクションを見て本を書いては悩んでいく、ちょっとドタバタな役です。
荒木 先ほども言ったようにサスペンス側ですし、伊阪くんの真逆なんですよね。ドッキリだと知らない状態の人間だから、そのバランス加減が難しいです。稽古を積み上げて、ほかの役者さんのセリフを聞きながら完成させたいなと思っています。
長谷川 僕は谷川という役です。いい役をもらったなと思います。
小野 役柄がないよ(笑)。谷川は僕の演じる広野と一緒で、藤澤先生に招かれた客です。
森 僕はドッキリが行われるペンションのオーナーです。お話を演劇的に転がして、お芝居だとわかるようにしていく役です。
──この作品の見どころはどんなところになりますか?
小野 伊阪くんの奮闘ぶりだね。巻き込んでいるのに巻き込まれてる感じが面白い。
森 藤澤先生の暴君ぶりに翻弄されていく僕らも見どころかな。
長谷川 そうだね。それにここにいる5人以外にも面白い人はたくさんいます。
──最後に公演向けての意気込みを。
伊阪 僕らは四苦八苦しながら頭を使って演じますが、観る方はボケーっと観てくれたら最高に面白いと思います。「殺人事件を体感しようかな」くらいの気軽な感じで来てもらいたいです。
荒木 演劇が好きじゃない人にも観てもらいたいですね。とっつきやすい作品ですし、テレビを観るような感覚でさらっと観れますから。
長谷川 やっている自分たちは、怒られたりけなされたり大変なんですけど。そういうことは全然わからないように頑張りたいです。
小野 一生懸命やるけれど、それを見せずに、気楽に見て欲しいですね。ただ楽しんで、2回、3回と来なさい!
森 何ですか、急に先生みたいになって。
伊阪 確かに2回観てもらいたいですね。物語がわかった上で観てもらうとさらに面白いはずです。
小野 そんな雰囲気を醸し出すぞ~!
森 おー!って(笑)、確かに強制ではなく、2回目も来たくなるように色々工夫しています。ポイントカードを作ったり、初めて「お犬様席」を作ったり。トークショーだけじゃなく、どの公演のでもいいのでイヌッコロTシャツを着ていたら楽しめるイベントや、「イヌッコロ・サスペンス劇場」なんかもあります。どれも内容はまだ秘密ですけれど。お芝居だけでなく盛りだくさんの内容になっていますので、ぜひ、劇場に足を運んでください。
前列/伊阪達也、荒木健太朗 後列/小野友広、長谷川哲朗、森訓久
取材・文・撮影/竹下力