浦山純子(ピアノ) ショパンの色彩や歌心を感じてほしい

インタビュー
クラシック
2017.3.20
浦山純子(ピアノ) ©Akira Muto

浦山純子(ピアノ) ©Akira Muto

 

「“Serce”=『セルツェ』とはポーランド語で“心”という意味です。今回ショパンをレコーディングすると決まった時、タイトルとして、すぐに思いついたのがこの『セルツェ』でした。幼少から自分の“心”に寄り添ってきてくれた作曲家がショパンであり、生きていく中で一番大切なものは“心”…、そして、実は私の大切な息子の名前も“心”と書いて『しん』と読むのです。CDは息子へ捧げる気持ちもあります」

 ニュー・ディスクにはバラード第1番、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、舟歌といったショパンの名作と、併せて小品も収録された。

「ディスクの最初と最後は、どうしても前奏曲op.45と遺作のノクターンにしたかったですね。どちらも嬰ハ短調の作品で、神秘的な情熱と叙情をおびた調性なのです。この調はショパンにとっても特別な意味を持っていました。遺作のノクターンを聴いても、最後に長調になって天に昇っていくようでステキでしょう!? また、前奏曲op.45は、私がポーランドに留学して初めて恩師のもとで学んだ作品でもあります。『これはポーランドの悲しみが宿った作品だよ』と教えていただいたのです」

 浦山は桐朋学園大学を卒業後、ポーランドに留学し、その後拠点をロンドンに移して活躍してきた。

「私がピアノを学んだ日本はバブルの時代。ものは豊かだけれど心は貧しい自分というものに、常にもどかしさがありました。ところがポーランドは逆でした。ものはないけれど心は豊か。その背景には、本当の哀しみや辛さに勇気をもって立ち向かったポーランドの人々の心がありました。そう、遺作のノクターンは、映画『戦場のピアニスト』でも印象的に使われていましたね。バラード第1番やアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズも。偶然にも今回の選曲は重なりました」

 ショパンはポーランドのワルシャワからフランスのパリへ、浦山はワルシャワからイギリスのロンドンへ旅をした。どこか共通している。

「ポーランドはなんでも面倒見が良くて世話を焼いてくれる。ところが、大都会ロンドンは人種がひしめき合っていて、問題があると『大丈夫!』とは言ってくれるのですが、実はそのままほっとかれたりして(笑)。ショパンはポーランドの朴訥とした民俗的な音楽とフランスの洗練されたエレガントな響きを持っています。そして濃密なパッションは途切れることがない…。私の新しいCDからもそういった色彩や歌心を感じていただければ嬉しいですね」

取材・文:下田幸二
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

 


CD
『セルツェ〜ショパン名曲集/浦山純子』
アールアンフィニ(ソニーミュージック/ミューズエンターテインメント)
MECO-1038
¥3000+税(SACDハイブリッド盤)
3/22(水)発売

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