東京・春・音楽祭 ―東京のオペラの森2017― 遂に開幕! 今からでも間に合うおすすめ公演!
いよいよ開幕した「東京・春・音楽祭」。今年も上野の東京文化会館や博物館・美術館を舞台に、多彩な公演が約1ヵ月にわたって開催される。これからでも間に合う注目公演を選んでみよう。
まずは音楽祭の掉尾を飾る「スペシャル・ガラ・コンサート〜東京春祭2017 グランド・フィナーレを飾るオペラの名曲たち」(4/16)。オペラ界のライジングスターの呼び声も高い歌手たちが一堂に会して、千秋楽にふさわしい華やかな雰囲気を作り出す。ソプラノのクリスティナ・パサローユ、テノールのイヴァン・マグリ、バスのアドリアン・ザンペトレアンといった俊英たちが、スペランツァ・スカップッチ指揮の東京春祭特別オーケストラとともに、オペラの名曲を次々と歌う。モーツァルト、ヴェルディ、プッチーニ他の名作オペラから、聴きどころのアリアや二重唱が集められた直球ど真ん中の選曲が頼もしい。これぞオペラの醍醐味といえるようなラインナップだ。
スペランツァ・スカップッチはイタリア生まれの女性指揮者で、ウィーン国立歌劇場をはじめ欧州各地の著名歌劇場で活躍して注目を集めている。在京オーケストラの精鋭を中心としたメンバーからなる東京春祭特別オーケストラとの共演に期待が高まる。
続いては、恒例の東京春祭歌曲シリーズから、メゾソプラノのエリーザベト・クールマンのリサイタル(4/7)。東京春祭《ワルキューレ》のフリッカ役での見事な歌唱に魅了された方も多いことだろう。今回のリサイタルでは、「TELL ME THE TRUTH」のタイトルのもと、シューベルト、ライター、リスト、ブリテンの作品を歌う。ピアノはエドゥアルド・クトロヴァッツ。
この音楽祭恒例のシリーズ企画「24の前奏曲」(4/15)も興味深い。第6弾となる今回はラフマニノフ。ラフマニノフの場合はショパンなどとは異なり、一つの曲集として「24の前奏曲」を書いたわけではない。最初に書いた「前奏曲 op.3-2」に「10の前奏曲」と「13の前奏曲」を書き足して計「24の前奏曲」となったものだが、24の異なる調で書くという伝統は守られている。2013年のエリザベート王妃国際音楽コンクール優勝をはじめ輝かしいコンクール歴を誇るボリス・ギルトブルグが鮮烈な技巧を披露してくれるはず。
新鮮な発見がありそうなのは、ショパンの2曲のピアノ協奏曲の室内楽版(4/8)。ショパン弾きとして名高い海老彰子、2016年ロベルト・シューマン国際コンクール第3位の阿見真依子のふたりのピアニストと都響メンバーが共演する。
その他の公演では、生誕220年を迎えたシューベルトをとりあげる好プログラムが光っている。「シューベルトの室内楽Ⅰ」(3/31)および「Ⅱ」(4/6)で日本の名手たちによる「ます」や八重奏曲、「合唱の芸術シリーズ」(4/9)でウルフ・シルマー指揮による都響と東京オペラシンガーズ他によるミサ曲第6番が演奏される。詩情豊かな音楽にしみじみと浸りたいものである。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年4月号から)
3/16(木)〜4/16(日)
東京文化会館、東京芸術大学奏楽堂(大学構内)、上野学園石橋メモリアルホール、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館 他
問合せ:東京・春・音楽祭サービス03-3322-9966
※音楽祭の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.tokyo-harusai.com/