ボードゲームに恋して~ROUND:15「ゲームマーケット神戸2017」

2017.3.20
レポート
アニメ/ゲーム

ボードゲームマーケット神戸2017 (c)DEAR SPIELE

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「第4回:日本最大のボードゲームイベントに"取材です"と言い切って潜入してきました」
#ゲームマーケット神戸2017

昨年に引き続き、行ってきました神戸の祭典!
東京で行われた「ゲームマーケット東京2016秋」では出展者側だったため、レポートできませんでしたが、今回はいち参加者として伺えそうだったので、ついでに取材してきました(笑)

今後は出展者側になることが多くなるかと思いますので、チャンスがあればどんどん切込んでいく所存です!

では、早速ではありますが、神戸のレポートをお届けしたいと思います。

 

>>まずは前回のおさらい

前回のボードゲームマーケット神戸の来場者数は約3,700人(主催者発表)朝の待機列は約1,200人、これでも十分盛況な規模でしたが、今回はもちろんこれを上回る来場者があり、主催者の発表によると来場者は約4,700人で前回よりおよそ1,000人プラス。朝の待機列に関しては1,750人で550人ほど増となっているとのこと。

朝の行列の様子@9:00頃 (c)DEAR SPIELE

 

写真は9:00頃の待機列の様子ですが、開場直前にはこの待機列の横幅が3倍ほどまで膨れ上がっていました。
前回より待機列がこれだけ増えているのは、ボードゲームが多くのユーザへ広がっているのはもちろん、イベントに対する「期待度」が上がっているのではないかなと思います

 

>>会場は前回同様「神戸国際展示場 3番館)

会場となる「神戸国際展示場 3番館」は、神戸三宮駅からモノレール「ポートライナー」で10分ほどの場所にある「市民広場」の目の前で、アクセス良く好立地。建物の中は広々としていますが、見渡せる程度のワンフロアで収まっているため、ブースを見回るのも容易。とても利便性の高い会場となっています。

設営前の広々とした会場 (c)DEAR SPIELE

写真は8:30くらいの会場の様子ですがまだあまりブースの設置は進んでおらず、人影もちらほら。いつも大体このくらいの時間にお邪魔して設営の風景を見ていますが、この「設営前の静けさ」からだんだんとブースの設営が進んで人で埋まっていく様子が結構好きだったりします。

着々と設営が進む会場 (c)DEAR SPIELE

開場30分前にもなると、このように大体どこのブースも設営が大方出来てきて、人も多く、賑やかになってきます。とはいえ、まだまだ設営が完了したブースは少なく、少し空気はピリッと張りつめている感じです。この空気感も結構好きで、いよいよ開場まであと少し!と気持ちが高まってきます……出展者でもなんでもないのですが!(笑)

開場直後、人がなだれ込む (c)DEAR SPIELE

 

10:00になると会場内にアナウンスが流れ、待機列に並んでいた来場者の方々が一斉になだれ込んできます。
最初の方こそ男性が多い印象でしたが、だんだんと入場が進むにつれ女性も増えていき、後半には女性だけ3人、4人のグループも見かけるようになりました。

入口で来場者の整理をしていた野澤氏にもお話を伺ったところ、やはり「女性が増えた」という印象は強く感じたとのことです。「ニッチな男だけの趣味」というイメージはもう過去のものになりつつあるのかも知れません。非常に喜ばしいことです。

会場内でも早速行列が出来ているブースが多くみられました。前回は「トリックプレイ」や「DDT」といったショップ系のブースが開場直後に行列を作っていましたが、今回もその2ブースはもちろん、他のインディーズ系のブースにもいくつか行列が見られました。この辺りは前回とはちょっと変わったという印象。

開場直後に行列が出来ていたのは、前述した「トリックプレイ」「DDT」に加え、同じくショップ系の「ゲームストア バネスト」、インディーズでは「真打」「ワインレーティング」がヒットしている「JUGAME STUDIO」のブース、「桜降る代に決闘を:第壱拡張 夜天会心」の先行販売で話題だった「BakaFireParty」、中古販売をしていた「スペース開発委員会」、「精霊回路ドライヴ」「勇者アーキテクト」の「コップレジェンド」辺りのブースなど。このように、ショップ系以外でも色々なところで行列が出来ていました。

 

>>前回との違いは?感じたことを聞いてみました

ざっと見渡すだけでも「来場者数が多くなったな」と感じましたが、私の所感だけでなく、色々な方に「前回との違い」をテーマにお話を聞いてみました。

開場直後で既に超満員 (c)DEAR SPIELE

まずは、主催者であるアークライトゲームズより、刈谷氏にお話を伺うことに。

刈谷氏曰く、「来場者も拡大しているが、出展者も多くなっている。前回とブース数に変化はないものの、前回1次募集で埋まらず2次募集を行ったが、今回は1次募集のみで規定数の応募があったので盛り上がりを実感した。」とのこと。

来場者も、出展者もまだ拡大することが予想できるが、次回以降の会場もひとまず今回と同じ会場は抑えてあり、増床するかはまだ検討中との話もあった。気持ち的には増床を含め、もっと規模を拡大したいが、そこには障壁も少なくないとのことで、お話を伺っているとイベント拡大への喜びや期待がある一方で運営の難しさもあり、その狭間で色々な苦労をされていると感じました。本当にお疲れ様です。

次に、会場時にもお話を伺った野澤氏からは「新作展示コーナーが非常に盛況。1時間に600人前後の方が覗かれていく。もっとアピールしていきたい。」という情報が。

新作展示コーナーも盛況 (c)DEAR SPIELE

ゲームマーケット東京2016秋より始まった「新作展示コーナー」
なるほど、覗いてみると確かに人が途切れることなく、ゲームのサンプルを手に取っている光景がありました。
前回のゲームマーケット神戸ではこの部屋をフリースペース(卓)として開放していましたが、来場者も増え、人数的に対応が難しそうなフリースペースに比べ、こういった展示コーナーであれば多くの方に利用されるかもしれませんね。

営業の小林氏からは、「アークライトでも物販をやっているが、安い商品や、既に評価の固まった旧作が良く売れている。反面、新作の動きが鈍いとも感じ、新作から売れる東京のゲームマーケットとは違う。」とのこと。

なるほどなるほど、そもそもインディーズ含め新作が東京ほど多くない神戸に於いて、来場者の目的は必ずしも新作ではなく、「普段関西では手に入らないけど評価が高い」といったものなのかもしれません。

 

>>関西はやはり関東とはちょっと雰囲気が違う?

他にも、出展者の方々に状況を聞いてみました。


まずは、前回同様行列を作って好評だった「DDT」の店長ちむ氏。

「前回に比べると1.5倍売れている。お店の商品も持ってきてしまったので、売れすぎて店の商品がなくなりそうです(笑)」

 

今回もDDTのコスプレ店長は健在(店舗ではコスプレしていません) (c)DEAR SPIELE

なんとも景気の良いお話!そして、イベント恒例のコスプレ姿も目立っており、すべて含めての人気店なんだろうなと。DDTはゲームマーケット東京2017春にも出展予定とのことなので、待ちわびていた関東勢は要チェック!

 

次に、「リカーーーリング」などヒットを飛ばしている「賽苑」の仲西氏に感想を聞いてみると「女性が増えた!」と一言だけ(笑)それだけでは取材も何もないので、もうちょっとコメントを求めたところ、「女性が増えて試遊も女性が積極的にしてくれるんです。女性が試遊卓に入ると男性も誘い易いので(笑)案内が楽なんですよ。」
確かに、「賽苑」のブースでは常に女性が試遊している印象でした。そんな戦略(?)があったとは!これも層が広がっているからこその戦略(?)ですね。

 

「競りゲーブブカ」や「ワンナイト新郎」を頒布している「もんじろう」の居椿氏は「関西だけにネタ色の強いゲームに食いつきが良く、興味を示される」「色々な人とゲームをするより、決まった人と仲間内で遊ぶ印象が強く、対応人数が多いゲームの食いつきは悪い」とのこと。
対面で販売していると、相手のプレイ環境も透けて見えてくることがあるのは、私も経験上なんとなくわかります!東京のゲームマーケットにも長く出展されている居椿さんほどマスターにはなれませんが……(汗)

 

最後に、朝行列を作り、14時からの新作(プロトタイプ)頒布の際も行列が出来ていた「JUGAME STUDIO」の丸野氏に話を聞いてみると、「朝こそ行列ができたものの、その後は販売と説明がバランスよく出来る来客数だと感じる」とのこと。午後3時ころに伺った際も新作以外の商品は若干残っており、ちゃんと説明をしながら販売できる場があることが東京との違いだと丸野氏は言う。東京では開場間もなく商品が無くなり、説明しても売るものが無いという状態になっていたJUGAME STUDIOさんならではの所感ではないでしょうか。

 

>>業界の著名人とユーザの距離が近いのも魅力!

東京と神戸の違いを感じる一方、どちらも変わらないゲームマーケットの魅力のひとつとして、普段はあまり会うことが出来ない、または会えても話す機会の無いような業界の著名人と比較的近くで接することが出来ることが挙げられるのでは?と思っています。

主催者であるアークライトゲームズの試遊卓では「ラブレター」でお馴染みのボードゲームデザイナー「カナイセイジ」氏がゲームの説明をしていたり

カナイセイジさんのインスト卓@イムホテップ (c)DEAR SPIELE

ヤポンブランドや訳者として活躍している健部氏などもゲームの説明をしていたりと、各所に業界の著名人がちらほら。

訳者、健部氏によるインスト@電力会社カードゲーム (c)DEAR SPIELE

ブースを覗けば、ゲームの製作者みずから当たり前のようにルール説明をしていますし、それを聞いているのも著名人だったりします。

作者の濱田氏によるインストを受けるボードゲームジャーナリスト小野氏 (c)DEAR SPIELE

この光景は中々面白く、こういったイベントでしかなかなかお目にかかれません。
更に、一般の来場者としてもこの業界で活躍している方々を多く見かけます。まだまだ狭い業界なので、ちょっと足を延ばせば憧れのアノ人に会えるかも?しれません。

こういう楽しみ方も是非、してみてはいかがでしょうか。

 

>>通行人も超豪華?!

著名人のくだりをちょっとひっぱって、会場に居た方2名にも取材を試みました。

まずは、東京三鷹に店舗を構え、販売だけでなくディストリビューターとして大活躍されている「テンデイズゲームズ」のタナカマ店長を捕まえて「話を聞かせてください!」と無茶振りしたところ、快諾いただけたので(本当にありがとうございます)いくつか質問を投げてみました。

テンデイズゲームズ代表タナカマ氏 (c)DEAR SPIELE

Q:関西のゲームマーケットにはよく来られるのですか?
A:関西のゲームマーケットは初回の大阪と3回目と今回で3回目です。

Q:前に来た時と何か変わりましたか?
A:いやー!前回来た際より来場者がびっくりするほど多くなっていますね!以前は牧歌的な雰囲気でしたが、盛り上がりは東京に近くなってきていると感じます。

Q:東京との違いは感じますか?
A:東京とはまた違ったサークルが多くて面白いですね。あと、まだフレッシュ感というかそういうものが残っているのが良いと思います。
東京は手段が目的になってしまっているというか、作品があるからイベントに出展するのではなく、イベントに向けて作品を仕上げるような流れになってしまっている気がするのですが、関西はまだそういう雰囲気ではなく、出展する人も参加者という雰囲気があっていいですね。

 

東京の浅草台東館時代からゲームマーケットを知るタナカマ店長は、東京のゲームマーケットの変遷もよく知っているかと思います。そういった経験を踏まえた視点から神戸のゲームマーケットがどのように変わって、いまどのようにあるかを見たご意見だなと。「フレッシュ感」を残しつつ、盛り上がりを続けるというのは難しい課題かもしれませんが、是非、東京との差別化として頑張って欲しいなと思いました。

 

次に、ボードゲームアイドル「しゅぴ~る遊園地」としてアイドル活動をされている「珠洲ノらめる」氏も嬉々としてブースを回っていたので、これまた捕まえてお話を伺うことに。

アイドル「しゅぴ~る遊園地」の珠洲ノらめる氏 (c)DEAR SPIELE

Q:東京のゲームマーケットとの違いを何か感じましたか?
A:会場がちょっと小さいので見やすくて良いですね!気持ちが楽です(笑)

Q:気持ち(笑)ちなみに何を買われましたか?
A:探していた「ウサギとハリネズミ」を中古で!インディーズは「ミソヒトサジ」と「キンメダイ」、あと「ごい牌」が欲しかったんですが、無かったので、自分で作るために白い牌を買ってきました!他にもカタンのコンポーネントトレイや「はじめてのボードゲームの用語集」なんて本も買ってみました!

Q:ラインナップがもうゲーマーですね(笑)
A:もうドップリです(笑)いま企画で「日本全国ボドゲの旅」というのをやっていまして、47都道府県のボードゲーム会を制覇するべく全国を回っています。昨日までは岡山に居ました。完全にゲーマーかもしれません(笑)

Q:買い物の他になにか目的はありますか?
A:日本全国ボドゲの旅で知り合えた方がたくさんいるので、関西方面の方への挨拶回りも目的のひとつです!

 

積極的に全国を周ってボードゲームを楽しんでいるらめる氏。中古ブースにまで手が伸びている辺りも成長が楽しみな逸材っぷりを発揮していました。らめる氏が購入していた「はじめてのボードゲームの用語集」など冊子の販売が目立っていたのも今回の神戸の特徴で、これは次の東京開催にも引き継がれていきそうです。
冊子に限らず、コンポーネントトレイや、アクセサリー、ゲームの箱を縛るゴム紐など、ゲーム以外のサプライ品も今後充実してきそうな予感がします。

 

>>よく聞こえてきた「ちょうどいい」という感想

今回のゲームマーケット神戸は、開幕直後はインディーズゲームのブース中心に人が群がり、少し時間が経つとショップ系ブースに、そこから試遊卓に人が流れていくという「ゲームマーケット東京」と同じような人の流れになっており、着実に東京の成長を辿っているなという印象。一方で、東京に多く見られる「午前中で買い物を終わらせて帰る」という方は少ないように見受けられ、東京に比べればかなりブース数が少ないにも関わらず、来場者の滞在時間は長いと感じました。

前回のゲームマーケット神戸でも囁かれていましたが、やはりイベントとして「ちょうどいい」という声が多くあり「ちょうどいい」には「会場の広さがちょうどいい」、「来場者の数がちょうどいい」「ブース数がちょうどいい」など、さまざまな意味が込められているかと思いますが、総じて「このままちょうどいいイベントとして続くといいな」という想いが込められているように感じます。

来場者も増えているので、なかなかこの「ちょうどいい」の維持は難しいかもしれませんが、来場者や出展者みなさんが「心地よい」と感じるイベントとして、長く続いて行って欲しいなと思います。