“Kalafina+1” インタビュー Kalafinaの音楽を支える大平佳男が望む「そこにいるだけで人を熱狂させる存在」
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Kalafinaと大平佳男 撮影=菊池貴裕
4月15日から開催されるKalafina 9周年コンサートツアー『Kalafina “9+ONE”』。SPICEではこの “9+ONE”にインスパイアを受け、Kalafinaとゆかりのあるもう一人をお呼びするクロストークインタビューを企画した。二回目の今回は、マニピュレーターの大平佳男氏。初ライブからKalafinaを見続けてきた音のプロが、9年を超えて感じたことをを本人たちと語り合った。誰よりも現場でその歌を聞き続けた大平氏の言葉に耳を傾けてみよう。
――「Kalafina+1」、2弾目は、マニピュレーターの大平佳男さんをお招きしました。
Wakana:ようこそー! (歓声&拍手)
――大平さんのKalafinaとの関わり方としてはライブにおけるマニピュレーターとしてだと思うんですけれど、「結局マニピュレーターって何しているの?」という質問をさせてください。お客さんの中で、PAさんとマニピュレーターが結構ごっちゃになっている人がいると思うんですよね。具体的にどういうことをされているのでしょう?
大平:まず、いまKalafinaの楽曲とかは、CDがオリジナルとして有るじゃないですか。あれが沢山の楽器が鳴っているわけですね、その楽器を全てミュージシャンで賄ったり、シンセサイザーみたいな特殊な音なんかを同時に鳴らすには、ステージ上にものすごい人数になってしまうんですよ。そこのバンド+αを補うパートですかね……たとえばストリングスセクションだったら何十人とかって呼んでやってたらステージがいっぱいになってしまうので、そのCDで集録した際の音源を、僕が再生して流すという所でしょうか。
――Kalafinaのマニピュレーターってやってみてどうですか?音がすごく沢山重なっている印象があるんですが、大変ですか?
大平:まあ、梶浦さんが作っているものに関しては、確かに数は多いんで、気を配る部分は多いんですけれど、ただ全体が鳴ったときの感じに関しては無理がないんです。「自然に気持ちいいところを探そう」っていう。歌が鳴っていて、バンドが鳴っていて、そこに対して気持ちいい感じのところはどこか、っていうところを探っているだけなんで。サウンド的なところではそれほど苦労はしないですね。
――Kalafinaから見た大平さんっていうのはどのような存在なのでしょうか?
Keiko:ものすごい客観的にステージを見てくれているなっていう感覚はあります。例えばステージで、私が曲フリをするのかしないのかっていうライブの空気感を常に冷静に見ていてくれる、その大平さんへのきっかけで、バンドさんに音のタイミングが届けられるんです。後は、曲のつなぎってすごく重要なんですけど、拍手の間とか、そういったライブ全体の空気感を、ステージから少し離れた袖でずーっと凝視してくれているし。「絶対今音を楽しんでるでしょ!」って言う時も、ちらっと袖を見るとあるし(笑)。私的にはいろんな効果音とか、音のバランス調整をやってくれているので、音響の方と役割分担して、ライブで一番心地良い響きを作ってくれているそんな存在ですね。
――なるほど。
Keiko:そんな大平さんが「このトラック数はすごいよ」とか「この曲のバランス取るのは手こずった」みたいな曲ってむしろあったりするのかな? なんか印象としては、いつもクールに仕事をやられているイメージがあって、あんまり感情を出さないから、大平さんの中でそういう曲とかあるのかなって。
――逆質問ですね。
大平:それはあんまりないですね。バランスと言うか、仕事を自分でやる上の処理では、好きな曲ランキングを作れないような感覚で聞いているので。
Keiko:確かに!! フラットに聞いてますもんね! トラック数多いのってある? ずば抜けてまでは行かないけれど、これはちょっと処理大変だったみたいな曲……。
大平:「progressive」かな。
Kalafina:へー!
大平:なぜなら元々にバンドがない曲が、やっぱり処理が難しい。結局正解がどこなのかがちょっと見えない感じっていうか。打ち込みの音もオリジナルに入っているから聞こえてなきゃいけない、でもバンドが入ってバンドアレンジになったからと言ってそれをどれぐらいで出せば良いのかっていう。オリジナルを崩さずに、かつライブっぽくっていう。
Keiko:いつも、ライブのバンドリハーサルに入る前にCD音源を聞いて大平さんが作っていた音にバンドサウンドが入る。そこで変わる印象は現場で調整する感じになるの?
大平:そうだね、そこで音が大きい小さい以外にも処理したりするので。たとえば耳障りな音とか、もともと僕はレコーディングエンジニアなので、そういうのはなるべく処理をして、リハーサルの現場に行ったらボリュームが大きい小さいだけで済むようにしてリハに向かう。
Keiko:あ、なるほど。前準備をして、用意していくんですね。
大平:たいていリハーサルで出るのはみんな「この音を上げてくれ、下げてくれだけ」の話じゃない? 特にPAとかライブでデカくして鳴らすときに、それが耳障りにならないようにね。
Keiko:先に処理してくれてたんだ。知らないことだらけ!
大平:何年目だろう。(佐藤)強一さんが数年たった時に、別の現場で「大平くんの処理の仕方違うね」って言われたんだよね、「あ、気づいた人がいた」と思って(笑)。
――大平さんの中で、3人と初めて会ったときの印象はどうだったんですか?
大平:Wakanaちゃんは、『北斗の拳』のボーカルオーディションがあって、顔は見てるんです。向こうは認識があるみたいな。Keikoちゃんはユニットをやっていたときに、たぶん楽器の方のレコーディングしていて、そこでKeikoちゃんはスタジオに出入りしていた印象がある。これまたKalafinaやるに当たってあんまり初めてっていう感じもなくて。
――その前に出会っていたってことですよね。
大平:僕は認識してたんですね。Hikaruちゃんも、さきに「sprinter」の音だけ聞いていたから……多分レコーディングでちらっと見たぐらい。スタジオにモノ取りに行って、その現場でやってたからっていうぐらいで。
Keiko:じゃあ、ちゃんとKalafinaとして仕事しだしてからの印象は?
大平:打ち上げでWakanaちゃんが話題の中心になってるのをよく見てた。たまにWakanaちゃんじゃないところで盛り上がってると、そっちに行くわけですよ。で、話途中で反対側が盛り上がっているとまたWakanaちゃんがどっちの輪にも加わろうとしてて(笑)。よく聞いてるなあって。
Wakana:私、欲深いですよね(笑) 前回、南流石先生に「面白い人」「賑やかな人」って言われてて、繋がる(笑)
――ワッて湧いている真ん中にいるんでしょうね、Wakanaさん。
Wakana:いやいや、そんなつもりはなくて、私たちの現場はみんな楽しい人ばっかりで、みんな面白いなって思っていて、バンドさんも大平さんも、スタッフさんも明るくてみんな笑っている印象があるんですよ。で、私は人を笑わせたり、笑ってるのを見るのがすごく好きで、なんかそういう風にしたいと思っちゃうから、笑っている声が聞こえると「どうしたの?」みたいな。「何があったの教えて?」「めっちゃ面白いんだけど、聞いて聞いて」みたいな感じでどんどん伝えたいみたいな。ただそれだけです。笑いを伝えたいんですよね。みんな面白い話するから、一人でいっつも思い出し笑いするぐらい。だから打ち上げとか大好きなんです。
大平:Wakanaちゃんは小さい話をバッて広げるから面白いよね。だからみんな期待するんだけど。
Keiko:「オチがないんだよWakanaは」って皆にいじられてる(笑)。
Wakana:そう言われるのも嫌いじゃない(笑)。
大平:Keikoちゃんは冷静なんです。一番最初にやったんだと思うんですけど、ライブの音源と映像を撮って、盛り上がってる曲でブーツ履いてたんですけど、靴の紐が解けてて、それが衣裳か何かに引っ掛かっちゃってる。引っ掛かって歌ってたのに、みんなワーッて盛り上がってるから動いて、それで紐を直しながら普通に歌ってる。体勢が悪くなったら、多少マイクに感情が伝わるはずなのに、マイクは全く異常がなくて。すげえ冷静だなと思って。だってその直前、ライブ直前緊張してるって言ってたのよ。緊張してる割には冷静にやってるなって。
Wakana:こういう事件で冷静なのってKeikoはすごくある。マイクが違ったとかね。
大平:ライブでやってることのハプニングっていうか、見せ方というか。
――冷静なところは感じますね。Hikaruさんはどうです?
大平:Hikaruちゃんも読めない。うん、読めないなあ。Hikaruちゃんも比較的冷静。でも盛り上がってジャンプしたりするのを見て「ああ楽しんでるなあ」って思いながら。
Hikaru:お父さん(笑)。
大平:Hikaruちゃんはちょっとしたトラブルじゃないんですけど、去年のカウントダウンジャパンとか、ちょっと激しい動きになったときにちょっと滑ったりとかして、僕はそういうのを楽しんで見ているんですけれど。
Hikaru:よく見てるー!
大平:そういう方が盛り上がってる感も伝わるし、「おお、いいな」って思いますね。
Hikaru:多いですね、ちょっとしたトラブル。滑ったりとか、髪飾り取れたりとか。一瞬のトラブルが多くて。
大平:でも大事故じゃないから。
――そういうときにハッとなるんですか?
Hikaru:大丈夫!
大平:そこで焦ったりは全然しないから。ちっちゃいハプニングが起きたほうが、ライブは面白いですね。
――本当によく見てますね。
Keiko:なんかね、出てくるものがマニアック過ぎて。そんなネタは大平さんじゃないと出ない。
撮影=菊池貴裕
──大平さんから見たKalafinaの音の特徴ってどういうものなんでしょうか?
大平:まず、楽曲に関して言うと梶浦さんが作っているので、梶浦さんの楽曲のあり方みたいなものですよね。途中から聞いても確かに良いんですけれど、やっぱり頭から終わりまで聞いてほしいですね、とてもドラマチックに出来上がっているので。流れで最後まで聞いたときの感動がちゃんと続いていくというか。
Wakana:マジックですよね。
大平:別にこれは悪いことじゃないですけど、普通のポピュラーミュージックだったら1番と2番の繰り返しっていう構成のものが多いですよね。それはそれで繰り返しの楽しさですけれど、梶浦さんの場合は本を読む感覚というか、頭から見ていかないと話の辻褄がわからないというか。
Hikaru:凄い解かります。
大平:推理小説とかだと、犯人は先に言っちゃったら面白くないって言いますけど、それが分かったとしても初めから読んだら面白い! みたいな感覚ですかね。楽曲はそういう感じで、サウンドはやっぱり景色が見えるんですよね。曲とか歌声で。そこが草原なのか森なのかみたいな。それを作っているのは3人の声なのかなって思いますね。
――大平さんからみた3人の声っていうのはどうなんでしょう? こういう特徴があるとか。
大平:これはもちろん、3人共バラード歌ったり激しいの歌ったりするんで、一定ではないんですけれど、まあいつも思うのはKeikoちゃんの歌声が一人ソロで聞いているときの印象は、なんかこう勇気が湧いてくる感じ。なんか力強さをもらう。Wakanaちゃんはどっちかって言うと安らぎです。なんか嵐の後の港に帰ってきたみたいな。
Wakana:港に帰ってきた? へー! 落ち着くって嬉しい。地についた感じ。
Keiko:「ただいま」ってね(笑)。
大平:Hikaruちゃんは何ていうんですかね、まあロックなんですよね、力強いと言うか。僕は元々ロックが好きなんで、まあ血が逆流するような(一同笑)。
Keiko:燃えるよね。
大平:ウオーッってくるところを持ってくるのはいつもHikaruちゃんですね。
――どうですか、Hikaruさん。
Hikaru:そう言って頂けて光栄です。
大平:動きとかも一番ロックですね。
Hikaru:そういう曲になったら、ですよね。そういう曲オンリーで電気が流れる!
――3人とも全く似てないという言い方は変ですけれど、バランスを取るのが凄い大変なんじゃないかと思うんです。大平さんからみて「こういうところが変わってきたな」みたいなのがありますか?
大平:もともと3人は良い歌声してるんです。そこに更にチームワークが変わってきたんじゃないかっていうのがありますね。前は目指すところが1点だったのが、引き出しが増えてきた。だから歌い方も変わってきてる。最初はバンドライブもストリングスライブもちょっと印象が似ていたんですけど、今は歌い分けしているのが見えたりするんですよね。
――この意見を受けて御三方はいかがですか。
Wakana:一番最初から大平さんは見てくれているし、私たちが六本木morph-tokyoというライブハウスでライブをしていたときから一緒にやっているメンバーの一人なので、梶浦さん以外では3人を一番良く見てくれてる。自分たちがライブをやっていく中で、変わってきたこともあると最近思うんですけど、それを改めて客観的に大平さんに言われると、「確かに!」と思えるんです。私たちは話し合いをすごく大切にしてきたんですけど、改めてこう言われると、すごく嬉しいし、やっぱり9年間の歩みがあったんだなって思います。
――よく見てくれていますもんね。
Wakana:最初はアコースティックのライブとバンドスタイルがあまり変わらない印象があるっていうのは確かにその通りと言うか。自分たちにとっても試行錯誤、模索しながらだったし。でも『“Kalafina with Strings” Christmas Premium LIVE TOUR 2016』ではアコースティックの楽しさを本当に理解できたのかなって思えるツアーで。「これがKalafinaのアコースティックの楽しさなんだ」っていうのをすごく感じられたんですよね。
――今のお話伺ってて、Kalafinaの中で意識改革があった瞬間とかってあるのかな?って思ったんですが。
Keiko:私たちの活動ってそんなに急激に何かが変わっていったりとか、大きな転機が少ない方なのかなと思ってて。
――ガバッと変わったりはしていない。
Keiko:そうそうそう、それはやっぱりプロデューサーである梶浦さんが常に音楽を作られるっていうところで軸がぶれないから。でも私達が出会う前、それぞれがボーカリストになるときに夢見た日本武道館っていうのは、3人共いつか立ってみたいなって思っていた場所の一つだったんですよ。そこに到達した1日目が終わった瞬間、「まだ明日があってよかったね」、2日目が終わった瞬間「また武道館の音をちゃんと作りに戻ろうね」というのが3人の統一した気持ちだったんです。そこは私の中でも救いだったかな。おんなじ気持ちで武道館を迎え、終えたこと。
――それぞれの目標が同じ地点だった、3人とも武道館行きたかったっていうのは……。
Keiko:うん、それぞれが出会う前の目標を一緒に叶えられたっていうのは一番大きかったんじゃないかなって思いますね。
――やっぱり、武道館って特別なんですね。
Keiko:絶対特別だと思う。
大平:まあ僕は全然そんな意識なかったんで。ある日突然、リスアニ!のイベントで武道館行って、「お~いきなり武道館でやってるなあ」とか思ってて。まあそこに関してはもう、時間も限られているんで、ものすごい流れ作業でアーティストが入れ替わっていく中、さっと入っただけなんで。
Keiko:実感としては違いますよね。あのときは。やっぱり2015年の初武道館のときは、バンドさんを含め、みんなが見守ってくれている感がすっごいありましたよ。「みんなここまで来られたんだね」って。そういった無言の暖かさを感じた。
撮影=菊池貴裕
――大平さんはずっと袖にいるわけじゃないですか。ずっと袖で見続けているというところで、ステージ上に立ちたいと思うことはないんでしょうか?
大平:いやー僕は、最初梶浦さんのライブだったと思うんですけど、そこで紹介されてしまって、その時普通のジーパンにTシャツで、そんなの呼ばれるなんて思ってなかった(笑)。僕からすれば別の方のライブ見て、パフォーマンスしてない、しかも普通の人がいたりするとちょっとゲンナリしてしまうんですね。あくまで何かパフォーマンスがあって!みたいな。今でも呼ばれて不思議な感じですよね。ステージ上で何もパフォーマンスしていないので、仕事はもちろんやってるんですけれども。そこに関して呼ばれて……何ていうか不思議な感じが……(笑)。
Keiko:ねえ、慣れた慣れた?
大平:今となっては(笑)。
――ものすごい拍手ですもんね。
Keiko:あの瞬間どんな気持ち? 誰よりも拍手貰って(笑)。
大平:ステージのみんなのパフォーマンスを、オレは正面から見られないからさ。でも照明だとか映像だとか、プロフェッショナルな仕事人たちは見ているから。だから「あー楽しいな」って思ってるのよ。それが、たぶん正面でみてるお客さんにとって最高に気持ちが高揚するところで、拍手貰いに行ってるだけだから(笑)。「すごい良いライブしてるんだろうな」って思ってますよ。
Keiko:えーじゃあ、大平さんも幸福感感じてる?
大平:あそこで「成功してるな」っていう風に思ってる。
Keiko:あー、嬉しい。
――そうですよね、ステージに立ってお客さんとやり取りをしているわけではないですもんね。メンバー紹介のところだけ出てきて。
Keiko:あそこで今日のお客様のお顔を見るわけじゃない?
大平:一応なるべく観客一人ずつの顔をパーッと見て、どんな感じなのとか。僕が感じたところで何もならないんですけどね。
Keiko:大平さんはね、毎回Twitterでお客様が帰るときの会場の写真撮ってるの。
──ずっと撮られてます。
Keiko:なんかこう、すごく愛情を感じてて、あれいつからですか?
大平:たぶん、『“After Eden” Special LIVE 2011』か『Kalafina LIVE TOUR 2013 “Consolation”』か。長いツアーにやるにあたって、なんかツアーを通して何かをやりたいと思ってたの。
――結構見てるとお客さん残ってますよね。
Keiko:そうそう、お客様が帰ってるところを撮ってるから、大平さんはスタッフさんと同じくらいの入りで準備して、スタッフさんたちと残って自分の撤去作業をして、結構長い時間ステージ周りにいるので、「きっと私たちと違う感覚なんだろうな」と見てて思いますね。
――大平さんはKalafinaの音を誰よりも聞いているのに、ずっと前から見られないっていうジレンマがあるかと思うんですけど。
大平:でも、僕はBlu-rayとかDVDあたりの作成とか、細かい処理をやっていたりするので、一番早く仮の映像や音の編集とか聞きながら、バンド全員と、歌っている方のそれぞれを聞き分けたりとか。マニアックなことしてます。
Keiko:マニアックー!
大平:音しかないと何か声とかしかわからないから、「なんか動いてるんだろうなあ」って思ってますからね(笑)。
――普通の人には分からない楽しみ方。
Keiko:大平さんはすごく歌のクオリティに対して厳しいですよ。大平さんがそういういろんな話をしてくれるようになったのはある程度3人のハーモニーとかが安定してきてからだもん。
大平:でも僕は逆に変わらないバンドとかが好きで、例えばAC/DCとか、ラモーンズとかああいうバンドとかが好きで。で、Kalafinaも、Wakanaちゃんは変化したって言ってるんですけど、僕は変化していないところというか、そこが楽しいというか。なんでしょうね、単純に根本は変わってなくて、できることの引き出しが増えた。で、その中で、それをチョイス、前は選ばなかった物を選ぶようになったって言うぐらいの感じでしか見てなくて。
Keiko:うんうん。確かに。
大平:やっぱり3人っていうか、グループになっている時点で一人の意思で決めるって言う感じはあまりない。そういうときはたぶんディスカッションして決めていくから。
Keiko:まず一人の意思で曲が作れるわけはないからね。
大平:リーダーがいて「こうしよう」じゃないので、まあ今回はこうしたんだって感じ。僕の中ではもともとの歌のセンスがあるから、っていう風に見てるので、あんまり変化したと思ってないんですよね……もちろん成長はあるとしても。
Keiko:新しいわ、大平さんのコメント。
大平:まあHikaruちゃんのMCはすげえ変わった(一同爆笑)
Keiko:変わったとこある! ちょっと六本木morph-tokyoでのライブを思い出して! 自己紹介しかしてないから!
大平:morphどころじゃないよ、そのあとライブレコーディングしてMCのトラックを見てもこう、なんか喋ったかなって思って!お客さんの拍手とか下手すりゃ二人の声がHikaruちゃんのマイクに乗っかってる、そんな感じ(一同笑)。
――名物ですもんね、あのMCは。
大平:今思えば、グッズ紹介でオレ出ていったな……。
Hikaru:そうです! 昔ライブハウスでLIVEをしていた時はTシャツとか着て登場してもらって、「こういうTシャツです!」ってやってた時期もあったんですよね。
――自由ですね。
Wakana:懐かしい……。
大平:唯一そこパフォーマンスしたなって思ってます(笑)
――愛ある現場。
Keiko:本当そうなんですよ。
――あのMCも、変な話日に日に上手くなってますよね。
Hikaru:そう言って頂けるととても有り難いんですけれど。自分の中ではそれこそ最初の頃はどう喋ればいいかわからない状態で、自分が話していることにすごく違和感があったんです。人前で話すとか、一人でずっと喋っているとか、そういう感覚が不思議な感じで。でもやっぱり話している中で、みんなの顔を見ながら話さなきゃうまく話せないんだなとか少しずつ学んでて。最初の頃は二人が途中で助けてくれてたんですけれど、徐々にそれも減ってきて、今では何も言わないっていうパターンが形成されてるんです。私が話してるのを見てくれて、感じ取ってくれて、調整してくれてるんだなって。あそこで勉強しましたね。大平さんもあのコーナーに関して色々言ってくれてて。
Keiko:そうなの? 知らなかった。
Hikaru:何気ない一言とかなんですけど「今日のあそこ面白かったね」とか。
大平:あー、そういうことね。
Hikaru:面白かったっていう一つの意見があると、「あ、あれは正解だったんだ」って思えるんですよ。いちばん聞いてくれている身近な人だし、たぶん客観的に見てくれてその意見を言ってくれているんだって思ってたから、それを残して、じゃあ次は周りを変えようとか大平さんがくれた感想も取り入れながら構成して。
大平:MCのときは一番気を抜いてるからかな。やることがないっていうか。
――出すものがないですからね。
大平:待っているだけなんで。そこは楽しんで聞く。
Keiko:なんかここ数年みんなとの信頼関係がしっかりあって、なんかその信頼感の中でやるトライとかって怖くないんだよね。
大平:それは言えてるね、PAの方とミュージシャンも長いことやってるからこそその新しく出るところに、たぶん恐怖感なく、でも脱線しないように。
Keiko:そのさじ加減はあるなあ。でもそれはちゃんと積み重ねてジャッジするっていうところは絶対大事にしたいな。
――こないだのインタビューでもおっしゃってましたけどKalafina像っていうのが良くも悪くもかなり強いと思っていて、でも一歩踏み込んで中を見てみると、その中でトライして破ったものもあるし大事にしているものもある。お話を聞いていると各セクション挑戦しているんだな、という感じを受けますね。
Keiko:私たちのことを見守りつつ、トライを見守りつつ支えてくれてるんですよ。
撮影=菊池貴裕
――そしてツアーが始まりますが、大平さんからこんなトライをしてほしいとか、もっとこんなことやって欲しいとかなにかありますか?
Keiko:なんか大平さんの気持ち聞いてみたい。叶わないかもしれないけど(笑)
Wakana:聞くだけ聞くよ!(笑)
Hikaru:何もないとかは無しですよ(笑)。
大平:何にもないっていうことはないけれど、単発的な目であんまり見ていないので、長い目で見て、マイケル・ジャクソンじゃないけど、じっとしててもウワーッ!ってなるみたいなところに行ってほしい気はする。
Keiko:凄いとこ来た!
大平:要は黙って立ってるだけでお客さんが大騒ぎになる。そういう所だよね。
Keiko:長い目でって言ったけどさ、大平さんはKalafinaが10年続くって思ってた?
大平:あんまり考えてなかった(笑)。
Wakana:考えてなかったら経ってた(笑)。でもなんか気持ちはわかる。私たちも気付いたら9年経ってて、わーもう身近に10周年があるねっていう。
大平:5周年からは毎年決まって6周年、7周年とかやってるけど、あんまりそんなに迫ってきた感じもないっていうか。なんだろう、難しい。
Keiko:でも立ってるだけでっていうそういう存在感のあるアーティストになって欲しいってこと?
大平:ツアーやるからといって、さっき言ったみたいに何か急激な変化を与えてやってく感じではないのかなっていう風に思っていて。だから今までと言ったように周りのスタッフも踏まえてちょっとずつの変化で進んできているので、ジリジリ来る感じ。だからここに関して何か大きくやって欲しいという感じではない。
――水滴が岩を穿つように、気がついたら形が変わっていてみたいな。
大平:ああそうです、そんな感じですね。
――これだけ長いスパンで一つのアーティストを袖から見続けてくれるってなかなか……エンジニアじゃないですか、バンドメンバーも含めて、ここまで見てくるって人はなかなかいないって印象があります。
Keiko:他のアーティストさんのマニピュレーターってかおり(織田かおり)以外である?
大平:ない。
Wakana:あ、そうなんだ。
大平:ただ、この間、そのかおりちゃんのメンバーと飲んでて、ここまで音とか音楽とかに食い込んでくるマニピュレーターさんはあんまいないよねって言われて、そうなんだ、みたいな。もちろんレコーディングの現場でステムっていうライブ用音源を作ることがあるんですけど、ただそれを再生するだけ、みたいな人もいるんですよね。レコーディングってちっちゃいテレビとかラジカセとかで聞くようなサイズで音を作るんですよ。でもライブとかで音がデカくなると、ぜんぜん違う、それをそのまま流すって出来ない。
――全然印象変わります、スピーカーだけでも。
大平: CDとかだったら全部の音を細かく何度も聞けるし、全部の音をキレイに整理して、トラックダウンって作業をやって処理するんですけど。ライブの場合は一発ですし、お客さんが入ったら音がまた変わっちゃうしっていう。
Keiko:大平さんの中で、Kalafinaのライブ作りで一番こだわることってどこなの?
大平:こだわるところ……大橋さん(PA担当)が処理しやすいように作る(笑)。
Keiko:要するにお客さんが聞く音?
大平:そうですそうです。
――お客さんが聞いてて一番いい音をっていう。
Keiko:だからやっぱり音響さんとのタッグなんですよね。大平さんはそういうところを大切にしているから、自分の仕事だけだったらここのトラック作っておけばいいって感じなのに、プラスアルファで音響の人たちに繋げるっていう視点があって・・・。私たちにとって最強のマニピュレーターさんです(笑)。
――人気がある理由がなんとなく分かってきました(笑)。では、今目の前にいますが、Kalafinaの皆さんから大平さんにメッセージを。
Keiko:長い目で見てくれているからこそ、私たちが“変化”と言っていた事も、「それも引き出しの一つでしょ」ぐらいに思っていてくれたことが、とても嬉しかったです。このまま大平さんの視点で私たちを見続けてほしいなって。自分たちの音楽人生の中で、また大平さんと話がしたいです。これからも見てほしいなって私は思いました。すごく貴重なんですよ大平さんの存在って、本当に。
Wakana:他の現場でマニピュレーターの方とお会いすることもあるんですけど、本当にマニピュレーターさんって一番冷静だなと。でも、例えば「音楽」っていう曲で、大平さんを見るとすごい腕上げてくれてたりして、それを見て安心する(笑)。私上手で大平さんの近くが多いので、ちょっと見ると大平さんがパソコンの前でジーっと私たちを見てくれているのとかをもう何度も見ているんです。リハーサルでも本番でも見える位置にいてくれることがすごく安心するし、質問するとちゃんとアドバイスをくれる。そういった一つ一つがすごく私たちの安心のひとつなんです。だからこそBAND紹介で、私が「マニピュレーター・大平佳男!」って呼ぶことにすごく責任感を持っているんです。これからも癒やしと尊敬の念を抱いて呼ばせてもらおうと思っているので、よろしくお願いします。
Hikaru:大平さんは普通にKalafinaの現場で真剣にやっている時より、打ち上げや移動のバスの中などで他愛のない話をたくさんしてくれるんですけど、結構その中で「今の参考になる、メモしたい!」っていう時があるんです。そういう時を逃さずに、これからも色々私は聞き役としていたいと思います(笑)。オフの顔も好きなので、たくさん話してくれると嬉しいです。
――これを受けまして、大平さんからもメッセージを。
大平:まあ、ツアーも長いの沢山やるから、そこを一山乗り越えるためにこれからリハーサルをやって行かなきゃいけないんですけれど、やっぱりそれを超えたらまたその先がずっとあるっていう。今だけじゃなくて遠い頂を目指してほしいですね。
──動かないでお客さんが湧く(笑)。
大平:そこは通過点の一つですけれども、ここで何かまたもう一つ成長と言うか、得るものがあると良いなと思います。もちろんお客さんもいて、そこで生まれるものなんで。3人たちだけでは出来ない化学反応を楽しみにしてます!
撮影=菊池貴裕
[千葉公演] 2017年4月15日(土)・16日(日) 森のホール21
[北海道公演] 2017年4月23日(日) わくわくホリデーホール
[愛知公演] 2017年4月30日(日) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
[大阪公演] 2017年5月2日(火)・3日(水・祝) フェスティバルホール
[神奈川公演] 2017年5月7日(日) 神奈川県民ホール 大ホール
[埼玉公演] 2017年5月13日(土) 大宮ソニックシティ 大ホール
[富山公演] 2017年5月14日(日) オーバード・ホール
[東京公演] 2017年6月3日(土)・4日(日) 東京国際フォーラム ホールA
[宮城公演] 2017年6月10日(土) 仙台サンプラザホール
[福岡公演] 2017年6月17日(土) アルモニーサンク 北九州ソレイユ
LIVE情報はこちらへ
http://www.kalafinalive.com/