SHAKALABBITSが明かす、活動休止と「初めて満足のいった」最新作『Her』
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SHAKALABBITS
2017年いっぱいをもっての無期限の活動休止を発表しているSHAKALABBITSが、活休前ラストアルバムとして4月12日にリリースする、8枚目のアルバム『Her』。「初めて満足のいったアルバム」「今までのアルバムとはまったく違う」と語る本作に関する内容を掘り下げながら、活休について、ファンへの想いについても語ってもらった。
――ちょっと時系列を遡ってお伺いしたんですが、MAHさんは昨年9月にTwitter上にて「TD終了!」と呟いてますよね。その後にお会いした時に「すげえ、いいアルバムができた」とおっしゃってて。
MAH(Dr):そうですね。最高傑作ができたと思ってますね。
――でも、同年の末に無期限の活動休止を発表されたんで、驚いたんだんです。もしかしたら、満足がいくアルバムが完成しまったからなのか?と思ったんですが。
MAH:それはすごくいいパターンですね(笑)。でも実際はそうじゃなくて。
――メンバーからのコメントは全く出てないですよね。
MAH:うーん……そもそも何て言ったらいいかわからないっていう。だから、言わないというか。
UKI(Vo):ロマンティックじゃないからね。うまく言えないんですけど、すっごくすごく簡単に言うと、バンドや音楽に対する考え方や生きていきたい道が違ってしまったっていうことですね。
――じゃあ、バンドの活動休止=メンバー全員が音楽をやめるわけではないんですね。
UKI:いろんな友達にも相談したんですけど、みんなと「音楽、辞めないでしょ?」「辞めないよ!」「ああ、よかった!」っていう会話をたくさんしてるんですよ。私にとって音楽というものは、子供の時から夢としてずっとやってきたことだし、それを手放すっていう考えは全くない。だから、私は辞めないんですよ。辞められないんですよ。
MAH:どんな形になるかはわからないですけどね。僕は今でも、UKIさんのために曲を書いていて。もうそれはライフワークみたいなもので。活休するのに、これはいつ歌われるんだろうとは思いながらも作ってますから。
――その言葉を聞けただけでちょっとホッとしました。では、ニューアルバム『Her』はバンド内の話し合いが持たれている中で制作したっていうことになります。
MAH:実際は一昨年くらい前からやっていたんですけど、制作途中で活休の話もあって。だから最後って言いたくないけど、活休前ラストっていう気持ちはありましたね。
UKI:このアルバムでこの歌詞の内容ってなると、全部全部、活休と結びつきがちなんですけど、そんなわけはなくて。
――例えば、'15年5月にリリースした17枚目のシングル「Climax」の<♪さよなら/また巡り会えることでしょう>も意味深に聴こえてしまいます。
UKI:うん(笑)。でも、そんなことはなく。ただ、制作中にいろんなことがあったのは事実で、その時は歌詞をまだ半分くらい書けてなかったんです。これは絶対に最後のアルバムになるぞって思ったけど、いきなりラストの気持ちを書けなくて。それで落ち込んで。「Color」っていう曲をプリプロしてる時に、MAHが「この曲はね、UKIがすごい大きなスタジアムで端から端まで駆けていくイメージがすごくあるんだ」って言ってて。その時は「ああ、そうだね。すごく大きな会場で歌ってるイメージあるね。キラキラしてるよねー」って話してたけど、いろんなことがある中で、キラキラしすぎちゃってる曲に対して、全然言葉が出てこなくって。最初に書いた歌詞は、皮肉がいっぱい込められてて、すごく愚痴っぽかったり、気持ち悪かったりするなって思って、一回白紙に戻したんです。で、もう一回書いて、もう一回もう一回って書いていって着地したんですけど……。
――UKIさんにしては珍しい歌詞になってますよね。<今のまま歌えそうにない>とか、<どんな色になれば/振り向いてくれるの>と不安を吐露してて。
UKI:珍しいです。私は今まで、「いろんな色になる」ってずっと言ってきて。どんな色にもなれるよって言ってたのに……MAHも好きなんだよね、このフレーズ。
MAH:そこでね、泣いちゃうんです、僕。
UKI:グッと来ちゃうんだよね、MAHのその気持ちはものすごくわかります。ただ、どんなに気持ちを訴えかけたとしても、情熱が届かないというもどかしさがすごいあった時なので、本当にちょっと思い出すと気持ち悪くなっちゃうくらい作詞の環境が悪かったですね。キラキラした曲に反する気持ちしかないことにすごく悩んだけど、全然うまく走れてないからこうなったなっていう感じですね。
――一方、表題曲「Her」では<あなたの手は離さないから/この世界とまだまだ遊んで>と歌ってますよね。この歌詞も活休が決まった後に書きました?
UKI:本当に一番最後ですね。でも、曲自体はファーストアルバムを作っている頃からあったんですよ。
MAH:面白いのが、ほとんどアレンジや曲の構成は変わってないんです。付け足したり省いたりっていうのはあるけど、ほとんど変わってない。
――もともとはどんなところから生まれた曲だったんですか?
UKI:毎回毎回アルバムの候補の中には入っていた曲なんですけど、最初は、私がお母さんを連想させるような曲を書いてって言って。
MAH:だから最初は『MOM』っていうタイトルだったんですよ。UKIさんと、UKIさんのママのやりとりの空気感と、自分の母親、自分の思う親子でメロディを出していって。
UKI:でも歌詞が全然書けなくて。なんか表現しきれない感じがあったんだよね。
MAH:そうそう。そんな3、4分では表現できないくらい、母親ってもっと偉大なんですよね。だから書けなかったんだと思うんだよね、歌詞を。
UKI:演奏も歌も、すべてにおいて今じゃない感がものすごくあって。
MAH:でも、アレンジが変わってないのが面白いよね、ドラムにしても何にしても。
――今、聞くとドラムから始まってベース、ギター、ヴォーカルってひとりずつ入っていって4人の音になるじゃないですか。しかも、タイトル曲だっていうことを考えると、どうしても感傷的にはなっちゃうんですよね。
UKI:なりますよね。だって前のギター(MASSY/'99~02)、前のベース(KING/'99~11)も、どこかで聴いたら、あっ!って思うんじゃないかってくらい、ずっと眠ってった曲で。
MAH:これ『MOM』じゃんって言うよね、絶対(笑)。
UKI:で、最終的にTAKEちゃんとYOSUKEがギターとベースを入れてて。私も歌詞をちゃんと書いて。みんなでやってますっていう曲になりましたね。
――“Her”はどんなイメージですか?リスナーとしては、UKIさんを思い浮かべますが。
UKI:私の中では、“お母さん”と“音楽の神様”と“自分”を“Her”としています。もうひとりの自分っていうか。
MAH:結局、お母さんからしか生物って生まれないし、そういう意味でもこのアルバムタイトルの『Her』っていうのは女神っていう意味で。外に何かを求めるんじゃなく、問いただすんでもなく、結局、それぞれの心の中に神様がいて、その神様が「あっちに行ってごらん」とか「これはやめときなさい」って言う、その自分の気持ちっていうのが神様なんじゃないかっていう。神様は、自分の気持ちで、つまり、自分自身でもある。絶対に誰もがもうひとりの自分をそれぞれ持ってると思うんですよ。UKIさんは女子だし、もうひとりのUKIさんっていう意味でHerっていうのでもいいし、いろんな意味がある。
――<愛してた記憶そのもの>の“記憶”って言うのは?
UKI:こういう曲だけど、想像してたのはライブハウスですね。年齢とかじゃなく、今、どんどんライブハウスに人が来なくなってきてて。ライブハウスに行って音楽を爆音で楽しむ、みたいな感覚っていうのが、そんなに無くなってきてる。でも、何か思い立った時に行かないとすごく後悔してしまうんですよね。そこには、二度とないメロディだったり感覚があって。その音色っていうのは、その時だけのものだから、その場にいた人にしかわからないもので。明日行ってもその感覚はまた別のものになってる。そう思うと、すごく儚いものだなって。
MAH:尊いよね。
UKI:そう。で、そうわかってるからこそ、やっぱり響き渡ってほしいじゃないですか。私たちだけじゃなくて、いろんなミュージシャンたちが出すものが。だから爆音のスローモーションを想像しながら書いていきましたね。で、私たちのことを応援してくれた気持ちっていうのは、流行ってる時に近づいてそうじゃなくなったら離れるみたいなことってあるけど……そういうのがあっても、昔、来てた人たちのこともけっこう憶えてるものなんですよね。その子たちがすごく懐かしがってる感じとかも知ってるんですけど、こっちはものすごく鮮明に憶えていて、それを懐かしいと思わないんです。
MAH:ああ~、わかるわ~(笑)。
UKI:その子たちがキラキラしてて、私たちもキラキラしてて。それを懐かしいとは思わなくて。そこがファンと違うのかなっていうのはあるんですけど。その子たちが全力で私たちにくれたものは、私たちは薄れていなくて。むしろどんどんどんどん溜まっていくんですね。当時、書いてくれたフラッグとか、メッセージとかもすぐに思い出せるし、すごく……愛し愛されてた記憶が薄れることはない。私だけのものだし、あなただけのもの。みんなそれを過去のものとしてなくしちゃうのは悲しいんですけど、私たちはどんどん溜めていって大きくなって、バンドの感情も大きくなって、すごく成長して18歳を迎えて。
MAH:過渡期だねぇ……18歳。いろいろあるね~。
UKI:うん(笑)、そういうもんだよね。
――(笑)。アルバムのラストナンバー「Stars」には<鮮やかなフラッグ>という言葉も出てきます。この曲にはどんな思いを込めましたか?
UKI:“ありがとう”ですね。これは一番最後がいいと思って。一番最後の言葉を何にするかっていうことも込みで、もう感謝しかないと思って。
――アルバムが完成して、ご自身たちにとってはどんな1枚になりました?
MAH:初めて満足のいったアルバムになりましたね。どのバンドもそうだけど、必死に秒単位でレコーディングしてて。UKIさんに関しては、好きなように歌ってくれてる様が俺の中ではいちファンとしていいので、特にないんですけど、自分はもうちょっとシンバル強くいっとけよとか、ギターとかベースにしても、もうちょっと弾き圧いけよとかがあったんですよ。でも、結局は時間がない中で、これ以上は今の俺たちには無理っていう感じでやってたんだけど、今回はレコーディング始めてからもどんどん延び延びになったりして、録り直したりして。結果、もう文句ないですっていうところまでやれたんですよね。
――「至福のトランジスタ」のように激しくて重いビートもあれば、「Color」のようにしっかりと地に足がついたビートもあって。
MAH:嬉しいです。
UKI:すごく絵を思い浮かべながらTDできた感じもあるもんね。
MAH:忙しいと、そこに気持ちを入れるのを忘れがちなんですよね。でも、今回は初めて、この曲はこういうテーマで、こういう歌詞だからこういう風に叩こうっていう気持ちを込めることができたんですよ。最後の最後、マスタリングまできっちりやって。自分の中で、今のこの4人ではこれ以上のものは出来ないっていうところまでできた。俺の中では、今までのアルバムとはまったく違うと思います。
UKI:私の中でもこれ以上のものは、今のシャカラビッツではないかなっていうくらい。本当にいろんなものを込められましたね。私、ものすごい聴いてますもん。もうあっという間に終わってしまうし、12曲目「Stars」から1曲目「Longyearbyen」に行くのも最高だし。曲順も自分で考えたんですけど、私、最高と思いましたね(笑)。
――歌詞が全部日本語になってるのは?
UKI:そうそう、アルバムを8枚出してるけど、全曲が日本語歌詞っていうのはこれが初めてなんですよね。
MAH:振り切ったね。
UKI:……たまたまなんだけどね(笑)。真っ白なアルバムジャケットも初めて。それは狙ったんですけど、ジャケットには、目に頼りすぎないで、もっと耳を使おうぜっていう意味も込めてますね。
『Her』
――そして、5月からは『Album Release Party 2017『You Will See Her』』がスタートしますが、どんなツアーになりそうですか?
MAH:リリースパーティーなので、アルバムの曲を重点的にやりたいですね。アルバムの世界観を表現するためにも、もう1本ギターがいたほうがいい。だから、次のツアーはサポートを1人入れて、音厚めにやります。
――最後のツアーではなく、アルバムのリリパっていうことですよね。
UKI:そうです。総集編はまたあとでやりたいなって考えてます。
MAH:何も決まってないけど、4人だけで全国を回って、ありがとうございました!って直接、みんなに言いに行きたいですね。
取材・文=永堀アツオ
発売日:2017年4月12日(水)
『Her』
価格:¥2,800+税
レーベル:Hallelujah Circus Inc.
2.至福のトランジスタ
3.サイ
4.神ノ街シアター
5.Laundry Blues
6.COFFEE FLOAT
7.三日月のような目をして
8.Catcher In The Rye
9.Her
10.Color
11.Climax
12.Stars
5月15日(月) 梅田CLUB QUATTRO OPEN 18:45/START 19:30
5月16日(火) 名古屋CLUB QUATTRO OPEN 18:45/START 19:30
5月20日(土) 新木場STUDIO COAST OPEN 16:45/START 17:30
新木場 スタンディング ¥4,500(税込/D代別)