岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』が「みんなの居場所になってほしい」ーーSaucy Dog、マカロニえんぴつ、Awichらがバトンを繋いだ2日目・全組レポート(写真83点)

12:00
レポート
音楽

撮影=センイチ

画像を全て表示(83件)

『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』2025.3.30(SUN)CONVEX岡山

2025年3月29日(土)・30日(日)の2日間、岡山県岡山市にあるCONVEX岡山にて『EIGHT BALL FESTIVAL 2025 supported by GROP』が開催された。3回目の開催となる今回から、新たに屋外ステージが増設され、SOLID STAGE / STRIPED STAGE / CUE STAGEと名付けられた3ステージに、全34組のアーティストが出演。SPICEでは、岡山から音楽シーンを盛り上げるべく集まったアーティストとオーディエンスが作り上げた、岡山でのライブの模様を全組レポートする。

2日目は前日と比べ、ぐっと気温が下がるといわれていたけれど、快晴ということもあって昼間は過ごしやすい気候に。イベントの開場直後から会場外にあるフードエリアやグッズエリアも大いに賑わっていて、絶好の“フェス日和”だ。

室内エリアでも早くから人がたくさん集まっているエリアがあちこちにあった。2023年・2024年の『EIGHT BALL FESTIVAL』のライブ写真を一堂に集めた展示ブースでは、お気に入りのアーティストのサインや写真の前で記念撮影をしたり、当時の思い出を語り合ったり。岡山県の地元企業によるブースではこのフェス限定でのプレゼントが貰える企画が実施されていたり、アパレルブランドやクラフトビールの試飲ブースが展開されていたりと、余すことなくイベントを満喫できる仕掛けが展開されていた。前日に続いてイベントに参加している人も多く、気分は早々に高まっている様子。

プッシュプルポット【CUE STAGE】11:30〜

撮影=aoi / アオイ

そこに唯一の野外ステージ・CUE STAGEのトップバッターで登場したのがプッシュプルポットだ。「ライブハウスから来ました!」、と威勢よくライブバンドぶりを宣言すると1曲目「こんな日々を終わらせて」で自然と体も心も吸い寄せられちゃうポジティブパワーでフロアを満たしていく。

撮影=aoi / アオイ

「トップバッターから来てくれて、こっち(のステージ)に来てくれてありがとう! めちゃくちゃ良いライブするから! 移動しないで!」。“フェスあるある”な途中でステージを離脱する人を引き留めたいと、山口大貴(Vo.Gt)が熱く吠えると、有言実行すべく、「バカやろう」でドカドカうるさいロックンロールサウンドを鳴らし、観客のテンションをがっちりと掴んでいく。

撮影=aoi / アオイ

「音楽を通してたくさんの人と通じ合えて、出会えたことがうれしい。また生きて、ライブハウスで出会いたい」。山口は音楽へ、ロックバンドへ、そして人と人との出会いや別れについて切々と語り、「13歳の夜」へ。山口の心から湧き出た言葉、それを桑原拓也(Gt.Cho)がより深層に沁み込ませるメロを描き、堀内一憲(Ba.Cho)がバンドの底力を高めるベースラインを、明神竜太郎(Dr.Cho)が昂る感情を押し上げていく。ステージはそのまま「笑って」「最終列車」でぐっと前にせり出すようなロックサウンドを打ち鳴らし、トッパーからしっかりとイベントの加速度を高めてくれた。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=黒田奈保子

アルステイク【STRIPED STAGE】11:35〜

撮影=センイチ

3人の頼もしいシルエットが浮かび上がり、ひだかよしあき(Vo.Gt、以下同)の「ヤバイ日にしようぜ!」と言葉でスタートダッシュを切ったのはアルステイクだ。エモーションをそのまま歌に乗せた「嘘つきは勝手」に始まり、あむ(Dr.Cho)のエネルギッシュなドラミングが冴えわたる「他人事」、切ないボーカルが曲のドラマを際立たせる「ワガママ」と、満杯のSTRIPED STAGEを一気にライブハウス化させていく。

撮影=センイチ

「僕ら、紛うことなき岡山の人間です。岡山ではフェスに行こうと思ったら、あの有名なバンドを見ようと思ったら、県外まで行かないと見られなかった。でもエイトボールはもう3回目。分かるかな? めちゃくちゃ最高なフェスに出会えてるってこと! あともう一つめちゃくちゃヤバいバンドに出会えてることにも気付いてください、俺たちがアルステイク!」(ひだか、以下同)

そう声高にブチ上げた「未完成のまま」ではたくさんの拳が上がったかと思えば、「走れ」「踊れ」「わんちゃん」とショートチューンを隙間なく連発していく。促さずとも無数のクラップやジャンプが生まれる光景に、改めてひだかは口を開いた。

撮影=センイチ

「今見てるこの景色は、岡山のライブハウスでは日常茶飯事。俺たち、岡山のライブハウスのヤバさを教えに来ました!」と、「チェリーメリー」ではその言葉を具現化するかごとく、のん(Ba.Cho)が全身全霊で会場をあおり、切々と歌いかけた「生きている」「心」でエンディング……と思いきや「時間が余ったのでもう1曲!」とダメ押しの「光れ」でピリオドを打つ。最終日STRIPED STAGEのトップにふさわしい岡山の底力を見せつけたアルステイクだった。

撮影=センイチ

取材・文=後藤愛

KANA-BOON【SOLID STAGE】12:10~

撮影=日吉“JP”純平

2日目のSOLID STAGEのトップバッターを務めるKANA-BOONは、谷口鮪(Vo.Gt)が「『EIGHT BALL FESTIVAL』開幕!」と開口一番、「フルドライブ」になだれ込むオープニングから鳥肌モノ。ロックバンドとしてのタフネスが宿る極太の音像をぶっ放す! その間も際限なく増え続けるオーディエンスを横目に「ソングオブザデッド」を投下すれば、促さずとも方々でタオルが回る。「さぁどこまでいけるかな? 踊ろう!」(谷口、以下同)と必殺の「ないものねだり」ではコール&レスポンスもバッチリ決めるなど、フェス仕様にチューンナップされたセットリストを惜しみなく披露していく。

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

ここで、「岡山に来たのは3年ぶりぐらいかな。KANA-BOONもあの頃とはすっかり様変わりしましたが(笑)、この季節にぴったりの歌を」と歌い出したのは「サクラノウタ」。会場のCONVEX岡山周辺にも桜がちらほら咲き始めていたこの日に打ってつけのメロウネスが、じんわり胸に染みわたっていく。続いても、きらめく「スターマーカー」に手を振り応える大観衆に、「楽しくない日も退屈な日も寂しい夜も、そりゃありますよ。でも、今日は全てのアーティストがあなたの気持ちを晴らしてくれるから。大切な歌です。あなたに届きますように」と「日々」を切々と歌い上げ、「ヒットソングがまだ残ってます!(笑)」とトドメは「シルエット」! 「最高の始まりでした!」と初エイトボールにしてKANA-BOONの真髄を見せつけた。

撮影=日吉“JP”純平

取材・文=奥“ボウイ”昌史

SHAKALABBITS【CUE STAGE】12:50〜

撮影=AZUSA TAKADA

今年でデビュー25周年を迎えるSHAKALABBITSが『EIGHT BALL FESTIVAL』に初登場。Uqui(Vo)とMAH(Dr)、2人での新体制となり、2024年に7年ぶりの復活を果たした彼女たち。1曲目「MONSTER TREE」から、グッドミュージックはいつだって錆びることはないと、まざまざと体感できるステージ。エネルギッシュ&ハイな歌声を響かせていたUquiも、続く「THAT THING YOU DO!」ではご機嫌なスカサウンドに乗っかり、ルーディな歌声を響かせる。そこに拍車を懸けるようなMAHの豪快なビートがたまらなく気持ちいい。

撮影=AZUSA TAKADA

「Yah!Yah!Yah!初めまして『EIGHT BALL FESTIVAL』! 寒くない? 一瞬でもみんなを温めてあげたいので、一緒に遊んでください。So,Excited~♪」とくれば、もちろん「SO EXCITED!」。機材のハプニングがありつつもさらりと軌道修正させ、次曲「CAN’T ESCAPE THE CHOCOLATE SYRUP」でさらに加速! ベース、ギターのサポートメンバーも2人に負けじと、さらなる高まりを生み出していく。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「明日も明後日も元気で過ごして。元気でいれば、良い気分でまた会えるはず」と、ステージ後半は「head-scissors」「Pivot」で“これぞシャカラビ!”なスカもメロコアも混ぜ込んだ、美味しいとこどりな楽曲で観客の心をひきつけた。

撮影=AZUSA TAKADA

取材・文=黒田奈保子

Conton Candy【STRIPED STAGE】12:55〜

撮影=センイチ

「カッコいいバンドからバトンをもらったんで、最後まで頑張ります!」と言う紬衣(Vo.Gt)の宣誓を皮切りに、STRIPED STAGEに吸い込まれていく人・人・人! 「102号室」からいきなりのフルスロットルで、Conton Candyの時間が始まる。「ロングスカートは靡いて」では高速クラップが自然発生し、「歌える!?」(紬衣)との問いにすぐさま応えるオーディエンスとのあうんの呼吸にはほれぼれするほどだ。楓華(Ba.Cho)が跳ねながらリズムを刻んだ「リップシンク」で、すっかりこの場はConton Candyのホームと化した。

撮影=センイチ

「岡山でこういうイベントへの出演は初めてでうれしいです! イエー!とか声出ししてみます? (大きなレスポンスを受け)ヤバい、東京ドームか!」(紬衣)

「前日入りして、夜中の3時までメンバーと部屋飲みしてました(笑)、仲良すぎて修学旅行みたい。ヴァイブス高まってます!」(楓華)

そう等身大の表情をのぞかせるも、エイトボールへ立つ覚悟をにじませる3人。「誰に何と言われようと、いい音楽は生き続けると思う。音楽と言葉は色あせないと思う。それを全力で伝えられるように歌って帰ります!」(紬衣)と続けた「普通」のインパクトたるや!

撮影=センイチ

紬衣の歌声は、どこまでも真っすぐに聴く者の心をとらえて離さない。彩楓(Dr.Cho)もパッション弾けるプレイで、ときめきあふれる「ファジーネーブル」に続いて、全てを出し尽くすように「好きなものは手のひらの中」で走り抜けたConton Candy。「またライブハウスで会えればと思っています!」(紬衣)とどこまでもライブバンドとしての姿勢を示し、さらなる飛躍を予感させるひとときとなった。

撮影=センイチ

取材・文=後藤愛

imase【SOLID STAGE】13:35~

撮影=aoi / アオイ

バンドメンバーが奏でる軽快なサウンドをバックに、「初めまして岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』、素敵な一日にしましょう!」と華麗にSOLID STAGEに現れたimase。1曲目の「ユートピア」から「最高の景色をありがとう!」と感謝するほどのクラップを巻き起こし、続く「Nagisa」でも「飛び跳ねろ岡山!」とステージ上で躍動してみせる。

撮影=aoi / アオイ

「今回が初『EIGHT BALL FESTIVAL』、ライブも岡山は初めてなんです」と切り出したMCでは、前日入りした岡山で今年初の桜を見たこと、アイスのピノを買ったらレアな星型が入っていたことにも触れ、「今日はいいライブになりそう!」と確信したと人懐っこく語ったimase。その後の「EGOIST」や「FRIENDS!!!」でもゴージャスで華やかな音像であっという間に見る者をロックオンしてしまう。

「最高過ぎますね、むちゃくちゃ楽しい! 今日はみんなとライブができて、岡山に来て良かった」と充実した表情を浮かべ、「まだまだ踊り足りないですよね? 騒ごうぜ岡山!」と、自らの名を知らしめたキラーチューン「NIGHT DANCER」に、ダメ押しの「Happy Order?」と続けて、ライブは終了。そのエンターテイナーとしての確かな資質と飾らない人柄に魅了された人も多かったことだろう。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=奥“ボウイ”昌史

SIX LOUNGE【CUE STAGE】14:15〜

撮影=日吉”JP”純平

1曲目「カナリア」の歌い出しから、開放感ある野外ステージの空気をぐっと掌握した彼ら。ヤマグチユウモリ(Gt.Vo)の少し気だるげで、でも艶のある歌声が野外ステージに気持ちよく響く。ナガマツシンタロウ(Dr.Cho)が生み出す、観る者の心の奥にある芯を的確に当てるビートは気持ちがいいし、イワオリク(Ba.Cho)の踊るようなベースラインも、とにかく今日もすべてがご機嫌で最高だ。

撮影=日吉”JP”純平

渋さのなかに色香を加味した歌声で歌う「言葉にせずとも」では、3人が打ち出す音に酔いしれるようにステージに視線を送る人の多さに驚かされたし、「リカ」のギターリフを聴くだけで恍惚とした表情を見せる人の姿もよく見える。名曲やアンセムだけに盛り上がるんじゃなく、SIX LOUNGEが打ち鳴らす楽曲それぞれに喜怒哀楽、いろんな思いを抱いている人が多いということ。フロム大分、土着的なライブハウスバンドとして着実に力を高めてきた彼らだからこそ生み出した景色だろう。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

ど真ん中のロックンロールサウンドの中にも凛とした世界観を持つ「My Way」、ゴリゴリと硬派なサウンドで盛り立てる「ナイトタイマー」と、着実に熱を高めていく。MCで綴る言葉よりも、音でバンドの存在感、強さを証明せんと、次から次に楽曲を投下していく3人。ラストはいっぱいの愛を込めて「メリールー」を。「来年はでっかいメインステージでやらせてください!」。ヤマグチが叫んだ願いの通り、来年はぜひ!

撮影=日吉”JP”純平

取材・文=黒田奈保子

SAKANAMON【STRIPED STAGE】14:20〜

撮影=AZUSA TAKADA

肩肘張らないリラクシンなムードと、特大のポップネスでエイトボールを揺らしたのはSAKANAMONの3人だ。明朗なアンサンブルでワクワク度を一気にブチ上げた「光の中へ」から始まり、言葉遊びも楽しい「幼気な少女」へとシームレスに突入。藤森元生(Vo.Gt)の朴訥とした歌声とギターリフ、STRIPED STAGEにいる全員で声を合わせる合いの手に、序盤からSAKANAMONのライブでしかチャージできない幸福を惜しげもなくもたらしていく。

撮影=AZUSA TAKADA

「本日はお日柄もよく、ここまでよくぞたどり着きました。みんなに拍手! 母方の実家が岡山・井原市でして、そちらの病院で産声を上げました。親戚が映画『サマーウォーズ』くらいたくさんいます(笑)」(藤森)

知られざるレペゼン岡山なエピソードを交えながら、続いてはハートウォーミングな最新曲「voices」を。木村浩大(Dr)のエナジーみなぎるリズムが溶け合い客席も横揺れで音をかみしめるなか、一転してソリッドな音像とシニカルなリリックでの「ただそれだけ」で、楽曲のレンジの広さをこれでもかと見せつけていく。イントロから歓声が起こった「ミュージックプランクトン」では森野光晴(Ba)が舞台の端から端まで駆け、くまなくあおるさまにこちらもアガりっぱなしだ。

撮影=AZUSA TAKADA

「今日はいろんなバンドが出ていて、朝のビュッフェみたいな。どれを食べようかな、アレにしようかなって(笑)。素敵なフェスをお持ちでございますね。うらやましいです、岡山! そこに我々も混ぜていただいて……」(藤森)

「しば漬けみたいな」(森野)

「お口直しにぜひ!」(藤森)

ユル〜いムードにすっかりクセになったところで、抒情的な「箱人間」でシメた彼ら。老若男女誰もが童心に返る!?今でも初期衝動たっぷりのSAKANAMONに、またこの地で会いたい!

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

取材・文=後藤愛

Omoinotake【SOLID STAGE】15:00~                       

撮影=センイチ

サックスとパーカッションを加えた編成で、ハイクオリティなポップスを多数聴かせてくれたのが『EIGHT BALL FESTIVAL』初出演となるOmoinotakeだ。初っぱなの「アイオライト」からしなやかな歌声をSOLID STAGEに響かせ、「EVERBLUE」でもドラマチックな旋律と極彩色の照明でショーアップされた上質なパフォーマンスを展開。3人のみで演奏した「P.S.」でも同期も巧みに駆使したスリーピースとは思えないサウンドスケープで圧倒し、藤井怜央(Vo.Key)がハンドマイクで歌唱する見せ場も。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「こんなにたくさんの人に見てもらえると思ってませんでした、本当にありがとう! Omoinotakeは島根県出身の3人組ですので、今日は中国地方のヴァイブスで最高の思い出を作っていきましょう」(藤井、以下同)とあいさつ後は、「幸せ」や「蕾」、「ラストノート」とアニメやドラマのタイアップ曲を連発。その極めつけと言えるのが、「今からやる曲で僕たちのことを知ってくれた人も多いと思います。たくさんの人に出会うことができたこの曲を、初めてのエイトボールでもかき鳴らしていきたいと思います」との言葉通り、昨年大ヒットし彼らを最終的に『NHK紅白歌合戦』にまで導いた「幾億光年」だ。数え切れない手が挙がった光景に笑みを浮かべ、最後は「一緒に歌いましょう!」と皆でシンガロングした「トニカ」で、幸福感いっぱいのラストシーンを生み出した。

撮影=センイチ

取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=センイチ


>>つづきは次のページ

  • イープラス
  • Saucy Dog
  • 岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』が「みんなの居場所になってほしい」ーーSaucy Dog、マカロニえんぴつ、Awichらがバトンを繋いだ2日目・全組レポート(写真83点)