EXILE、きゃりーぱみゅぱみゅ、AKB48、氷川きよしら全22組が集結『美空ひばり生誕80周年チャリティーコンサート』レポート
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AKBグループ
美空ひばり生誕80周年記念 大丈夫よ、日本!ふたたび 熊本地震・東日本大震災復興支援チャリティーコンサート 2017.04.05 東京ドーム
桜満開の4月5日。国民的歌手、故・美空ひばり(享年52)の生誕80周年を記念したコンサート『美空ひばり生誕80周年記念 大丈夫よ、日本!ふたたび 熊本地震・東日本大震災復興支援チャリティーコンサート』が、東京ドームで開催された。
美空ひばりと生前親交のあった五木ひろしをはじめ、E-girls、AKBグループメンバー32名、EXILE SHOKICHI、華原朋美、きゃりーぱみゅぱみゅ、Crystal Kay、ゴスペラーズ、坂本冬美、佐々木秀実、さだまさし、GENERATIONS from EXILE TRIBE、清水翔太、JUJU、天童よしみ、夏川りみ、氷川きよし、堀内孝雄、三山ひろし、May J.、UNIONE、Little Glee Monster(五十音順)といった豪華アーティスト22組が集結。満員の3万人の観客を前に、美空ひばりの楽曲29曲のカバーと、それぞれのアーティストのオリジナル楽曲22曲、計51曲を披露した。
幼い頃からチャリティー活動に熱心だった美空ひばりに触発された今回のコンサートは、2016年4月14日に発生した熊本地震、2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興支援チャリティーでもある。この日は東北から1500人、熊本から50人の、計1550人の被災者の方が招かれており、ドーム入り口には募金箱が設置され、赤十字社を通して寄付される。
第一部は「不死鳥」美空ひばりの生と死と再生を歌うトリビュート
東京ドームのこけら落としは1988年4月11日。そしてその日は美空ひばりが病床に伏し長期のブランクから復活した“歌謡界の伝説”と謳われる『不死鳥コンサート』を行った日でもある。舞台はあの日そのままに、中央に花道が用意され、3万人の観客が取り囲んでいる。
彼女は、1937年5月29日に横浜に生を受け、12歳の頃より歌手として活動している。第一部はその軌跡をたどるような楽曲の数々が届けられた。子役から大人の女優へと転身(生涯で179本の映画に出演)した彼女は、亡くなるその最後まで“歌手”を続けていた稀有な歌い手である。コンサート会場に女性トイレを設置する運動のほか、海外での公演などその活度は多岐にわたる。日本の歌謡界を作り上げた先駆者の一人だと改めて認識させられる。
コンサートは、司会の徳光和夫による開演宣言の後、ひばりの「東京キッド」の歌唱映像とシンクロするきゃりーぱみゅぱみゅの可愛いダンスで幕開け。その後、ひばりの幼少期のエピソードを映像で振り返ると、AKBグループが「悲しき口笛」「越後獅子の唄」「あの丘越えて」と、メドレーで歌い継いでいく。AKBを代表して、横山結衣が「このようなステージに立たせていただいたこと、本当に光栄に思っています。そして皆様がサイリウムを一緒に振ってくださって、応援してくださったのが本当に嬉しかったです」と語った。
きゃりーぱみゅぱみゅ
作曲家の故・船村徹(享年84)による楽曲である「哀愁波止場」をMay J.が、「ひばりの佐渡情話」を坂本冬美が歌うと、奇遇にも船村氏の四十九日に捧ぐことにもなった。
ジャズにも造形が深かった美空ひばりを代表してCrystal Kayが、デューク・エリントンの代表曲「A列車で行こう」を歌う。スキャットの部分ではスクリーンの美空ひばりとデュエットし、その迫力に会場は大きな拍手を送っていた。「ひばりさんのこの曲を聴いた時、『アメリカのシンガーなのかな』と思うぐらい、素敵なスキャットで最高でした」と語った。
CrystalKay
さらに、さだまさしが名ギタリスト荘村清司のギター一本で熱唱した「悲しい酒」では大きな歓声が起こった。ゴスペラーズはひばりの代表曲「真赤な太陽」をボイスパーカッションでアレンジした曲で魅せる。第一部では彼らがひときわひばりの曲をリアレンジし、現代に蘇らせていたように見えた。それでも美空ひばりの曲の普遍性が失われていないところが素晴らしい。誰が歌っても、どんな世代が歌っても“美空ひばりの歌”になるように思える。
ゴスペラーズ
東京ドームのこけら落とし公演となった『不死鳥コンサート』の幕開けを飾った曲「終りなき旅」は、EXILE SHOKICHIが熱唱し、歌唱後には「本当に身にあまる光栄な思いでした」とコメント。『不死鳥』公演で、ひばりが渾身の力で最後に歌いきった「人生一路」で、氷川きよしが会場を盛り上げる。最後は、ひばりに「彼が女性でなくて良かった」と言わしめた、五木ひろしが日本音楽史上もっとも歌うのが難しい「みだれ髪」でステージに立ち、「ひばりさんへの色んな思いが込み上げてきました」と感慨深げに語った。そしてカバーステージのラストは、出演者全員での「川の流れのように」で締めくくった。美空ひばりの生と死、そして再生を描いた第一部はこうして幕を閉じた。
美空ひばりの魂は死なない。魂を受け継ぐ22組がオリジナル曲を熱唱。
第二部は、出演アーティストが復興への願いを込めたオリジナル曲を中心に展開。
平均年齢18歳の注目の女性アカペラグループLittle Glee Monsterが「あとひとつ~何度でも~風が吹いている~タマシイレボリューション~ファイト~たしかなこと」を美しいハーモニーでメドレーを披露すれば、AKBグループは「ヘビーローテーション~365日の紙飛行機~恋するフォーチュンクッキー」と代表曲でたたみかける。
彼女たちが花道を走れば、これらの曲は「川の流れのように」を作詞した秋元康が作詞とプロデュースしていることを思い出して、美空ひばりの魂が脈々と受け継がれていることがわかる。
きゃりーぱみゅぱみゅが「良すた」でダンサーたちと明日に向けて頑張ろうという応援歌を歌う。彼女のプロデューサーでもある中田ヤスタカもおそらく美空ひばりへのリスペクトがあるのだろうと感じさせる感動的な曲。
続いてMay J.の『アナと雪の女王』で話題になった「LET IT GO」。若手人気アーティストの清水翔太が「HOME」を歌えば、今話題の男性コーラスグループUNIONEが「世界の真ん中」で答える。人気女性アイドルグループE-girlsがアップテンポな「Anniversary!!」で花道を走りながら会場にハンドクラッピングを促すように歌い踊れば、会場のサイリウムが激しく振られる。
MayJ.with藤原道山
Crystal Kayがヒット曲「何度でも」、夏川りみがこれからも歌い継がれるだろう「涙そうそう」を情感込めて歌う。演歌だけではなくシャンソンも歌う実力派シンガー佐々木秀実が「夜明けのうた」を歌えば、GENERATIONS from EXILE TRIBEがアゲアゲEDM「AGEHA」で会場のテンションをマックスにしていく。それをなだめるようにJUJUがヒット曲「やさしさで溢れるように」をファルセットで歌えば会場はしっとりとした雰囲気に。
若手演歌のホープ三山ひろしが「お岩木山」、美空ひばりがつけていたと言う帯を巻いた着物姿の艶やかな坂本冬美がロック調の「夜桜お七」を。デビューしたての頃は、美空ひばりのカバーもしていたゴスペラーズが「永遠(とわ)に」を歌う。華原朋美はヒット曲「I’m proud」を、EXILE SHOKICHI「The One」で会場とシンガロングしていく様は鳥肌が立つようだった。
清水翔太
現代の吟遊詩人といってもいいかもしれない、さだまさしが7分に及ぶ大曲「風に立つライオン」をアコギ一本で披露すれば、氷川きよしの「きよしのズンドコ節」で往年のひばりファンから「キヨシ」コールが。
氷川きよし
自身のコンサートでも美空ひばりの曲はよくカバーすると天童よしみが「珍島物語」、堀内孝雄が「愛しき日々」で、サンキューを連呼して会場が大いに盛り上げる。そしてトリは五木ひろしの「契り」。
五木ひろし
最後に、全員で美空ひばりの代表曲のひとつである「愛燦燦」をドームに響かせて、花道を歩いていけば、彼らは美空ひばりと一緒に歩いているような気がしてしまう。彼女の熱い魂が、若い世代、そして、これからの世代、さらにはこれまでの世代にも受け継がれていることを認識させてくれる素晴らしいコンサート。彼女は今でも日本人の心に寄り添い続けてくれるのだろう。
オールスター
取材・文=竹下力