性の‟秘密”を抱える男女3人の奇妙な三角関係 『ヒメゴト~十九歳の制服~』
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Reader Storeのエキセントリック少年ボウイ・野本です。現在、週刊少年サンデーで連載中の『初恋ゾンビ』の著者・峰浪りょう先生の名を世に知らしめた名作『ヒメゴト~十九歳の制服~』。それぞれが人に言えない‟秘密”を抱える男女3人の大学生が繰り広げる、不思議なトライアングル・ラブストーリーをご紹介!
【CHARACTER/キャラクター】
本作の魅力を語るうえで欠かせないのが、3人のメインキャラクターたちの個性とそれぞれが抱える‟秘密”の性癖――。まずは、斬新かつ大胆な個性を持つ、魅力的な主要人物たちを紹介しよう。
◎1人目/‟女の子”になりたい男みたいな女の子
本作の主人公・由樹(ユキ)は、幼少期から男子グループの中で青春時代を過ごしてきた女の子。口調も格好も仕草も完全に‟男”そのもので、幼馴染の祥(あきら)がつけたあだ名は本名の読みを変えた「ヨシキ」という男みたいな名前――。成長するにつれて、徐々に‟自分らしさ”がわからなくなっていた彼女は、新しい環境を求めて遠方の大学に進学したのだが、祥がついてきたことで再び‟ヨシキ”の名を背負うことになってしまう。
そんなヨシキの‟秘め事”は、クローゼットの中に隠している高校時代の制服のスカートを履くこと。彼女が持つ唯一の女性らしい服を履くことで‟自分が女性”だと自覚しては、あふれ出る性的な欲求を1人で爆発させるのが日課になっている。
◎2人目/‟永遠の少女”でいることを渇望する女の子
2人目の主人公・未果子(ミカコ)は、幼い顔立ちに華奢な体、ロングの黒髪に清楚な洋服をまとった‟絵に描いたような美少女”。大学では純真無垢なお嬢様のように振る舞っているが、見た目からはまったく想像できない秘密を抱えている。
少女から女になることを拒絶したいミカコは、‟15歳”という年齢に病的なまでのこだわりを抱いている。自身が‟まだ少女でいられていること”を実感するために、地元の名門私立高校の黒いセーラー服に身を包んでは夜の街に繰り出し、‟15歳”と偽ってネットで知り合った男性に売春する日々。男の醜さを極端に毛嫌いし、男を侮辱することに快楽を感じている。
◎3人目/女よりもキレイな‟女装癖”のある男の子
3人目の主人公は、美麗な青年・佳人(カイト)。有名ファッション誌にもたびたび登場するカイトは大学に通う女子の憧れの的だが、彼にもまた人には言えない秘密がある。
女装癖のある彼の日課は、憧れの女性ミカコと同じ格好をして街に繰り出すこと。口調も女性のように変化するが、性の対象はあくまでも女性。彼にとっての女装は、自分を「女の子を映す鏡」にする行為で、自身の男性器は女の子と鏡をつなぐ「パイプ」のようなものだと考えている。男の姿で年上の彼女に貢がせては、ミカコの着ている高価な服を買い、ミカコになりきることに快楽を感じている。
【STORY/ストーリー】
三者三様の‟秘密”を抱える3人のキャラクターが複雑に絡み合う本作のストーリー。それぞれの思いや思惑が交錯し、時にはドキドキするような衝撃的な展開を歩み、時にはハラハラするような緊迫感に包まれる。
◎ヨシキ×カイト/男女による‟女友達”としての交友
女装したカイトにミカコと勘違いして声をかけたことで、ヨシキはカイトの性癖を知ってしまう。一方で、カイトは‟本当は普通の女の子のようになりたい”というヨシキの願望を知ることに。お互いの秘密を共有した2人は、男女でありながら‟女友達”として徐々に親しくなっていく。女性の姿の自分を受け入れてくれる唯一の友人を手に入れたことにカイトは喜ぶが、ヨシキはカイトに対して次第に恋愛感情を抱くようになり……。
◎ヨシキ×ミカコ/女同士の‟恋人”のような関係
売春相手が見せる‟男の醜さ”とは違い、純粋な少年のようにウブな姿を見せるヨシキに対してミカコは憧れを抱く。ヨシキの周囲の男性を排除しようとするミカコは、ヨシキの幼馴染の祥に大胆な罠を仕掛ける。そんなミカコの裏の顔を知らないヨシキは、徐々に「男の子」に対するように接してくるミカコに戸惑いながらも、彼女をカイトから遠ざけるために表面的にミカコの思いを受け入れる素振りをみせるが……。
◎カイト×ミカコ/裏の顔を知っても‟憧れの女性”
ひょんなことからヨシキと交際しているとミカコに勘違いされてしまったカイト。初めはミカコから遠ざけられて傷つくが、ヨシキに先駆けてミカコの本性を知ってしまう。売春を続けるミカコに一時は幻滅しそうになるものの、カイトはどうしてもミカコへの憧れを捨てきることができない。カイトの女装癖を知ったミカコは、徐々に彼に対して挑発的な態度をとるようになり、ヨシキからカイトを遠ざけようとするが……。
人に言えない‟秘密”を抱えた奇妙な三角関係が迎える結末とは――? 重たいテーマを扱った作品と思われがちだが、随所に思わず笑ってしまえるようなネタも仕込まれており、読後感が意外とあっさりしているのも本作の魅力。タイトルに含まれたキーアイテムの「制服」を彼らが脱ぎ捨てるとき、複雑な事情を抱える彼らならではの‟ハッピーエンド”が訪れる。マンガ誌に残る衝撃作をぜひお楽しみください!