神木隆之介=船木誠勝? 『3月のライオン』をプロレスに置き換えて考えてみた

2017.4.18
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©2017映画「3月のライオン」製作委員会

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映画『3月のライオン』は男にはハードルが高い。そんな声を周囲からよく聞く。

先日も、金沢カレーとアクション映画がなければ生きていけないらしい30代前半の男性に「羽海野チカの原作漫画と同じくらい面白いよ」とこの映画を薦めたら、「まあ……あれポスター見てもオレは対象外でしょ」なんて一言であっさり『キングコング: 髑髏島の巨神』の話題へと移ってしまった。違うんだよ、待ってくれ。映画『3月のライオン』は“熱いバトルムービー”だ。

将棋の対局はリング上の駆け引きそのもの。それどころか、劇中のキャラクターが醸し出す世界観は俺らが大好きなプロレスラー同士の人間模様を思い出させる。いや、はっきり言おう。主人公の桐山零とは、プロレスラーの船木誠勝なのである。えっ? いきなり「桐山=船木説」となんだか凄まじい始まり方になっているけど、まず前・後編と分かれる映画のあらすじを3分で振り返ってみよう。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

 

中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零(神木隆之介)は、東京の下町に一人で暮らしている。幼い頃に交通事故で家族を失い、父の友人である棋士の幸田柾近(豊川悦司)に引き取られたが、長女・香子(有村架純)との関係も悪化し家を出るしかなかったからだ。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

 

深い孤独を抱えてすがりつくように将棋を指し続けていたある日、零は近隣の町に住む川本あかり(倉科カナ)、ひなた(清原果耶)、モモ(新津ちせ)の3姉妹と出会い、彼女たちとのにぎやかな食卓に居場所を見出していく。温かな支えを胸に、闘いへと飛び込む零。それは、様々な人生を背負った棋士たちが、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける壮絶な闘いだった……。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

ところが、ある事件が川本家を襲い、さらに3姉妹を捨てた父親が現れ、耳を疑う要求を突き付ける。一方、幸田家も親子の対立から崩壊へと向かっていく。大切な人たちを守るため、強くなるしかない。新たな決意のもと最高峰を決める獅子王戦トーナメントに挑む零。トップには、将棋の神の子と恐れられる宗谷名人(加瀬亮)が待ち受けていた──。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

ここで、主人公で17歳のC級1組五段プロ棋士・桐山零(神木隆之介)を、15歳11カ月でプロレスデビューした船木誠勝と考えてみる。となると、激闘の合間に触れ合う川本3姉妹は、闘魂三銃士だ。不思議なことに、3姉妹の末っ子モモちゃんが橋本真也に見えてくるから不思議である。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

父親役で零に将棋を手ほどきする幸田柾近(豊川悦司)は、のちに藤原組で若手レスラーを呼び寄せる“関節の鬼”藤原喜明。そして、桐山とは同年代のライバルC級2組四段のプロ棋士・二海堂晴信(染谷将太)が船木の盟友・鈴木みのるだ。劇中、桐山と二海堂が切磋琢磨しながら理想の将棋道に邁進する姿は、まるでパンクラスを旗揚げした当時の船木と鈴木の純粋さを思い出させる。

二海堂晴信・四段(染谷将太) ©2017映画「3月のライオン」製作委員会

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

濃すぎる先輩棋士の面々は、桐山を負かし自宅の研究会に呼ぶA級八段の島田開(佐々木蔵之介)が、新生UWFの先輩レスラー高田延彦だろうか。そして恐ろしい存在感で周囲を圧倒する巨体のA級九段のプロ棋士・後藤正宗(伊藤英明)は、泣く子も黙る前田日明である。そう言われてみれば、神社で後藤が零に向かって放つパンチはドン・中矢・ニールセン戦の前田の一撃と似てなくもない。

島田開・八段(佐々木蔵之介) ©2017映画「3月のライオン」製作委員会

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

もちろん、ラスボスで史上初の7タイトル制覇を成し遂げた最強棋士・宗谷冬司(加瀬亮)はヒクソン・グレイシーで決まり。規格外の強さと超然とした振る舞いで対戦相手を恐怖に震え上がらせるキャラは、400戦無敗のヒクソンそのものだ。劇中で零が全身全霊で怪物王者・宗谷と対峙する瞬間は、入場時に日本刀を携えヒクソン戦に臨む船木の覚悟と重なって見えた。「俺には将棋しかねぇんだよ!」と感情を吐露する零の若さと熱さは、ヒクソンに敗北して一時引退した船木の、狂気寸前の情熱を彷彿とさせて涙なしには見れない。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

……と、ここまで読んで「コレ、いったい何のコラムなの?」と絶望している人もいるかもしれない。大丈夫、現代の新日本プロレスに当てはめても、例えば17歳のプロ棋士・桐山零は、15歳で単身メキシコに渡って16歳でプロデビューした現IWGPヘビー級王座のオカダ・カズチカという見立ても成立する。そして、劇中で桐山を負かし自宅の研究会に呼ぶ島田開は元CHAOSの先輩・中邑真輔である。

凄い。映画『3月のライオン』はまさに将棋の繊細さとプロレスと熱さを併せ持つ、プロレス好きのために作られた映画にすら思えてくる。言われてみれば、『3月のライオン』というタイトルは、新日本プロレスの伝統のライオンマークそのものだ。

3月のライオン』後編は“ヨンテンニーニー”、4月22日(土)全国ロードショー開始である。

作品情報
映画『3月のライオン』

監督:大友啓史
原作:羽海野チカ「3月のライオン」(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
脚本:岩下悠子 渡部亮平 大友啓史
出演:
神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶
佐々木蔵之介 加瀬 亮 伊勢谷友介
前田 吟 高橋一生 岩松 了 斉木しげる 中村倫也  尾上寛之  奥野瑛太 甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏
伊藤英明 / 豊川悦司
制作プロダクション:アスミック・エース、ROBOT
配給:東宝=アスミック・エース
 
【ストーリー】
中学生という異例の若さで将棋のプロとしてデビューし、東京の下町にひとりで暮らす17歳の棋士、桐山 零(きりやま れい)。彼は、幼い頃に両親と妹を交通事故で亡くし、孤独を抱え、来る日も来る日も、すがりつくように将棋を指し続けた。そんなある日、零は同じ下町に住む三姉妹・川本あかり、ひなた、モモと出会う。それは、将棋盤以外の“自分の居場所”との出会いでもあった…。激しい才能と激情がうごめく棋士たちの生きる将棋の世界と、陽だまりのような川本家の食卓。数々の対局とあたたかな人々との交流を通じ、零は棋士として、人として、ある覚悟を決めていく。

映画公式サイト 3lion-movie.com

​(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会