スターダンサーズバレエ団『ドラゴンクエスト』 衣装も美術もリニューアル、あの音楽とともにドラクエの世界へ!

2017.5.5
インタビュー
クラシック
舞台

スターダンサーズバレエ団「ドラゴンクエスト」 2014年公演 Takeshi Shioya(A.I Co.,Ltd.)


5月13日、14日、スターダンサーズバレエ団(SDB)『ドラゴンクエスト』の公演が行われる。あの国民的ゲームのバレエ化作品だ。このバレエが誕生したのは1995年。きっかけは音楽評論家の佐野光司氏とドラクエの作曲者すぎやまこういち氏から、SDBに声がかかったというものだ。苦労を重ね作りあげられたこのバレエは初演以来20回以上も上演され、今やSDBの人気レパートリーの一つとなっている。

そのSDB版『ドラゴンクエスト』が、今年衣装やセットなどをリニューアルし、新たに登場する。「今までのものとは全く違う雰囲気の舞台になる」そうだ。

リニューアルされる舞台イメージ

今回はその稽古場レポートと、2人の主演、白の勇者・加藤大和さんと黒の勇者・吉瀬智弘さんに話を聞いた。

■音楽で気持ちが高揚!生き生きとした世界が展開

お邪魔したSDBの稽古場では王宮のシーンのリハーサル中。一歩足を踏み入れた途端に聞き覚えのある音楽が耳に飛び込み、一気にこちらのテンションも上がってしまう。衣装を付けてはいないが、王宮の広間に人々が集まり華やかな祝宴が行われているのがわかる。

中央で踊るのは白の勇者と王女。そして場面ごとの通しが終わるたびに、この作品を振り付けた演出の鈴木稔さんの指導が入る。男性と女性が組む時のサポートのポジション、手を添える位置など、マイムの細かい部分までを修正しながら一つひとつの動きを確認していく。腕を上に上げる角度やスピードといった、ちょっとした動きひとつでシーンがぐっと引き締まるのがわかる。

「ドラゴンクエスト」リハーサル。振り付け家の鈴木稔氏(左)、白の勇者(中央)、王女(右) 撮影:西原朋未

次いで行われたのは1幕の酒場のシーン。まだ序盤なので白の勇者は「レベル12くらい」(加藤さん)。鞭を振って現れる女戦士に、コミカルな動きの丸い男は武器商人トルネコだ。衣装を着けていなくても音楽と動きでそれと判るのが実に面白い。

人気キャラクター、トルネコ(鴻巣明史さん)も登場 撮影:西原朋未

とそこへ乱入する黒の勇者とその一味。バトルシーンは勢いがありスピーディー。剣をふるう男性ダンサー達をはじめ、みな生き生きしていて、シリアスなシーンながらも楽しそうで雰囲気がいい。見ているこちらまで自然と笑みが湧いてきてしまうほどだ。これにさらに衣装やセットが加わったらどうなるのだろうという、期待感が膨らむ。

酒場に乱入する黒の勇者(吉瀬智弘さん)。貫禄たっぷりで大迫力! 撮影:西原朋未

■白と黒が交錯するバレエならではのドラマ

物語の中心となるのは白の勇者と黒の勇者。この2人の男性ダンサーを中心に王女、女戦士、伝説の勇者、魔王、賢者に武器商人、さらにはモンスターも登場して、舞台上で冒険が繰り広げられる。

今回白の勇者を踊るのは加藤大和さん。2016年冬の「くるみ割り人形」で初めて王子役を踊り、今作が2度目の主演となるフレッシュなダンサーだ。

対する黒の勇者は吉瀬智弘さん。SDBで数々の王子役や主演をこなしてきたトップダンサーのひとりで、前回の『ドラゴンクエスト』では白の勇者を踊った。

この2名に舞台への抱負や見どころを語ってもらった。

黒の勇者・吉瀬智弘さん(左)と白の勇者・加藤大和さん(右) 撮影:西原朋未

――まず「ドラゴンクエスト」について思うところを。

加藤 「ドラゴンクエスト」のバレエはSDB入団前に見ていたんです。僕はこのゲームが大好きなので。SDBに入った時、いつかドラクエに出られたらいいなと思っていました。僕的にはSDBといえばドラクエですし。まさか主役をやれるとは思っていなかったけど。

吉瀬 僕はゲームはやっていないんです。なんとなく知ってはいたのですが。ドラクエについてはむしろこのバレエ作品の印象の方が強いんです。というのも実は子供の時に初めて見た全幕バレエが、このドラクエだったんですよ。

――それは運命的な! ストーリーはバレエのオリジナルですね。ネタバレにならない程度に紹介を。

加藤 白の勇者目線でいうと、最初はレベルが低いんですが(笑)、旅で仲間と出会い戦い、経験を積んでレベルが上がり、強くなる……というか、精神的にも成長するんです。最初はレベル3くらい(笑)

吉瀬 黒の勇者の場合、小さい頃から魔王と一緒にいるという悪役の位置付けではあるのですが、王女との出会いを通して揺らぐんですね。さらに白の勇者との出会いや、自分の過去と対峙するところなどでドラマが生まれていく。本当に悪役かどうかは見る人によっていろいろ解釈できるかもしれません。

加藤 最初は敵という認識があるんですが、2人がそれぞれの過去を知ることで変わっていく。

■バトルも音楽も、初めて見る人でもシンプルに楽しめる

――そうしたなかで、とくに見どころは。

吉瀬 バトルシーンです。剣を持つバレエはあっても本気のバトルってあまりないと思うんですよ。だから男の子に見てほしいですね。僕はバレエを全然知らない状態で見て、すごく楽しかったので、きっと初めて見る人にも入りやすいと思います。考えず、シンプルに楽しめます。

加藤 あと物語の流れ、そして白の勇者と黒の勇者の変化ですね。レベルアップして徐々に変わっていくところとか。バトルシーンもやっていてすごく楽しいです。

――音楽も聞いたことのある曲が次々と出てきますね。

加藤 自分が踊っていない時に曲を聴いていると「あ、これはドラクエIVだ、Vだ」と思い、すごく盛り上がります。

吉瀬 僕はゲームはやっていませんが、曲は知っていた。プロローグが終わってオープニングの曲が終わった後、ロゴが映し出されるのですが、その時男子たちは「キター!」って感じで盛り上がっちゃう。女子はいつも通りですけど(笑)

加藤 あのロゴが出てくるところは、前回客席から見ていて鳥肌立ちました(笑) すごくワクワクする。

吉瀬 出る方も幕の後ろでザワザワしています。女子は普通ですけど(笑) しかも音楽はフルオーケストラだから生で聴くと気持ちがいいですよ。

――オーケストラでドラクエの音楽を聴く絶好の機会でもありますね。今回は衣装もセットも一新されると聞きました。

吉瀬 どんな感じになるか僕らもまだはっきりはわかりませんが、でも以前このバレエを見た方も全然違うものに見えるのではないかと思います。僕の場合は魔王と絡むのですが、その魔王の雰囲気も全然変わるというので、衣装が付くとまた勇者の気持ちにも変化が起きるんじゃないかと。そういう意味では僕らにとってもすごく楽しみですね。再演というよりは新作というつもりで当たっています。

新しい衣装のデザイン画

■演技力を磨き物語と向き合いレベルアップ

――この作品を踊ることで自分の糧にしたいことは。

吉瀬 悪役というのはあまりやらないので、その経験をステップアップに繋げたい。この作品は役者である部分が強いので、演者として得るものが大きいと思う。黒の勇者は魔王といる世界が普通であって、悪の世界とは思っていないのでは。だから最初は悪いなりの王子の歩き方だけれど、物語が進むにつれてだんだん変わっていくんだろうなと。そうしたストーリー展開をしっかり解釈して演じ、その経験をまた次の作品で生かしていければ。

加藤 物語にどう向き合うかが今の自分にとっての課題です。キャラクターが大事なので、演者としてどうあるべきかに取り組んでいます。物語の展開とともにだんだん強く見せていくようにしないとならない。最初は弱いから、弱いなりの見せ方――どういう振りをすればいいのか、動きをすればいいのかを考えている。そうして得たものを、僕も古典作品などにも生かしていきたいです。

――最後にお客様に一言お願いします。

加藤 みんなで作品をつくりあげているので、ぜひ見に来てください。

吉瀬 舞台を見るとき、あれこれつい考えてしまいがちですが、「ドラゴンクエスト」は素直に楽しい作品です。ちょっと日常から離れて違う世界に浸れるので、非日常を素直に楽しんでいただきたい。あと男の子にぜひ、見に来てほしいです。

――ありがとうございました。

スターダンサーズバレエ団「ドラゴンクエスト」 1999年公演 Takeshi Shioya(A.I Co.,Ltd.)

今回リニューアルのバレエ「ドラゴンクエスト」。過去に見た人も、まったく新しい世界が展開されるだろう。ゲームを知っている人も知らない人も、バレエ好きの人も初めて見る人にもきっと楽しめる舞台になるに違いない。フレッシュな白の勇者と貫禄抜群の黒の勇者。2人が繰り広げる冒険の世界に、ともにでかけようではないか!

公演情報
スターダンサーズバレエ団 「ドラゴンクエスト」

■日時:2017年5月13日(土)・14日(日)14:00 
※13:40から小山久美総監督によるプレトーク
■会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ (小田急線新百合ヶ丘駅南口より徒歩4分)
■出演:スターダンサーズバレエ団
・白の勇者:加藤大和
・黒の勇者:吉瀬智弘
・王女:渡辺恭子
・伝説の勇者:大野大輔
・魔王:福原大介
・聖母:角屋みづき
・賢者:東 秀昭
・戦士:西原友衣菜
・武器商人:鴻巣明史
■公式サイト:http://www.sdballet.com/