2017年のウィーン少年合唱団は「モーツァルト組」 時代を超え、世界の歌を歌う~来日記者会見レポート
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元気いっぱいのモーツァルト組! (C)青柳聡
オーストリアから「ウィーン少年合唱団」が来日中だ。さわやかな新緑の風に乗って「天使の歌声」の巡回公演が始まった。4月27日(木)には、都内でウィーン少年合唱団の記者会見が行われた。
今回日本に訪れたのは、モーツァルト組の25人。現在、合唱団には10~14歳の少年たちが約100人所属していて、ハイドン組、モーツァルト組、シューベルト組、ブルックナー組の4組に分かれて活動している。組名は、昔ここで歌っていた音楽家たちにちなんでいる。
1955年の初来日からすでに60年余になるが、合唱団団長のゲラルト・ヴィルト芸術監督は「今日私たちは騒がしい世の中を生きています。社会が激しい変貌を遂げるその中で、日本とオーストリアの芸術での架け橋となって、活動を続けられることをうれしく思います」
団長のゲラルト・ヴィルト芸術監督 (C)青柳聡
団員を指揮・指導するカペルマイスターのルイス・ディ・ゴドイは「このモーツァルト組はとても優秀です。練習熱心で集中力があり、プロフェッショナルな団員揃いです。組ごとの特徴は歌の音色や響きにあり、それは彼らの素晴らしい精神や個性の賜物で、教え込んだ発声やさまざまなテクニックと子供たちの個性がミックスされて、歌に表れる。それを聴いていただきたいです」
カペルマイスターのルイス・ディ・ゴドイ (C)青柳聡
合唱団の歴史は500年余と古く、起源は1498年にウィーンで創設の宮廷礼拝堂少年聖歌隊。その後、数多の戦争や王政崩壊などの歴史的荒波を乗り越え、民営化されて、現代は寮制の学校になっている。試験に合格した変声前の少年たちが、音楽はもとより勉強しながら、世界各地で公演している。各組とも演奏旅行は年に9~11週間におよぶ。
プログラムはAとBの2種ある。どちらも工夫を凝らしてあり、興味深い初披露曲も。「『Aプログラム』は、ウィーン少年合唱団の歴史を紹介する形になっています。ヨーロッパ音楽の原点といえる『グレゴリオ聖歌』から、ルネサンス、ロマン派の時代を経て今日まで歌い継いできた聖歌の数々。司祭で現代の作曲家、バルドウィン・スルツァーの『聖霊よ、来たりたまえ』や、ヴィルト芸術監督の『カルミナ・アウストリアカ』にも注目してほしいですね」とゴドイ。
初披露曲のひとつ「カルミナ・アウストリアカ」は、ドイツのカール・オルフが中世の詩歌集を元に作った「カルミナ・ブラーナ」にならい、ヴィルト監督がオーストリア・ドイツ圏から収集した詩やモチーフなどから書き上げた作品で、歌曲を抜粋して歌う。
続けて「『Bプログラム』は世界旅行がテーマです。音楽による世界旅行を楽しんでもらいたい。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカをはじめ、私の故郷・ブラジルは、先住民のクラホ族に伝わる音楽『クラホ族の3つの歌』、団員にセルビア出身者がいますが、セルビアの民謡『ニシュカ・バニャ』も歌います。そしてA、Bどちらにも日本の民謡や愛唱歌を入れました。いつの時代も人の心に届くものだと思います」
Aには北海道民謡「ソーラン節」や岡野貞一作曲の「ふるさと」、Bには東日本大震災復興ソング「花は咲く」、79年の国際児童年協賛歌でゴダイゴが歌ってヒットした「ビューティフル・ネーム」が盛り込まれている。ちなみに、団員にお気に入りの曲を尋ねると「カルミナ・アウストリアカ」「ニシュカ・バニャ」「ビューティフル・ネーム」が挙がった。
近年、国外にも門戸が開かれ、現在世界9カ国の少年が所属している。ゴドイは「どんな曲も、練習することそのものは難しくないですが、解釈には時間が必要。時間をかけて、自分たちなりの解釈をして歌を届けています。例えばセルビア出身の団員とセルビア民謡について意見を交わしたり、日本人もスタッフと団員合わせて2人いて、話していると日本の歌の解釈に通じることがいろいろ出てきます」
少年たちの寮生活は規則正しいものだが、充実しているようだ。各自の呼び名もあって、マヌエル(12)は「僕はスポーツが好きで、みんなで卓球やサッカーを楽しんだり、プールで水泳もします」、フェリックス(13)も「家でごろごろしてるより、寮の方が楽しいです。いつでも刺激し合える友達といろんなアクティビティを楽しんでいます」。日本人のシュンタロウ(11)も「寝る前に友達と話しをしたり遊んだりするのが楽しいです」。寮生活2年になるが、特に大変なことやイヤことはなく「演奏先のホテルより、寮の方がよく眠れます(笑)」。
スポーツが大好きなマヌエル (C)青柳聡
フェリックス (C)青柳聡
「寮生活は楽しい」というシュンタロウ (C)青柳聡
フーベルト・ハイッス駐日オーストリア大使は「ウィーン少年合唱団はオーストリアを代表する民間大使です。今年、ユネスコ国内委員会によって、国の無形文化遺産に登録されました。年間約300日のコンサートで、約50万人の聴衆に歌声を披露しています。いつも歓迎してくれる日本の方々に、今年も彼らの素晴らしい音楽を楽しんでいただきたい」
フーベルト・ハイッス駐日オーストリア大使 (C)青柳聡
記者会見では「美しく青きドナウ」と「ビューティフル・ネーム」を、ゴドイのピアノ伴奏で合唱。「美しく青きドナウ」は優雅に美しく、「ビューティフル・ネーム」はタンバリンでリズムを取ったりして、先生も団員もみんなノリノリで歌っていた。
公演は6月18日まで予定。各地で「心洗われる歌声」を響かせる。
(C)青柳聡
取材・文=原納暢子
■共催:文京シビックホール(公益財団法人文京アカデミー)6/7公演
■後援:オーストリア大使館 / オーストリア政府観光局
■特別協賛:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
■協力:ユニバーサル ミュージック / ウィーン少年合唱団ファンクラブ
Aプログラム:ウィーン少年合唱団が歌い継ぐ“合唱名曲集”
Bプログラム:ウィーン少年合唱団とつなぐ“世界の旅”
■来日期間:4月25日(火)~6月19日(月)
■公演日程/会場
<東京公演日程>
5月03日(水・祝)14:00 東京芸術劇場コンサートホール Aプログラム
5月04日(木・祝)14:00 東京オペラシティ コンサートホール Bプログラム
6月07日(水)19:00 文京シビックホール 大ホール Aプログラム
6月16日(金)13:3 東京オペラシティ コンサートホール Bプログラム
6月17日(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール Aプログラム
6月18日(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール Bプログラム
<全国公演日程>
4月30日(日)14:00 常陸大宮市文化センター 大ホール Bプログラム
問合せ:常陸大宮市文化センター ロゼホール 0295-53-7200
5月5日(金・祝)15:00 軽井沢大賀ホール Bプログラム
問合せ:軽井沢大賀ホール 0267-42-0055 ※この公演のみ「Canon Presents」ではない。
5月06日(土)15:00 所沢市文化センター ミューズ アークホール Aプログラム
問合せ:ミューズ
5月09日(火)19:00 武蔵野市民文化会館大ホール Bプログラム
問合せ:武蔵野市民文化会館 0422-54-2011 ★
5月12日(金)19:00 アクロス福岡シンフォニーホール Bプログラム
問合せ:アクロス福岡
5月13日(土)15:00 倉敷市民会館 Aプログラム
問合せ:アルスくらしき
5月14日(日)17:00 愛知県芸術劇場コンサートホール Bプログラム
問合せ:テレビ愛知事業部 052-243-8600クラシック名古屋 052-678-5310 ★
5月16日(火)19:00 神戸文化ホール 大ホール Aプログラム
問合せ:神戸文化ホールプレイガイド 078-351-3349 ★
5月18日(木)19:00 国際障害者交流センター ビッグ・アイ 多目的ホール Bプログラム
問合せ:(公財)堺市文化振興財団 072-228-0440 ★
5月19日(金)19:00 とりぎん文化会館 梨花ホール Bプログラム
問合せ:日本海新聞事業課 0857-21-2885 ★
5月21日(日)14:00 札幌コンサートホール Kitara大ホール Bプログラム
問合せ:オフィス・ワン 011-612-8696 ★
5月26日(金)18:30 和歌山県民文化会館大ホール Bプログラム
問合せ:和歌山県民文化会館 073-436-1331 ★
5月27日(土)14:00 ザ・シンフォニーホール Aプログラム
問合せ:ABC
5月28日(日)14:00 ザ・シンフォニーホール Bプログラム
問合せ:ABC
6月1日(木)18:30 那須野が原ハーモニーホール Bプログラム
問合せ:那須野が原ハーモニーホール 0287-24-0880 ★
6月2日(金)18:30 鴻巣市文化センター(クレアこうのす) 大ホール Aプログラム
問合せ:鴻巣市文化センター(クレアこうのす) 048-540-0540 ★
6月3日(土)14:00 横浜みなとみらいホール Aプログラム
問合せ:神奈川芸術協会 045-453-5080 ★
6月4日(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール Bプログラム
問合せ:神奈川芸術協会 045-453-5080 ★
6月10日(土)14:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール Bプログラム
問合せ:かつしかシンフォニーヒルズ 03-5670-2233 ★