メロフロート 夢とやる気とアイディアを詰め込んだ、3人の過去と未来をたどるインタビュー
メロフロート
キミはメロフロートを聴いたか? 2ボーカル+1DJ、と言いつつライブでは3人が歌とラップとパフォーマンスで入り乱れる賑やかさで、路上からホールまで、精力的なライブ活動でじわじわと支持者を増やしているニューカマーだ。ライブは手作り、は手売り、届ける歌は等身大のジャパニーズポップス。夢とやる気とアイディアをポケットいっぱい詰め込んだ、3人の過去と未来をたどるSPICE初登場インタビュー。末永く、どうぞよろしく。
この大切な曲をきっかけに、少しでも恩返しできたら。恩じゃなくて音で“音返し”っていう、ちゃんと音楽で返せたらいいなと思ってます。
――メロフロートって、楽しい企画をいっぱいやってるでしょう。“下剋上ライブ”とか、“全都道府県で路上ライブ”とか。毎回面白いことを仕掛けてくるグループというイメージがあります。
KENT:ありがとうございます!
KAZUMA:今やってる“下剋上ライブ”も、出演者の中で、CDの売り上げ枚数で勝敗を決めるんですよ。
Yu-Ki:CDの中に応募用紙が入っていて、そこに書いてある数字を応募フォームに打ち込んで、それで一票になるんです。CDを買っただけじゃ一票にはならない。
――細かいなあ。もともとそういう企画を、進んで自分たちで考えるグループだった?
KENT:もともとそうですね。人前に立った時にどうやったら輝けるか?を毎日考えていたので、その中でこういう企画を考えて。
KAZUMA:路上ライブも、どうやって自分らをアピールしていくか?というところから始まったので。やっぱり楽なんですよ、企画があるほうが。路上で、ちっちゃいアンプにマイクをつなげて歌ってるだけじゃ、立ち止まってくれないから。
Yu-Ki:路上ライブの究極形として、47都道府県を路上ライブで回るというのをやってるんですけど。ただ回るだけじゃなくて、一つの県で3日以内にCDを100枚売るって目標があって、それが達成できたら次の県に行ける。下剋上もそうですけど、僕らが目標を明確にしてあげることで、応援してくれる方々が……“メロフローター”って呼んでるんですけど、一緒にそこに向かってくれるというのはありますね。
KENT:今も47都道府県を回っていて、残りあと3県になってるんですけど。回りだした頃は、ほんまに誰もいないところから始まって、その時は試行錯誤でしたね。ただ歌うだけじゃ立ち止まってくれないし、いきなり人前に立ちはだかって「聴いて!」って言ってもビビられますし(笑)。遠目から眼力を飛ばして「こっちやで!」ってやっても、怖がる人もいれば、楽しそうだって寄ってくる人もいたりして、いろんな経験を重ねて今があるので。今では、「次はそっちに行くみたいやで」って、次の県の友達に伝えてくれたりして。
――お客さんが? それはうれしい。
KENT:行ったことない県やから不安やなって思っても、行ってみたら「友達に聞いて来ました」ということも多くなったりとか。
Yu-Ki:目標が明確で、そこに対して僕らも本気でやってるんで、それを見てみんなも本気になってくれる。それがうれしいですね。
メロフロート(1st)2015年7月
――ちなみに路上ライブ、何かおもしろエピソードは。
KENT:いっぱいありますよ! 九州から始めたんですけど、ルールとして、売れたCDの代金で食費も交通費も宿泊費もまかなうんですよ。最初は順調だったんですけど、宮崎に行った時に野球のキャンプと重なってて、宿がとれない。ネットカフェも空いてない。しょうがないからカラオケボックスに行ったら、そこも空いてない。絶体絶命になって、最終手段が、3人で凍えながらの野宿です。
KAZUMA:冬場は、聴いてるほうも大変なんですよ。最近だと長野県で、気温が0度の中で歌いました。それでも聴いてくれはるし、CDも買ってくれはるので、1枚手に取ってもらえるだけで成功だと思いますね。
KENT:ホワイトボードに売れた枚数を書いていくんですけど、それを見て、友達を連れて買いに来てくれたり。ちょっとした町おこしみたいな。
KAZUMA:町おこしはヤバイな(笑)。
KENT:盛り上がるんですよ。
Yu-Ki:でも個人的な失敗もあって……ほかの県に行った時に、ちょっと耳につくことを言ったろと思って、「大阪が嫌いで、ここに来ました!」とか言ったんですよ。みんな笑って寄ってきてくれたんですけど、たまたまその映像がSNSで拡散されて。「この人大阪ナメてない?」とか、コメントがついちゃって。
――うわあ。プチ炎上だ。
Yu-Ki:でも、その映像を撮ってくれた男の子がいい子で、「ネタですから。大阪大好きですってちゃんと言ってましたよ」ってフォローを入れてくれて、結果オーライで終わったんですけど。あの時は、もう大阪に帰れないと思いました(笑)。
KAZUMA:でもSNSで拡散してくれるのは、すごくうれしいことなので。
Yu-Ki:その上で、よく言ってるんですけど、映像越しじゃ伝わらないものが絶対あるので、生で感じてほしいなと思いますね。今って、CDを買わんでも音楽を聴ける時代じゃないですか。そういう時代やけど、ここにある1枚は、自分たちがいろんな思いを詰め込んだ作品なので、今日の日付と、あなたの名前と、僕らのメッセージと、ぬくもりを添えて渡させてくださいって。そういうふうにしてます。
――残すはあと3県でしたっけ。
KENT:はい。静岡、和歌山、沖縄と。年内には回りたいなと思ってます。
KAZUMA:ほかに下剋上ライブと、全国ホールライブもやっているので。
Yu-Ki:なかなかないですよね、複数のツアーを並行していくのは。しかも面白いのは、全国ホールツアーはを800円でやってるんですよ。初めての人に来てもらいやすい環境を作ろうと思って、値段を下げたんですけど、それだとただホールでライブをやっているってなってしまうんで、完売させるようにして。それと、間に人を入れずに、僕らがステージの準備をしたり物販を運んだりして、人件費を削減する。事務所の方を含めて、ほんまに数人でやってます。ホールツアーはほんまにいいよな?
KAZUMA:めちゃくちゃいいです! もちろんですけど、800円の価値では済まないライブをしてると思いますんで。音もいいし、照明もがっつり入ってるし。
Yu-Ki:クオリティは3000円、4000円、それ以上の価値のあるものを出してるんで、これは価格破壊が起こるんちゃうかな?と。そのほうがお客さんにとっても良くない?って。今、僕らしかできないことをやってると思います。友達や家族を連れて、一度足を運んでもらいたいですね。
メロフロート(2nd)2015年12月
――メロフロートがどういう姿勢で活動しているのか、よくわかりましたよ。で、そんな3人がどんなふうに出会ったのかという話もしておこうかなと。もともとYu-KiくんとKENTくんが出会ったところから始まってるんでしたっけ。
KENT:そうです。高校卒業して、音楽をやりたいという思いを持って、僕は京都から、Yu-Kiは兵庫からスタートして、大阪のライブハウスで出会ったんです。KAZUMAとも、出会った時期は同じなんですけど。
KAZUMA:大阪の湊町VOLCANOというライブハウスで、僕は別のユニットを組んでいたんですけど、二人はソロでやってたんですよ。きっかけがあって二人がユニットでやり始めて、僕はずっと客席で見てました。“ええ声してんなー”って。
KENT:二人で1年くらいやったんですけど、19歳とかだったんで、バチバチやったんですよ、仲が。
Yu-Ki:仲はヤバかったですね。今もですけど(笑)。
KENT:おいおい!(笑) で、もう無理やなと思った時に、KAZUMAが……。
KAZUMA:ちょうど僕のグループが解散して一人になった時で、「一緒にやってみいひん?」って。試しにカバーをやってみたら、「ええ感じちゃう?」ということになって、3人でやりだしました。その時は僕、DJじゃなかったんですよ。ラップをやっていて、3人で歌おうかということで。あとからDJをやってみたいと思って、そこから2ボーカル+1DJスタイルになりました。
――ちなみに、2人は当時なんでバチバチだったの?
Yu-Ki:性格的な部分が全然ちゃうかったんですよ。今もそうなんですけど(笑)。
KENT:彼はほんまに几帳面で完璧主義なんです。
Yu-Ki:完璧というか、攻めの姿勢で。尖ったこともけっこう言うんですよ。けど彼は平和主義で、受け身なんですよ。攻めと受けの価値観の違いで、「こうちゃう?」「いやいや、それはやりすぎちゃう?」って。音楽のことでも、お互いにプライドがあって。今はうまいこと、お互いのいいところを知った上で回るようにはなってますね。もう5年やってるからね。
KENT:出会ってからは6年か。めっちゃ長いですよ。
メロフロート(3rd)2016年3月
――今は仲のいい3人。今のメロフロートは、どんな音楽をやってるという自覚がありますか。
KENT:わかりやすい言葉で、みんなの心に最短距離で届くような音楽です。
KAZUMA:ジャンルでくくったら、ポップスかなと思います。R&BやロックやHIP HOPやいろいろあると思うんですけど、ポップスは一番人の心に入りやすいと思うので。ジャパニーズポップスかなと思います。
Yu-Ki:ポップスの中でも、バンドっぽい曲をやったり、逆に音数を減らして、しっとりした曲もやったり。いろんなことをできるようになりたいと思ってます。
――今までのシングルは確かにそう。デビュー曲「夢のカケラ」はロックっぽくて、「未来」はミドルバラード、「ひとつだけ」はアッパーなダンスミュージックで、「LIFE GOES ON」はラテンビートっぽい。毎回変えてきてる。
KAZUMA:共通して言えるのは、どんなトラックでも、メロディラインがすんなり入ってくるところ。いろんなジャンルをやるけれども、メロディや歌詞がすんなり心に入ってくるのが、メロフロートの独特なところかなと思いますね。
KENT:はい。そうです。
――もともと、当時はどんなテーマで作った曲だった?
KENT:テーマというのは、今みたいに“夢”“恋愛”とかに絞ったわけじゃなくて、とりあえず書こうということで書いたのが一番最初で。
Yu-Ki:いや、俺はけっこうテーマを絞ってたけど。
KENT:あ、ほんま? こういうところですね、二人の性格の違いは(笑)。これを5年やってきてるんですけど。
――ふははは。漫才か!
Yu-Ki:初めて曲をもらって、「ミチシルベ」の歌詞を書こうってなったとき、KENTが何を勘違いしたのかわからんけど、<拳掲げて>とか、そういう歌詞を書いてきて。
KENT:おまえの背中を押すから、みたいな。
Yu-Ki:この曲で拳掲げるか?って(笑)。そんなこと、どこに出てくんねんって。
KENT:Yu-Kiは最初から恋愛をテーマで書いてたんですけど、僕は夢とか仲間とかそっち系で書いていて。書いたものを照らし合わせて、“うん、俺のじゃない、こっちや”ってなって(笑)。そこでテーマが合わさったというか。
Yu-Ki:もとからラブソングに仕上げようと思ってたんですけど、“君のことが好きや”とかじゃなくて、<2人の『ミチシルベ』>という言葉をサビに入れることは決めてあって。2人というのは恋愛でいう僕と君のことですけど、その当時で言うと僕とKENTが歩んでいくストーリーも含めようと思って<2人の『ミチシルベ』>って入れたんですよ。そこから展開させて、表向きは恋愛観の曲として作ったんですけど、その当時はもしかしたら、まとまりきってなかったのかもしれないです。なんとなしにラブソングだとわかるけど、ラブソングとして押し切るワードはなかったのかもしれないって、今回リメイクしてみて思いました。
メロフロート(4th)2016年8月
――ああ。なるほど。
Yu-Ki:もとの歌詞の8割は残ってますけどね。でもちょこっと変えるだけで、ぐっと世界観が広がった。サビの<サヨナラはもう置いていけばいい>というフレーズは、もともとなかった言葉で、これからはずっと一緒だからサヨナラはもういらないという意味なんですけど。「ミチシルベ」だから2人が歩んでいくストーリーをちゃんと描きたいと思って、結婚式や、カップルの記念日に使ってもらえる曲にしたくて、大切な人とのあの日を振り返りながら、これからを思ってもらえる曲にしようと思って書きました。
KAZUMA:最初の時は、僕は参加してないんで。今回のリメイクには僕もすごい思いが入ってます。
Yu-Ki:最初の「ミチシルベ」を書き換えるのに、抵抗は少しありましたけどね。でもその当時にしかない「ミチシルベ」があるんやったら、今しか出せん「ミチシルベ」があるんちゃうかと。そしたら思ったよりもいいものになって、今は完全に新しい「ミチシルベ」が好きやなって言えるものになりました。……これは余談なんですけど、4月19日(リリース日)は僕のおかんの誕生日だったんですよ。僕のおかん、「ミチシルベ」が一番好きって言ってたんで。縁なんですよ、ほんまに。
――おお。なんて素敵なプレゼント。
Yu-Ki:で、4月19日にリリースするって発表した時に、「ありがとう」って言われて。ああ、この曲好きやったもんなと思って、「うん、まあ、普通に出すだけやから」とか、そっけない感じで言ったら、「合わせてくれたん?」って。「え?」って返したら、「あ、いいわ」って。しばらく考えて思い出して、「あ、誕生日や」って。
――ふははは。忘れてたんかい!
Yu-Ki:それから「おかんの誕生日に出せることになって」ってみんなに言ってるんですけど(笑)。
KENT:後付けや(笑)。でもほんまに縁やな。一番好きな曲を誕生日に出せるなんて、ないことやから。すごいですよ。
――いいなあ。おかんとYu-Kiの「ミチシルベ」ですよ。
Yu-Ki:やっぱり僕ら、好きなことやってるじゃないですか。なかなか恩返しができてないと思うんですね。だからこの大切な曲をきっかけに、少しでも恩返しできたらなと。恩じゃなくて音で“音返し”って言ってるんですけど、ちゃんと音楽で返せたらいいなと思ってます。
――いい話やなあ。
Yu-Ki:そういう意味で、カップリング曲の「まだガキだけど」をこのシングルに入れれたのは、僕の中ではめちゃうれしいことで。ご当地ソングというほどではないですけど、地元の風景が入ってるんですよ。僕やったら地元の駅とか、KENTだったら鴨川とか。
メロフロート 2017年4月
――阪神電車、たこ焼き屋、駄菓子屋のおばちゃんとか出てきますね。
Yu-Ki:今の僕らの活動の中で、あんまり地元のことを入れすぎても、わからん人が多いだろうなと思ったんですけど、いくつか入れさせてもらいました。みんなも絶対、帰れる場所ってあると思うんですね。「ただいま」「おかえり」と言ってもらえる場所があるから、みんな頑張れると思うし、それぞれの地元を思い浮かべて聴いてもらえたらうれしいです。僕らも、胸を張って地元に帰るようになりたいという思いを込めて歌ってます。
――未来には、メロフロートとして、大きい夢があるんでしょう? 地元で大きなライブをやるという。
Yu-Ki:はい。3人とも野球経験者なので、甲子園球場でいつかライブしたいという夢があります。
KAZUMA:そして全国の、でっかいところでもやりたいですね。
Yu-Ki:でもね、俺は最近一周回った気がして……原点の曲を出したからだと思うんですけど、大小関係ないなと思ってきてるんですよ。規模も大事ですけど、歌えることがほんまに幸せやなって、最近はなってきてますね。この「ミチシルベ」をいかにいろんな人たちに届けれるかが今一番、自分の中では大事やなと思ってます。これをちゃんとステップアップの1枚にしないと、この曲を初めて作って歌ってきた5年間が報われへんような気がしていて。まずはしっかりと、「ミチシルベ」を手に取ってもらいたいです。
KENT:その結果として、いつか大きいところでもできるようになると思うので。僕らの一番の売りはライブなんで、みんなに直接届くメッセージを、ライブに来て受け取ってもらいたいなと思います。確実に笑顔になってもらえる自信はあるので、どんなに嫌なことがあっても落ち込んでても、僕らのライブに来れば必ず笑顔を取り戻せるライブになると思うので。ぜひライブに来てほしいです。
取材・文=宮本英夫
メロフロート
AICL-3310 ¥1,000(tax in)
01. ミチシルベ
02. まだガキだけど
03. ミチシルベ (inst.)
04. まだガキだけど (inst.)
リリース記念イベント『まだガキだけど・・・メロフローターと歩むミチシルベ』
5/20 14:00~フタバ図書 Alti 福山本店 2F イベントスペース
5/20 19:00~タワーレコード広島店 イベントスペース
5/26 18:30~ミント神戸 2Fデッキ 特設ステージ
6/3 13:00~ / 16:00~玉光堂パセオ店
6/11 13:00~タワーレコード町田店
6/17 12:00~パークプレイス大分
6/17 19:00~HMV&BOOKS HAKATA
◆その他イベント情報はオフィシャルサイトへ http://meloflo.jp/
5/25 <定期ライブ> 湊町VOLCANO
5/28 <下剋上LIVE TOUR【大阪FINAL公演】> JOULE
6/10 <全国ホールツアー第7弾> 北九州男女共同参画センター・ムーブ
◆その他ライブ情報はオフィシャルサイトへ http://meloflo.jp/