どこまでも真っ直ぐに、誠実に SUPER BEAVER、ロックの聖地・日比谷野音に立つ
SUPER BEAVER
都会のラクダSP〜ラクダビルディング〜 2017.4.30 日比谷野外大音楽堂
「2017年4月30日。天気、晴れ。会場、あなたのおかげで満員御礼。聖地、日比谷野外音楽堂に参上、よろしくお願します!」。
渋谷龍太(Vo)が噛みしめるような口調で宣言をすると、SUPER BEAVERのバンド史に残るであろう、記念碑的な野音ライブが幕を開けた。1曲目の「美しい日」からビリビリと空気を震わせる強靭なビートにのせて、巻き起こるハンドクラップ。天井のない野音のステージから、解放感に満ちた音が響き渡ると、“ビーバーの野音”を実感して、それだけで胸が熱くなる。藤原”28才”広明(Dr)がドラムスティックを高く突き上げて雪崩れ込んだ「歓びの明日に」。柳沢亮太(Gt)のギターも、上杉研太(Ba)のベースも、バンドの意思を伝えるためにひとつの塊になる。過去多くの伝説を生み日本のロックの歴史を見守ってきた、無骨なコンクリートの壁面で囲まれたステージに、ビーバーが立つ様はとてもよく似合っていた。
感情を剥き出しにして、ソリッドに駆け抜けるヘヴィなロックサウンド。その音楽を通して、彼らが何よりも大事するのは歌詞であり、メッセージだ。自分の人生を他人任せにするなと諭す「じぶんまかせ」、自分らしさの在り処を問いかける「らしさ」。歌の意味を補強するように、ボーカル渋谷が幾重にも言葉を投げかけるライブは、それを全力で受け止め、理解しようとするオーディエンスを巻き込みながら進んでいく。ジャジーなサウンドに、渋谷の危うい色気が滲んだボーカルが揺れた「赤を塗って」、ハイハットが刻むリズムにゆっくりと4人のバンドサンウドが折り重なった「センチメンタル」。激しさや勢いだけでない、ビーバーの多彩な音楽に身を委ねていると、少しずつ野音の陽は暮れていく。
中盤はメンバーもお客さんもイスに腰をおろして、ゆったりとした時間が流れるアコースティックコーナーが用意されていた。4月とはいえ、夕方には冷たい風が吹く野音を気遣って、渋谷が「風邪ひいたら、明日から戦えねえぞ」と、さりげなく上着を着るように促す言葉が彼らしかった。藤原がカホンを、上杉がアコースティックベースを弾いて届けた「ことば」。柳沢が弾くギターに寄り添うようにメロディをのせた「生活」。私たちの人生に何が大切で、何が必要でないのかを問いかけるその歌は、シンプルなアコースティックの演奏でこそ、生々しさを増す。その歌が響くのは、決して上手さや表現力だけではない。失敗もして、そのぶん喜びも知って、泥臭く懸命に生きてきた人間が生む説得力と訴求力があった。ふと気がつけば、あたりは薄暗くなり、夜空にはくっきりと三日月が浮かんでいた。
MCでは「俺がバンドをはじめたのは、なりゆきだったけど……」と、結成当時のことからメジャーデビュー、インディーズでの再出発と決して平坦ではなかったバンドの過去を振り返った渋谷は、いま音楽を鳴らす理由を、こう続けた。「心をひとつにするためじゃない。明日からどう戦うのか。どう戦ったうえで、また会えるのか」。そのために鳴らすのだ、と言う。そのあとに披露した「人として」は、丁寧に言葉を紡いだSUPER BEAVERの意志表示の歌だった。迷い、悩んで、いくつもの失敗を重ねて、逃げたくなって、後悔をして、また迷って、虚しさを感じて、それでも、“カッコ悪い人になりたくない”と、“かっこよく生きていたいじゃないか”と投げかける歌。これがビーバーの真価だと思った。言うなれば、ビーバーは相棒のようなバンドだ。ときにライバルのように一緒に闘ってくれるバンド。彼らが泥まみれになって闘う姿を見て、わたしもがんばろうと、単純だけど思う。だから、SUPER BEAVERの元には人が集まる。「そりゃあ迷うしね、俺だって怖いし。それでも嘘をついて、あなたの目を真っすぐに見られなくなったら終わりだと思います。真っすぐに、誠実に、これからも」。曲が終わり、静かに語った渋谷が言葉は、どこまでも誠実だった。
クライマックスはステージの光が激しく明滅して、サイレンのようなギターが鳴り響いた「27」。その年齢ゆえの感慨を綴ったナンバーのあと、インディーズでの再出発のタイミングで書かれた「361°」へ。人生のその一瞬でしかない歌を、野音で歌うことにも大きな意味があった。「次の曲を夜の東京で歌いたいと思ってました」との言葉に大きな喝采が湧いた「東京流星群」では、お客さんとメンバー全員とが吠えるような大合唱を巻き起こすと、「素晴らしい世界」や「秘密」に辿り着くころ、野音は晴れやかなムードに包まれていた。ラストナンバーは金テープが舞うなかで届けた「愛する」。特定の誰かではなく、自分を取り巻くすべての人を“愛する”という歌は、ひいては自分自身を“愛する”ための歌でもある。この日の野音を通じて、もっと言うと、これまでSUPER BEAVERが言葉を尽くして、汗を流して、声を嗄らして伝えてきたのは、たったそれだけのことのようにも思う。
アンコールでは、お客さんへの感謝の気持ちをストレートに伝えて、これからも一緒に生きていこうと歌う「ありがとう」と「全部」の2曲で、ビーバーはおよそ2時間半のライブを締めくくった。「あなたの前で歌うのが好きだから音楽をやっている。我々にとって理由はそれだけです」と、渋谷は言っていた。次に彼らに会うときには、少しだけかっこいい自分になって会えたらと思う。そのときまで、きっと彼らは大きな懐で待っていてくれる。
取材・文=秦理絵
価格:未定
品番:未定
発売元:[NOiD] / murffin discs
販売元:Japan Music System
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