マカヴォイの目力に戦慄せよ!人間の可能性を感じさせるスリラー『スプリット』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第二十六回
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(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
M.ナイト・シャマラン監督といえば、『シックス・センス』(99)で一躍名を馳せた監督だが、その後はずっとスランプだとも言われてきた。私はその間に撮られた作品も好きなのだが、一昨年、「シャマラン復活」と謳われた新作『ヴィジット』(15)で、背筋がぞぞーっとする、怖いじいちゃん&ばあちゃんを見られて大満足だった! しかし今月、「シャマラン“完全”復活」と銘打たれた作品が公開される。完全というからには、『ヴィジット』より面白いに違いない! と、私も公開を待ちに待った作品、それが今回紹介する『スプリット』だ。
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女子高生・ケイシーは、クラスメイトのバースデーパーティーから帰る途中、車に乗り込んできた見知らぬ男に眠らされ、級友2人とともに拉致されてしまう。3人が目覚めると、そこは殺風景な密室。しばらくすると、眼鏡を掛けた神経質そうな男がドアを開けて入ってきた。誘拐された理由もわからず、泣き叫ぶ少女たち。しかし、彼女たちを驚かせたのは、次に目のの前に現れた人物の姿だった。さきほどの神経質そうな男が、女性物の服を着て優しげにの話しかけてきたのである。その後、再び部屋に入ってきた男が、、今度は「僕は9歳だよ」と話しかけてきたため、3人はさらに混乱する。実は男は、23人もの人格を持つ、DID(解離性同一性障害)だったのだ。そして、脱出を試みる少女たちの前に、男の“24人目の人格”が立ちはだかろうとしていた。
主演二人の圧倒的な存在感
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DID、いわゆる“多重人格”の男・ケビンを演じるのは、ジェームズ・マカヴォイ。実は今まで、名前は知っていたものの、彼がメインで出演している作品をちゃんと観たことがなかったのだが、この『スプリット』を見て、彼の芝居に圧倒されてしまった。23人の人格すべてが作品中に出てくるわけではないが、彼は8人の人物を演じ分けているのだ。気持ちに言葉が追いつかないので、「物凄い役者」としか言いようがない……マカヴォイの何がスゴイのかと言えば、“目”である。
マカヴォイは、最初にデニスという眼鏡をかけた短気で神経質な男としてスクリーンにお目見えする。人を監視するような目つきのデニスから、パトリシアという女性に人格が交代したとき、マカヴォイの目はとてつもなく柔和だったのである。その瞬間、私の心は「うわー何だこれ―!コロッと変わったー!」と大騒ぎだった。そのほかにも、マカヴォイは9歳の少年・ヘドウィグのときにはワクワクがにじみ出るような目、セラピーにかかるバリーのときには朗らかで快活な目で、それぞれの人格を表現してしまうのだ。
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いやー、こんな目力で挑まれたら3人の女子高生なんて即負けだよ……と思っていたのだが、マカヴォイに対抗するもう一人の主人公・ケイシーもまた“物凄い”のだ! ケイシーを演じるのは、新進気鋭の女優、アニヤ・テイラー=ジョイ。彼女、第一にカワイイ。小動物のようなくりっとした目と、アンニュイな雰囲気を醸し出す唇が私の好みだ。だから目を引くのかな? と思ってしばらく見ていると、決してそれだけではないことがわかる。存在感、インパクト、そういったものが、ほか2人の女の子と格段に違うのだ! 彼女とマカヴォイが視線を交わしているだけで、私も誘拐された1人になったようにドキドキしっぱなしだった。また、ケイシーはほかの二人とは違い、過去のトラウマにより他者と距離を置いている女の子。それゆえの寂しさと強さが、彼女の演技からひしひしと伝わってくるのにも注目してほしい。
どんでん返しよりも、リアルな怖さを楽しんでほしい
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シャマラン監督といえば、『シックス・センス』をはじめ、最後まで予測できない展開を迎える作品で知られている。そんなこともあって、本作も「ネタバレ厳禁」と言われている。実際に観た私としても、「余計な情報は一切入れずに観ろ!」と言いたい(ここまで読んでいただいているのに申し訳ない)。とはいえラストへのハードルを上げすぎると、「思ったより大したことなかった」とか言われそうで、シャマラン好きの私としては不安もあるのが正直なところ(笑)。結末だけではなく、「ちょっと笑える」けど「これがリアルで起こったらどれほど恐ろしいのか」というギャップを楽しんでほしい。オープニングクレジットでジェームズ・マカヴォイの名前が何度も出てくるのには、早くも笑ってしまったが、彼が1人8役も演じたことには、役者・人間の可能性がまだまだあると感じた。そして本作もまた、“人間の可能性”を感じさせてくれる作品である。体調が悪いときに「気のせいだ」と思い込むことで回復できてしまうような、そんな不思議な力が、人間にはまだまだ眠っているのだと実感させられることだろう。
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映画『スプリット』は5月12日(金)全国公開。
映画『スプリット』
(2017年/アメリカ/英語/117分)
監督・製作・脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:ジェイソン・ブラムほか
出演:ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー、
ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソンほか
字幕翻訳:風間綾平
配給:東宝東和
公式サイト:http://split-movie.jp/
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