藤城清治『光の楽園展』が大阪で開催中!『愛』『平和』への想いが溢れた楽園がここに
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『日本一大阪人のパノラマ』2017 (C)Seiji Fujishiro/HoriPro
藤城清治の個展『光の楽園展』が、大阪文化館天保山にて5月28日(日)までの開催されている。終了間際ではあるが、こちらにぜひ足を運んでもらいたい。終了日前日の5月27日(土)には藤城清治本人が来館し、サイン会を開催予定と最後まで見逃せない。まだ見ていない、どうしようかなと、悩んでいるみなさんに押しの一手となりますよう、会場の様子をレポートしよう。
色彩におぼれよう
影絵というとスクリーンに映し出された影、ベタっとしたセロハンの色彩を思いうかべる人もいるかもしれない。藤城の作品ももちろんカッターナイフで形を切り、色はセロハンでつけていく。しかし、藤城の作品には絵画のような風合いが出ているのだ。何重にも重なったセロハンによる複雑な色合い。ナイフでセロハンをこすり、筆跡がついているかのように見える表面などからは、芸術家として色に対する追及や、作品への真剣なまなざしが伝わってくる。どの作品にも明るい色彩が使われており、それらを見るとつい微笑んだり、嬉しくなったり、励まされたりする。
(C)Seiji Fujishiro/HoriPro
藤城清治は何をみているのか?
本展は、約200点以上の作品で構成されており、60年代の作品から本展のために制作された2017年の作品なども展示されている。まさに彼の足跡を知ることができるといえよう。その中で、藤城の人間性が現れていると感じた作品の1つを紹介しよう。
(C)Seiji Fujishiro/HoriPro
それは『ウィ・アー・ザ・ワールド物語 We are the world 歌が世界を動かした!』シリーズだ。説明は不要かもしれないが、本作のタイトルとなっているのは、アフリカ難民の貧困救済のため、チャリティーとして1985年発表された曲である。その曲が生まれた理由や、有名アーティストが集ったその意志などを知った藤城は、そのことを作品するためアフリカの状況について調べ始める。そしてそのうちに、飢饉の中、懸命に生きようとする人々に感動し一連の作品を完成させた。痩せた子供に同情するのではなく、生きようとする見開いた眼に感動し、生きる力を感じ取ったのだ。作品を見てもわかるが、猫、犬、子供、鬼、そして植物など、この世の中の命あるものとの共存を楽しみ、互いを尊重していることがよくわかる。生きているということが愛おしいのである。
『”ウィ・アー・ザ・ワールド”ラジオ局から世界へメッセージ』1997 (C)Seiji Fujishiro/HoriPro
それぞれがもつ個性への愛情
『空飛ぶ楽園』2016 (C)Seiji Fujishiro/HoriPro
大阪に限らず全国各地で開催される藤城展。その地域の街並みやお祭りなどを作品にしている。今回チラシになっている『空飛ぶ楽園』は大観覧車に海遊館、もちろん大阪文化館・天保山も作品に入り込んでいる。海からの風に髪をなびかせる少女の姿は、子供が未来へ向かって希望に胸を膨らませている情景を思わせる。会場では、『日本一大阪人パノラマ』(本文トップ掲載)の迫力にため息を漏らす来場者も。「ごちゃごちゃしている大阪を、すごく綺麗にまとめて作品にされている」と、感謝の気持ちを独り言のように話す年配の人の声が聞こえた。作品を通して、大阪を愛してくれている空気を感じ、観る側が思わず“ありがとう”と言いたくなるのかもしれない。
『天神祭今昔』2017 (C)Seiji Fujishiro/HoriPro
展覧会初日の前日まで制作されていたという新作『天神祭今昔』は、今の景色だけでなく昔あった橋も描かれている。藤城の作品は、昔の大阪を想像するキッカケにもなっているのだ。作品を通して彼の愛情を感じ、観客も大切にしているものへ想いを馳せていくような雰囲気が漂っていた。
平和への願い
『平和な世界へ』2016 (C)Seiji Fujishiro/HoriPro
物語を影絵したもの、聖書画に取り組んだものなど、藤城清治はとどまることを知らない。その根本にあるもの、それは「平和」を願う気持ち。この1つに尽きている。会場に入ってすぐのところには、海軍予備学生時代の写真が飾られている。そして挨拶文の中でも戦争に触れている。作品から光や希望、夢などが溢れているのは、吐き出しても吐き出しても消えてくれない戦争で得てしまった経験を、彼は明るいモチーフや色、そして光で覆いつくしたいのかもしれない。会場内にちりばめられた「平和」「希望」「愛」という言葉には、これからへの祈りや願い、それ以上に、つらい過去を打ち消そうとする“もがき“なのかもしれない。わたしたちは、戦争そのものの残酷さとともに、藤城の作品を作りだす原動力の奥にあるものを見つめるべきかもしれない。入口に展示されている藤城の右手が大きく写し出された写真は、厚みがあり、どこか優しく、愛情があふれていた。
取材・文=かわゆか 写真=K兄