【今日の編集部】カントリー・ガール
毎日の昼食選びは以外と難儀なものです。編集部はオフィスビルに入っており、3階に食堂的なカフェ、地下に飲食店街があるのですが、毎日のことなのでどの店もわりと行き尽くしてしまいます。
今日はいつもとは趣向を変えて高層階にある展望レストラン街に行ってみました。展望レストランとは言ってもランチタイムは平均的なお値段で食べられるとのことで、しかもフジモトさんとコスゲさん曰くカレーが美味しそうな店があるとのことだったので、高所恐怖症の僕は意を決して38階行きのエレベーターに乗ったのでした。
店に入ってみると、そこはカレー屋さんではなく、信州そばを売りにしている、郷土料理っぽいお店で、メニューの一つにカレーがあるという仕様。我々は迷うことなく注文したのです。
「カレー大盛り3つ」
すると郷土料理店らしく和風な制服のお姉さんは言いました。
「申し訳ございません、カレーが終わってしまいまして」
なんのためにわざわざ38階まで来たのでしょうか!とは言わず、そこは冷静に「そば」を注文した僕とフジモトさんに対し、コスゲさんは豚の何か(忘れました)を注文。すると、
「そちらも終わってしまったんです……」
と申し訳なさそうなお姉さんと、テーブルに突っ伏すコスゲさん。
「じゃあトンカツはありますか?」
「ございます!」
やっと注文できたコスゲさんがメニューを見ると、どうやらトンカツはソースと味噌が選べる様子。
「じゃあ……味噌で!」
意気揚々と注文しました。
「……あの、味噌は終わってしまいました……」
この上なく申し訳なさそうなお姉さんと再び突っ伏したコスゲさん。
結局、普通にソースのトンカツを食べたのでした。異様な量入っていたキャベツの千切りは、今考えるとお姉さんからのささやかなプレゼントだったのかもしれません。(コスゲさんは「キャベツの配分おかしくね?」と言っていましたが)
そんなこともありつつ、そばは普通に美味しく、食べ終わった我々は何か足りないことに気づきます。それは、お冷がないこと。
店員さんを呼ぶと再びさっきのお姉さんがやってきます。お冷がないことに気づくとまたしても申し訳なさそうにすぐ用意してくれたのでした。そして最後にお会計に向かうと、三たびお姉さんが。
一人目のフジモトさんが一万円札で支払うと、お札が無かったらしくお姉さんは奥へ両替に向かいました。その間に2人目の僕が財布の中を確認すると……
僕も1万円札しかない。
9000円を持って戻ってきたお姉さんに、今度は僕が申し訳なさ全開で
「僕も1万円札しかないんですが……」と告白。
でもお姉さんは嫌な顔ひとつせず再び奥へ。
「やばいなぁ、カレーが無かったから嫌がらせしてると思われるよ」
などと話しているとお姉さんが戻ってきて、
「大丈夫です! あの、カレーが無かったり、お冷をご用意しなかったりすみませんでした」と一言。
なんていい娘なんだ! 郷土料理風の和服のせいもあってか、余計健気に見えたというか……優しく奥ゆかしい、古き良き日本の女性像を垣間見た気分になりました。お目当てのものが食べられなかったにもかかわらず「また来よう」、そう思わせてくれる接客は、なかなかありません。
お姉さんのホスピタリティ溢れる接客は、3人目のコスゲさんがこれ見よがしに1000円札をレジの前にスタンバイしていた姿とともに、僕の目に焼き付いています。
[風間]