まもなく出航!DisGOONie『From Three Sons of Mama Fratelli』稽古場レポート
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『GOOD-BYE-JOURNEY』のワンシーン
2.5次元を中心に話題の舞台を数多く手がけるヒットメーカー・西田大輔。エンターテイメントの最前線で活躍する氏が、自らのオリジナル作品を、自らが愛する仲間と共に創造するための冒険船ーーそれが、DisGOONieだ。
6月9日(金)より出航の『From Three Sons of Mama Fratelli』は、前代未聞の3本同時上演。演劇界の常識を打ち破るスケールで繰り広げるDisGOONieの全貌を掴むべく、稽古場に潜入した。
悲劇のヒロイン、ジャンヌ・ダルクの半生を描く『GOOD-BYE-JOURNEY』
その日の稽古は、まずは1本目『GOOD-BYE-JOURNEY』から。本作は、かの有名なジャンヌ・ダルクが魔女裁判にかけられるまでを、西田独自の解釈により再構築した物語だ。フランスとイギリス(イングランド)間の百年戦争を終わらせる救世主として、ある日突然歴史の表舞台に躍り出ることとなったジャンヌ。西洋史の中で最も有名なヒロインのひとりである彼女の流転の人生を、西田らしくスピーディーかつダイナミックに描いていく。
村田洋二郎
平凡な村娘だったジャンヌの運命を変えるきっかけをつくった張本人、フランス王・シャルルに、西田の盟友・村田洋二郎。
田中良子
女剣士・オリヴィエ役の田中良子。どこの馬の骨ともわからない娘に国の命運を託そうとするシャルル王に、彼女は反発する。
中村誠治郎
ジャンヌを支えるジルドレ役には、中村誠治郎。男らしく凜々しいマスクが、中世の世界観によく似合う。
谷口賢志
そして敵対するイギリス軍司令官・ラングレンに、谷口賢志が扮する。誇り高き軍人役が、谷口の持つ独特の陰影により、一層濃淡豊かになる。
本作の見どころは、嵐のような殺陣の数々。西田大輔と言えば、壮大華麗なアクションには定評があるが、息つく間もない斬り合いは稽古場の至近距離で体感すると迫力倍増。目の前で剣をふるわれるたびに、緊張でこちらの筋肉が収縮する。反面、その臨場感に細胞はかちどきを上げんとばかりに奮い立つ。まさに、生の空間を共有するから味わえる「体験性」の真髄だ。
中村誠治郎
千軍万馬が入り乱れる中、燦然たる華を振りまくのが、やはりこの人、中村誠治郎。その太刀筋は、空気を震わす鋭さがあり、それでいてまったくブレがない。
田中良子
男だらけの立ち回りの中、紅一点の田中良子が獅子奮迅の活躍を見せる。こうした勇猛果敢な女剣士は、彼女の十八番。右に出る者はいないハマりっぷりだ。
文音
イギリス軍の勢力の前に、劣勢を強いられるフランス軍。そのとき、戦場にジャンヌが降り立った…!
文音
ジャンヌの力により戦況が一変する。片田舎の村娘だったジャンヌが聖女の覚醒を迎える重要な場面だ。
文音
歴史に名を刻む「ジャンヌ・ダルク」誕生の瞬間。文音が、本番と錯覚するような渾身の演技を披露する。この瞬間、この物語のセンターは彼女だ、と稽古場にいる誰もが確信した。はたして文音演じるジャンヌ・ダルクは、どのようにして魔女裁判へと向かっていくのか。結末が悲劇であればあるほど、美しさは神々しさを増す。そう予感するようなワンシーンだった。
洒脱な五右衛門異聞録に酔う/『枯れるやまぁ のたりのたりとまほろばよ あぁ 悲しかろ あぁ 咲かしたろ』
続く2本目は『枯れるやまぁ のたりのたりとまほろばよ あぁ 悲しかろ あぁ 咲かしたろ』。こちらは、天下の大泥棒・石川五右衛門を題材にした西田版異聞録だ。西洋を舞台にした『GOOD-BYE-JOURNEY』とは一転、こちらは完全な和物。それも猫を主人公に置くことで、どこか風変わりで軽妙洒脱な雰囲気を醸し出している。
それを象徴しているのが、プロローグの演出。「猫の目」を表現するべく、暗転の中、ライトだけを用いた演出で、妖異な空間をつくり出す。
田中良子
その猫・桔梗を演じるのが、田中良子だ。先ほどの孤高の女剣士とは別人。声からして、いかにも食えない化け猫そのもの。その見事な演じ分けに、思わず舌を巻いた。
(左から)田中良子、村田洋二郎
五右衛門役は村田洋二郎。民衆のヒーローとして名高い従来の五右衛門とはまったく別。いかにも頼りない様子の五右衛門を、そそのかすように桔梗がとりつく。
谷口賢志
谷口賢志は、3作品すべてに登場する。こちらの役名は、女郎花(さるすべり)。物語の語り部のような存在だ。谷口の魅力のひとつは、憂いを含ませた眼にある。揺らぎの中ですっと立つような佇まいが、観客の想像を膨らませる。
佃井皆美
本作のキーパーソンのひとり・茶々役は、佃井皆美。アクションに定評のある佃井が、今回はアクションシーン一切なしというのも、逆に興味深い。
(左から)佃井皆美、谷口賢志
女郎花に無邪気に話しかける茶々。この一コマ、何気に注目していただきたいのは、谷口賢志の三角座り。常に色気をムンムンと放つ谷口の三角座りが、何だか新鮮すぎて萌えてくる…!
(左から)川隅美慎、佃井皆美
萌えポイントはこちらにも。茶々に仕える佐吉役の川隅美慎。この明るい笑顔で、頭ナデナデは反則だ!
SHOGO
そして175RのSHOGOも参戦する。役柄は徳川家康。従来の家康像とは一風変わった、コミカルなキャラクターだ。
(左から)SHOGO、窪寺昭
なぜか秀吉を抱きしめる家康。まるでアドリブのような飄々とした演技で舞台上を自在に渡り歩くSHOGOに、取材席からも笑いが漏れる。
川隅美慎
佐吉の愛犬のような人なつっこいキャラクターも、母性本能をくすぐる魅力を持った川隅に合っている。
平山佳延
坊主役の平山佳延も、しっかりと脇を固めている。3本共に大所帯のキャストながら、それぞれが自分の役どころをおさえた上で、与えられた役割を的確に果たす。さすが数多の俳優を知る西田が選りすぐった精鋭の布陣だ。
本作は、太閤・秀吉の大切なものを五右衛門が盗み出す模様を描く。五右衛門が狙ったものとは何か…? それは見てのお楽しみだ。
天才・源内が見たものとは?/『SECOND CHILDREN』
そして3本目の『SECOND CHILDREN』は、江戸時代を代表する天才発明家・平賀源内が主人公。獄中の源内が、胸に秘めた過去を、親友である蘭学医・杉田玄白を相手に語り出すところから物語は始まる。本日公開されたのは、絵師・麓郎のシーン。麓郎は心の病気により人と上手くコミュニケーションをとることができない。そんな麓郎のために源内がつくったのが、からくり人形の奏雪(かなで)。麓郎を相馬圭祐が、奏雪を安藤遥が演じる。
(左から)相馬圭祐、安藤遥
人と接することができない麓郎。なぜ彼のために、源内は奏雪を与えたのか。このふたりに、本作のキーが託されている。
相馬圭祐
人を好きになる苦しみ。向き合わざるを得ない自分の弱さ。コントロールしきれない感情の爆発を、相馬が迫真の演技で体現する。赤く火照った肌、浮き出る血管、震える指先。相馬の全身全霊の演技が、今、湧き出る衝動が決して偽物ではないことを証明していた。
安藤遥
そんな麓郎に、奏雪は無垢な笑顔を向ける。ベテランの実力派に囲まれながら、底力を発揮する若手の奮闘にも注目したい。
3作それぞれのシーンを見た感想は、3本同時上演ながら、その色合いはまったく異なるということ。春には春の景色があり、夏には夏の景色があるように、咲く花の色も、舞う風の匂いも3本それぞれ。西田らしいドラマティックなストーリーと演出はベースにありながら、違ったカタルシスを覚えることができるだろう。
西田大輔
公開稽古を終えた演出の西田は、「今、僕が信頼している俳優たちとまったく毛色の違う3作品を精一杯つくっています」とコメント。DisGOONieで西田が証明したいのは、きっと演劇の可能性だ。演劇には、演劇にしかない面白さがある。多くの原作モノを手がける西田だからこそ、演劇上演のためにつくられたオリジナルの戯曲を、演劇らしいギミックを用いながら立ち上げることに、今、情熱を傾けている。
今回の3作品も「演劇でしか体験できない面白さがつまっている」と自信の表情だ。ぜひ『戦国BASARA』シリーズを筆頭に、数々の2.5次元舞台で西田演出の魅力を知った観客は、DisGOONieにも足を運んでほしい。結末のわからない冒険の楽しさに、きっと心躍らされるはずだ。
<東京公演>
日程:2017年6月9日(金)~18日(日)
会場:Zeppブルーシアター六本木
一般 7,500円(税込/全席指定)
<大阪公演>
日程:2017年6月30日(金)~7月2日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
一般 7,500円(税込/全席指定)
作・演出・プロデュース:西田大輔
『GOOD-BYE-JOURNEY』
出演:文音、中村誠治郎、田中良子、伊阪達也、平山佳延、折井あゆみ、桜田航成、SHOGO、伊藤孝太郎、馬庭良介、村田洋二郎、谷口賢志、and more...
『枯れるやまぁ のたりのたりとまほろばよ あぁ 悲しかろ あぁ 咲かしたろ』
出演:田中良子、谷口賢志、佃井皆美、窪寺昭、村田洋二郎、SHOGO、川隅美慎、佐久間祐人、伊藤孝太郎、田代由希子、平山佳延、平野雅史、西野太盛、西田大輔、and more...
『SECOND CHILDREN』
出演:萩野崇、西田大輔、角島美緒、谷口賢志、高橋良輔、相馬圭祐、田中良子、杉山健一、窪寺昭、馬庭良介、桜田航成、and more...
公式サイト:http://disgoonie.jp/stage/vol4/