舞台版『ローマの休日』でアン王女を冒険に連れ出すジョー・ブラッドレー役の吉田栄作が大阪で見所を語る!
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『ローマの休日』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
オードリー・へプバーンとグレゴリー・ペック共演の名作映画で知られる『ローマの休日』。その舞台版が、2010年日本初演、2012年の再演を経て、このほど5年ぶりに上演される。VESPAでの市内観光など映画でお馴染みの”名場面”はそのままに、舞台版では新たなエピソードをプラス。アン王女と心を通わせる新聞記者ジョーの知られざる過去や、その役柄に原作者ダルトン・トランボの姿を投影させることで作品にいっそう深みが増し、脚本・演出のマキノノゾミは本作で第36回菊田一夫演劇賞を受賞している。待望の再演には吉田栄作、朝海ひかる、小倉久寛と、初演で絶賛されたトリオが再び顔を合わせる。とりわけ「出演は今回で最後かも…」と漏らす吉田栄作が、大阪の合同取材会で思いを語った。
「初演では海外の配給元の方が、真っ先にスタンディングオベーションで迎えてくれました」
ーー7年前になりますが、初演を振り返られて思い出されることは?
稽古初日に演出のマキノノゾミさんが、「映画へのリスペクトを強く持ちましょう」と言われたのが印象深かったですね。とくに映画で有名な”真実の口”の場面は自分は演出しないので、「みなさん映画を完全にコピーしてくださいね」と。それから毎日映画を見直していました。ジョーはこのタイミングでポケットに手を入れて、この場面ではネクタイの裾はズボンに入れているんだなとか。映画ファンの方が観たら、「映画のまんまだ!」と思っていただけるようにと思って繰り返し見直しました。あと、映画は白黒フィルムで撮影されていますが、舞台のセットも白黒が基調なんですよ。そこも魅力のひとつだと思います。
吉田栄作
ーー舞台版では映画にはないエピソードが追加されましたね。
原作者のダルトン・トランボは、友人を赤狩りからかばったことで、ハリウッドを追放されました。そのエピソードがこの物語では、なぜジョー・ブラッドレーがローマにいるのかという部分に投影されている。男気のあるジョーだからこそ、アン王女との最後の場面はより切なさが募ります。物語全体を通しても、映画よりさらに深みが増していると思います。初演の初日には、海外のオリジナル脚本の配給元の方が観劇に来られましたが、カーテンコールでは誰よりも先にその方がスタンディングオベーションで迎えてくださった。その光景は、いまもずっと胸に残っていますね。
ーー役作りにはどんな影響がありましたか?
長いものに巻かれず、大きな力に逆らって生きるとか。結果的に、自分が損をする生き方になるのかもしれませんが、自分の意思を曲げない強さは、男からするとものすごく惹かれる部分があるので。どこか自分の理想像のようなものを少なからず入れている部分はあると思います。
吉田栄作
「ジョー役は今回で最後のつもりですが、国民的”辞めないでコール”が上がれば一考します(笑)」
ーー改めて、作品の魅力はどこにあるとお感じですか。
僕ら世代ぐらいまでの人なら、絶対に見ている映画じゃないですか、やっぱりあの映画を見ると普通に好きになりますよね。好奇心旺盛な王女が大使館を抜け出して、アメリカきっての優男と出会い自由を知っていく。でも、自分にはやるべきことがあるから最後には帰らなければいけない。今日の出来事は彼と王女、ふたりだけの秘密だっていう。夢があって、素敵すぎますよね。この映画をもとに『ノッティングヒルの恋人』など、いくつかの映画が生まれたわけですから。世界の映画のなかでも、教科書のような作品なんじゃないかな。
ーー役者人生のなかでも思い出深い作品に?
同じ作品に2度出演することもなかったですし、そのなかで3度目の出演になるので。舞台に活動の場を広げてからの、そういう意味では代表作なんだろうなと。ただ「『ローマの休日』が代表作です」というのは、まだ身の丈に合わない気がしています。実感を持って言えるように、今回が最後のつもりでしっかりと務めさせていただきます。
吉田栄作
ーー吉田さんのジョーはこれで見納め?
初演のときにある方に言われたんですよね、当時41歳だったんですが、これは吉田くんの40代の仕事にしたらいいよと。その言葉がすごく印象に残っていて、自分でもそうなればいいのかなと。劇中ではアン王女を軽々とお姫様抱っこする場面があるのですが、結構キツいんですよ。映画は1回撮れば終わりですけど、舞台は稽古を含めて何度もやりますから。まあ、それが理由ではないですけど(笑)。年齢ももうすぐ49歳になるので、これが最後なのかなと。ただ、国民的”辞めないでコール”が上がれば、その時は一考させていだきます。その可能性があるうちは、誰にも譲りたくないかもしれないですね(笑)。
吉田栄作
ーー久々に息の合った初演トリオの掛け合いに期待しております。
朝海ひかるさんは初演以来なので7年ぶりですし、そういう意味でも稽古場からまた新鮮な気持ちで取り組めればいいのかなと思います。小倉久寛さんとの掛け合いも楽しみですね。本番では何かとハプニングが起きるんですよ。役者それぞれが再演までに培ってきたものもあるでしょうし、沸き出る芝居がどう変わったのか、成長しているのか。僕自身5年ぶりの変化が楽しみでもあり、怖くもありますね(笑)。
吉田栄作
■原作:ダルトン・トランボ
■演出:マキノノゾミ
■脚本:鈴木哲也、マキノノゾミ
■出演:吉田栄作、朝海ひかる、小倉久寛、川下大洋(声の出演)
2017年7月26日(水)、27日(木)
■会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2017年7月30日(日)~8月6日(日)
■会場:世田谷パブリックシアター
■公式サイト:http://www.umegei.com/schedule/619/