「あなたたちがいるから、武道館が大切なものになりました」THE ORAL CIGARETTESが自らを肯定し輝いた武道館の夜

2017.6.27
レポート
音楽

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

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THE ORAL CIGARETTES UNOFFICIAL DINING TOUR 2017 2017.6.16  日本武道館

メジャーデビュー時から掲げていた“BKW”(番狂わせ)という単語が象徴するように、これまでTHE ORAL CIGARETTESというバンドを駆り立ててきたのは、果てない野心と崩すことのない戦闘姿勢の裏に潜むコンプレックスの存在だった。それらを糧にして快進撃を繰り広げてきたオーラルは、まるでオセロを裏返し黒を増やしていくように怒涛の勢いで味方を増やしていったが、そのコンプレックスから解放された時にこのバンドはもっと違う景色を描くことができるのでは?とずっと思っていたのが正直なところ。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

 だから、この日のようなライブをずっと待っていたのかもしれない。終盤では山中拓也(Vo/Gt)が「武道館に思い入れなんかなかった。でもやってみて気づきました。俺らは、俺らのことを受け入れてくれる人で埋まっている武道館に思い入れがある。あなたたちがいるから、武道館が大切なものになりました。好きでいてくれてありがとう」と語っていたが、その言葉からも読み取れるように、彼らはこの武道館で、バンド自身を真正面から認め、堂々と肯定することができた。そうしてようやく、このバンドの物語は始まりを迎えることができたのだ。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

 「ただいまより! THE ORAL CIGARETTESの! 『UNOFFICIAL DINING TOUR 2017』武道館公演を! 始めたいと思います」。恒例の四本打ちに合わせてそう挨拶したあと、ステージを覆う紗幕にはオープニングムービーが。壮大なSEをバックに、レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」とステージ上に立つ4人のシルエットが同時に映し出されたあと、スポットライトを浴びた山中がひとりで「5150」を歌い始めた。幕が落ちると同時にバン!と爆発音が上がると、それを機に4人のサウンドが一気に溢れ出す。オーディエンスが合唱すればその歌声を讃えるように眩いばかりの光が客席を照らし、ステージ上では火柱が轟々と上がっていった。そして2曲目「Shala La」に入るや否や上空にレーザー光線が――と冒頭から武道館の舞台装置がフル活用されていたが、4人のサウンドは演出面の華やかさに負けないほどの迫力で、場内のボルテージも急上昇していく。鈴木重伸(Gt)によるアラビア調の旋律が聴き手を翻弄する「CATCH ME」まではノンストップ。「ヤバい、超気持ちいい!」と思わず叫んだ山中が両手を広げたと同時に、4人揃って一音鳴らしたところで最初のブロックは終了した。その瞬間、ムワッとした熱気が2階席まで上がってくる。最初のMCで彼らがまず伝えたのは「(武道館に)連れてきてくれてありがとう」というファンへの感謝の気持ち、そして「これから先、2回、3回、4回、5回、6回と武道館をやっていくバンドに絶対なるから」という力強い約束だった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

ステージ後方のスクリーンにはアルバムアートワークを彷彿とさせる脳や心臓のビジュアルが頻繁に登場していたが、4人がMCや曲中の煽りで“ツアーファイナル”という単語をよく出していたように、前半戦では『UNOFFICIAL』収録曲を多数披露することによってバンドの最新モードを提示していった。この大舞台に立つ前から“武道館は通過点”と公言してきたオーラル。その根底にはもちろん、大規模の会場をもスタンダードに鳴らせるようなバンドになりたいという向上心があるが、同時に、会場のキャパシティなどに左右されることなくライブはいつだって気合いを入れて臨むものなのだという前提――言い換えると、これまでに行ってきたライブやその時訪れた会場、その場に集まったオーディエンスへの誠意がその裏には存在している。だからこそ、例えここが武道館であろうとも、ツアーの最終日である以上はきっちり“ツアーファイナル”をやる必要があったのだろう。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

全国行脚の鍛錬を発揮しようというメンバーの意思はそのまま集中力の高さに直結していた。この日の4人は「緊張してる?」と客席に語りかけながら「俺らも少しだけ」と明かしていたようにやはり普段とは異なる心持ちだったようだ。セットリストが進むほどにメンバーの緊張は解けていっているようだったが、その空気が完全に変わったのは、鈴木・あきら・中西による鮮やかなセッションパート、そして衣装を替えた山中からの「一目見て何か変わったって気づかない?」という問いかけに3人がズレた回答を返す――というMCを挟んだあとのこと。ここに来て満を持して鳴らされた「不透明な雪化粧」「エンドロール」というバラード2連投はこの日のハイライトのひとつだった。本編終盤には「やっぱり自分の声は全員の心には響きません。昔からずっとコンプレックスでした」と吐露していた山中だが、この2曲を味わい深いものにさせてくれているのは、低音を深く豊かに響かせることのできる彼の歌声に他ならない。先に挙げたMCはその後「でもメンバー、スタッフが『お前の声で天下獲れるよ』って背中を押してくれました」「声が気持ち悪い、嫌いって言われたっていい。俺にはこの声しかないんです。この声でしか伝えられないんです」と続いたのだが、その覚悟を証明するように、胸の辺りをギュッと握りしめながら山中は絶唱する。かつてのコンプレックスをとっておきの武器に変え、それを大きく振るい始めたバンドの姿に、新たな始まりを感じずにはいられなかった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

心臓がドクンドクンと脈打つ様子がスクリーンに映し出されたあと、突如浮かび上がった“キラーチューン祭り”の文字に歓喜の声が沸き上がっていく。そう、ここからはキラーチューン祭り。自らのバイオグラフィを辿るようにして、シングル表題曲やアルバムリード曲が立て続けに演奏されていった。スクリーンに“2013年”と映される中で始まった後半戦1曲目「Mr.ファントム」では<見えないAITSUは武道館を真っ二つにする>とこの日ならではの歌詞替えに大いに沸き、「この曲が何度も俺たちを這いあがらせてくれました」と紹介されたメジャーデビュー曲「起死回生STORY」(2014年)では恒例の高速手拍子もキマり、リリース当初のライブからそうしていたように、ラストのサビでは山中がスタンドごと客席へマイクを向け、シンガロングを煽った。そして、選曲の理由に関する「2015年、つらいことの方が多かった気がします。唄うのも正直嫌になった。でも、目の前にいるあなたたちが間違いなく俺らの光でした」(山中)という言葉にそのまま表れていたが、いわゆるアッパーチューンではない「エイミー」がここで演奏されていたのも実にこのバンドらしい。「苦しい時期に救ってくれた曲」だという「狂乱 Hey Kids!!」(2015年)で山中がハンドマイクに切り替えたことによりステージングがより自由さを増し、そのまま「DIP-BAP」へ。2016年にリリースした挑戦の一曲が多くの人に受け入れられた経験は、オーラルにとっての大きな希望となったのだろうか。「自分は自分らしく。それだけでいい!人に合わせる必要はない!自分を生かせ!」(山中)という確信とともに「リコリス」(2017年)が堂々と鳴らされた頃には、会場内、どこを見渡しても笑顔しかなかった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

周囲から求められる“オーラルらしさ”から解放されることによって生まれた『UNOFFICIAL』という作品の中身と、そこに至るまでの道程を丁寧に伝えていったここまでの18曲を終えて一番に思ったのは、やはり、オーラルにとってこの4年弱は決して短いものではなかったんじゃないかということ。この日のステージは“飛ぶ鳥を落とす勢いの若手バンドがわずか4年弱で武道館に立った”というよりも、“バンドのことを一つ一つ肯定して、やっとここに辿り着くことができた。それまでに4年弱かかった”という意味で“特別な通過点”になりえたのだ。バンドにとっても、彼らの歩みを見守ってきたファンにとっても。後に山中が「ここからこの4人の船が動き出します」と宣言していた通り、だからこそ、ここがオーラルにとっての本当の意味でのスタート地点なのかもしれない。本編の最後に演奏されたのは、『UNOFFICIAL』のラストに収録されている曲でもある「LOVE」。かつての彼らならば決して唄わなかった(唄えなかった)であろう<LOVE 一人で笑う事は出来ないという>という直球のフレーズが場内全員によって合唱され、祝砲のテープキャノンが放たれる光景はこのバンドの成長を何よりも明確に物語っている。オーディエンスの手拍子に送り出されるようにして4人はステージを去っていったのだった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

アンコールでは、前々日に発売されたばかりのシングルから「トナリアウ」、そして「ONE’S AGAIN」を演奏。そしてバンドの今後の在り方について、山中は「きっと弱い人間は弱い人間のままなのかもしれない。でも強くなることはできる」「何かひとつ強くなりたいなら、カッコいいヤツと一緒にいてください。もしもそんな友達がいないなら、俺ら4人がカッコいい友達になってやる」「カッコいい人だけでフロアを埋め尽くす。それが俺らの進む道です。ついてこれないならついてこなくていい」と話していた。これらは相手を冷たく突き放すための言葉ではなく、端的に言うと“共に強くあろう”という共闘宣言である。手を取り合うのではなく、拳を突き合わせるような関係に。隣の芝生に目もくれることなく、バンド自身を肯定し、目の前の相手のことを尊重することができている今の彼らだからこそ、そんな宣言をすることができたのだと思う。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平

終演後に発表された通り、来年2月には大阪城ホールワンマンが開催されるが、今回の武道館がバンドの新たな始まりを感じさせるものだっただけに、きっと城ホール公演はまた違う意味を持つ日となるはず。4人の新たな冒険譚が、私たちの胸を高鳴らせてくれる日も近そうだ。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)、鈴木公平

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

セットリスト
THE ORAL CIGARETTES UNOFFICIAL DINING TOUR 2017 2017.6.16 日本武道館
1.5150
2.Shala La
3.カンタンナコト
4.悪戯ショータイム
5.CATCH ME
6.A-E-U-I
7.STARGET
8.嫌い
9.WARWARWAR
10.気づけよBaby
11.不透明な雪化粧
12.エンドロール
13.Mr.ファントム
14.起死回生STORY
15.エイミー
16.狂乱 Hey Kids!!
17.DIP-BAP
18.リコリス
19.LOVE
[ENCORE]
20.トナリアウ
21.ONE’S AGAIN

  

ライブ情報
唇ワンマンライブ 2018 WINTER
2018年2月15日(木)大阪城ホール
FC先行予約1次:6月16日(金) 22:00~6月22日(木)23:59
FC先行予約2次:6月23日(金) 12:00~7月2日(日)23:59
http://theoralcigarettes.com/bkw/
THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンツアー2017 AUTUMN(仮)
11月1日(水)大阪・Zepp Osaka Bayside
11月8日(水)名古屋・Zepp Nagoya
11月9日(木)名古屋・Zepp Nagoya
11月17日(金)北海道・Zepp Sapporo
11月24日(金)広島・LIVE BLUE HIROSHIMA
12月5日(火)東京・STUDIO COAST
12月6日(水)東京・STUDIO COAST
前売:¥4,500
一般発売日:8月5日(土)

THE ORAL CIGARETTES UNOFFICIAL DINING TOUR
日本武道館公演 超速!! SCREEN LIVE

■日時/会場
◇舞台挨拶付き会場
・6月18日(日)12:30 START 【東京都】ユナイテッド・シネマ 豊洲
・6月18日(日)18:00 START 【大阪府】大阪ステーションシティシネマ
※ユナイテッド・シネマ 豊洲は上映開始前、大阪ステーションシティシネマは上映終了後の舞台挨拶となります。
◇SCREEN LIVE会場
・6月18日(日)18:00 START
【北海道】ディノスシネマズ札幌劇場    
【宮城県】MOVIX仙台        
【東京都】T・ジョイPRINCE品川
【神奈川県】横浜ブルク13        
【埼玉県】MOVIXさいたま        
【静岡県】MOVIX清水
【愛知県】ミッドランドスクエア シネマ    
【京都府】MOVIX京都        
【兵庫県】OSシネマズミント神戸    
【広島県】広島バルト11             
【福岡県】 ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13
※開場時間は映画館によって異なります。    
※SCREEN LIVE会場には舞台挨拶の中継はございません。
※大阪府では条例により16歳未満の方で保護者同伴でない場合、終映が19:00を過ぎる上映回はご入場いただけません。予めご了承ください。
料金
◎舞台挨拶会場 3,000円(全席指定/税込) / ◎SCREEN LIVE会場 2,500円(全席指定/税込)
※3歳以上有料/3歳未満で座席が必要な場合は有料となります。
スケジュール
※お申込み方法は特設ページURL:http://theoralcigarettes.com/feature/screenliveをご確認ください。

 

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