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目覚めの心をゆったりほどく~NHK・BSプレミアムで『ヴィオラスペース2015』ガラ・コンサートを6月27日(火)放送

2017.6.23
コラム
クラシック

滅多に聴けない、ヴィオラの大合奏によるバッハ


朝の目覚めにやさしいクラシックはいかが。NHK・BSプレミアム「クラシック倶楽部」は、毎週月曜~金曜(午前5時~5時55分)にクラシックの名演を幅広く放送している。6月27日(火)は、ヴィオラの魅力を多面的に取り上げて四半世紀余りになる音楽祭『ヴィオラスペース』の、2015年6月4日のガラ・コンサートをオンエアする。

「ヴィオラスペース」は、1992年に世界的ヴィオラ奏者・今井信子の提唱によって東京でスタート。「ヴィオラの礼賛」「優れたヴィオラ作品の紹介と新作発表」「若手の育成」をコンセプトに、若手演奏家のための公開マスタークラスとコンサートも毎年開催。次第に知名度を上げ、2003年にはCD『ヴィオラスペース10周年記念アルバム』を世界リリース。2004年からは東京・大阪の2都市で、2006年からはさらに名古屋が加わり、以来ずっと東名阪3都市で約1週間にわたってシリーズ開催されている。2009年には「東京国際ヴィオラコンクール」も創設。3年毎に行われていて、入賞者は翌年以降の「ヴィオラスペース」でのゲスト出演が約束され、成長ぶりを披露している。

ヴァイオリンの演奏会の多さに較べると、ヴィオラは機会が少ないので、ナマで聴いたことがない人も珍しくないが、穏やかで温もりのある音色が魅力。ヴァイオリンよりひとまわり大きく、管弦楽では内声の要となって、弦パートのまろやかさや柔らかさを醸し、静かに語ったり、慰めたり…。楽器の大きさが一様でないのもおもしろい。

この日の放送では、まずモーツァルト(1756~91)の『バイオリンとヴィオラのための二重奏曲 変ロ長調 K.424』にご注目。モーツァルトといえば鍵盤の妙手として名高いが、実はヴァイオリンやヴィオラも弾きこなし、さまざまな弦楽曲を残している。

この曲は、結婚の翌1783年に、作曲家の友人のピンチヒッターで書いた2曲のうちのひとつ。モーツァルトが故郷・ザルツブルクに妻とともに帰省すると、友人が病気で伏せっていて、大司教から依頼された6曲のうち4曲まで作ったが残りを作れる状態ではなく、急遽作ったらしい。しかし出来ばえは素晴らしく、友人は総譜を生涯の宝として大切にしていたという。この友人はヨーゼフ・ハイドンの弟ミヒャエル・ハイドン(1737~1806)である。

全体的にゆったりしたテンポの3楽章構成で、パメラ・フランクのヴァイオリンと今井のヴィオラが対話するように進む。第2楽章は、モーツァルトの交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」の第2楽章と似ている。第3楽章にはユーモアに満ちた旋律もあったりして、寝ぼけ眼で聴いても頭にガツンと来ず、気持ちよく目が覚めてきそう。

2曲目の演奏者、アントワン・タメスティは2013年から今井の片腕となってディレクションに関わっている世界的ヴィオラ奏者。『倦怠は傷を癒す~独奏ビオラのための』は、オーストリアの女性作曲家、オルガ・ノイヴィルトの独創的な作品で、左手の指使いもお見逃しなく。

後半はバッハの曲のアレンジものだが、最後の『ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048』は、若手ヴィオラ奏者で編曲家の小早川麻美子によるヴィオラ合奏版。もともと、聴き手までもが弾いてみたくなるような、演奏の楽しみが伝わってくる曲調だ。コンパクト編成を生かし、楽器それぞれの呼吸感を感じ合いながらのステージから、ヴィオラの音色の豊かな表情を感じ取れて、まさにコンサートタイトルどおりの「天国からの音楽」。

日頃は、演劇の名脇役によく似た存在にも見えるヴィオラだが、このような演奏会があると楽器の意外な生かし方や隠れた楽曲を知ることができる。今年は終わってしまったが、来年はコンクール年で出場募集も始まっている。

文=原納暢子

放送情報
NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」
ヴィオラスペース2015 ガラ・コンサート「天国からの音楽」


■放送時間:6月27日(火)午前5時~5時55分
■放送内容:
ヴィオラスペース2015 ガラ・コンサート
■出演:今井信子、アントワン・タメスティ、ハリオルフ・シュリヒティヒ、佐々木亮、柳瀬省太、鈴木学(ビオラ)、パメラ・フランク(バイオリン)、関谷由美(ピアノ)、桐朋学園オーケストラ▽【演奏曲】二重奏曲 変ロ長調(モーツァルト)、ブランデンブルク協奏曲 第3番(バッハ)ほか▽
■楽曲
「バイオリンとビオラのための二重奏曲 変ロ長調 K.424」モーツァルト:作曲
(バイオリン)パメラ・フランク、(ビオラ)今井信子(20分52秒)
~2015年6月4日 上野学園 石橋メモリアルホール(東京)~

 
「倦怠は傷を癒す~独奏ビオラのための」ノイヴィルト:作曲
(ビオラ)アントワン・タメスティ(11分39秒)
~2015年6月4日 上野学園 石橋メモリアルホール(東京)~

 
「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ BWV645」バッハ:作曲 バイヤー:編曲
(ビオラ)ハリオルフ・シュリヒティヒ、(ピアノ)関谷由美(4分09秒)
~2015年6月4日 上野学園 石橋メモリアルホール(東京)~

 
「ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048」バッハ:作曲 小早川麻美子:編曲
(第1ビオラ)アントワン・タメスティ、(第2ビオラ)今井信子、
(第3ビオラ)ハリオルフ・シュリヒティヒ、(第4ビオラ)佐々木亮、
(第5ビオラ)柳瀬省太、(第6ビオラ)鈴木学、
(合奏)桐朋学園オーケストラ(10分57秒)
~2015年6月4日 上野学園 石橋メモリアルホール(東京)~

 
■収録:2015年6月4日(木)上野学園石橋メモリアルホール
■公式サイト: http://www4.nhk.or.jp/c-club/