『RENT』2017年日本版ゲネプロレポート~一段と「深さ」を増した不朽のロック・ミュージカル

2017.7.2
レポート
舞台

『RENT』のゲネプロの様子

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1996年の初演以来世界15か国で各国版が上演され、2006年には映画化もされたミュージカル『RENT』の日本版がおよそ2年ぶりに開幕する。東宝シアタークリエでの日本版は2008年〜2015年にかけて過去4回上演されてきたが、2017年はスウィングキャストも含めて新キャスト6人を迎えての上演。7月1日に行われたゲネプロ(総稽古通し)と囲み取材の様子を写真とともにお伝えする。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』はプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースとしているが、舞台を1990年代のニューヨーク・イーストヴィレッジに置き換え、貧困やエイズ、ドラッグといった問題に直面しながらも懸命に生きてゆく若者たちの姿を描いている。オリジナル作詞・作曲・脚本を担当したジョナサン・ラーソンが1996年のプレビュー公演の前日に35歳という若さで亡くなり、彼の遺志を継いで今でも世界で愛され続けている作品だ。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

今回筆者の観たゲネプロのキャストは以下の通り。

マーク:村井良大
ロジャー:ユナク(超新星)
ミミ:ジェニファー
コリンズ:光永泰一朗
エンジェル:平間壮一
モーリーン:上木彩矢
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:NALAW(COED-V)

コリンズ役の光永とベニー役のNALAW以外は、過去にも『RENT』に出演した経験を持つ"お馴染み"のメンバーだ。しかし、村井はゲネプロ前の会見で言った。「2015年版のキャストが多いですが、みんな甘えていない。毎日みんな真剣にやっているのがすごく素敵です」。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

2年ぶりの日本版『RENT』だが、再演経験を持つ俳優陣の多くが口にしたのが「深さ」だった。それぞれの役、それぞれの曲、それぞれの愛。前回は前回で作り上げてきたが、そこから2年という時を経て、確実に深められていった実感があるのだろう。ロジャー役のユナクは「(前回とは)緊張感も違う。もっといい芝居を見せられる自信がある」。エンジェル役の平間も「これまでと全く違うものだと思うし、さらにリフレッシュされて素敵な作品になったと思う」と自信をのぞかせていた。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

いざ幕が上がると、"新しい"『RENT』の世界がそこにあった。印象的だったことを書き連ねたい。

マーク役の村井はSPICEのインタビューに「僕は今回は、完全に“リベンジ”だと思っています。」(関連記事「『RENT』の熱い夏、再び!〜村井良大×堂珍嘉邦×ユナク鼎談〜」)と語っていたが、実際一皮も二皮も剥けていたように思う。特に芝居に関して、勢いだけで乗り切らず、マークの孤独と葛藤に村井自身が向き合ってきたのが伝わる。2015年版をご覧になった方も、ご覧になっていない方も、納得の「マーク」だったと思う。

『RENT』のゲネプロの様子

平間のエンジェルは前回も大好評だったが、さらに今回は可愛さだけでなく、どこか儚さがプラスされた感がある。それは、相手役のコリンズに対しても、仲間のマークやロジャーらに対しても前回よりも愛情を深く豊かに伝えることができたからではないか。そして、エンジェルがいなくなってしまうという喪失感がより濃く舞台に残せたからではないか。ドラァグ・クイーンの衣装で踊る「Today For You」での激しいダンスとドラムパフォーマンスなどに目が行きがちだが(もちろんそれも素晴らしいけれど)、よりエンジェルを深めていったのが分かった。今回初キャストの丘山晴己はどう臨んでくるのか。平間との対比という意味でも見てみたい。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

ジェニファーのミミ。2008年からジェニファーを演じ続けている彼女だから、観客側でも「ミミといえば、ジェニファー。ジェニファーといえばミミ」と思う人も多いだろう。色気も切なさも苦しみも、ミミが背負うあらゆるものを内包して体現する彼女の表現力は安定感がある。青野紗穂も負けじと新しい風を吹かせられるか。見ものだ。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

ユナクのロジャー。ミミへの愛、売れないことへの焦りと苛立ちなど感情の振り幅が大きい役だが、ユナクはどの場面も情熱的に演じている。思いがこもった歌声はもちろん一級だし、個人的には特にミミを見つめる目線の細やかさが気に入っている。言葉にしなくても、目線だけで伝えることができる俳優はそんなに多くはない。ユナクの中でも2015年から確実にロジャーへの理解が深まっている証拠だろう。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

コリンズ役の光永は低く優しい歌声。落ち着いたコリンズというよりは、割とポップなコリンズ像を演じていた。光永自身、大学生の時に『RENT』のオリジナルキャストを観劇して、それ以来ずっと『RENT』の出演を切望してきたという。今、この『RENT』の舞台に立てる喜びを誰よりも噛み締めているに違いない。

『RENT』のゲネプロの様子

『RENT』のゲネプロの様子

1幕の終盤の「La Vie Boheme」や2幕の冒頭で歌われる「Seasons Of Love」など名曲揃いの『RENT』。何度聞いても、何回観ても、感動とともに何かしら発見がある。新キャストも続投キャストも今この2017年にしかできない表現で全力でぶつかってくるはず。この夏の『RENT』も、多くの観客にとってしっかり胸に刻まれる作品となるに違いない。

『RENT』のゲネプロ前には衣装を着たキャスト陣が取材に応じた

『RENT』のゲネプロの様子

※関連記事「【動画あり】『RENT』2017日本版、製作発表レポート〜この夏見逃せない不朽のロック・ミュージカル
※関連記事「『RENT』の熱い夏、再び!〜村井良大×堂珍嘉邦×ユナク鼎談〜

公演情報
『RENT』

■日程:2017年7月2日(日)~8月6日(日)
■会場:シアタークリエ
■脚本・歌詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
■演出:マイケル・グライフ
■日本版リステージ:アンディ・セニョールJr.
■出演:
マーク:村井良大
ロジャー:堂珍嘉邦/ユナク(超新星)
ミミ:青野紗穂/ジェニファー
コリンズ:光永泰一朗
エンジェル:平間壮一/丘山晴己
モーリーン:上木彩矢/紗羅マリー
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:NALAW(CODE-V)
新井俊一、千葉直生、小林由佳、MARU、奈良木浚赫、岡本悠紀
■公式サイト:http://www.tohostage.com/rent2017/

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