自身の歩みをエンターテインメントとして昇華した、LiSA30回目のバースデイ
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LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~ 2017.6.24 さいたまスーパーアリーナ
「もしかしたら生きている意味なんてないのかもしれない。だけどみんなと作った最高の日が私の人生の30年後にあるんだとしたら、生きている意味は絶対あったんだなって思います」
ライブ終盤、一つひとつの想いを噛みしめるようにそう語るLiSAの元へ、温かな拍手の音が降り注がれていく――。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
5月24日に4thフルアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』をリリースしたLiSAの東名阪アリーナツアー『LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~』。ツアー2本目、さいたまスーパーアリーナ2デイズの初日である6月24日は、彼女の30回目の誕生日。だからだろうか、今回のツアーはLiSAの根幹を貫く哲学を提示しながら、彼女のバイオグラフィを大きく振り返るような内容となっていた。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
開演時刻を迎えたところで場内が暗転。客席のあちこちでピンク色のサイリウムの光が灯るなか、エレキギターを持ったLiSAが一発鳴らす。1曲目は「LOSER ~希望と未来に無縁のカタルシス~」。そして勢いよくスタンドからマイクを奪取。火柱上がるステージを背に花道へと駆け出すと「L.Miranic」へ。アリーナ中央のサブステージでオーディエンスに360°囲まれながら、シンガロングを両腕広げて受け止める姿はもはや男前ですらある。その直後、上空でレーザー光線が交差する演出とともに鳴らされた「crossing field」のイントロに、客席から雄叫びのような歓声が沸き上がったのだった。――と、初っ端から飛ばしまくりのオープニング3曲を終えて、「ようこそ、LiTTLE DEViL PARADEアリーナツアーへ。こんばんは、LiSAです!」とピースサイン。オーディエンスとともに振り付けを楽しむ「Merry Hurry Berry」や「say my nameの片想い」、そして身体のラインを強調した艶かしい動きに釘付けにされた「the end of my world」や赤のスカートとジュリ扇をはためかせた「Psychedelic Drive」と、彼女の十八番である“ポップ”と“ロック”の対比もバッチリ効いている。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
アリーナツアー自体は今回が初めてとはいえども、2015年の幕張メッセ、2016年の横浜アリーナと、これまでも大会場でのワンマンライブを成功させてきたLiSA。アリーナ級の会場を特大の遊び場に変えるのもお手の物といった彼女のバイタリティは、もはや最強モードなのでは?と思わされる瞬間もやはり多数あったが、この日のライブはLiSAをずっと奮い立たせてきた“弱さと紙一重の強さ”がコンセプトとして設定されていたように思う。言い換えると、それはアルバム『LiTTLE DEViL PARADE』でも繰り返し唄われている“コンプレックスさえも愛することで明るい未来を切り拓くことができる”ということ。アルバム収録曲だけではなく、歴代カップリング曲も含むセットリストや各曲にまつわる演出は、そのコンセプトをよりハッキリと伝えるために用意されたものであり、至る所から彼女のこだわりを読み取ることができた。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
そういう意味でまず象徴的だったのは、例えば、「LOSER ~希望と未来に無縁のカタルシス~」でのエレキギター、「Peace Beat Beast」でのサンプリングパッドを用いたパーカッションセット、「オレンジサイダー」でのピアニカなど、ステージ上で様々な楽器を演奏したこと。これまでも“不器用な自分が果敢に挑む姿を見せることが誰かに勇気を与えられるかもしれない”というスタンスで様々な楽器に挑戦してきたLiSAだが、先に挙げた3曲は、オーディエンスを物語の奥深くへ導くようなライブのハイライト部分を担っていて、この日のセットリストに欠かせない存在となっていた。それは、不器用ながらも彼女が諦めずに続けてきた“挑戦”がひとつ実を結んだということの証明だろう。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
この日は、ライブと併行して“牙を持つがゆえに周囲から避けられている少女”と彼女の前に現れたモンスター=“リトルデビル”によるアニメーションが放映されていたのも印象的だった。その物語は“誰かから愛されるためには、自分がまず自身を認め、受け入れ、愛する必要がある”という結論を出したところで終了するのだが、それはLiSA自身がこの7年の中で掴み取ったひとつの答えの投影に他ならない。先に挙げた幕張メッセや横浜アリーナでのワンマンもそうだったが、近年のLiSAのライブには彼女自身が歩んできた物語がひとつのエンターテインメントとしてしっかり昇華されている感があり、彼女が自分を愛することのできる場所がこのステージ上なのだ、ということがひしひしと伝わってきて、どこまでも感動的である。そしてこの日が“バイオグラフィのエンタメ化”という意味で、現時点での集大成だったことは言うまでもないだろう。「キモチファクトリー」「そしてパレードは続く」にて、リトルデビルに扮したダンサーチーム“メガどーナッツ”がサブステージや花道を大胆に使ってダンスする姿、その先頭を切り「リトルデビル、いっぱい連れてきたよー!」と叫ぶLiSAの笑顔、そして<続くって言ったら続くんだ 僕が保証するから続くんだ>という渾身のフレーズは眩いほどの輝きを放ち、客席は笑顔で満ち溢れている。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
さらにここまで書いてきたように、この日のライブを貫いていた“コンプレックスさえも愛することで明るい未来を切り拓くことができる”というメッセージは、一朝一夕でこしらえられたものではなく、LiSAがずっと表現してきたことである。それを改めて思い出させてくれたのは、リトルデビルたちによるパレードが終了した直後に演奏されたデビュー曲「Believe in myself」、そしてロングドレスを纏って唄い上げた「シルシ」の存在だった。7年間、ペンライトの光のなかでライブをしてきたLiSAだったが、ここではあえてオーディエンスにペンライトを消灯するよう促し、必要最小限の光の中でこの2曲を届けていく。唄い始める前、「この感じ、岐阜の山の中でひとり唄っていた頃を思い出す」とポツリと呟くLiSA。アコギ+キーボードのシンプルな伴奏を背にした温かな歌声を聴いて思ったのは、たとえ多くの人に彼女の音楽が愛されるようになっても、LiSAは孤独だったあの頃の原風景を忘れることができないのではないだろうか、ということ。しかしだからこそ、会場のキャパシティがどれだけ大きくなっても、LiSAの歌は一人ひとりの心にやさしく寄り添うものになりえるのだ。彼女は満場のオーディエンスへ「君の心で感じてることは君だけのものです。ここにいる間だけでも自分の心を愛してあげられますように」と伝えていく。<いつか 隠し続けてた 弱虫な/自分も 愛せたらいい>と綴ったあの頃から時を経て、彼女の孤独は同じような思いを抱えて生きる人々の光へと形を変えたのだ。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
そこからの展開はもう怒涛。「LiTTLE DEViL PARADE」では再び灯ったサイリウムの光と客席からの「LDP!」コールに背を押されるようにしてLiSAが上空にせり上がっていき、「コズミックジェットコースター」では客席に巨大バルーンを投入。さらにバンドメンバーによるソロ回しも華麗に炸裂した。その熱量を絶やすことなく「ROCK-mode」、そして「Rising Hope」へと間髪入れずに突入。「Catch the Moment」演奏後は客席を見渡しながら「こんなにたくさんの人と、今日を一緒に作ってるんよねえ……」と感慨を漏らし、「みんなと一緒に生きたこの瞬間を全部全部掴めた気がしました! ありがとう」と手応えを語っていく。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
その後披露された「TODAY」はLiSAの等身大の想いを余すことなく伝えるため、スクリーンに歌詞が大きく映し出された。「自分の心を信じて、愛してあげてください。OK?」「ひとりじゃ信じてあげられなくなったら私のパレードについてきていいよ!」。そうして彼女がピースサインを掲げ、それに応えるように客席から無数のピースサインが伸び、本編終了。<喜びを知った僕は キミとの未来地図描いてる>と唄う同曲や、アンコールで披露された新曲「だってアタシのヒーロー。」(8月2日リリースのシングル表題曲)が照らし出していたのは、彼女のことをここまで強くさせてきたリスナーの存在に他ならなかった。
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
その後はサプライズでミニオンたちがステージに登場&“映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』に日本語吹替えキャストに抜擢”というバースデープレゼントをLiSAに贈呈! 興奮そのままに、ミニオンもメガどーナッツも大集合のスペシャルバージョンで「best day, best way」でフィナーレを迎えた。が、しかし。あの曲の歌詞になぞらえて言うならば、“終わりが来るのは便宜上”である。ということで、9月からは全国各地のホールへと舞台を移し、ツアーは続いていく。孤独も寂しさもイタズラな気持ちも全部引き連れて、リトルデビルたちのパレードはまだまだ続いていくのであった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
LiSA 撮影=HAJIME KAMIIISAKA
2.L.Miranic
3.crossing field
4.Merry Hurry Berry
5.ミライカゼ
6.say my nameの片想い
7.Peace Beat Beast
8.オレンジサイダー
9.the end of my world
10.Empty MERMAiD
11.Psychedelic Drive
12.キモチファクトリー
13.そしてパレードは続く
14.Believe in myself
15.シルシ
16.LiTTLE DEViL PARADE
17.コズミックジェットコースター
18.ROCK-mode
19.Rising Hope
20.Catch the Moment
21.TODAY
[ENCORE]
22.だってアタシのヒーロー。
23.best day, best way
8月2日発売
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
初回盤
VVCL-1067~1068 / 1,600円+税
≪CD≫
M-1:「だってアタシのヒーロー。」(作詞:LiSA、古屋 真 作曲:渡辺 翔 編曲:江口 亮)
(7月クールテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」EDテーマ曲)
M-2:カップリングA
M-3:カップリングB
M-4:「だってアタシのヒーロー。 -Instrumental-」
「だってアタシのヒーロー。」ミュージッククリップ収録DVD同梱
通常盤
≪CD≫
M-1:「だってアタシのヒーロー。」(作詞:LiSA、古屋 真 作曲:渡辺 翔 編曲:江口 亮)
(7月クールテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」EDテーマ曲)
M-2:カップリングA
M-3:カップリングB
M-4:「だってアタシのヒーロー。 -Instrumental-」
期間生産限定盤
≪CD≫
M-1:「だってアタシのヒーロー。」(作詞:LiSA、古屋 真 作曲:渡辺 翔 編曲:江口 亮)
(7月クールテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」EDテーマ曲)
M-2:カップリングA
M-3:「だってアタシのヒーロー。 -TV size-」
M-4:「だってアタシのヒーロー。 -Instrumental-」
9/24(日)東京エレクトロンホール宮城(宮城県)
9/30(土)ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)・大ホール
10/1(日)石川県・本多の森ホール
10/7(土)長良川国際会議場(岐阜県)
10/9(月・祝)静岡市民文化会館(静岡県)
10/15(日)川崎市スポーツ・文化総合センター(神奈川県)
10/21(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・大ホール
10/28(土)栃木県総合文化センター
11/3(金・祝)サンポートホール高松(香川県)
11/9(木)中野サンプラザホール(東京都)
11/18(土)広島文化学園 HBG ホール(広島市文化交流会館)(広島県)
11/19(日)福岡サンパレス(福岡県)
11/24(金)わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)(北海道)