歌姫キャロル・キングの半生を描いたミュージカル『ビューティフル』公開稽古レポート
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ミュージカル『ビューティフル』水樹奈々・平原綾香
2017年7月26日(水)から帝国劇場にて上演が始まるミュージカル『ビューティフル』。本作の公開稽古が5日(水)、同劇場内の稽古場にて披露され、水樹奈々、平原綾香、中川晃教、伊礼彼方、ソニン、武田真治ほかが、本番さながらに熱のこもった芝居をみせ、取材陣を歌のパワーで圧倒した。
本作はアメリカのシンガーソングライター、キャロル・キングの波乱万丈の半生を、彼女の大ヒットナンバーに乗せて描いた作品。2013年にブロードウェイで上演されて以降、今もなお全米各地やロンドンなどでロングラン公演となっている。
公開稽古では、5つのシーンとそこで歌われる楽曲が披露された。
『ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロー』
『ワン・ファイン・デイ』
『プレザンド・バレー・サンデー』
『ウォーキング・イン・ザ・レイン』
『ナチュラル・ウーマン』
ヒットメイカーとして地位を築く作曲家キャロル(水樹・平原/Wキャスト)と作詞家ジェリー(伊礼)のコンビだが、夫婦間には徐々に亀裂が入っていく。そして心の傷を乗り越え、再び歌いだすキャロル……。
芝居であり、そしてまだ稽古だとはわかっているが、生で歌うキャストの歌声は稽古場の空気を揺らし、まるで「キャロル・キング トリビュートライブ」といったところ。一曲一曲終わる度に、思わず拍手を送ってしまうほど。水樹が演じるキャロルと平原が演じるキャロルは声質も歌い方も異なるが、「キャロル・キング」の人生にもっと触れたいと思わせる熱量の高さを感じさせた。今回は場面ごとの公開なので、全ての場面がつながったとき、果たしてどのような物語となるのか、そしてキャロル・キングという人物がどのように描かれているのか、期待が膨らむばかりだ。
稽古後に行われた質疑応答では、「初めての公開稽古、どうでしたか?」と、まるで司会のようにナビゲートする中川のフリを受けて、まずは水樹から。「ここからあと3週間、積み上げていきます。本番の疑似体験ができて楽しかった」と、テンション高め。一方、平原はこの公開稽古の前に行われたリハーサルが公開稽古だと勘違いしていたそうで、「カメラが1台しかないから、ああ、こういうものなんだ……と。でも今、大勢のマスコミの前でやったのが本物とわかって納得しました」と照れ笑い。
劇中で新進作曲家のバリー・マンを演じる中川は、「バリーが実在の人物ということで調べてみたら、昨年自分が演じた『ジャージー・ボーイズ』のフランキー・ヴァリと、ほぼほぼ時代が重なっていることを知り、何かの縁を感じました」と語る。また『ジャージー・ボーイズ』『ビューティフル』に関わることで「音楽が主役のミュージカルが今、熱いんだと再発見し、またそれを求めてくださるお客様がたくさんいらっしゃるんだと気が付きました」とコメント。
中川がまるで芝居のセリフのように流暢に挨拶するのを聴いて困ったのが伊礼。「おまえ、喋るのがうますぎて……この後、俺がしゃべるのが……」と愚痴りつつ、挨拶。「キャロル・キングの楽曲は半分くらいは知っていたけれど、こんなにも他の人に曲を提供している人だとは思わなかった。当時のメロディをミュージカル・アレンジにしたことでより聴きやすくなっていると思う。とことんお二人(水樹・平原)に歌っていただいて、僕らは芝居の部分を支えていきたい。本国のクリエイターにも言われたが、この作品は“ミュージカル”とうたってはいますが、ほぼストレートプレイです。お芝居の中に彼らが作った歌が織り込まれている。そこが見どころだと思う」
バリーのパートナーである作詞家シンシア・ワイル役のソニンは「キャロル&ジェリーとバリー&シンシアの対比がすごくうまく描かれていると思う。さきほど披露した場面はとてもロマンティックだったけど、他の場面だと夫婦漫才みたいに笑えるところもあるんです」 二人のキャロルはそれぞれ違いがあるそうで、「水樹さんのキャロルは、子どものようなキャロルがいろいろな人生を経て成長していくのを見て、頭をなでてあげたくなるような……お姉さんとしての感情が生まれます。一方、綾香ちゃんのキャロルはがっと肩を組んで『そうか、いろいろあったよね……』って同調(共感)というか……私もキャロルと一緒に上っていかないと、という気持ちになります」と説明していた。
キャロル&ジェリーとバリー&シンシアの二組を見出した名プロデューサー、ドニー・カーシュナーを演じる武田は、「今日僕がどこにいたかわかりましたか? たまたま今日の場面は出番が少なかったんですが……」と取材陣を笑わせる。「僕が演じるドニーがいなければ、こいつらなんて世に出るような事がなかった、重要な、重要な役なんです」とさらに笑いを誘う武田は一転、マジメに語り出す。「本来ミュージカルは登場人物の気持ちを吐露するときに突然歌ったり踊り出したりしますが、この作品は時系列になっていて『こういう状況下からこんな曲が生まれた』という作られ方をしています。アンサンブルの方々は他のミュージカルだと、一節歌ったり、ハーモニーに徹することが多かった。でも本作では全員がソロナンバーを与えられている、極めて稀な作品なんです……全員にソロナンバーが……私以外は!!」
その言葉に「本当だ!」「いや、一フシあるよ!『捨てられて~♪』って」と女子チームが歌いだすと「なんて悲しいフレーズ……」とボヤく武田。これにはキャスト、スタッフ、取材陣も大笑いとなった。
取材の模様を撮影する武田さん。この時のお写真は武田さんのInstagramでご覧ください!
「演じる側になったからこそ気が付いた発見は?」という質問に対し水樹は「キャロル・キングの感性の凄さを感じる。何かを成し遂げる人ってすごいんだな。どんなときでも笑い飛ばして前に進むエネルギーがある」と語る。一方、平原は、「キャロルは誰一人傷付けないんです。どんなに冷たくされても、常に愛を持って生きてきたから『ユーヴ・ガット・ア・フレンド』という曲が生まれた。『すべての人に愛を』が、私がキャロル・キングを演じる上でのテーマなんです。彼女の人間性にも惚れています。人間性のすばらしさを伝えようと思って演じています。
そんな二人の発言を聴いて「二人とも『キャロル、LOVE』だね!」と中川がやさしく声をかけていた。
2014年にはトニー賞、2015年にはグラミー賞と英国のローレンス・オリヴィエ賞を受賞した珠玉のミュージカル『ビューティフル』。その全貌がまもなく姿を現す。
取材・文・撮影=こむらさき
■会場:帝国劇場
■日程:2017年7月26日(水)~8月26日(土)
水樹奈々/平原綾香(Wキャスト)
中川晃教 伊礼彼方 ソニン 武田真治 剣幸
伊藤広祥 神田恭兵 長谷川開 山田元 山野靖博
エリアンナ 菅谷真理恵 高城奈月子 MARIA-E ラリソン彩華 綿引さやか
■音楽・歌詞:ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング バリー・マン&シンシア・ワイル
■演出:マーク・ブルーニ
■振付:ジョシュ・プリンス
■オリジナルセットデザイン:デレク:マクレーン
■オリジナル衣裳デザイン:アレホ・ヴィエッティ
■オリジナル照明デザイン:ピーター・カックゾロースキー
■オーケストレーション・ヴォーカル&音楽アレンジ:スティーヴ・シドウェル
■演出リステージ:シェリー・バトラー
■振付リステージ:ジョイス・チッティツク
■音楽スーパーヴァイザー:ジェイソン・ハウランド