首藤康之の新たな挑戦はマイムカンパニー「CAVA」とコラボレーションした『レニングラード・ホテル』
-
ポスト -
シェア - 送る
ダンサーの首藤康之のチャレンジは本当に幅広い。これだけ貪欲にチャレンジが続いていると、それぞれはもうチャレンジではなく“日常”なっていると言えるかもしれない。男性4人だけのロミオとジュリエット『SHAKESPEARE'S R&J』(2005)で初のストレートプレイに出演したのがそもそもジャンルを超える始まりだと思うが、この作品はパルコ劇場での公演でもあり、東京バレエ団という拠点を巣立った首藤康之というバレエ界のビッグネーム、キャラクターを業界が放っておくわけがない。そんな流れは、ついには2016年のコクーン歌舞伎『四谷怪談』にまで広がっている。
僕のなかで異色だと思うのは、やはり小野寺修二と組んだ『空白に落ちた男』(2008、2010)であり、その『空白に落ちた男』が初顔合わせになった丸山和彰と組んだこの『レニングラード・ホテル』だろう。ともにマイムをベースにした新たな身体表現を模索している彼らとタッグを組んだのは、首藤の好奇心を刺激するものだったからだ。丸山とはその後も『くるみ割り人形』(SWITCH誌の30周年記念公演)で構成・演出を丸山が担い、首藤が演出・振付した『ドン・キホーテ』『コッペリア』には逆に丸山がCAVAのメンバーとも出演するという形で関係を積み重ね、『レニングラード・ホテル』につながった。
CAVAは、パントマイムをベースにダンス、演劇の要素を融合した無声映画を彷彿とさせるパフォーマンスを上演している。小野寺修二が手がける作品が時空間を混沌とさせた不安定さを描いていくのに対し、丸山のそれは、物語を紡ぎながら登場人物の心の動きを表現している。レイモン・ルフェーヴルやミシェル・ルグランのもとでピアニストやアレンジャーとして活躍したフランス人音楽家パトリス・ペリエラスが作曲、生演奏で出演した舞台『BARBER~その床屋を待たせた客~』(2011年初演)で、エスプリの効いた舞台空間を立ち上げたのがとても印象深い。
『レニングラード・ホテル』
この作品は、首藤からのオーダー(ホテル、それも東側のホテルを舞台にしたい、首藤がホテル側の人間を演じたい)から始まったという。ソビエト連邦(現・ロシア)の西部都市、レニングラードの山奥に構える廃墟のようなホテル「レニングラード・ホテル」を舞台に、支配人を中心としたホテルマンと、謎を抱えた男の宿泊客が繰り広げる密室復讐劇になるという。
なんだか今どき、舞台関係では見られないタイプの、おしゃれなチラシが興味をそそる。
首藤康之 ©️Toshiya Abe