浅田美代子と中村雅俊が“自己中”な花嫁の母と“お調子者”の花婿の父に! 毒舌ラブコメディ『ミッドナイト・イン・バリ』を語る
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浅田美代子、中村雅俊『ミッドナイト・イン・バリ』 撮影=髙村直希
バリでの結婚式を控えたカップルと、彼らのコテージを訪れた花嫁の母、花婿の父が繰り広げる、ハイスピード毒舌ラブコメディ『ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~』。人気脚本家・岡田惠和の書き下ろしを、気鋭の映画監督・深川栄洋が演出するという、この秋話題の四人芝居だ。サブタイトルにもあるように、結婚前夜に史上最悪な出来事に見舞われるカップル、幸子と治を演じるのは栗山千明と溝端淳平。幸子の母で、実はこの結婚には反対だったと言い出す“自己中”の敏子には浅田美代子、治の父で能天気な“お調子者”の久男には中村雅俊が扮する。6月末に行われた製作発表会見では、キャスト四人がバリ風の派手な衣裳に身を包んで登場し、早くも息の合ったかけあいを見せていた。なんとこれが18年ぶりの舞台出演となる浅田と、演出の深川とは映画『60歳のラブレター』以来の顔合わせとなる中村に、作品への想いや意気込みなどを聞いた。
――浅田さんは、舞台のお仕事をなさるのが18年ぶりだそうですが。
浅田:最初にこの台本をいただいた時、何も考えずに「わあ、面白そう!」と思って「やります、やりたいです」ってお返事をしたんですが、そのあとでよく考えたら18年ぶりだというので、今になって本当に緊張してきました(笑)。ただ、私が初舞台を踏んだのが、まさにシアタークリエのこの場所にあった、芸術座だったんですよね。ですから初心に戻るような気持ちで、一生懸命がんばりたいと思います。本当に個性豊かな四人の登場人物たちのお話なので、台本を読むだけでもかなり楽しかったんですけれども、これからそれをどう演出されるのか、今から稽古がとても楽しみです。
中村:僕も、長いキャリアの割には舞台の仕事はほとんどやっていないに等しいので、今回は非常に緊張しております。台本を読んだ時にはあまりにも面白いストーリーで、とても笑えたのにも関わらず、最終的には感動する脚本でした。これは、便乗するしかない!と思いました(笑)。深川監督とは以前『60歳のラブレター』(2009年)という映画を一緒にやらせていただいています。とても才能ある方でして、撮影の最中も「こんな細かい演出をするんだ?」と、出演者のおじさんおばさんたちで感心していたくらいだったので、ここでまた一緒にやれるのは大変うれしいです。セリフの量が多いので、たぶん俺は人一倍がんばらなければいけないなとも思っています。
――脚本の、どういうところが面白かったですか。
浅田:幸子と同じように、私も母と二人で暮らしていた時期があったんですよ。女同士だと、親子でもここまで言う?ってくらいの激しいケンカをしたりするんですよね。その感じがすごく出ていたので、ちょっと懐かしかったです。ケンカしたって、親子だから結局すぐに仲直りするものなんですよ。だけど他人の治くんは、すぐそばでそんな二人を見ていたらオロオロしちゃいますよね。溝端くんのファンから「そんなにいじめないで」って言われちゃうかもしれないですね(笑)。
中村:(溝端)淳平演じる治は、このお芝居の中で僕の息子なんですが、なぜ母親がいないのかという話になった時に、どうして母親ではなく、父親の俺のほうについてきたかということをみんなに説明する場面がありまして。そこのセリフは、自分でも泣けました。どうしても母親ではなく、父方の自分に残してくれって言ったのか。岡田さんの書かれたセリフはすごく感動的で。たぶんみなさんも観たらすぐに、わかっていただけると思います。
浅田:実はまだ、この四人で顔を合わせるのは三回目なんですけれど、なんだか会うたびに絆が濃くなっていく感じがしませんか。
中村:よく、ドラマや映画だと、キャストとスタッフが集まって本読みをしたり顔合わせをする時に、プロデューサーが全員をその場で客観的に見て、「あ、これはやっていけるな」とか「ちょっと不安があるかも」とか、いろいろな感情を抱くらしいんですよ。そういう感覚で、俺も今回この四人で集まったところを見ていて、これはうまく化学反応ができそうだ、いい方向に行けそうだなって直感があったんですよね。それともうひとつ、それぞれ舞台に立つのが久しぶりだったりして、そういうハンディキャップがあるということもちょうどいいんじゃないかって思うんです。そういう不安材料があるからこそ、がんばらなきゃ!って強く思うだろうし。そういう感情って、自分から動き出すためのエネルギーを生むきっかけになりそうな気がするんですよね。
中村雅俊 撮影=髙村直希
――舞台のお仕事ならではの楽しみとは。
浅田:お芝居をしている相手の間がちょっと違っただけで、昨日はめちゃくちゃ笑っていただけたのに、今日はどうしたんだろうなんてこともあったり、とても微妙なことで毎日違いが出てくるので、そういう楽しさは舞台ならではだと思いますね。今から、みんなで作り上げていくのが本当に楽しみです。それとやっぱり、雅俊さんが一番年上になるわけなんですが、失礼ですけど雅俊さんって全然怖くないじゃないですか。
中村:ハハハハ、そうかな。
浅田:偉そうにされないし、本当に優しいし。そのおかげで私たちも穏やかでいられるというか。これがとっても怖い人だと何も言えないけれど、今回はみんなでいろいろなことを言い合って稽古ができるんじゃないかな。だからといって、もちろん変に慣れ合っちゃうのはよくないですけどね。
中村:僕は舞台の仕事は5、6回しかやっていないので、何も偉そうなことは言えませんけどね。映画やテレビの場合は、場面ごとに感情を一回途切れさせて演じなければならなくて。次の場面ではまた気分を変えて違う感情を作って演じるんですね。それをつなげて一つの芝居の流れを作るわけですが、それが舞台だとずーっと感情は自然に流れていて、その上にいろんな芝居を重ねていくことになるので、そこに舞台ならではの醍醐味があるように思います。そして今回、俺が演じる役は爆弾男みたいなもので、いちいち何かを言うたびに「えっ、そんな事実があったの?」みたいなことが出てくるんですよ。非常にみなさんを混乱させる人物なので、そこは思いっきり楽しんで演じようかなと思っています。「実は俺……!」みたいなね(笑)。このキャラクターを演じるということ自体が、今回の自分の楽しみのひとつでもあります。
浅田:それと地方公演で、この四人でいろいろな土地に行けるのも私は楽しみです!
浅田美代子 撮影=髙村直希
――音楽の荻野清子さんが舞台上で生演奏をされていて、演出の深川さんによるともしかしたらキャストが歌を歌ったり踊ったりするかもしれないとのことでしたが。いろいろな要素が盛りだくさんで、楽しいステージになりそうですね。
中村:そうですね。若い二人は未来を見つめているんだけど、俺たち二人の場合はちょっと過去を振り返った時に、とても面白い過去を持っていて。それが運命的というか、奇跡的に、お互いに素敵な思い出として蘇ってきたりもするんです。
――そこに、大人もちょっと胸がキュンとするような。
浅田:そうですね。たくさん笑えて、キュンとしたりもできて、ホント楽しくなりそうです。
中村:俺の場合は、役柄の設定が多少荒唐無稽なところもあるんですけどね。結構、お客さんを脅かすファクターがいくつか。
浅田:あるよねー(笑)。
中村:少なくとも3つ、4つくらいはあるんじゃないかな。
――では稽古、本番に向けて楽しみなこと、準備しておきたいことは。
浅田:とにかくすごいセリフ量だから、早めに覚えなきゃとは思いつつも、身体を動かしながらでないと無理かなあと思っていて。それで今日、みんなにも聞いてみたんだけどまだ全然覚えていないと言っていたから、まだ大丈夫かって(笑)。
中村:うん。だけど俺らは、そういう意味ではハンディキャップがあると思うんだよね。集中力がなくなってきているし、持続力もなくなったし。一回記憶に入ったなと思っても、それを出す能力に欠けてたり(笑)。
浅田:そうか~、やっぱりヤバイかも(笑)。だけど身体を動かさないと、なかなか覚えられないんですよ。
中村:そう、相手のセリフに合わせて、会話にしていったほうが覚えやすいんだよね。
浅田:そうなの。特に今回は、会話劇だから。
中村:美代子ちゃんも、かなりたくさんしゃべらなきゃいけないからね(笑)。
浅田美代子、中村雅俊 撮影=髙村直希
――最後に、お客様に向けてお誘いメッセージをいただければと思うのですが。
浅田:毎日、観に来ていただいても、きっと飽きないと思いますよ!
中村:確かにそうかもしれないね。
浅田:初日と、千穐楽とでは絶対に違うと思いますし。同じことをやっているように見えても、きっと毎日相当違うことになりそうな気がします。
中村:そう、だけど飽きないだけじゃなく、ちゃんとした感動もそこにはありますからね。監督がどういう演出にするかだとは思いますけど、音楽的な要素が増えたり、下手したら四人芝居のはずなのに、生演奏しているミュージシャンが芝居に入ってくるなんてこともあるかもしれないし。
浅田:え~、本当~?(笑) でもそうか、舞台の上で演奏してくれているんですものね。何が起きるか、わからないですよ、稽古をしてみないと。
――お客様の中にはそれほど演劇を観慣れない方もいらっしゃるかもしれないですが。
浅田:そう、意外と演劇って敷居が高くて一歩が踏み出せない方もいるかもしれないですよね。そういう方の場合は、このお芝居はあえて演劇って思わない方がいいかもしれない。
中村:うん。これは四人の変わった個性のある奴らが集まって、何か面白いことをするんだ、とだけ思っていただければそれでいいかもね。
――その四人が、舞台上でどう楽しんだり、困ったり、笑ったりするかを楽しむ気分で足を運んでいただければ。
浅田:逆に、劇場へ行くのはちょっと億劫だって思っているような方のほうが、むしろ物語に入りやすいかもしれないですね。いきなり、堅苦しい古典作品!とかではないですから。
中村:そうだね。だけど、そういうカジュアルな入口だけど、実際に観てみたら感動の渦に巻き込まれちゃった、となるかもしれない。そういう素晴らしいものがお見せできるんじゃないかと思いますよ。
浅田:気が付いたら、なんか、感動してた!みたいなね。
中村:きっと、そうなりますよ。今回は特にネタバレになることが多いから、細かいストーリーが言えなくてちょっと抽象的になっちゃっていますけど。
浅田:きっと劇場を出る時には、誰もが楽しい気分で帰れると思います。
中村:それは絶対ですね、保証します(笑)。
浅田美代子、中村雅俊『ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~』 撮影=髙村直希
インタビュー・文=田中里津子 撮影=髙村直希
ピアノ=荻野清子 ギター=阿部寛 パーカッション=藤井珠緒
■脚本:岡田惠和
■演出:深川栄洋
■音楽・演奏:荻野清子
09月15日(金)~09月29日(日)東京 シアタークリエ (問合わせ)03-3201-7777
10月03日(火)静岡 富士市文化会館 ロゼシアター (問合わせ)0545-60-2500
10月05日(木)愛知 愛知県芸術劇場 (問合わせ)052-972-7466
10月07日(土)~08日(日)大阪 サンケイホールブリーゼ (問合わせ)06-6341-8888
10月10日(火)福岡 久留米シティプラザ (問合わせ)050-3539-8330
10月12日(木)鹿児島 鹿児島市民文化ホール第2 (問合わせ)050-3539-8330
10月14日(土)山口 ルネッサながと (問合わせ)0837-26-6001
10月17日(火)岡山 岡山市民会館 (問合わせ)086-223-2165
10月19日(木)愛知 豊川市文化会館 (問合わせ)0533-89-7082
10月22日(日)新潟 りゅーとぴあ (問合わせ)025-224-5521
10月24日(火)岩手 岩手県民会館 (問合わせ)019-624-1173
10月29日(日)千葉 印西市文化ホール (問合わせ)0476-42-8811
10月31日(火)~11月01日(水)石川 北國新聞赤羽ホール(問合わせ)076-260-3555