怪人二十面奏 2周年単独公演オフィシャルレポ到着
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怪人二十面奏
ここは東京キネマ倶楽部。うらぶれた劇場の雰囲気は、パノラマ島からタイムトリップしたような怪人二十面奏の出で立ちにピッタリだ。7月8日(土)、みずからのユニット名を冠に付けた最新アルバム『怪人二十面奏』を手に、怪人二十面奏は結成2周年を記念した単独公演『命日』を東京キネマ倶楽部で行なった。
昭和の香り漂ういなたい音色へ導かれ、KENとマコトが時空を超え迷い込んだように舞台へ姿を現した。彷徨い人(ファン)たちを妖しいまやかしの世界へ連れ出すように、ライブは「消心叫奏シネマ」から幕を開けた。哀愁と高揚を抱いたマコトの歌、彼のうらぶれた感情を、演奏陣は荒々しい音を通し後押ししてゆく。時空を超え現れた一夜の劇場が舞台だからこそ、今は現世を忘れ、踊り騒げばいい。ここは東京キネマ倶楽部に現れた、気持ちをとろけさせる一夜限りの社交場。ここは現代の鹿鳴館。気取りを捨て、楽しく宴に興じればいい。今宵は怪人二十面奏が、その先頭者たちとなる。
激しさへさらに熱を注ぐように、怪人二十面奏は「NUMBER TWENTY」を突き付けた。メガホンを片手に、台の上に右足を乗せ、マコトはがなるように観客たちを煽り続けてゆく。熱狂の中で興奮という夢を見せてやる。これぞ、怪人二十面奏流の魂を熱く滾らせる社交ダンスだ。
怪人二十面奏
「さぁ、キネマ踊れ!!」。怪人二十面奏は「アヴストラクト シニシズム」を通し極彩色な音色を響かせ、フロアで騒ぐ観客たちをもっともっと激しく身体を身悶えられるだろうと煽り立ててゆく。笑顔で身体を揺らす観客たち以上に、舞台上のメンバーたちはもっともっと狂いやがれと激しく歌と演奏をけしかけてきた。その喧騒の中から漂うまどろんだ昭和歌謡の香りが、胸を心地好く刺激していた。
「来ましたねぇ、本日『命日』となりました。非常に頭からワクワクしているんですけど、すごくドキドキもしてて。けど、みんなの姿を見て安心したせいか、ドキドキが気持ち良さに変わってきました。今日はありったけの声を僕らにぶつけてください。僕らも2年間の想いを全部ここにぶつけていこうと思ってます。いくぞー!! もっともっと想いをぶつけやがれ!!」
マコトの煽りを受け、シャッフルビートが軽快に流れだした。「デカダンス ゴーゴー」に合わせ、身体を激しく揺さぶる観客たち。黒い衝動を背負ったシェイクナンバーを、メンバーたちは舞台上から熱を降り注ぐようにぶつけてきた。 マコトの手振りに合わせ一緒に大きく手を振り、観客たちは頭の螺子をどんどん緩めていく。今はマコトの煽りへ導かれるまま身体も気持ちもシェイクさせればいい。それで身体が火照ったなら最高じゃない。何故ならそれが、先へ待ち受けている恍惚と絶叫のための前戯なのだから。
躍動するジャングルビートに合わせ、会場中の人たちが飛び跳ね出した。いや、跳ねているのは観客たちだけじゃない、何時しかメンバーたちもその場で飛び跳ね、躍動するダンスビートを挑発するようにぶつけてきた。「無理ゲー論」が、緩めた意識の螺子を振動で次々床へ落としていく。理性なんて、どんどん身体から振り落としてしまえ。何故ならここは、熱狂を描く社交場なのだから。
舞台は一変。ここは場末のうらぶれたサーカス小屋。妖しい見せ者たちが「儚夢」を通し、見せてはいけない禁断の宴の扉を開放。その演奏へ、微睡む憂国な音色に身を預け、今はただ無邪気に踊ろうか。その楽しさへ、何時しか想いを捧げたくなる!? そう意識が妄走してゆく。
いなたい昭和な匂いを嗅ぐわせ、派手な音が会場中を覆いだした。激しく踊る演奏の上で、マコトが哀愁抱いたメロディに乗せ「エフ」を歌いだした。禁断の世界を覗き見ながら、何時しかその楽しさに惹かれ踊り狂っていた。そんな気分が、なんとも快哉じゃない。
熱を抱きながら、怪人二十面奏が連れ出したのは哀愁に身悶え、ねっとり妖しく溺れる快楽の空間。「嘘憑きと盲目と」に身を委ね、互いに密接に心を寄せ合い、火照った熱を感じながら交わり続けたい。この禁断の熱狂が、気持ちを恍惚へ導いてゆく。マコトの熱く告白するような想いに刺激され、沸きだす熱に心が侵されていた。忘れたくない心地好い熱にずっとずっと溺れていたかった。
怪人二十面奏
ヒステリカルでフリーキーな音色が交錯する空間の中、マコトは「透明。」を歌い、観客たちを高揚した熱狂の行進へ連れ出した。マコトのねっとり絡み付く歌声に導かれ、気持ち揺れるままに身も心もとろけたい。何時しか誰もが、その演奏へどっぷり浸っていた。激しいマーチングの演奏に今は心地好く従いたい。
「一銭五厘ノ命ノ価値ハ」が意識を酩酊させたまま、観客たちを微睡みの空間へ墜としてゆく。誰もが恍惚に溺れていた。理性なんかとっくに忘れた身体へ、優しい呪縛のような歌声と音色が絶頂を得るための交響曲として響いてきた。時間も時代も忘れ、今はただたた目の前にある快楽をむさぼり喰べていたい気分だ。
「最高のアルバムが出来たと思っています。久しぶりに聴いたら安心したでしょ、痒いところに手が届くアルバムでしょ。僕らは変わらず、進化だけを遂げたアルバムを作りました。今日は周年公演です、こうやって2周年をワンマンで迎えられるなんてホントに嬉しいです。ここで怪人二十面奏のワンマンを見たことを、今後誇れるようにしていきます。今日は伝説のライブを見たということにしておきましょう。ここからもっと一つになりましょう、いいかー!!」
マコトの声が、さらに新しい空間の扉を開く合図だった。「新宿」が流れたとたん、そこには愛憎抱く妖しくも甘美な世界が広がっていた。何処かギラついたヤバい輝きを放ちながら、でも、スリリングでエッジ鋭い演奏から意識を離したくはなかった。甘さと危険を隣り合わせにした曲世界へ、何時しか身体は虜になっていた。
両腕をクロスさせ、観客たちを煽動してゆくマコト。彼は哀しきトリックスター!? それとも触れた人たちを興奮へ誘う雄々しきロックスター!? それがリアルでもフェイクでもどっちだっていいじゃない。今は、ただただ身体を刺激する演奏に煽られ騒いでいたい。舞台最前線に躍り出て煽るKENの姿が、とても雄々しく見えていた。
怪人二十面奏
裸足になったマコトが、昂る感情のまま絶叫を上げた。沸き上がる興奮を怪人二十面奏は「劣等感」へぶつけてきた。今にも客席へ落ちそうな勢いで観客たちへ挑みかかるマコト。なんて挑発的なステージングだ。マコトが手にしたナイフ型の赤いサイリウムを振ると同時に、会場中にも赤いサイリウムの海が誕生。その海は大きく波打っていた。それだけ怪人二十面奏の演奏に刺激を受け、踊り騒がずにいれなかったということ。感情のストッパー!? そんなものとっくに捨てちまったよ。暴走した気持ちは、もはや止められない。
“あなたを殺したい”、沸騰した感情へ強烈な愛憎を注ぐように哀愁激烈歌謡ナンバー「愛憎悪」を怪人二十面奏は突き付けた。胸を痛く揺さぶる切なさを抱きながら、その演奏は火照った身体を強烈に愛撫していった。その刺激に心はむせびながら、身体は身悶え続けていた。外と内から受けた刺激に、ただただ絶叫を覚えていた。KENも舞台最前線へ躍り出て、激しくギターの音を突き刺していた。
「ありがとう、それに尽きるわ。この2年間の憎しみやつらさや楽しみも全部ここでに詰め込んだつもりです」。
それまでの熱狂を、天空(ソラ)へ昇華するよう、怪人二十面奏は最後に切ないバラードの「命日」を優しく響かせた。心に渦巻く喜怒哀楽様々な感情をすべて燃やし尽くすように、何もかも一度滅してゆくよう、マコトは……怪人二十面奏は祈りを捧げるよう、今にも壊れそうな気持ちのままに「命日」を歌いあげて逝った。
「今日ここで2周年のワンマンが出来たことに意味があったと思ってる。みんなも、ここに来てくれたことに意味があったと思う。それを本当に嬉しく思います。ここで自分の納得のいくアルバムとワンマンができたらもう音楽を辞めてもいいかなと思ってたけど、こんな長く音楽に携わってきたら辞めないよね。それを決めた瞬間、めっちゃ“やったろう”と思って。今は、俺らのことを知らん人たちを好きにさせてやろうと思ってる。今の時代のヴィジュアル系バンドが好きな人たちにも、絶対に俺らの音楽って刺さると思ってるし、そういう人らが増えていったらもっと面白いことが出来るはず。怪人二十面奏の音楽なら絶対に刺さると思うから、“もっとやったれー”と思っていますし、ガツガツ行きます。そのためにも、大切なこの日に集まってくれたみなさんの力が大事になります。ホンマにありがとう。どうか、これからも怪人二十面奏をよろしくお願いします」(マコト)
怪人二十面奏
アンコールは、怪人二十面奏流刹那興奮煽りナンバー「想望カルト」からスタート。哀愁浪漫と激烈高揚な感情を混ぜ合わせた演奏へ……観客たちを激しく挑発してゆくステージングに刺激を受け高揚を覚えた観客たちが、ふたたび身体中から熱を発し全身でメンバーらを迎え入れていた。
その演奏は、触れた人たちの心に翼を授けてくれた。妖しい鱗粉を振りまきながら、薄闇の中へ見える光へ向かって羽ばたきたい。気持ちを恍惚へ連れ出すよう、「蝶」が心地好い旋律の翼をはためかせ会場の中を舞い踊っていた。誰もがその両手を笑顔で羽ばたかせていた。
最後は、みずからの存在の証を示すように怪人二十面奏は「其の証」をぶつけてきた。己の存在を熱く身体へ刻みつけるように、彼らは荒ぶる感情を哀愁歌謡ロックに乗せ彩色派手に突き付けた。ここで感じた熱狂と絶頂を、忘れられない興奮の記憶として身体の奥底へ記すよう、彼らは最後まで熱狂を突き刺してくれた。最後の最後に場内を覆い尽くした“ラーララララ”の合唱が、その証を示していた。
怪人二十面奏は10月から11月にかけ、大阪公演『D'坂の殺人事件』、名古屋公演『大須地獄』、東京公演『オルガン坂に見る夢は』と題し、東名阪を舞台にワンマン公演『昼は夢 夜ぞ現』を行なう。 ファイナル公演は、マコトのバースデーを兼ねて実施。こちらも楽しみにしていて欲しい。
取材・文=長澤智典
「昼は夢 夜ぞ現」(ひるはゆめ よぞうつつ)
全公演オープニングゲスト:The Benjamin
◆大阪公演「D'坂の殺人事件」
2017年10月14日(土)大阪LIVE HOUSE D'
◆名古屋公演「大須地獄」
2017年10月29日(日)名古屋UNLIMITS
◆東京公演「オルガン坂に見る夢は」
2017年11月26日(日) 渋谷STARLOUNGE
開場/開演:17:00/17:30
料金:adv.,\3,800/door.\4,800 *1DRINK別途