がま君とかえる君がスイングする!川平慈英&鈴木壮麻のブロードウェイミュージカル『フロッグとトード』稽古場レポート
ブロードウェイミュージカル『フロッグとトード~がま君とかえる君の春夏秋冬~』稽古場
小学校の教科書でも馴染みのある児童文学、がま君とかえる君の「ふたりはともだち」を原作としたブロードウェイミュージカル『フロッグとトード~がま君とかえる君の春夏秋冬~』が今年2017年も上演される。2007年初演以来、再演を重ね、今年は7月23日(日)の志木市民会館パルシティを皮切りに、東京芸術劇場プレイハウス、彩の国さいたま芸術劇場大ホール他、全国11都市を巡演する。主演は、川平慈英と鈴木壮麻。SPICEでは公開稽古の模様をレポートする。
演出を手がける鈴木裕美は、2017年版となる今回の作品について次のようにコメントした。「曲もいいし原作もとても可愛らしいですし、俳優もスタッフにも素晴らしいエンタテイナーの皆さんが揃ってくださいました。2017年版の新しい魅力は、物語の魅力をより力強く、ストレートにお伝えできているのではないかというところです」
川平慈英は、初演以来5回連続でがま君をつとめ続けている。「早く初日が来てほしいという気持ちと、まだもう少し稽古したいという気持ちが混在しています。5回目の出演で、やっと頭からエンディングまでがつながった気もします。前回までは、ワンシーンワンシーン、肩ひじをはって力技でやっていた点もあったように思うんです。年も年なので力技ではなく(笑)、素晴らしく揺るぎない音楽と演出の波にのって最後まで演じたいです」
左から、宮菜穂子、戸井勝海、鈴木壮麻、川平慈英、樹里咲穂、中山昇、鈴木裕美。『フロッグとトード~がま君とかえる君の春夏秋冬~』公開稽古
マスコミ向けに公開されたのは、限られたシーンのみであった。しかし鈴木壮麻が演じるアマガエルの《かえる君》のいい男っぷりには、心のトゲが消え、「人に優しくしよう」という気持ちにさせられた。川平慈英が演じるガマガエルの《がま君》のクレイジーぶりは爆笑の連続! 喜怒哀楽が激しく、かなりの変わり者にも関わらず、不思議なほど愛らしいキャラに仕上がっている。宝塚歌劇団OGの樹里咲穂をはじめ、戸井勝海、中山昇、宮菜穂子ら4人が盛り上げるストーリー、音楽、ダンスは、ミュージカルファンにこそ観てほしい。稽古後の会見でのコメントをまじえつつ、公開されたシーンを紹介する。
シーン1:プロローグ 夢
“LADIES & GENTLEMEN!”のアナウンスとビッグバンドジャズで、プロローグが始まった。ベッドには、冬眠中のかえる君(鈴木壮麻)とがま君(川平慈英)。4羽の鳥(樹里咲穂、戸井勝海、中山昇、宮菜穂子)が登場すると、稽古場はパっと賑やかに! かえる君とがま君、ふたりはお互いの夢の中に登場しあうほど仲良し。
癇癪持ちで変人のがま君のことを、かえる君が「彼こそ最高の友だちさ♪ 僕にいわせると誰より彼こそ一番♪」と歌うと、他の4羽の鳥が「ええー!?」とブーイングまじりの合いの手を打つ。おしゃれで可愛い、ふたりの衣装にも注目!
安定の歌と踊りを披露する鈴木壮麻(かえる君)は、2015年の公演をふり返る。「前回は死に物狂いでやらせていただきましたが、大人の皆さんや子たちの反応から、元気をたくさんもらい背中を押してもらいました。色々な町々を回り、大人、子ども、おじいちゃん、おばあちゃんまで、色々な方からエールをいただきながら、慈英君、そしてこのキャスト、スタッフのみんなと一緒に、この小動物の世界を共感していきたいです」
シーン2:春がきた
春が来て、冬眠から覚めたかえる君の、のびやかな歌で始まる。さっそくがま君の家に遊びに行くと、がま君はまだベッドの中。目覚まし時計を壊して(正確には、ぶっ壊して!)「5月になったら起こして」と言ってまた眠ってしまう。そこで逆上しないのが、かえる君の素晴らしいところ。壁のカレンダーを先取りして5月までめくって…。
シーン3:早く芽を出せ
超ご機嫌に、ブラブラブラ~♪ブラブラブラブラァ~♪と美声を披露しながら登場したがま君。「実は、今年は花壇をつくろうと思っているんだ!」と宣言する。それに対し、4羽の鳥たちは冷ややかな反応。「出来ると思う?」「それ聞く?」「確実に投げ出すよ」「自分を分ってないよね」と手加減のないリアクションに記者席にクスクス笑いが続く中、親友のかえる君さえ、開口一番に「本気?」と問うたのには思わず爆笑した。
会見で「この作品で全国を回れることが楽しみ」と切り出したのは樹里咲穂。「各地で何を食べようか、どこを観光しようかと、ずっと考えています。でも、まずはお仕事をちゃんとしないと」と笑いを誘うと、共演者たちからは「考えてる考えてる!」「前のりで泊まろう!とか作戦たててる」と総ツッコミ。
本作では、川平・鈴木以外の4人が、亀、リス、ネズミやカタツムリなど様々なキャラクターを演じることから、次のようなコメントをした。
「がま君とかえる君が生き生きと生きているのが魅力のひとつですが、その周りに登場する色んなキャラクターたちも、ただ主役の2人を賑やかしに出てくるのではなく、それぞれが、その役、その瞬間を生きていて、キラキラと輝いてみえています。まだまだ何が起こるか分らないところもあり、演じる側も楽しんでいます。この空気感を全国にお届けできたらうれしいです」
かえる君の力を借り、かえる君からもらったお花の種を蒔き、お水を上げてまたもご機嫌。
かえる君:そうすれば、すぐに花壇ができるから。
がま君:すぐって、どれくらい?
かえる君:すぐは、じきさ♪
がま君:じきって、どれくらい?
かえる君:じきは、すぐさ。
がま君:……。オゥケーイ!わかりました!!
他愛ないやり取りに、ほっこり。それも束の間、がま君は、水をやったそばから埋めた種に「レッツゴー!」「芽を出せ!」「め・を・だ・せーー!!」と怒鳴りはじめる始末。がま君も川平も自由奔放で、どこまでが台本でどこからがアドリブか正直わからないが、キレてる姿さえいちいち可笑しくて憎めない。ここでも、かえる君のウィットと穏やかさに“いなされ”て、がま君は心を鎮めるのだった。クレイジーながま君と、人格者かえる君。でこぼこコンビが成立する優しい世界に、心が癒される。
中村昇は、この作品には「人のことが嫌いにならない。みんなが仲良くなれて、ひとつになれる魅力がある」と語った。宮菜穂子によれば、稽古期間は「笑ってるんだか泣いているんだか分らないような楽しい毎日」だという。会見の際に、キャストたちが誰かのコメントに笑ったり、ツッコミを入れたりする賑やかな様子からも、カンパニーの雰囲気の良さを感じられた。
シーン4:お手紙
時がたち、がま君が蒔いた種が花を咲かせる。幸せいっぱい!得意気ながま君だったが、現在時刻を聞き、一気にテンションが落ちる。理由を聞かれたがま君は、苦々しい表情で「10時は郵便が届く時間。一度も手紙をもらったことがないから、一日で一番悲しい時間」なのだと、かえる君に打ち明けた。
できる男(?)かえる君は、急いで家に帰ると、さっそくペンをとる。コケティッシュなねずみさん(宮菜穂子)を意にも介さず、がま君への手紙をしたためると、通りかかったカタツムリ君に手紙を託すのだった。かえる君に頼られ、やる気みなぎるカタツムリ君は、カントリー調のナンバーを歌い上げ、手紙を届けに出発する。
ウエスタンスタイルのカタツムリ君を演じるのは、今回が初出演の戸井勝海。戸井は「『フロッグとトード』の世界が大好きで、できればこの世界でずっと生きていたいくらいだ」と本作の魅力を語った。
大切な人のために動く、生きる、泣く、笑う
会見の最後は、川平慈英が締めくくった。
「50を超えたおっさん2人と50近い方々が、汗まみれになってステージを駆け回っているのですが、それがものすごく幸せな空間になっています。 おもちゃ箱をひっくり返したような素晴らしいステージで、ビジュアル的にもお子さんにも楽しんで頂けると思います。大切な人のために、動く、生きる、泣く、笑うことのすごさ、素晴らしさを体験いただける2時間をお届けしますので、ぜひぜひ劇場に足をお運びください。お待ちしてます!」
実力派キャストたちが、心を込め、全力でつくる優しい世界『フロッグとトード』は、7月23日より全国の劇場を巡演する予定だ。
取材・文・撮影=塚田史香
■Music by Robert Reale
■Book and Lyrics by Willie Reale
■演出:鈴木裕美
■上演台本・訳詞:高橋亜子
■音楽監督:八幡茂
■出演:
川平慈英 鈴木壮麻
戸井勝海/中山昇 宮菜穂子/樹里咲穂
キーボード=飯田緑子
■協力:文化出版局
■企画・製作:シーエイティプロデュース
<志木>志木市民会館パルシティ 2017年7月23日(日)
<東京>東京芸術劇場 プレイハウス 2017年8月16日(水)~20日(日)
<大阪>森ノ宮ピロティホール 2017年8月23日(水)~24日(木)
<埼玉>彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 2017年8月26日(土)~27日(日)