drmの完全にワンマンでしかないワンマンライブ――『ベースだけどワンマンです。3本目』をレポート
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ベースだけどワンマンです。3本目
2017.7.17(mon) 池袋LIVE INN ROSA
これほどまでにワンマンらしく、そして完全にワンマンでしかないワンマンライブは、そうあるものではない。
ニコ動の“演奏してみた”カテゴリにおける動画投稿活動や、まらしぃ及びタブクリアとの連携によるバンド・logical emotionでの活動も行っているベーシスト・drmが、このたび池袋LIVE INN ROSA にて行ったのは、その名も『ベースだけどワンマンです。3本目』と題されたライブ。現場には男女比ほぼほぼ半々くらいのオーディエンスが、まさに大挙して詰めかけることに。
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トレードマークであるエキセントリックなマスクと、髪の毛を全て覆い尽くすロングタイプのニット帽を着けたdrmが、たった1本のベースを肩にかけて、同期のオケを背景にそれをひたすら弾きまくる。普通に言葉で表してしまえば、このワンンライブの主旨は至ってシンプルなものでしかないが、それでいてこの夜のdrmがたった1本のベースから生み出してみせた音像や光景は、シンプルどころかむしろ多芸さから生み出させる、多彩さに溢れていたと言えるだろう。
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なにしろ、ベースの音としてはエフェクティブ過ぎるくらいの奥行きと厚みを持った音色で、いきなりタッピングをカマしながらそのテクニック量販店ぶりを発揮した1曲目の「Megazine」からして、drmの個性は既にダダ漏れ状態となっており、集った観客たちはしょっぱなから鮮烈なカウンターパンチを食らわせられることになったのだった。
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なお、ニコ動上で以前『けものフレンズ』のOP曲をアップした際には、「首のすわらないフレンズなんだね!」との絶妙なコメントが出されたこともあるくらい、首を中心とした全身を激しく揺らせながらプレイするステージングも相変わらず健在だ。逆に言えばよくあれだけ激しく動きながらあんなにも巧みにベースを弾きこなせるものだ、とつい感心をしてしまったのは何も筆者だけではあるまい。
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また、お次の「Hello Meow」ではその可愛らしい曲タイトルとは裏腹に、硬い乾麺パスタを茹でずにそのまま食べさせられているのでは?!という錯覚に陥りそうなほど、バッキバキにしてベッキベキでボッキボキな派手めスラップが、その場に居合わせた人々を文字通りに震わせていた事実もなかなかに興味深い点だったはず。
ちなみに、こうしたライブレポートなどでは「その場に居合わせた人々の“心を”震わせる」という文章表現が使われるケースが往々にしてある一方、ことdrmのライブにおいては前述の書き方こそが最も相応しい、という点も敢えてここで強調しておきたい。
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そもそも、低音というもの自体が聴く側の腹の底にズンと響いてくるような性質を持っている、という事実は大前提であるとして。それにくわえて、drmのライブに関してはボーカルレスなところに持ってきて、ギターなりドラムなどベース以外の音が全て打ち込みの音にて供されるせいか、聴こえてくるサウンドがあくまでベースのベースによるベースのためのつくりとなっているのである。
その結果、より低音が前面に出てくるかたちとなるのは必至であり、今回のライブでも「Hello Meow」に限らず、さまざまな場面において聴いている側の身体表面にビリビリとした振動を感じたり、なんなら内臓ごとブルブルと震わせられるようなバイブスが、文字通りに集った人々のことを襲っていたことになるのだ。
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「コンバンハ!本日ハ、皆様オ集マリイタダキマシテ、アリガトウゴザイマス!!」
あらかじめ自宅にてボイスチェンジャーを使い録音してきたという挨拶がわりの仕込みMCが流されるなか、本人がその言葉にアテブリをしていく様はそこそこシュールだが、もはやこれもdrmのライブにおける名物になってきた感がある。
ただし、あらかじめ録音されたMCには決定的な弱点も……。そう、ダイレクトにファンとの意志疎通がはかれないだけに、ステージ上にてパフォーマンスする側にしても、それを楽しむファン側にしても、もどかしさを感じてしまう場面が生まれてしまう可能性は大となってしまうわけだ。
しかしながら、そうしたウィークポイントをカバーすることもdrmのライブはよく考えられており、今回は文明の利器であるスマホ&SNSアプリを使った斬新なコミュニケーション方法が観客との間でとられることとあいなった。以下、そのログをここに一部ではあるが晒してみるとしよう。
18:01 drm こんばんは。
18:01 drm genki?
18:01 drm うんこ?
(場内から、うんこコールが起こる(笑))
18:01 drm 汚いからそう言うのやめようよ
18:01 drm 良く聞かれるあれを言います。どこから来ましたか!
18:02 drm 関東の人は指で1を、関西の人は指で2を、真ん中らへんの人は3を、その他は自分の中指を見てなさい。
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さて。ここでの「見てなさい」はおそらく「見せなさい」を誤字ったものだと思われるが、そのあたりもライブならではのご愛嬌といったところ。そして、このようなかたちでのやりとりがなされたあとのライブ後半では「千本桜」や「デリヘル呼んだら君が来た」などボカロ曲を数曲披露する場面もあり、今回のワンマンもdrmならではのファンサービス精神が随所に活かされたものになっていたことは、まさしく誰がみても歴然。
故に、アンコールを求める声が場内からあがったのも当然のことで、ここではオケ無しのれっきとしたベースソロスタイルで「ナイト・オブ・ナイツ」を披露してみせ、彼はベースという楽器に対して我々が持っている既成概念のようなものを、ひょうひょうとした表情で軽々と超えて見せたのだった。
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ちなみに、このアンコール時にはラストの「ワールズエンドダンスホール」を演奏する前に、9月15日に大阪RUIDOにて『ベースだけどワンマンです。大阪編』が開催されることが、再びスマホ&SNSアプリを用いて告知される一幕も。
というわけで、関西圏在住でまだdrmを生体験したことがないという方は、このベースによるベースのための、完全にワンマンでしかないワンマンライブを是非とも一度味わってみていただきたい。予想を上回る「ベースたった1本でここまでやっちゃう?」的な驚きが、そこには必ずあるはずだ。
取材・文=杉江由紀
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2017.7.17(mon) 池袋LIVE INN ROSA
2. Hello Meow
3. ロボットダンス
4. sakyu
5. 新曲(クロアチア)
6. 日曜日はMonday
7. Get Low
8. シケモク
9. トライアングルどら息子
10. 魚800!
11. ないないない
12. たにしげひっきー
13. 千本桜
14. エイリアンエイリアン
15. Just Be Friends
16. 炉心融解
17. デリヘル呼んだら君が来た
18. パンダヒーロー
19. メランコリック
[ENCORE]
20. ベースソロ(ナイト・オブ・ナイツ)
21. ワールズエンドダンスホール