名古屋にて、戯曲のブラッシュアップ講座『ナビイチリーディング』が本格始動!

2017.7.27
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舞台

『ナビイチリーディング』プレ開催(2016年9月)より、リーディング後のディスカッション風景


“書きたい人”の技術と意欲を後押しする、月に1度の戯曲向上委員会

名古屋市東部に位置する天白区の住宅街に佇む「ナビロフト」は、1994年に北村想率いる〈プロジェクト・ナビ〉のアトリエ兼劇場として開設。2003年のナビ解散以降は、いわゆる貸し小屋として独立運営が行われてきた小劇場だ。昨年2016年には、俳優としての活動をメインに演出や劇作も手がけ、〈てんぷくプロ〉に所属する傍ら〈名古屋演劇教室〉を主宰、〈KUDAN Project〉などでプロデューサーとしても手腕を振るう小熊ヒデジが運営に参加。新体制を整え、大幅なリニューアルを行ってきた。

「ナビロフト」リニューアルの一環として、客席を桟敷席から椅子席に変更。前列に桟敷席を追加すれば100名まで収容可能に

これまで通り貸し小屋としての運営をベースにしながら、さまざまな舞台芸術事業を企画・運営・実施することを目的として、地域に根付いた劇場運営や東海エリアの演劇シーン活性化のための多彩なアプローチを行い、全国のアーティストや劇場とのネットワーク構築も視野に入れた試みを次々と仕掛けていっているのだ。先日、当サイトで紹介した『INDEPENDENT:NGY』(こちらの記事を参照)に続き、今回紹介する『ナビイチリーディング』もそんな取り組みのひとつで、こちらは〈日本劇作家協会東海支部〉(以下〈東海支部〉)とタッグを組み、7月31日(月)から本格始動する月イチ開催イベントである。

そもそもこの立ち上げの大元には〈日本劇作家協会〉の本部が東京・神奈川で毎月開催している『月いちリーディング』の存在があり、2010年に始まったこの企画は、公募により選ばれた戯曲を俳優がリーディングし、劇作家、俳優、ゲスト演劇人、観客の全員でディスカッションすることによって、より魅力的な戯曲にするための支援を行っている戯曲のブラッシュアップ講座である。

今では本家から派生したエリア版も大阪や北九州で実施されているが、〈東海支部〉は独立開催を選択することに。
「『月いちリーディング』に乗っかってやることも可能だという話も聞いたんですけど、それだと頻繁にできるわけじゃないし、独自の路線で1回お試しでやってみようということで、昨年の9月にプレ開催を行ったんです」と、〈東海支部〉事務局長で『ナビイチリーディング』代表の鹿目由紀(劇団あおきりみかん主宰・劇作家・演出家)。

「ナビロフト」と共催することになった経緯については、
「僕が「ナビロフト」に関わり始めた最初の頃に、〈東海支部〉の方達と何か一緒にやれたらなっていう思いがあって、はせ(ひろいち)君と平塚(直隆、現東海支部長)君と会って話をしたんですよ。その時に、「あんなことができる」「こんなことができるかも」っていう話をした幾つかのうちのひとつにこの企画があったんです」と、小熊。

左から・「ナビロフト」プロデューサーの小熊ヒデジ、〈日本劇作家協会東海支部〉事務局長で『ナビイチリーディング』代表の鹿目由紀

また鹿目は、
「〈東海支部〉はこれまで『劇王』(今や全国区となった、観客投票型の短編戯曲上演コンテスト)みたいな派手な企画をずっとやってきて、実績も出てきて『劇王Ⅺ~アジア大会~』(今年9月に開催予定)までやることになったんですけど、その一方で雑になってる部分もあるかなと。もっと細やかに劇作の質の高めていくことで、より面白い作品が生まれると思うんです。それと東海支部イベントで戯曲の選考会があった時、内部で感想を言い合ったんですけど、それがすごく良くて。なかなか正直に思ったことを面と向かって言う事がないので、世代を超えたところでも風通しの良い意見が交流されるといいんじゃないかなと。これを機会に自己研鑽できる企画が増えていくといいな、と思ってるんです」とも。

『劇王』を生み出し、『ミノカモ学生演劇祭』や【俳優A賞】を独自に立ち上げるなど、“我が道をひた走る”〈東海支部〉らしいやり方と、新生「ナビロフト」の方向性が合致し、今回の実現に至ったというわけだ。独立企画ではあるものの、システム自体は本部の方法を踏襲、回ごとにキャスティングや調整などを行う「コーディネーター」と、当日リーディングを調えて進行する「ファシリテーター」を置き、「ディスカッション・ゲスト」も毎回招く予定だという。

実際、昨年9月に開催されたプレ企画では、コーディネーターを鹿目、ファシリテーターを長谷川公次郎(虚構オメガ)が務め、舟橋“委員長”慶子(シアターUNA!)の戯曲『木村さんと鈴木さん』を題材にリーディングを行い、佃典彦(劇団B級遊撃隊)と平塚直隆(オイスターズ)をゲストに招いてディスカッションを行った。この日訪れた15名ほどの観客も数々の意見を述べる中、劇作家自身からも「今までト書きを習ったことがないんですが、皆さんはどう書いていますか?」といった質問が投げかけられるなど、活発な意見交換がなされていた。

プレ開催のディスカッション風景より。向かって左から・ファシリテーターの長谷川公次郎、ディスカッションゲストの佃典彦、戯曲を提供した劇作家の舟橋“委員長”慶子、ディスカッションゲストの平塚直隆

好評を博したプレ開催から10ヶ月、この7月からついに本格始動することとなった『ナビイチリーディング』。現時点では10月までの開催が決定しており(9月は『劇王Ⅺ~アジア大会~』開催のため休み)、各回の概要は以下の通りだ。


【ナビイチリーディング 今後の開催予定】  ※会場はいずれも「ナビロフト」
◆7月31日(月)19:30~21:30
コーディネーター/鹿目由紀(劇団あおきりみかん)
ファシリテーター/中内こもる(劇団中内(仮))
今月の戯曲/鏡味富美子『寒椿となわとび』
ディスカッション・ゲスト/刈馬カオス(刈馬演劇設計社)
上演キャスト/おぐりまさこ(空宙空地)、鈴木亜由子(星の女子さん)
◆8月28日(月)19:30~21:30
コーディネーター/鹿目由紀(劇団あおきりみかん)
ファシリテーター/(未定)
今月の戯曲/天野順一朗(劇団「放電家族」)『(作品選定中)』
ディスカッション・ゲスト/はせひろいち(劇団ジャブジャブサーキット/予定)
上演キャスト/(未定)
◆10月30日(月)19:30~21:30
コーディネーター/(未定)
ファシリテーター/(未定)
今月の戯曲/『(※作品を公募)』
ディスカッション・ゲスト/(未定)
上演キャスト/(未定)

 

当面のコーディネーターは代表の鹿目が、またファシリテーターと今月の戯曲、ディスカッション・ゲストについてもそれぞれ東海支部員が担当するが、3回目となる10月のキャスティングは未定、この回から戯曲も公募形式で行うという。これについて鹿目は、
「別に劇作家に固定しなくてもいいんじゃないかなと。あと、〈東海支部〉に入ってる人以外でも書きたい人がいると思うので、そういう人にお願いしたいなと思ってます。自分の戯曲をリーディングしてもらいたくて、さらに言うとアドバイスをもらいたいっていう人であれば」と。

極端な話、初めて戯曲を書くという人でも応募可能、と門戸は広い。とはいえ、ブラッシュアップを目的としている以上、選考対象は自ずとある程度のレベルに達している戯曲になってくるため、挑む側はその心づもりで。
「目標としては、これを経験した人で劇作家協会の【新人戯曲賞】の最終候補まで行くとか、受賞まで行ってくれたら嬉しいし、結果が伴う建設的なことになるといいなぁと思うんです」

我こそは! という方は下記参照の上、10月開催の戯曲公募にぜひトライを。自身の戯曲を高めたい人、俳優の声で読み上げてもらう機会を求めている人はもちろん、単にドラマリーディングを楽しみたい人、ディスカッションに参加してみたい人、或いは皆の意見に黙って耳を傾けたい人も歓迎とのことなので、観客としても気軽にご参加を!


【戯曲の公募要項】

募集戯曲/短編、中編、長編、応相談。上演済みのものでも可。 ※応募多数の場合は、戯曲を読んだ上で選考
条件/10月30日(月)のイベントに参加可能な方
問い合わせ/下記参照

 
イベント情報
ナビイチリーディング

■日時:2017年7月31日(月)19:30~21:30 ※以降、ほぼ毎月1回開催予定
■会場:ナビロフト(名古屋市天白区井口2-902)
■料金:各回 参加費500円(はナビロフトHPより予約)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線「伏見」駅下車、鶴舞線に乗り換え「原」駅下車、1番出口から徒歩8分
■問い合わせ:日本劇作家協会東海支部HP お問い合わせフォーム http://jpatokai.php.xdomain.jp
       Loft Plan 090-9929-8459
■公式サイト:ナビロフト http://naviloft1994.wixsite.com/navi-loft