luz「人生で、一番幸せな夜をありがとう」 23年間生きてきた証と24年目のはじまり――Zepp DiverCity公演をレポート
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luz 2nd TOUR-Reflexión-
2017.7.23(sun) 東京Zepp DiverCity
愛される、ということはになかなか難しい。ほとんどの人間が何かしらのかたちで愛されたいという欲求を持ちながら生きている一方、残念ながら自らの願い望むような愛を思うように受けることが出来ない、というケースは世の中にいくらでも転がっている。
だが、この夜その空間には多くの人々からの愛を一身に受けて輝く、luzというボーカリストの姿があった。なにしろ、この日はちょうど彼にとっての24歳を迎える大切な誕生日。と同時に、最新アルバム『Reflexión』を引っ提げての『luz 2nd TOUR-Reflexión-』が東京Zepp DiverCityにてファイナルを迎えるタイミングでもあり、この特別な日に対してはサブタイトルとして“TOUR FINAL&BIRTH DAY”の文字が添えられていたのは当然のこと。
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「東京のみなさん、こんばんは! あらためまして……24歳になりました!! いやー、まだ実感全く湧いていないんですけどねぇ。でも、どう頑張っても23歳にはもう戻れませんから(笑)、24歳になって初のライブであると同時にツアーファイナルでもある今日、僕はこの場で全力を皆にお届けするので、お前らもしっかりと着いてこいよ!」
アルバム『Reflexión』の中において最重要キーとなっていた楽曲「REFLEXIÓN」や、文字通りにアダルティな色合いを含んだ同アルバム収録の「R-18」、彼のライブではもはやおなじみの「え?あぁ、そう。」の3曲を一気に歌い倒してみせると、luzはまずこのようにオーディエンスに対しての言葉を投げ掛けた。
また、ここからの本編中盤では極彩色のライティングの中でのパフォーマンスがやけに目を引いた「DOLL」、シャッフルのリズムの中でluzが伸び伸びとしたボーカリゼイションを聴かせた「クイーンオブハート」などでひとしきり盛り上がっただけでなく、自身の本名とluzというアーティスト名に由来するのであろうシリアスな「光」や、バラード「僕の外側」をハンドマイクではなく、スタンドマイクスタイルにて熱唱。
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「凄いねぇ! 夢みたいです。こんなにたくさんの人に来てもらえるなんて、ほんと皆ありがとう。自分にとっては今までで一番大きい会場なので、開演前は緊張してたんですよ。「どないしようかな?!」と思って(笑)。でも、これだけの人たちが来てくれて、バンドメンバーさんたちも精一杯やってくれているのに、自分だけビビっていてもしょうがないなと思って、気持ちを切り替えました」
なお、ここからは今ツアーのluzを支えてくれているバンドメンバーを、luzがひとりずつ丁寧に紹介していくための時間がたっぷりととられていた。参考までに少し解説をしておくと、Leda(Gt / Far East Dizain)、MASASHI(Ba / Versailles)、LEVIN(Dr / La’cryma Christi)に、さらに今ツアーから初参加することになったというRENO(Gt)の計5人は、名うてのプレイヤーが終結したそうそうたる面々となる。この秀逸な人選センスには、luzの持つ個性がいかんなく反映されていると言える。
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そして、このMCタイミングでは観客からのアンケートを基に、luzとサポートメンバーが20分にもわたる長丁場のトークを展開するという一幕も。この日については、《アーティスト・ミュージシャンになっていなかったら、何をしていたと思いますか》《ツアーが始まる前と、ファイナルを迎えた今で各メンバーに対する印象は違いますか》《本日地球最後の日となりました。このメンバーの中だったら、誰と何をしたいですか》というお題が出されたのだが……最後の質問ではluzのことを選んでくれるメンバーがなかなか出てこず、いじけかけたluzに対してRENOが「わかった! 俺が愛してやるから!!」と堂々の宣言をして観客をおおいに湧かせる場面があったことも、ここに付記しておきたい。(しかも、その言葉の直後にはluzとRENOが熱いハグが交わすことに。いきなりの展開に狂喜したファンが多数見受けられた)
いずれにしても、前述した“luzを選んでくれない”のくだりさえ、メンバーたちのフリを含んだ軽妙なトーク内容となっていたわけで、その和気あいあいとした微笑ましいやりとりたちからは、今ツアーでluzがバンドメンバーたちと素晴らしい親睦を深めてきたことがきっとよくわかったはず。
そこからの本編後半では、起爆剤的な役割を果たしていた「Labyrinth」に始まり、バンドメンバーの放つ音とluzのカラミが一際に増していた「ビーストインザビューティ」(Reflexión ver.)、場内がヘドバンの嵐となりluzもノースリーブ姿でアグレッシブな煽りをみせた「DISORDER」、アッパーでダイナミックな「Dearest, Dearest」が連打され、それこそluzをフロントに据えたロックバンドのライブと見まごうような、烈しいステージングが我々を圧倒したのだった。
アンコールでは再びメンバーとの会話が繰り広げられ、ここでは各メンバーからluzへの感謝の言葉と、luzからのメンバーへの感謝が述べられたほか、誕生日ならではなサプライズバースデーケーキも登場。だが、そのあとに続いたluzによる静かな独白もこの夜のライブを語るうえでは、欠かせない大事な場面だったのではなかろうか。
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「……今、僕はここで最高の景色を見させてもらってます。自分は『ETA』や『XYZ』といろいろなライブをやっていますけど、やっぱりワンマンというのは特別で。こうして、自分がやりたいことを自由にやらせていただいていることがとても嬉しいです。昨日、名古屋のライブが終わって帰る新幹線の中で、僕は24歳になる直前にいろんなことを考えたり振り返ってみたりしたんですよ。僕がluzとなったのは、7年前の17歳の時でした。その時はまさか、こんな景色をみることが出来るようになるなんて、考えてもいなかったです。皆が笑顔で自分の歌を聴いてくれて、こんな風に楽しんでくれるなんていうことも、予想していなかったです」
今やこれだけの大観衆を前に、意気揚々とライブ空間を支配してみせるluzだが、7年前の転機によって彼はその人生を大きく変えたということなのかも。
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「当時の自分は……自分で言うのもなんだけど、底辺にいました。自分に自信なんか無かったし、何も出来なかったし。だけど、luzになってからは初めて生きている意味を感じました。その実感を僕にくれたのは、ここにいる皆です。皆の存在が、僕にとっての全ての力になっています。僕は今でも自信がないところがあったりするし、ネガティブなところもまだあります。でも、僕がluzとしていられる理由をくれる皆がいるからこそ、僕は今も歌い続けられているんだと思います」
こう語ったうえで、次にluzが続けた言葉も非常に印象的だった。
「皆もね、つらいときだってあると思うんですよ。そういうときは、いつも支えてもらっている分、僕が支えていきたいな。……次にやる曲は、初めて自分で作詞をした曲です。僕が23年間生きてきた中で精一杯の想いで書いた、皆に対するラブソングです」
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かくして、この夜の大ラスに演奏されたのはアルバム『Reflexión』を締めくくる曲にもなっている「With you」。曲半ばのブレイク部分では「本当に、今幸せです……!」と叫びつつ、感極まって声をつまらせる様子もうかがえたが、それでも彼は最後まで全力全霊をもってこの想いの塊のような楽曲を、力強く歌い上げてみせるに至ったのである。
「人生で、一番幸せな夜をありがとう……!」
熱心なファンや、真摯なメンバーたちに愛されながら、luz自身も尽きせぬ愛を発していたこの一夜は、彼にとって忘れ得ぬ24歳の誕生日となったことだろう。故に、これだけ多くの人たちからの愛を一身に受けているluzは、これからもまだまだ大きく成長していくに違いない。
取材・文=杉江由紀 撮影=小松陽祐[ODD JOB]、岡本麻衣
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2017.7.23(sun) 東京Zepp DiverCity
1. REFLEXIÓN
2. R-18
3. え?あぁ、そう。
4. 一騎当千
5. DOLL
6. クイーンオブハート
7. エンゼルフィッシュ
8. 光
9. 僕の外側
10. Labyrinth
11. ビーストインザビューティ
12. REVOLVER
13. ロスティナメイズ
14. DISORDER
15. Dearest,Dearest
[ENCORE]
16. ハートイーター
17. シンデレラ・パラドックス
18. カメリア・コンプレックス
19. With you