器用であり不器用、職人であり表現者 Unlimited toneが10年の月日を重ねて得たさらなる歌へのエモーション

――どうですか？ そういう時期を経て10周年を迎えられて。

Ryohei：Luzはルースフォンチ、Dodyは土居康宏という、それぞれの人間性や音楽性が好きで、最初はそこから入ってきているので、加入後もあまりスタンスは変わらない気がします。プラスαで言うなら、自分からもこういうのはどう？って言える場ができたとは言えますね。昨年リリースした『& LIFE』もそうなんですけど、いろんな意味で一緒にトライしているなという感じがしますね。

――生音へのチャレンジで、新しい世界が開けた作品ですよね。10年のキャリアを積んでいく中で、なお開く扉があるというのが、アンリミの可能性の大きさを感じます。では、ベストアルバムの曲にも迫っていきたく思います。冒頭を飾る「change」(大成建設CMソング)は、これまでのファンの方以外にも、お茶の間にも広く届けられた楽曲でもありますよね。

Dody：CMで使っていただいてからもう3年くらいになるんですけど、その影響もあるし、曲のメッセージ性もあります。そういう“アンリミやぞ！”という芯の部分があるので、一番に持っていきたい曲でしたね。

――続く「うたたねサンシャイン」はテレビアニメ『田中くんはいつもけだるげ』の主題歌に。私は漫画も見ていたので、すごく作品にぴったりな曲だなと感じていて。包容力のある優しさって、アンリミの魅力のひとつだと思うんですが、この曲にはそれが凝縮されている感じを受けます。光の輝く瞬間を、お三方の声で感じられるイメージもありますね。

Ryohei：この曲はそもそもLuzが作って出来上がっていった曲ですし、歌に対するアプローチを指揮しているのもLuzなので、柔らかさとか優しさの部分は、彼が担っているんじゃないかと思いますね。

Luz：…僕が“光”なので。

Ryohei：今、すごくニヤニヤしてた（笑）！

――（笑）。アンリミの“田中くん”的な。

Dody＆Ryohei：間違いない！

Luz：いやいや、光、光だから。

――他には、「島ガール -okinawa-」もすごく面白いなと感じました。

Ryohei：この曲をやると、沖縄出身のお客さんたちがものすごく盛り上がって。間違いなくコイツら沖縄出身なんやろなって。で、しゃべり出したら関西人でしょ（笑）。

Dody：ただ沖縄好きなだけでね。現地にも仲間がいて、その流れで制作の依頼があったので“喜んでー！”って3人で作ったんです。もう、そしたらね、出来の良すぎるものが生まれちゃってね。自信を持ってお届けできる曲だなと思いますね。

――語弊があるかもしれないですが、器用な……

Dody：(喰い気味に)そうなんですよ。僕たち、器用なんです。

Ryohei：歌に対してはね、全員めっちゃ器用！ でも、器用というのは、いい部分とあまりよくない部分があると思うんですね。器用な反面、もちろん不器用さもあるし。僕らの不器用さって、これじゃなきゃダメだとか、こだわりの強いところ。器用さももちろんだけど、その辺りをどんどん掘り下げていく必要もあるよね。…何でもできちゃうからね。

Dody：僕らぐらいになったらね。

Ryohei：コーラスも含めて、それぞれがいろんな仕事をしているというのもあるんですけど。外で吸収してきたところをグループに返していかなきゃなとは思いますね。

――職人的な表情だったり、表現者の葛藤だったりという。それらの折り合いはどう付けるのでしょう。

Ryohei：それこそハタチくらいのときは“こういう歌だ！”とかこだわりも強いじゃないですか。でも年齢を経ていくにしたがって、徐々に角が取れていく部分もある。そんな中で、今の時代や社会、そこに生きる人々を僕らの曲で元気にすることができたり、何かを与えられたりするかもしれない。そういうところに（制作の）ポイントを置くべきなんじゃないかなと思います。「change」もそうですね。そういうアプローチで曲を作れたらなって。

――ちなみに、制作の現場はどんな感じなのでしょう。

Ryohei：（即答で）全然楽しくないです。淡々とここを録っていく、ここを録っていくみたいな。音作りの部分だったりは、この“光さん”が…（Luzを見ながら）。

一同：（笑）。

――“光さん”が、もとい“田中くん”が。

Ryohei：“田中くん”がね（笑）。声の重なりを考えたうえで、ボーカルのアレンジやディレクションもしつつ、歌っていきますね。例えば同じ曲だったとしても、Dodyがメインを執るバージョン、Luzがメインを執るバージョン、僕が執るバージョンと、いろいろ試して録ったりとか。全然違いますからね。重ねたときに“あ、コレやな！”っていうのがあるんです。

Luz：曲の作り手としては、いい歌い手が歌ってくれることは、すごく喜びなんです。ふたりが自分なりのカラーで昇華して歌ってくれるので、とってもうれしいですよね。

――最初に想像した以上のものも生まれたりとか。

Luz：あります、あります。

Dody：上手い下手とかじゃないと思うんですよ、歌って。その人の味になるというかね。それぞれによってカラーが、表情のつきかたが全然違う。各々が生きてきた人生で、その年輪が出ているんじゃないかな。僕らもエエ年ですから。作ったときでは想像できないものが、歌ったときには出てきますよね。

Luz：例えばアンリミでの想定で出した曲が、これ土居康宏ソロがいいんじゃないとか、そういう変化の仕方もよくありますよね。色々パターンを試して。

――楽曲が想像もいかない域に辿り着くというのはソングライターとしては、めちゃめちゃ幸せな…。

Luz：とっても、とっても！

――また、このベストには新曲「OVER THERE」が入っています。これ以外にも候補があったんではないでしょうか。

Luz：10曲くらいありましたね。リリースが夏だったので、夏の曲を入れたいなと。前作『& LIFE』からの流れで、今年は「地図」というシングルを出したんですけど、そのサウンドも生楽器メインで録っていたので、引き続き生楽器での構成でサウンドを構築したいなと。前作のプロデューサーである臼井ミトンくんにも相談して「OVER THERE」に落ち着きました。

――優しい問いかけの言葉が非常に印象的な楽曲ですね。

Luz：3～4年くらい前にできた曲なんですけど、その時にはまだ歌いこなせなかったんです。年齢だったり、声の質や環境とか、当時のアンリミにはちょっとカラーが違うかなと。そういうものが今のタイミングだったらうまく消化できたかなという感じですね。

Ryohei：結局、出会いだと思うんですよ、歌とも。一緒に歩いていこうって思えるタイミングがあるんです。例え自分で作った歌で、誰かがすごく褒めてくれたとしても、その時は自分ではいいと感じられない曲もありますし。歌うタイミングが来たということはありますね。

――満を持して、この10周年のタイミングで出てきたと。曲の素晴らしさを増幅させるお話だと感じます。ちなみにボーナストラックにはサッカーチーム・レノファ山口へ捧げる応援歌「RENOFA SOUL」が入っています。

Dody：山口県限定ではあるんですけど、配信はしていて。でも音源化してくれっていう声をすごくいただきました。山口の方からのラブコールは多いだろうなとは思ってたんですけど、それ以外の他府県の方からも音源化してほしいって声がすごくて。

――これも本当に、アンリミの幅の広さを感じる曲ですよね。

Luz：「OVER THERE」からの流れがね。

Ryohei：「OVER THERE」ですごい距離で寄り添ってくると思いきや、「RENOFA SOUL」でいきなり踊り狂うという（笑）。そこがやっぱり面白いグループだなと。

――もともとオリジナルアルバムとして違う世界が組まれていた楽曲が、今回のベストアルバムではまた違う世界が広げられるというのもすごく面白い体験だなと感じました。

Ryohei：それだけ言葉だったりストーリー性だったり、そこに投影して聴いてもらえるような歌を作っているという自負がありますね。

――そんなベストアルバムを発表し、アニバーサリーの今年はライブ続きでもあります。その集大成が9月30日（土）の大阪国際交流センター 大ホールでの『10周年記念ワンマンライブ』です。

Dody：初めての会場ですが、ホールで歌いたいということが発端で。お客さんがしっかり座れて、ある程度広さもあって。お客さんにもちゃんと観てもらいたい、届けたいというところですね。10年、もう本当に色々ありましたけど、よくここまで続けてこれたなと。それって応援してくれたみなさんのおかげだなと思いますし。

――ライブは、皆さんにとってはどういう場でしょうか。

Dody：活動の全てとか、そういうものではないんですけど、すごく楽しい場所ですかね。例えるなら旅に行ったときのような心地なんですよ。その瞬間、その瞬間が楽しいというか。ライブによって景色も全然違うし。聴いてくれるお客さんによっても全く変わるので。変に自分を作ることもなく、自然体でいられます。

Ryohei：毎回、同じようにはならないんですよ。その時来てくれているお客さんと一緒に作っていくという感じ。僕ら自身もその時に感じたことなんかも含め、全てが影響して変わるので。そういう変化はこちらもすごく楽しみですしね。何なら歌詞を変えたりすることも。

Luz：僕はちょっと変わってるんですけど…。新しい発見の場所ですね。新しい自分に気づく。

Ryohei：発見するのは俺らだけどな。たまにカチッて聞こえるんですよ、スイッチが入る音が。カチッて聞こえたと思ったら、Luzがとんでもないことを言い出したりとか！

Dody：きたか～ってね（笑）。でもまぁ、ライブでしか楽しめない光景だったりしますからね。表情だったり歌もそうですけど、トークとかでもそうじゃないですか。ライブは楽しいですね。

Ryohei：基本的にこのふたりはずっと変わらない部分も持ってるんです。それを10年間ずっと応援してくれているファンの人たち、初めからずっと聴きに来てくれている人たちを見ていると、それが伝わってくるんですよね。いいなぁって思いますね。

――では、10周年の思いやライブに向けての意気込みをお願いいたします。

Dody：10年、どう変わったかというのはなかなか言葉にはできないですが、10年経った今の僕らを観てほしいですね。音源も聴いてもらいたいですが、ぜひコンサートで。9月30日（土）は、本当に特別な日になりますので。アンリミの世界へ“旅しに”来てください、という感じです。

Ryohei：僕は加入して3、4年ですが、一番最初の頃に描いていた Unlimited toneという名前にあるような音楽がどんどん変わっていって、今のUnlimited toneとはまた全然違うと思うんです。それを観に来てほしいですね。アルバム以上の部分があるので、それを受け取りに来てもらえたらな。

――最後に、Luzさんいかがですか？

Luz：…これからも、光を届けます。

一同：（爆笑）

Ryohei：どこかの新興宗教かと…（笑）。Luz様～！！

Dody：ちゃんと光ってる！？

――オチもついたところで…（笑）。9月30日（土）のステージ、本当に楽しみにしております。ありがとうございました！

取材・文＝後藤愛　撮影＝森好弘

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