田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナがイラストで“頭の中”を表現、田辺画伯が誕生!? 『誰か席に着いて』製作発表会見&インタビュー

2017.9.14
レポート
舞台

倉科カナ、木村佳乃、田辺誠一、片桐仁(左から)

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人気劇作家の倉持裕が作・演出をするコメディドラマ『誰か席に着いて』が2017年11〜12月、シアタークリエほか全国8都市で上演される。本作品の製作発表では、演出の倉持と、出演する田辺誠一木村佳乃片桐仁倉科カナの4人が会見に臨んだ。合同インタビューの様子も交えながら、その模様をお伝えする。

倉持裕

芸術家の活動を支援する、とある芸術文化財団。その創設者の孫娘の織江(木村佳乃)と夫の哲朗(田辺誠一)、織江の妹の珠子(倉科カナ)と夫の奏平(片桐仁)が助成対象者を決める選考会に集まるも、4人はそれぞれ別の問題で頭がいっぱいだ。シナリオライターの織江は、奏平が気まぐれに書いた脚本を「盗用」しているし、奏平は財団の資金を使い込んでいる。哲朗はかつて関係を持った珠子との復縁を願っていて、その珠子は姉に対する罪悪感に苦しみつつ、育児によって休止せざるを得なくなったダンサーとしての立場に不安を覚え、自らを助成対象者の枠にねじ込もうとして……。問題解決のために度々中座する4人。倉持は、その状況から『誰か席に着いて』というタイトルにしたといい、「芸術の未来という大きなことを話さなければならないのに、自分の今のことばかり話し合ってしまう。そんな大人たちのコメディになります」と説明する。

そして、倉持は「最近転換が多い芝居をやっている。20シーン、30シーンのような映像作品のような、演劇にそぐわない慌ただしい芝居が多いので、今回はじっくり腰据えて、初心に帰って1シチュエーションでなるべく暗転せずに見せたいなと思います。仕掛けで見せずに演技で持たせないといけないので、キャストの皆様には、プレッシャーをかけるようですが(笑)、芝居を期待しています。僕も一緒に頑張りますが、見た目の派手さではなく、芝居で見せていきたい、笑わせていきたいと思っております」と期待感を述べた。

田辺誠一

田辺は「ここから始まるんだなととてもワクワクしています。少人数でがっつりお芝居をする舞台が実は初めてですし、全国いろんなところに行くので、とても楽しみです。このメンバーだったら、僕が出ていなくても見たいなと思えるお芝居だなと感じています(笑)」と話す。倉持に対して期待することを尋ねられると、「今、この時代、この空気の中で、倉持さんが何を感じて、笑いというコーティングはあるんですけど、その奥に何かしら時代を切り取り、感じてとれるものがあるんだろうなという予感があります。とても楽しみにしております」と答えた。

木村佳乃

木村は「久々の舞台で大変緊張しております。倉持さんとお仕事をするのも初めてです。倉持さんの舞台はよく拝見するんですが、緊張でいっぱいで……コメディで、お客様に笑っていただけなかったらどうしようという不安もあるのですが、見に来てくださるお客様には、やはり日常を忘れて、見ている間はとにかく楽しんでもらいたいです。そして、帰りは足取り軽く帰っていただけたらなと思います。そのようにできるように頑張ります」。

片桐仁

片桐は「コメディということで呼んでいただいたと思うので、お客さんに笑っていただけるように一生懸命真面目に頑張りたいと思います」と話す。倉持作品は6回目だという片桐。「言葉遣い一つにとっても、『そういう部分をピックアップしますか!』という倉持さんの世界観が好きです。普通の会話に見えるけど、ちょっとした違和感がずっと続くような、倉持ワールド。それが大好きなので、染まれたらなと思っております」。

倉科カナ

倉科は「倉持さんの舞台は拝見していて、倉持さんがやられているワークショップにも伺わせていただいて、ご一緒できることが本当に光栄です」と話し、「ワークショップで演出していただいて、本当に一つの演出を受けると、また新しい扉があってまた開けてくる。倉持さんは少し、シニカルというか、ブラックな面もあるので、私だけではなく、他の皆さんが倉持さんの演出を受けて、どのように変化していくのか、すごい楽しみです」。

「一番頭の中を占めている問題」について絵を描く田辺誠一(左)と木村佳乃

会見の途中、本作品の舞台やシナリオにかけて、出演者が即興的にイラストを描く「余興」があった。テーマは「今、あなたの頭の中を占めている問題は何ですか?」。それぞれの絵に対して倉持がコメントをした。その模様を少しお伝えしよう。

自分で描いた絵を持つ片桐仁

片桐:うちの犬を描こうと思ったら、だいぶ顔が長くなってしまいまして(笑)。メスで雑種のモモちゃんです。18歳でかなりヨボヨボなので、我が家の心配事の一つですね。点滴を家で打っています。全身描こうと思ったんですけど、思ったよりも顔が長くなってしまいました。

倉持:本物に会ったことがあります。ちょっと擬人化されているような感じですね。家族だからでしょうね。

片桐:メスでもおじさんみたいなんですよね。

倉持:まさに、愛情ですね。

自分で描いた絵を持つ木村佳乃

木村:私、趣味がございまして、小学生の頃から大のホラー好きなんですよ。最近ホラーのヒットがなくて、前に見たホラーを夜中一人でこっそり見ています。なんかいいホラーないかなぁ、新しいホラーが来ないかなぁって思っています。これはゾンビなんですけど、5秒でボディーを描き上げたので……。

倉持:うん、口元が楽しそうですよね。割とエンジョイしてますよね。

自分で描いた絵を持つ倉科カナ

倉科:私は猫を飼っていまして、キッチンの扉を開けるんです。鍵がないので、ガムテープで止めていて。

片桐:あはは、黒いやつはガムテープなのね。

倉科:先日、料理をしていたのですが、まだ1歳にも満たないので、猫が火に飛び込んできて、危なかったんですよ。だからキッチンは絶対立ち入り禁止にしているんです。そして、今、扉に鍵をつけようか悩んでいます。頭がいっぱいです。

倉持:うまいですよね。その状況が一発で分かる。ガムテープの塗り方に、扉を開けさせまいとする、黒々とした意志を感じます。

自分で描いた絵を持つ田辺誠一(中央)

一同:(笑)

田辺:えっと、これ僕なんですけど……。

木村:ジブリ?

片桐:もののけ?

田辺:違います。最近、お腹のお肉が落ちなくなってしまいました。ドラマの衣装合わせでもズボンが合わなくなってしまったりして……。原因は分かっているんです。「ロースライス」というハイカロリーな食べ物です。豚肉を味付けて、ころもをつけてギトギトに揚げて、ご飯にそれを乗せる料理なんですが、大好物なんですよ。中学生の時に、お店のロースライスを週1回で食べていたんですね。そして、こないだ30年ぶりに行ったらお店の方が90歳になっていました。30年越しに食べたら美味しくて、美味しくて。いつまで食べられるのかなと思ったら、毎日食べちゃいまして……毎日食べても美味いんですよ。その結果、お肉がついてしまいました。

倉持:画伯の絵が見られて、もう感激ですね。内容はどうでもいいです。素晴らしいですね。うん、空白がいいのかなぁ。嬉しいです。ただそれだけです(笑)。

「一番頭の中を占めている問題」について絵を描く片桐仁(左)と倉科カナ

――少人数のキャストで繰り広げられるコメディですね。夫婦としてタッグを組む、お相手への印象を教えてください。

田辺:木村さんは過去何回か、映像でお仕事させていただきました。なんというか、竹を割ったような性格で、裏表なく思ったことをスパッと言う。その辺が気持ちいいですし、演じる夫婦関係でいうと頼りになるんじゃないかなと思っています。

木村:田辺さんってすごく不思議。背が高くて、容姿端麗でハンサムなのに、しばらく一緒にいると、そこにいるのを忘れて着替えだしそうになるんです(笑)。空気感が不思議なんですよね。俳優さんって、ギラッとしている方もいるけれど、田辺さんはなんというか会ったことないタイプというか……。

片桐:わかります。ギラッとしていない(笑)。

木村:私たちが演じる夫婦はけん怠期のような感じなので、「あ、いたの」という空気を出せたら……(笑)

田辺:うん、空気みたいなね。

片桐:カナちゃんと共演したのは10年前ぐらいで、デビューしたての頃だったんです。なので、今回、夫婦役というのはびっくりしていますけど、今年30歳なんだもんね? カナちゃんもお母さん役とかやるようになって、そういう意味では夫婦役もありなんだと思うんですけど、僕としてはピンとは来てないです(笑)。

倉科:その時は店長とバイトの役として、コントを2人でやりました。本当初めての相手で。

片桐:初めての相手って(笑)。

倉科:初めてお芝居したお相手、という意味です(笑)。

片桐:何にもないですけどね。恋愛要素もなく、ただただバイトと店長でコントしました。

倉科:夫婦役はびっくりします。10年分空いているので、ちょっと仁さんの前に立つのは緊張するかな。仁さんは結構辛口なので(笑)、頑張りたいと思います。

――全員に伺いたいのですが、今回は「秘密」を抱えながら、それぞれが自分本位の話をするところに話の面白味があるように感じます。ご自身で「自分勝手だったなぁ」ということがありましたら教えてください。

倉持:演出しているとそんなことの連続ですかね。今はそういうことは無くなりましたけど、劇団を頻繁にやっていた時は、若い劇団員を叱ったりをしていたので、後で考えたら、叱りすぎたな、理不尽なこと言ったな、というのはよくありました。「間を取るな!」と叱って、台本を見たら「・・・」と書いてあったり(笑)。

田辺:トイプードルを飼っていまして、肉球を触るのがすごく好きなんですが、向こうとしては嫌みたいで、ぐっと手を下げるんですよ。触らせろよって言って、手をピッと引っ張って……それは自分勝手かなぁ?(笑)

片桐:田辺さん、かわいいな(笑)。

木村:4歳と5歳の娘がいるんですけど、太ももとお尻がもう可愛くて。しょっちゅうモミモミしたりスリスリしたりしててだんだん嫌がられて……。ちょっと悲しいんですけど……触りたいですよね?

片桐:そういうのじゃなくてもいいですか?(笑) よくドラマや映像の現場で自分が先に終わること多いじゃないですか。僕が終わって、ホテルへ帰って寝ちゃってパッと起きたら夜になっていたことがあったんです。みんな飯食いに行っているかなと思って、キャスト同士のLINEで「今飯食いに行ってる?」と聞いたら、「まだ撮影中です」と返ってきたことがありました。そんなのばっかりです!

倉科:自分勝手だったなぁと思うのは、デビューした当時に、なかなか仕事がうまくいかなくて、この事務所でいいのかなぁと思って……。

片桐:大丈夫それ?(笑)

倉科:でも、マネージャーや会社のせいにせずにちゃんと頑張ろうと思っていた矢先、朝ドラが決まって。あの時は自分勝手だったなと思います。

片桐:実力だもんね! 事務所は関係ないもんね!(笑)

片桐仁、倉科カナ、田辺誠一、木村佳乃、倉持裕(左から)

――コメディに出演する時に大切にしていることや心構えはありますか?

田辺:コメディは難しいですよね。初めてというのもあるんですが、倉持さんの演出に身を任せています。多分想像するに僕の役はちょこまかした役だと思うので、それだけでも面白いんでしょうね。笑いの作り方は、小屋の大きさによって違いがあると思うので、皆さんに満足して帰っていただけるようになるといいなと思います。

木村:私はあまりコメディをやったことないのですが、舞台は映像と違って長く稽古をできるので有難いです。倉持さんの言う通りにやれたらいいなと思います。毎日どれだけ新鮮な気持ちで切り替えてできるのかが大事なのかなと思っております。

倉科:私自身コメディは初めてですし、人を笑わすのに適していない人間なんです。取り柄が真面目とか努力とかなので……。一生懸命に誠実に生きているからこそ、その生き様が面白いと言って頂けたり、ストーリーの中で会話の面白さだったり、繊細なところも詰めて表現できたらなとは思っています。コメディというだけでプレッシャーです(笑)。

片桐:逆に僕はコメディがない仕事はやりたくないですね。初めて倉持さんの作品に出た時はコメディではないやつで出たんですが、「笑わせようとしてるの?」と言われて(笑)。面白くしようとしなくても面白くなると思うんですよね、倉持さんのは。どれだけお客さんに出せるか、伝わるか、やりがいがありますよね。ちなみに、劇場で笑いがなくても、僕はお客さんは心で笑っていると思っています。日によりますから。経験上、なかなか音に出して笑わない(笑)。そういう時は皆さん心で笑っていると思っています。

――最後に田辺さん、一言お願いします!

田辺:これから稽古が始まるんですが、大人が楽しめる、そしていろんなことを考えたり、幸せな気持ちになったりできるような舞台になるんじゃないかなと思っています。全国いろんな方に見ていただくべく、我々も頑張りたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。
 

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報
『誰か席に着いて』

作・演出:倉持裕
出演者:田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナ、福田転球、富山えり子

【東京公演】
日時:2017年11月28日〜12月11日
会場:日比谷シアタークリエ

【全国ツアースケジュール】
《石川》11月15日 本多の森ホール
《大阪》11月18日、19日 サンケイホールブリーゼ
《静岡》11月21日 浜松市浜北文化センター
《福岡》11月23日 久留米シティプラザ
《広島》11月25日 はつかいち文化ホール
《新潟》12月13日 上越文化会館
《山形》12月15日 やまぎんホール
《福島》12月17日 とうほう・みんなの文化センター


 

 

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