『ゴルゴ13』連載50周年の特別展開催! ゴルゴ好きのギタリスト・山本恭司「僕を大人にしてくれた」

2017.9.28
インタビュー
アート

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1968年にビッグコミック(小学館)で連載がスタートし、2017年9月現在までコミックスが186巻を数える、日本最高峰の劇画『ゴルゴ13』。超一流スナイパーである、「ゴルゴ」ことデューク東郷の活躍をとらえたこの物語。ハードボイルドで味わい深い世界、社会のあり方を多角的に鋭く突く批評性、マニアも唸る銃器類の知識。作者のさいとう・たかをが長年描き続けてきた『ゴルゴ13』は、誰もがその名を知るカリスマ的な作品となった。そんな本作が、2018年に連載50周年を迎える。それを記念して、2017年10月6日(金) 〜11月27日(月)大阪文化館・天保山で、「連載50周年記念特別展 さいとう・たかを ゴルゴ13」が開催される。そこで今回は、特別展の公式テーマ曲を担当したギタリスト・山本恭司、同展を企画した読売新聞 大阪本社 文化事業部 豊田美緒氏に『ゴルゴ13』のおもしろさを語ってもらった。

左:山本恭司 右:豊田美緒(読売新聞 大阪本社 文化事業部)

——山本さんは1956年にお生まれになり、1976年にロックバンド、BOWWOWのギタリストとしてデビューされましたから、『ゴルゴ13』とともに時代を歩んできた感じですよね。

山本:そうなんです。僕は島根県松江市という静かな町で育ったのですが、10代の頃、少しずつ大人の世界を知っていく中で、大音量のハードロックを好きになっていきました。そんなときに、『ゴルゴ13』を知ったんです。町と同じようにのどかに暮らしていた僕は、ゴルゴが、自分にないものをすべて持っている男のような気がしました。そこに憧れを感じたんです。

——それにしても、10代には『ゴルゴ13』はなかなか刺激が強かったんじゃないですか。第1話なんて、大人な男女の関係をにおわせてスタートしますし、あと文字量も多く、社会情勢や風刺など、決して分かりやすいわけではないですよね。

山本:その辺りも、惹きつけられましたね。僕はもともと、ゴルゴのような世界が大好きだったんです。(国際ジャーナリストの)落合信彦さんの本をたくさん読んでいて、CIAなんかにも興味があり、そういった知識があったから、『ゴルゴ13』をすぐに楽しむことができました。あと、男女関係の話なんかは、僕を大人にしてくれましたし(笑)。だから、自分にとってはただのコミックではないんです。

——豊田さんも『ゴルゴ13』の熱烈な読者だったんですよね。

豊田:はい。『ゴルゴ13』の世界観は、男女問わず一つの理想型だと思っています。今って草食系という言葉が定着して、中性的な男性が増えていますが、ゴルゴは全然違って、肉食系を超えている(笑)。武骨な姿を見て、「これが男だ」と思えたんです。そういった肉体的なセクシーさがあり、さらに揺るがない信条、完ぺきに仕事を行うところ、博識な部分がある。人間として魅力的ですよね。

——完ぺきに仕事を行うところは、確かにすごい。どんな事情があってもやり遂げますよね。山本さんはギター職人ですし、そういった仕事意識は強くあるんじゃないですか。

山本:半端な仕事はしたくないですよね。どんな仕事の依頼でも、100パーセントで返してきたつもりです。そこに関しては、ゴルゴと共通のものがあります。

——『ゴルゴ13』でもっとも人気の高い、『海へ向かうエバ』の回は仕事人としてのゴルゴを象徴していますよね。何があっても非情であり、シビア。あそこまで非情になれますか。

山本:ハハハ(笑)。それは非常に難しい。やっぱり僕は一般市民ですね、あそこまでにはなれません!

——ちなみに、今回の特別展の公式テーマ曲『13th Shot』は、『海へ向かうエバ』から着想を得たとお聞きしました。原作に対して、どういう風に音作りをしていくんですか。

山本:画、情景、ストーリーの流れを考えていると、自然と音楽が降ってくるんです。僕自身は、何もないところから音楽を作るよりも、基になる作品があった方が(曲を)イメージしやすい。きっかけになったのは、1994年のミュージカル『7DAYS』で音楽を担当したこと。秋元康さんがプロデュースで、水谷良重さん、萩原流行さん、坂上忍さんたちが出演されていた舞台なのですが、まさに物語と音楽を一体化することの意味をつかめた、重要な仕事でした。今回の『ゴルゴ13』も、さいとう先生が作り上げた世界が明確にあったので、すぐに取りかかることができました。

豊田:私も、最初に音源を聴かせていただいたとき、自分の中でオリジナルストーリーがパッと頭に浮かびました。

山本:夜中の3時くらいにメールで長文を送ってきたよね(笑)。

豊田:すみませんでした(笑)。(イングランドの)テムズ川を背景に、デューク東郷がターゲットを仕留め、夕日をバックに次の仕事の依頼を受ける。その背中に冷徹さと哀愁が漂っている。恭司さんの楽曲を聴いてそんな情景を思い描きました。さいとう先生にももちろん聴いていただきましたが、大絶賛していらっしゃって、一発OKだったんですよ。

左:豊田美緒(読売新聞 大阪本社 文化事業部)右:山本恭司

——山本さんが楽曲制作の依頼を受けたきっかけって、地元・松江市のスナックで飲んでいたとき、たまたま隣に居合わせた男性がデューク東郷にそっくりで、許可をもらって写真を撮り、それをSNSにアップしたことなんですよね。

豊田:共通の知人が、恭司さんのその投稿を見て、知らせてくれたんです。「特別展の曲を作っていただけないかな」って。そのあと、恭司さんの『MOTHER OCEAN』というソロ曲を聴いて、泣いたんです。人生の荒波や人の恵みなど、いろんな表情を海で表現されていて、「音楽でこんなに映像を浮かべることができるなんて。すごい!」と感動して、ダメ元でオファーをしました。

——運命的ですね。そうやって作り上げられた特別展ですけど、僕が気になるのは「ゴルゴ検定」です。

豊田:「基礎知識編」「女性編」「仕事編」「作品編」「サブキャラ編」の5コースに分かれていて、それぞれ30問用意されています。会場で問題用紙、解答用紙をお渡しして、12月8日必着で検定事務局へ送っていただくシステムなのですが……難しいです! どんなにマニアな方でも解けないような問題が用意されています。恭司さんも、もちろんやってもらいますよ。

山本:今から予習をしておきます。できれば各コース、20点はクリアしておきたいですよね。ただ、『ゴルゴ13』はエピソードが多いから大変。ちょっと話が逸れますけど、BOWWOWの曲もあまりに多いから、「あの曲のキーって何でしたっけ?」と尋ねられたら、パッと出てこないんですよ(笑)。ファンの人の方が良く知っています。

豊田:そういえば、さいとう先生は「忘れるからこそ、次が描ける」とおっしゃっていました。

山本:そうそう、そうなんですよ。つい先日までソロアルバムを作っていたのですが、作業がすべて終わった瞬間、全部が頭から抜けちゃう感じがありました。作品を作っているときは、気持ちがすごく張りつめているから。でも、そうやってフッと忘れることができるから、いつまでも新鮮な気持ちで次を作り続けられるんですよね。『ゴルゴ13』は50年。僕はBOWWOWで1976年にデビューしているから、もう41年。そうやって作り続けてきたわけですね。

——特別展では、その長い歴史を噛み締めて欲しいですね。

豊田:『ゴルゴ13』がなぜ50年も愛されているのか、それが分かってもらえると思います。お宝ばかりが展示されるので、コアなファンにはたまらないし、一度では絶対にすべてを見切れないはず。ゴルゴ漬けになってください。

山本:若い人に、ぜひ来て欲しいです。少年時代の僕と同じように、ゴルゴに大人にしてもらえるかもしれない。「“ゴルゴ展”に来て、男になれ」と言いたい。あと、『13th Shot』はゴルゴの表向きのイメージですが、カップリング曲『Never Stand Behind Me』は、彼がバーでお酒を飲んでいるような、オフの姿を想像できます。この2曲で、ゴルゴの全体像を浮かべることができるようにしていますので、ぜひ会場でCDを手に入れて、じっくり聴いて欲しいです。

取材・文・写真=田辺ユウキ

イベント情報
連載50周年記念特別展 『さいとう・たかを ゴルゴ13』
 会期2017年10月6日(金)~11月27日(月) 会期中無休
 開館時間
 平日12:00~20:00、土・日・祝日は10:00~18:00
 (入場は閉館の30分前まで)
 会場
 大阪文化館・天保山 [海遊館となり]
 観覧料
 一般1,500円(1,300円)、大学・高校生1,300円(1,100円)中学・小学生500円(300円)
 ※小学生未満は無料※カッコ内は20名以上の団体と前売り(10/5まで販売)
 ※前売券を購入いただいた方には特製ポスター(非売品)を会場にてプレゼント。


 ペア(前売りのみ)2,400円
 ※プレイガイドで前売り期間(10/5まで)のみ販売。
 ※発券は1枚。1枚で2名同時にお使いください。
 ※前売り特典は、ペア1枚につき特製ポスター1枚となります。

 
 主催:読売新聞社、関西テレビ放送
 協賛:きんでん、大和ハウス工業、野崎印刷紙業
 特別協力:さいとう・たかを劇画文化財団
 企画協力:さいとう・プロダクション、小学館、リイド社
 協力:堺市、大阪文化館・天保山
 問い合わせ
​ 読売新聞大阪本社文化事業部 06-6366-1848(平日10:00~17:00)