M&Oplaysプロデュース『流山ブルーバード』賀来賢人・赤堀雅秋 インタビュー!「若者たちの些末な日常を描く」
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賀来賢人、赤堀雅秋
2017年12月8日(金)より本多劇場ほか、全国6都市で上演されるM&Oplaysプロデュース『流山ブルーバード』。本作は、数々の賞を受賞した映画『葛城事件』、新井浩文を主演に迎えた舞台『鳥の名前』など、うだつの上がらない日常を過激に、時に喜劇的に昇華する作風で圧倒的人気を獲得する赤堀雅秋が作・演出を務める最新作。出演はミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』でアイゴール役を務め、映画『ちはやふる -結び-』に出演予定の賀来賢人のほか、太賀、柄本時生、若葉竜也と同世代の若手俳優が揃った。
若手俳優と赤堀のクリエーションに注目が集まる本作。果たしてどんな作品となるのだろう。取材時には「まだ構想段階」と語る赤堀と賀来から本作への意気込みや物語の内容の一端を聞いた。
赤堀作品特有の“生っぽさ”とは?
――公式サイトの賀来さんのコメントを読むと、今回の公演の発起人は賀来さんであるように感じました。
賀来 そんなことないですよ(笑)。太賀と今まで一度も共演したことがなかったので、「いつか共演したいね」という話をしていたら、それなら「舞台がいい」ということになり、プロデューサーの大矢(亜由美)さんに話してみたんです。そしたら、僕たちの知らないところで企画が進み、気がついたら実現していたんです。なので“発起人”ではありませんよ(笑)。でも、太賀との共演、そして赤堀さんが書いて演出してくださる作品を本多劇場で上演できるなんて、本当に嬉しいです。
――プロデューサーに相談していた頃から演出に赤堀さんの名前が挙がっていたそうですね。赤堀作品のどんなところに惹かれていたのでしょうか?
賀来 生っぽいところですね。赤堀さんの作品は舞台上にいる俳優の台詞一つひとつが登場人物が直に発している言葉のような生っぽさがあるんです。このリアリティがどうやって生まれるのかすごく気になっていて。同時に赤堀さんは怖いって話も聞くので……そこも気になっていたので、いつか参加したいと思っていたんです(笑)。
赤堀 怖いって誰が言ったのよ?(笑)太賀? 若葉??
赤堀雅秋
賀来 (笑)。
――赤堀さんは太賀さんと『殺風景』(2014年)で、若葉さんは映画『葛城事件』でご一緒されていますよね。
赤堀 そうですね。
――柄本さんも含めて、みなさん、赤堀さんの作品に参加することに並々ならぬ意欲を持っているように感じます。
賀来 僕たちで呑んでいると必ず赤堀さんの名前が出ますからね(笑)。それぞれ感じ方は違うと思いますが、赤堀さん独特の生っぽい世界観に触れていると、舞台上にいる出演者が羨ましく見えるんですよ。
――確かに! 俳優同士の本気の演技合戦を見ているような緊張感があります。
赤堀 おっしゃる通り、自分の映画や舞台について“演技合戦”と評していただくこともあるのですが、まあ、僕としては恥ずかしいですよね(笑)。僕は劇団を旗揚げしましたが、演劇のことはさほど知らずに、自分たちの好きな映画の雰囲気や演技をみんなで共有し、役者はどういう芝居をすればいいかを考えながら作っていたんです。その作り方が今でも創作の原動力になっているんだと思います。
賀来賢人、赤堀雅秋
「僕の気になっている俳優を呼んだ(赤堀)」
――本作は流山という街でくすぶる4人の若者を主軸とした青春群像劇となるそうですね。
赤堀 そもそも今回は賀来くんと太賀、2人の出演が決まっていた企画だったんです。それで、僕の作る作品は大抵うだつの上がらないおっさんの話ばかりなので、折角の機会にと、今回は若者を主軸にした作品にしようと考え、僕が気になっていた俳優、若葉とか(柄本)時生に声をかけて、若者中心の話にしようと思ったんです。“若者を中心にした話”と言っても、これまでの作品とほとんどテイストは変わらないと思いますが(笑)。あれ、賀来くんって28歳だよね?
賀来 そうです。
赤堀 じゃあ別に青春って訳でもないよね?
賀来 ですね(笑)。
――本作での賀来さんの年齢設定は実年齢と同じくらいの設定になるのでしょうか?
赤堀 賀来くんだけじゃなくて、太賀とか時生、若葉も同じくらいの年齢設定。内容としては地元で暮らしている若者たちの些末な日常を描きます。
――今回、タイトルにもなっている千葉県の流山という街を選んだのにはどんな理由があるのですか?
赤堀 流山を選んだのは……まず響きですかね(笑)。それに、自分の出身も流山の近くで、映画『葛城事件』のロケも流山だったこともあって自然と選んでいました。ただ、“流山”という街が持つ地域性は特に関係がなくて。僕が描きたいものは一貫して、あるコミュニティーの中から抜け出そうとするが、抜け出せずにいる人々の緩怠な空気感なんです。
ですから、流山という街自体は作品とほとんど関係がない。それよりも、様々なコミュニティーに漂っている諸行無常の空気感をどうやって具現化できるかというのを最近、劇作家として考えています。
――賀来さんは些末な日常を営む若者を演じることになるようですが、今の話を聞いてみていかがですか?
賀来 赤堀さんが描く若者をこのメンツで表現できるのは楽しみですし、嬉しいですよ(笑)。
賀来賢人
「同年代の俳優中心で本多劇場に立てるのはあり得ないくらい光栄なこと(賀来)」
――公式サイトに掲載されている赤堀さんのコメントには“一縷の希望が描ければ”ともありましたね。
赤堀 確かにそう書きましたが、希望ね……難しいですよね。もちろん世界平和を望んでいますが、反面、絶望している節もあるわけで。それでも生きていかなければいけない訳ですからね。
この世界にとって“一縷の希望”って何だと言われると、それは明確に言葉にできるものではなくて、観劇後にお客さんが「親に電話してみようかな」と思ったり、別れた彼女に思いを馳せたり……(笑)。そういうちょっと、お客さんの気持ちが変わる作品を作れたら嬉しいですね。まやかしであっても希望を提示するのが劇作家の仕事だと思うので。
賀来 僕は赤堀さんの作品を観終わった時にホッとしていることが多いですよ。
赤堀 最近はね(笑)。20代、30代の頃はお客さんを絶望の淵に落とすような作品を作っていたんですよ。カーテンコールもしませんでしたし。でも、今はちょっと大人になったのかもしれませんね。
賀来 それで僕は救われていますよ。
赤堀 よかった。
賀来賢人、赤堀雅秋
――赤堀さんは賀来さんにどんな印象を抱いているんですか?
赤堀 一緒に何かを作りたいなと思える俳優という印象ですね。僕が一緒に仕事したいと思える人は、自分なんて何者でもないという前提に立って、ゼロからもの作りに付き合ってくれる人。賀来くんはそんな俳優さんだと思っています。現実はどうなのか分かりませんけどね(笑)。
――最後に公演への意気込みを聞かせてください。
賀来 同年代の俳優中心で本多劇場に立てるというのが僕の中ではあり得ないくらい光栄なことで、さらに赤堀さんの作品に出演できるなんて……。すごいことですよ。嬉しいことに周りの人の注目度も高いんです。僕としてはおもしろいこと間違いなしと思っているので、普段舞台をあまり観ない方にも観に来ていただけたら嬉しいですね。
赤堀 本多劇場ってお客さんに伝わりやすい劇場だから、そこで上演できるのは楽しみだけど、僕は普段と変わらず、苦しんで……愛らしくもしょうもない作品を作れたらと思います(笑)。そして賀来くんの言うとおり、彼らの世代の普段、劇場に足を運ばないようなお客さんにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
賀来賢人、赤堀雅秋
取材・文・撮影=大宮ガスト
【東京公演】2017年12月8日(金)~27日(水)本多劇場
【島根公演】2018年1月11日(木)島根県民会館 大ホール
【大阪公演】2018年1月13日(土)・14日(日)サンケイホールブリーゼ
【広島公演】2018年1月16日(火)JMSアステールプラザ 大ホール
【静岡公演】2018年1月18日(木)浜松市浜北文化センター 大ホール
【東京都大田区公演】2018年1月20日(土)・21日(日)大田区民プラザ 大ホール
■出演:
賀来賢人、太賀、柄本時生、若葉竜也、小野ゆり子、宮下今日子
駒木根隆介、赤堀雅秋、平田敦子、皆川猿時
■公式サイト:http://mo-plays.com/bluebird/