Angelo “異端”や“異教”を意味する最新アルバム『HETERODOX』は何を物語っているのか?
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Angelo
今年2017年に結成11年目を迎えたAngeloが、9作目のオリジナルアルバム『HETERODOX』をリリース。直訳すれば“異端”や“異教”を意味するタイトルを冠したアルバムに連なる楽曲群は、果たして何を物語っているのか? キリト(Vo)とKaryu (Gt)に訊いた。
どう捉えられようと“こうだ”と信じるものをやってきたつもりなんで、異端かどうか判断するのは自分たちじゃない。(キリト)
――『HETERODOX』という単語を辞書で引くと、異端、異教、異説と出てきますが、このタイトルをつけられたのは制作のどの段階だったのでしょう?
キリト:最初です。このバンドを表している単語だなと感じたんですよ。なんにせよ逆説的な感覚が自分にはあって。それまで持っていた価値観の中に無い新しいものが生まれるときには、異物が入ってくるような感覚が必ずある。だけど、それがいつの間にか馴染んでくると、逆にスタンダードになるっていう、その繰り返しだと思うんですね。だから、新しいもの=異端なものだし、それはやがてスタンダードなものになるっていう意識です。
――その新しいもの=異端を追い求めてゆきたいというのは、Angeloとして活動する中で常に考えていらっしゃることですよね。
キリト:まぁ、異端と言っても、自分ではそんなに自分が変わってるとは思っていなくて。ただ、自分らが一番良いと感じるものをバン!と打ち出すときに、よそを見たり全体的に見て馴染むかどうか? ということは考えていない。それをすると自分としてはつまらなくなってしまうから、どう捉えられようと“こうだ”と信じるものをやってきたつもりなんで、異端かどうか判断するのは自分たちじゃない。
――あくまでも、触れてくれる人次第だと。
キリト:そう。異端と言われようと構わないっていう心境ですね。なので、世間的には異端だけど、Angeloとしてはスタンダードなアルバムになっていると思いますよ。
Angelo/キリト(Vo)
――3曲目の「HETERODOX」では<望むがままのストーリーを共に描こう>と、10曲目の「RESISTANT BACTERIA」でも<自分だけに見えていればそれでいい>と歌われていますものね。ちなみに普段活動していて、Angeloのどんなところが異端だなと思われます?
Karyu:ライブではすげぇ異質な世界観を作ってるのに、笑いアリというか。ハッピーもアリ、泣ける感じもアリで、MCも全員してみたりとかっていう感じは、あんまり他ではないかなって。ライブ特有といいますか、リーダーがそういうモードに入ると、面白い感じになるんです。パフォーマンス的に。
――なるほど。とはいえキリトさんご自身は、そんな笑わせようと意識していらっしゃるわけでは恐らくない。
キリト:そうですね。そういう意識ではないですけど、ライブ1本の流れの中で、緩急がやはり必要なので。緊張感をMAXまで上げれば一度クールダウンさせようとか、クールダウンから空気を少しほぐそうとか。そういう空気の流れをコントロールする上でのアクションですね。
Karyu:いや、すげぇ考えてやってるんだろうなぁって。カッコいいだけを突き詰めつつも、その面白さだったりエンターテイメント性があるものは、すごく良いと思います。
――Angeloの楽曲自体は非常に濃密な世界観を持ったものだけに、逆方向に振り切れたときのギャップが他にはないエンターテイメント性を生むんですよね。今回の『HETERODOX』も最初に仰られた通り、しっかりとした意志を基に制作された作品のようですが、では、例えばキリトさんのほうからKaryuさんに対して、作曲にあたり何かオーダーがあったんでしょうか?
Karyu:過去、一度も無いです。自分なりに新しい発見だとか、自分がワクワクするようなものが出来るようにと常に頑張っているだけで。例えば今回だったら、アレンジの趣向を変えてみたり……右左で鳴っているアルペジオを、普通だったらハモるところを別フレーズにして、二人のアルペジオで成り立つ感じにしたりとか。
――6曲目の「Scheme」とかも、かなり斬新な曲ですよね。
Karyu:まさにソレです。Aメロなのにソロっぽいものがあったりとか、そういう今までにない感じを狙いました。曲の作り方も変えてみたんですよ。以前はイメージ先行で、そのイメージに近づけるためにひたすら弾いて、良いフレーズを残して……という作業だったんですけど。もっと具体的に音階とかも考えた上で弾くようにしたら、1曲がちゃんとできるようになりました。
――どういうことですか(笑)。
Karyu:今まではイメージ通りにいかないと曲を捨てちゃってたのが、先に構築することでキチンと完成させられるようになったんです。おかげで無駄が無くなりました。今のところ(笑)。
――そうやって新しいものを求める=異端を取り込むということですものね。
キリト:なんか新しい始まりっていう感覚はありつつ、原点というか。原点なんだけど新しい始まりっていう意識ですかね。今までやってきたものを超えることを目指して必死にやるという意味では、いつも通りではあるんですけど。今までにない新しいものを作ろうっていうのは細かいところから……フレーズだったり、歌詞の言葉遣いだったり表現だったりから意識してやりました。
――何物をも恐れず自分に素直に、新たなものを追い求める。たとえ異端と言われようとも、そういったAngeloの原点を改めて言葉にした作品であると。
キリト:うん。
Karyu:制作中はガムシャラに作業してて、ミックスを終えたときに初めて気づくんですよ。“あ、想像を超えたな”って。個人的に5曲目の「evil」は、このアルバムの核になればいいなという想いで作った曲で、一番ワクワクしたというか、作っているときに感触が良かったんです。
――MVも制作されていますものね。
キリト:絵的なイメージが湧いたというだけで、特にリード曲だとかっていうわけでもないですけどね。そもそもリード曲というものを設定してないですし。
Karyu:まぁ、いろんな顔が見られる、バラエティに富んだ楽曲が揃ったなとは思います。
――その中でも7曲目の「胎動」は、ちょっと他の曲と毛色が違うような気がしたんですよ。バラード調の楽曲といい、誕生をモチーフにした歌詞といい。
キリト:でも“胎動”という言葉自体は、終わりと始まりに関わるものじゃないですか。始まりと終わりは密接に繋がっていて、一つの終わりと同時に芽吹くものがある……そういう意味での「胎動」ですね。
Karyu:この曲はキリトさんが今、思っていることがストレートに表現されている気がするんです。今、感じているものだったり背負っているもの、それをどうしていくのか?っていうところを感じました。
――そういえば歌詞にも<背負った想い>だとか<役割果たすため>という言葉がありますが、そこは個人的に以前から伺いたいところで。あれだけ大きなステージで、大勢のオーディエンスに求められて歌っているプレッシャーは如何ほどのものだろうか?と。自分だったら逃げ出したくなりそうな気がしてならないんです。
キリト:たぶん、そうならないタイプの人がボーカルになるんじゃないですか。そういうふうに感じちゃったらできないと思う。
――もしや、こういった歌詞を書くことで、自分で自分の背中を押してる部分もあります?
キリト:でも、作品を作っているときはホントに作品のことしか考えてないので。ステージで歌ってるときもそうだけど、自分であって自分じゃない感覚というか、何かが降りてくる……憑依される感覚でやっているところがある。人前で歌う人っていうのは、どこかそういう体質なんじゃないですか。
――そういった、目に見えない力って信じます? 例えば「HETERODOX」とか「evil」にも、神への信仰を示唆するような表現が出てきますけれど。
キリト:いや、神は信じてないです。そういう宗教的なところは、あくまでも作品の中でのモチーフなので。ただ、人を相手に歌っているし、自分だけじゃない人間と作品を作っているので、そういうところで見えないものを信じる気持ちっていうのはありますよ。意識の繋がりだとか、見えていない何かを見る作業というのは、やっぱりモノを作る上では必要なので。
Angelo/Karyu(Gt)
「RESISTANT BACTERIA」は過去一番テンポが速い曲で、新たな可能性が見えました。ライブでどんな盛り上がりになるのか楽しみです。(Karyu)
――それが想像を超える結果を生んでいくわけですもんね。今回の制作の中でも、きっと予想外の新たな発見があったのでは?
Karyu:ラストの「RESISTANT BACTERIA」は、過去一番テンポが速い曲なんですよ。Angeloってミドルか、速くても割と重厚感があるイメージなんで、BPM200超えるような曲って作ったことがなくて。キリトさんがデモを持ってきたときも、真っ先に“これ、大丈夫なのか?”と思ったんです。だけどフタを開けたら、TAKEOさんがちゃんと叩けてて! “すげぇ、このテンポ叩けるんだ!”って、新たな可能性が見えました。ライブではどんなふうにファンが反応するのか、どんな盛り上がりになるのか楽しみです。
キリト:BPMは確か220くらいだったかな? でも、倍テンにすれば110になるし、そんなに速いっていう意識もない。
――ただ、この曲をラストに持ってきたところには、キリトさんの決意を感じましたよ。疾走感のある曲調に乗って、何があっても生き延びていく、<自由に筋書きを加えてゆく>と歌い切っていらっしゃるので。
キリト:「RESISTANT BACTERIA」っていうのは耐性菌という意味で、抗生物質で一度殺されても、さらに耐性がついて強くなっていくんです。そういった物理的な意味合いを、不意の出来事があっても乗り越えて強くなっていくという、精神的な意味合いに置き換えた形ですね。
――なるほど! 個人的には8曲目の「Resolve」も“決意”というタイトル通り、キリトさんの想いが強く表れているように感じました。音的にもメジャー音階で気持ちよく開けるから、ハッとさせられるものがあるんです。
キリト:ただ、それも作品の流れの中で出てきた単語なので、自分がどうのこうのっていう部分とは切り離しているんですよ。あくまでも曲の世界観なんで。自分のパーソナルとは完全に別物とまではいわないけど、イコールでもない。「Resolve」という曲がこの流れの中で必要だっただけで、じゃあ、僕の中で何かが変わったのか?ということとは別問題です。
――とかくボーカリストの方って、ご自分のパーソナルな想いや今、訴えかけたいことを曲にする方が多いですが、キリトさんはタイプが違う?
キリト:まぁ、自分で考えて言葉を出しているので、自分の考えが基になっているのは確かだけど、あくまでも作品で。その世界観だったりストーリーで設定する人間の言葉として憑依させているから、いわゆる日記的なものではない。
――流れで……となると、ツアーでもアルバム通りの順番で披露されるんでしょうか。
キリト:11月からのツアーではそうなると思います。
Karyu:アルバム曲をやって、世界観をまず見せてから既存曲という流れですね。今までも、ずっとそうなので。
――アルバムツアーの前に、10月4日には豊洲PITで11周年のアニバーサリーライブが行なわれますが、こちらはツアーとは別物ですよね?
キリト:うん。ツアーとはまた違いますね。もうちょっと集大成的な感じになる。
Karyu:ウチらが祝われる側なんですけど、みんながメインというか。これだけ長い間見てくれてありがとうっていう気持ちが、一番強く表れるライブになると思います。
――ちなみにKaryuさんはAngeloに加入して6年になりますが、この6年は長かったと感じます? それとも短かった?
Karyu:うーん……わかんない(笑)。目まぐるしかったのは確かです。
――この6年でフルアルバムだけでも6枚リリースされていますが、今のご時世1年に1枚以上って、かなりのハイペースですよね。
Karyu:早いと思います。おかげでインプットするタイミングがなくて、常に何かしら探してる状態ですね。
――Angeloの楽曲は全てキリトさんとKaryuさんで原曲を作られていますからね。もしやキリトさんはインプットしなくてもアウトプットできるとか。
キリト:いやいや、それは日々の生活でインプットされていきますよ。何をやっていても。ただ、Karyuとギルが入る前は全部自分一人でやっていたのが、今は半々になったわけですから。例えばアルバムが全10曲として、その半分なら5曲……年間5曲のどこがしんどいのかわからない。そんな大袈裟な話じゃないですよ。
――確かに。そうして作り上げたアルバムを引っ提げてツアーを行ない、そこで得たものを、また次の作品にフィードバックしてゆくと。
キリト:うん、そうです。作品を作ることで“次”が見えるんで、単純にその繰り返し。それが具体的に何かというのは言葉にする必要がないので、作品とライブを通して感じ取ってもらうというだけですね。
取材・文=清水素子
2017年9月27日発売
【初回限定盤】(CD10曲+DVD)IKCB-9556~7 ¥3,500(本体価格)+税
【通常盤】(CD10曲)IKCB-9558 ¥2,800(本体価格)+税
01.SINGULAR
02.STRING
03.HETERODOX
04.ORIGIN OF SPECIES「ALPHA」
05.evil (日本テレビ系「ウチのガヤがすみません!」10月エンディングテーマ)
06.Scheme
07.胎動
08.Resolve
09.際限ない渇き
10.RESISTANT BACTERIA
「evil」Music Video
2017.10.04(水) 豊洲PIT 18:15/19:00
Angelo Tour「REVERSAL OF HETERODOXY」
2017.11.22(水) TSUTAYA O-EAST 18:15/19:00 ディスクガレージ 050-5533-0888
2017.11.23(祝) YOKOHAMA Bay Hall 16:15/17:00 ディスクガレージ 050-5533-0888
2017.11.28(火) 新宿BLAZE 18:15/19:00 ディスクガレージ 050-5533-0888
2017.11.29(水) 新宿BLAZE 18:15/19:00 ディスクガレージ 050-5533-0888
2017.12.07(木) umeda TRAD(旧AKASO) 18:15/19:00 キョードーインフォメーション 0570-200-888
2017.12.09(土) 名古屋DIAMOND HALL 16:45/17:30 サンデーフォークプロモーション 052-320-910
2017.12.14(木) 広島CLUB QUATTRO 18:15/19:00 キャンディープロモーション 082-249-8334
2017.12.16(土) 熊本B.9 v1 16:15/17:00 キョードー西日本092-714-0159
2017.12.17(日) 福岡DRUM LOGOS 16:15/17:00 キョードー西日本092-714-0159
2017.12.23(祝) 札幌PENNY LANE24 17:00/17:30 WESS 011-614-999
2017.12.25(月) TSUTAYA O-EAST(FC限定) 18:00/19:00 ディスクガレージ 050-5533-0888
2017.12.30(土) 仙台Rensa 16:45/17:30 キョードー東北 022-217-7788