『関数ドミノ』開幕!瀬戸康史、柄本時生らが前川知大の代表作で見せる“人間ドラマ”

2017.10.5
レポート
舞台

瀬戸康史『関数ドミノ』

『関数ドミノ』が、2017年10月4日(水)より東京・本多劇場にて開幕した。劇団イキウメ/カタルシツ主宰の前川知大の代表作として知られるこの『関数ドミノ』。今回は、企画・製作をワタナベエンターテインメントが手掛け、演出に寺十吾、出演に瀬戸康史柄本時生小島藤子鈴木裕樹山田悠介池岡亮介八幡みゆき千葉雅子勝村政信といった布陣で上演する。

『関数ドミノ』

<あらすじ>
とある都市で、奇妙な交通事故が起きる。
信号のない横断歩道を渡る歩行者・田宮尚偉(池岡)のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきた。しかし車は田宮の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したかのように大破する。田宮は無傷、運転手の新田直樹(鈴木)は軽傷で済むが、助手席に座っていた女性は重傷を負ってしまう。目撃者は真壁薫(瀬戸)と友人の秋山景杜(小島)、左門森魚(柄本)の3人。事後処理を担当する保険調査員・横道赤彦(勝村)はこの不可解な事故に手を焼き、関係者を集めて検証を始める。すると真壁が、ある仮説を立てるのだった。
その調査はやがて、HIV患者・土呂弘光(山田)、作家を目指す学生・平岡泉(八幡)、真壁の主治医・大野琴葉(千葉)をも巻き込んでいく。はじめは荒唐無稽なものと思われた仮説だったが、それを裏付けるような不思議な出来事が彼らの周りで起こり始める―。
 

『関数ドミノ』

『関数ドミノ』は、イキウメにて2005年に初演され、その後、2009年、2014年に再演されている。今回の上演では、2009年版を前川自身が改稿。前川は、上演決定時に「2014年版よりも2009年版の方が少しだけラストに希望がある。今回のキャストの皆さんをイメージして、2009年版を選んだ」と明かしている。

舞台セットは、部屋の中でもあり、部屋の外でもある。だまし絵を見ているような、不思議な感覚。暗転し強い光が差し込むと、舞台奥に無残な形にひしゃげた透明な車が見える。それを見つめる、目撃者たちの後ろ姿。この時点で、観客もここから解き明かされていく不思議な出来事の“目撃者”となっていく。

『関数ドミノ』

話の設定や発想はSF的な要素を含むが、根底にあるのは「こういうこと、考えちゃうよな……」という人間の感情だ。それが、虚構の世界と、今実際にこの芝居を観ている自分の内面を繋いで、妙な心地にさせられる。決して心地良いわけではない。でも、先が知りたい。徐々に物語の中に引き込まれ湧いてくる欲望に、また妙な疼きを感じる。寺十は、若い役者たちとともに、前川の脚本から丁寧に“人間ドラマ”を探し出した。

瀬戸康史、勝村政信『関数ドミノ』

話の中心を担う真壁役の瀬戸と、森魚役の柄本の対比が非常におもしろい。瀬戸は、TVドラマやCMで見せる爽やかな姿とはまったく違う、青年の抱える内面のねじれを時間経過と共にじわりじわりとにじませる。一方柄本は、自身の持つ独特の雰囲気を活かしながらも巻き込まれていく青年を等身大に見せる。「交通事故の目撃者」という1点でのみ繋がった彼らが、最後にどんな顔を見せるのか。

瀬戸康史『関数ドミノ』

目を引いたのは、山田の存在。決して派手な存在ではないが、役と誠実に向き合ってきたのだなと思える人生の重みを感じた。また、勝村はさすがの存在感。基本シリアスな物語の中に軽妙さを加え、締めるところは締めていた。

『関数ドミノ』

大円団と悲劇はいつも背中合わせ。観客がどんな感想を抱くのか、楽しみな作品だ。は、ほぼ完売状態だが、毎公演当日券が出るとのこと。

最後に、出演者から届いた初日コメントを紹介しよう。

瀬戸康史
初日が近づくにつれて期待と、なんとも言えない恐怖が入り混じった心情です。
これは僕演じる真壁が“ドミノ”というものに対して抱いている感情と似ている。
各劇場でお客様がこの作品をどう受け取って下さるのか、とても楽しみです。

瀬戸康史、勝村政信『関数ドミノ』

柄本時生
とても緊張しております。『関数ドミノ』という本当にあるのかないのか分からない世界を楽しんでいただけたらと思います。

小島藤子
あっという間に時が経ち、初めての本多劇場にやって来ました。きっと本番もあっという間に過ぎていくでしょう。一日一日の公演を大切に、しっかりと秋山を演じたいと思います。

鈴木裕樹
新田直樹役の鈴木裕樹です。この作品に関われることをとても嬉しく思います。同時にプレッシャーを感じますが、しっかりと作品に向き合い、このカンパニーならではの『関数ドミノ』を届けられたらと思います。

山田悠介
土呂弘光役の山田悠介です。現実世界では、奇跡は起こりません。しかし『関数ドミノ』では日常で奇跡という根拠もなく現実性のない出来事が起こります。この不気味で不可解な奇跡を劇場で体験してください。

『関数ドミノ』

池岡亮介
2017年版『関数ドミノ』、寺十吾さんによる緻密な演出でまた新しいドミノの姿が浮かび上がりました。“ドミノ”の世界にしっかりと巻き込まれ、少しでもシンパシーを感じて頂けるよう精一杯頑張ります。

八幡みゆき
あっという間に初日、という感じです。稽古場でぼんやりしていたものが劇場でくっきり浮かび上がっています。“ドミノ”の存在に翻弄されていく人々、瀬戸さん演じる真壁薫の姿にご注目いただきたいなと思っております。

『関数ドミノ』

千葉雅子
妙な顔合わせで、イキウメの前川知大さんの名作『関数ドミノ』が新たな作品になります!参加していることの幸せを噛みしめて、お客様を心よりお待ち申し上げております!
九州、北海道、近畿にも行きます!もう開幕の昂揚感で、“!!!”がいっぱいのメッセージとなっていることをお許しくださいませ。

勝村政信
世の中には、人間の理解、想像を超えた世界が存在します。『関数ドミノ』という不思議な世界を、どうぞお楽しみください。信じるか、信じないかはあなた次第です。

瀬戸康史、勝村政信『関数ドミノ』



取材・文=折原 怜
 
公演情報
舞台『関数ドミノ』
 
■作:前川知大
■演出:寺十吾
■出演:瀬戸康史、柄本時生、小島藤子、鈴木裕樹、山田悠介、池岡亮介、八幡みゆき、千葉雅子、勝村政信
 
<東京公演>
■日程:2017年10月4日(水)~10月15日(日)
■会場:本多劇場

<北九州公演>
■日程:2017年10月21日(土)~10月22日(日)
■会場:北九州芸術劇場 中劇場

<大分公演>
■日程:2017年10月24日(火)18:30開演
■会場:ホルトホール大分 大ホール

<久留米公演>
■日程:2017年10月26日(木)18:30開演
■会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール

<北海道・大空町公演>
■日程:2017年11月5日(日)19:00開演
■会場:大空町教育文化会館

<北海道・北見公演>
■日程:2017年11月6日(月)19:00開演
■会場:北見芸術文化ホール 中ホール

<兵庫公演>
■日程:2017年11月10日(金)~11月12日(日)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

■公式サイト:http://kansu-domino.westage.jp/

 

 

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