「“完璧”を見てほしい」Kバレエカンパニー新作『クレオパトラ』開幕

レポート
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舞台
2017.10.7
クレオパトラ(中村祥子) 撮影=Shunki Ogawa

クレオパトラ(中村祥子) 撮影=Shunki Ogawa

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Kバレエカンパニー熊川哲也芸術監督が「原作も何もない、ゼロから作り上げた」新作『クレオパトラ』が10月6日、東京・オーチャードホールでいよいよ開幕する。いったいどのような舞台になるのだという期待高まり興味も深まるなか、5日の公開リハーサルで冒頭の一場面が披露された。
引き続き行われた記者会見で、熊川哲也芸術監督は「満足できる作品ができた。僕の顔を見ていただければわかると思います」と満面の笑みとともに、その見どころを語った。

撮影=西原朋未

撮影=西原朋未


■シンプルながらもきらびやかな世界に垣間見えた、ドラマの予感

リハーサルで公開されたのは1幕冒頭、クレオパトラ(中村祥子)と弟プトレマイオス13世(山本雅也)が対立するに至るシーンまで。官僚の教育のもと王たる自覚が芽生えるプトレマイオス13世に続き、クレオパトラ・中村祥子が侍女を従えて登場し、王の椅子に座る弟を彼女の威圧感と眼力で退け、共に王座を狙う姉弟の心が動く、いわばドラマの始まりのシーンだ。

音楽とともに幕が開き、まず目に飛び込む色彩は金色。銀色味を帯びたり鮮やであったりと、様々な「金色」に彩られたセットは幾何学的な雰囲気も帯び、それだけであれば実に現代風だ。しかしそこに鮮やかな衣装をまとったダンサーたちが立ち、踊ることで一転、あでやかなエジプト王朝の世界がそこに生まれ息を呑む。

プトレマイオス13世(山本雅也) 撮影=Shunki Ogawa

プトレマイオス13世(山本雅也) 撮影=Shunki Ogawa

王として座するクレオパトラは存在感を放ちながらも、まだどこかあどけなさも残る、かわいらしいエジプト人形のような印象もうかがわせる。これが後にカエサルと出会い恋をし、弟を倒しエジプトの女王として君臨するばかりでなく、ローマ帝国を手中にせんとする野望も抱く女性へと変貌していくのかと思うと、なにやらゾクゾクしてくる思いだ。

クレオパトラ(中村祥子)とプトレマイオス13世(山本雅也) 撮影=Shunki Ogawa

クレオパトラ(中村祥子)とプトレマイオス13世(山本雅也) 撮影=Shunki Ogawa

踊りの振付も独特で、ピラミッドやパピルスに描かれたエジプト絵画から抜け出してきた人々が踊っているような世界が展開される。新しいバレエがまさに生まれるのかもしれないという、期待が高まるリハーサルであった。

■「世界に誇れる作品を日本から発信できる」充実の出来栄え

熊川芸術監督はこれまでも古典の改定や、2014年にはビゼーのオペラを題材とした『カルメン』を演出・振り付けし、絶賛を博した。
しかし今回の『クレオパトラ』は、原作も音楽もなにもない、完全にゼロからの創作である。

リハーサル後に行われた会見で、熊川芸術監督は「とにかく大変な作品だった」とまず一言。そして「Kバレエカンパニーから世界に誇れるレベルのものを、この日本から発信できることを誇りに思う」と充実の笑みで挨拶した。

撮影=西原朋未

撮影=西原朋未

■見どころは「幕が上がってから降りるまで」

まず主人公となる「クレオパトラ」のヒロイン像は、史実よりは1人の女性の生き様と、人間としての情や愛を描くことを考えたという。「国家を背負う女王、避けられない運命を持って生まれた女性の賢さ、美しさを表現したい。愛されるべき、魅了されるべき女性に仕上がったのではないか」。その一方でクレオパトラを「エジプトの蛇の神の化身」という、いわば毒を持った女としても描いているという。中村祥子浅川紫織がそれぞれどのようなクレオパトラを演じるのかも注目したい。

撮影=西原朋未

撮影=西原朋未

また今作は美術に『カルメン』でもコラボレートし、メトロポリタン歌劇場でも活躍するダニエル・オストリングと再びタッグを組む。音楽はその冒頭の1曲だけを聴いて「これだ!」と思ったという、デンマークの作曲家、カール・ニールセンの劇付随音楽『アラジン』を使用。さらに衣装は演劇分野で活躍する舞台衣装デザイナーの前田文子が手掛けるなど「一流の音楽、指揮者、舞台芸術家やデザイナーが集結し、カンパニーの総力を挙げて作り上げた」。
最大の見どころは、と問うと「幕が上がってから降りるまでの全て。完璧というものを見てほしい」と自信をのぞかせた。

撮影=西原朋未

撮影=西原朋未

■常にチャレンジを。古典のみではバレエ芸術は発展しない

1999年のKバレエカンパニー設立以来18年。改訂版、新作を上演し続けてきた熊川監督は、本作の制作意図はと問われ「バレエ団の財産となる作品やレパートリーを常につくっていかなければならないのは古典芸術を背負う者の使命。18世紀後半から20世紀初頭につくられた十数作の古典のみを上演していては、バレエ芸術は広がらない」と信念も語る。

「新しい芸術を生みだすことにチャレンジし続ける」という、世界の潮流をしっかりと見据えた意欲作『クレオパトラ』は10月6日、東京・オーチャードホールでの公演を皮切りに、愛知、大阪で公演後、再び東京で上演される。
日本のバレエ芸術の世界にどのような歴史が刻まれるのか。確かめてみたい。

撮影=西原朋未

撮影=西原朋未

イベント情報

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn Tour2017
『クレオパトラ』【世界初演】

日程:2017年10月6日(金)~10月29日(日)

会場・出演:
■東京公演:Bunkamura オーチャードホール
10月6日(金)18:30~、8日(日)13:30~
クレオパトラ:中村祥子/プトレマイオス:山本雅也/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:宮尾俊太郎/オクタヴィアヌス:遅沢佑介
10月7日(土)13:30~、9日(月・祝)13:30~
クレオパトラ:浅川紫織/プトレマイオス:篠宮佑一/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:栗山廉/オクタヴィアヌス:杉野慧

■愛知公演:愛知県芸術劇場
10月12日(木)18:30~
クレオパトラ:中村祥子/プトレマイオス:山本雅也/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:宮尾俊太郎/オクタヴィアヌス:遅沢佑介

■大阪公演:フェスティバルホール
10月14日(土)15:00~
クレオパトラ:中村祥子/プトレマイオス:山本雅也/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:宮尾俊太郎/オクタヴィアヌス:遅沢佑介

■東京公演:東京文化会館
10月20日(金)14:00~、21日(土)16:30~
クレオパトラ:中村祥子/プトレマイオス:山本雅也/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:宮尾俊太郎/オクタヴィアヌス:遅沢佑介

10月21日(土)12:30~、22日(日)13:30~
クレオパトラ:浅川紫織/プトレマイオス:篠宮佑一/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:栗山廉/オクタヴィアヌス:杉野慧

■東京公演:Bunkamura オーチャードホール
10月28日(土)12:30~
クレオパトラ:浅川紫織/プトレマイオス:篠宮佑一/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:栗山廉/オクタヴィアヌス:杉野慧

10月28日(土)16:30~、29日(日)13:30~
クレオパトラ:中村祥子/プトレマイオス:山本雅也/カエサル:S.キャシディ/アントニウス:宮尾俊太郎/オクタヴィアヌス:遅沢佑介

公式サイト
http://www.k-ballet.co.jp/company

 


 

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