w-inds.が明かすツアーの裏側、ライブを超えた音楽体験が完成するまでに迫る

2017.10.23
動画
インタビュー
音楽

w-inds. 撮影=河上良

画像を全て表示(9件)

千葉涼平、橘慶太、緒方龍一からなるw-inds.は、2001年シングル「Forever Memories」でデビュー。それ以降、現代におけるダンスボーカルユニットのパイオニアとしてシーンを牽引し、今年キャリア17年目に突入した。2000年代後半以降の彼らの作品は、変化し続ける世界のトレンドをリアルタイムに落としこみ、他と一線を画す洗練されたサウンドが音楽ファンから高い評価を得ている。今年3月に発表したアルバム『INVISIBLE』では、最新のエレクトロミュージックを取り入れアーティストとして常に進化し続けている。そして9月27日に日本武道館で幕を下ろした全国ライブツアー『w-inds. LIVE TOUR 2017 "INVISIBLE"』では、最先端の音楽をステージで立体化し、誰も味わったことのない“音楽体験”を完成させた。今回のインタビューでは、ツアーに起用された斬新な形状のセット、こだわり抜いたや音響や衣装についてなど、ライブの裏側をメンバーがたっぷりと語ってくれた。筆者が寄稿した大阪公演のライブレポート(https://spice.eplus.jp/articles/149695)も先日公開されているので、是非、こちらも一緒に読んでいただきたい。

橘慶太 撮影=河上良

――アルバム『INVISIBLE』が完成した時点で、ライブツアーに向けてはどんなイメージをお持ちでしたか?

慶太:バンドは入れないというイメージをしていて。というのも、この歳になると大人の事情も考えるようになって。どういうステージにしたくて、どこにお金をかけていくのかっていうのを考えました。もちろんバンドを入れることで良くなるものもあるんですけど、今回はバンドなしでCD以上にサウンドのクオリイティを広げたいなと。あとセットに関しては、簡単に言うとステージ内に1階と2階があるといった形は17年間に何度もやってきたので、そういった従来のw-inds.やダンスグループのステージングからちょっと外した路線でいきたいと意識していました。

――バンドが入ってない分、CDで聴く以上に音が立体的に聴こえるように工夫されてるなと思いました。

慶太:そうですね。工夫はめちゃくちゃしました。大きめのサブウーファー(超低音域を再生するスピーカーユニット)を入れてもらったり、低音の出方を意識しました。アルバム『INVISIBLE』収録曲や「We Don’t Need to Talk Anymore」、最新シングル「Time Has Gone」もそうなんですけど、ハイの成分のまとまりかたも意外と重要で、ハイがジャキジャキ鳴りすぎちゃうと派手すぎて心地よくなくなってしまうので、その処理にも気をつけました。

――ステージの中で聴く音と客席に聴こえている音は違うと思うのですが、毎公演会場に入ったら客席で音のチェックはするんでしょうか。

慶太:涼平くんと龍一くんのコーナーがあるので、2人の曲のリハーサルで音を聴きます。会場によっても、座席によっても鳴り方が変わってくるので、全部がバランスよく聴こえるところを探って、PAの方と相談しながら調整しています。

緒方龍一 撮影=河上良

――ステージについては、傾斜のついた三角形のステージに映像が映し出されるという、革新的な仕組みが取り入れられました。

龍一:みんなで話し合いながら、第一案、第二案、第三案ぐらいまでいろいろ試行錯誤をして、最終的にベストなのはあの形じゃないかという結果になりました。

――三角形に落ち着くまでにはいろんな形があったんですか?

龍一:いや〜もう大変でしたよ(笑)。

慶太:なんかこういう…… (手を後方から前方へカーブさせるジャスチャーをしながら)

涼平:(同じジェスチャーをしながら)こういうのあったね。

龍一:ステージにアームがあって、パコーンと開いて……とか、考えているうちに大変なことになっちゃって。

慶太:高すぎたんだよね? そりゃ無理だなと。あと、照明を吊ったりするパターンもあったね。

龍一:映像と音のリンクが1番分かるようなステージにしたかったんです。結果、三角形のステージにLEDを施して、その上で踊りました。あの形にしたことによって、ステージから遠い席のお客さんからも「楽しめました」と反応があったり。

涼平:2階席の方々もね。

慶太:このステージだと、客席との距離は関係なかったですね。

千葉涼平 撮影=河上良

――傾斜のついたステージで踊ると、同じ振り付けでも平らなステージで踊るより疲れるのではないでしょうか?

涼平:バランスは大変でしたね。

龍一:でも、平面でやる方が疲れる振り付けもあるよね。

慶太:あるある、意外と。

龍一:平面でリハーサルしながら「これ絶対踊れないよ」と思った振り付けも、ゲネプロ(実際のステージで本番同様に行う最終リハーサル)で斜めのステージで踊るとラクになって、「全然いけるじゃん」って。

涼平:そうそう、逆にやりやすくなる。

――通年のライブを振り返ると、音楽性に合わせてスーツでビシッと揃えていた年もありましたが、今年の衣装はとてもラフでしたね。

涼平:今年はライブ全体を通して「スーツじゃないね」と。

慶太:「今年は着ない」くらいの勢いで、スタイリストに言い放ったので(笑)。 音楽性を全面に出すには自分たちの中身や人間味が大事だと思っていて。スーツを着てスイッチを入れると準備しすぎている感じがあるので、自分たちが今感じている音楽をナチュラルなままステージに出すためにも、着飾らずにカジュアルにいくというのが今年のテーマです。

――1つ目の衣装は3人ともMA-1でしたが、暑すぎたためツアー途中にジャケットの中の綿を抜いたそうですね(笑)。

龍一:抜きました。抜いても暑いんですけどね(笑)。

慶太:3公演目くらいで、僕が熱中症みたいになってしまって……。

龍一:楽屋で動けなくなっちゃってね。動いてる量もすごいんで……。

慶太:立ち上がったらフラフラするから、「やばいな、これもう綿抜くしかないな」って。あとは、水分補給をしながら。

涼平:しょうがないよね。

龍一:だから「CAMOUFLAGE」とか、歌だけで踊らない曲の間に、いかに体を冷ますかが大事。

涼平:そうだね。そこ意識してるかも。

慶太:袖まくったり。

龍一:ジャケットは脱がないけど、肩を出したり。

w-inds. 撮影=河上良

――確かに、踊らない楽曲で3人がいっせいにジャケットの肩の部分を下ろすシーンがありましたね。てっきりファッションもトレンドを汲んでいるのかと思いました(笑)。

涼平:ははは(笑)。

慶太:暑いだけです(笑)。涼んでます。

――今回はMCにも工夫があり、慶太さんと龍一さんが「着替えてくるね」と言ってステージを後にし、涼平さんがステージでたった1人でトークをする局面がすごく新鮮でした。

涼平:場をつなぐってのは今までにもありましたけど、明らかにステージで1人なのは初めてでした(笑)。

慶太:最近、千葉が開花したんで、「ひとりで喋らせるしかない」っていう。

涼平:だけど、これが難しくて……。どの公演でも通用するようなネタで喋るのか、それとも地域に寄り添った話題でいくのかという問題で、俺1回やらかしてしまって。実は八王子公演で、「八王子のひとは、地元愛が熱いよね」みたいなことを言ったんですよ。というのも、「沖縄の人は沖縄大好き」みたいなのがあって、八王子市民にも「八王子大好き」みたいなのがあるんですよ。だから東京は東京でも違ったものが確立されている感じがあるんです。それを八王子公演のMCで話したら、お客さんはそうでもなかったのか「?」という顔をしていて。慶太がステージに戻ってきて、「八王子以外から来ている人います?」って聞いたら、98%くらいのひとが手を上げて……、「じゃあ俺の話はなんの意味もなかったね……、空気に喋ってるみたいになっちゃった」ってなったんですよ(笑)。

慶太:でも3人でいると涼平くんはあまり喋らないので、ひとりにして千葉さんのトークを楽しむっていうのは貴重な時間です。

涼平:テキトーに喋るくらいがお客さんは盛り上がるんだなって、今回のツアーを通して思いましたね。あまりお客さんに寄り添いすぎると、空振っちゃうことがあるんで。

龍一:勉強してるね(笑)

涼平:学んだ(笑)。

龍一:本番が始まるまで、涼平はすごく嫌がってたけどね。

涼平:「ネタどうしようかな〜」ってね。

――ははは(笑)。ところで今回のツアーではアルバム『INVISIBLE』に初めて収録された3人それぞれのソロ楽曲が披露されたのも見どころでした。慶太さんのソロ楽曲「Separate Way」のパフォーマンスには、龍一さんがギターで参加されましたね。

慶太:2人で楽器を弾こうかという案もあったんですけど、キャラクター性がより際立ったほうが良いかと思って、龍一くんに弾いてもらって僕は歌だけにしました。

緒方龍一 撮影=河上良

――電子音を主体としたダンスミュージックが続いたあとにアコースティックサウンドを聴かせてくれることによって、楽曲も歌詞もよりピュアに届いたような気がします。

龍一:人間はデジタルな音ばかり聴いてると耳が疲れちゃうけど、楽器の生の音とか人の会話とか、自然の音は耳が疲れないっていう話を、僕らのツアーのどこかの公演でしていて。そういう意味では今回のライブではデジタルサウンドを使ってる曲も多いので、「俺がここでアコギ弾いててよかったな」っていう意義を感じながら弾いています。

――涼平さんのソロ楽曲「In Your Warmth」は、男女ふたりのダンサーが距離を縮めながら踊る傍を、涼平さんが歩きながら歌うというロマンチックな演出でした。あのパートは涼平さんのプロデュースですか?

涼平:演出家の方と相談しつつ決めました。最初はダンサーを入れないという案もあったんですけど、楽曲の世界観は見せたいし、だけど自分がダンスに絡んじゃうとまたイメージと違ったんで、あの形になりました。

慶太:ああいうダンスの見せかたは映像やオブジェと同じ感覚で、自分で演るよりも、主役と背景に分けたほうが活きますよね。

龍一:ドキドキするんですよね。改めて踊りの可能性ってすごいなと思いました。今回は女性ダンサーがいるので、楽曲を表現するにも、男だけでやるのとは全然違いますね。

涼平:それも大きいね。女性ダンサーがいるからああいうロマンチックな演出ができると思います。

――慶太さんが作曲し、龍一さんと涼平さんが歌う楽曲「A Trip in My Hard Days」が、このツアーで初披露となりました(9月27日発売のシングル「Time Has Gone」の初回盤Bに収録)。2人だけでステージに立つ感覚は、他の楽曲と違いましたか?

涼平:ふたりで楽曲をやること自体が初めてだもんね。

龍一:そうですね。でも、今回は踊らずにラップメインの曲なので、そこまで違和感はないです。

涼平:もしここに踊りが入ってくるとまた違いそうだね。

橘慶太 撮影=河上良

――ライブ中のMCで、今後、龍一さんと涼平さんにダンサーを加えて、踊りを交えたパフォーマンスをやりたいとおっしゃっていましたね。

龍一:やりたいっすね。

慶太:早めにふたりのユニット名を決めないとね。

龍一:そこはやっぱw-inds.とは別なんだ。

涼平:ユニット推すよね(笑)。

慶太:だって、次に2人でやるときに、また俺がいないのにアーティスト名がw-inds.だったら、ファンの子たちが「結局、慶太くんいらないんじゃない?」って。涼平くんのファンと僕のファンがちょっとギクシャクしだすから……。

龍一:待って、俺のファンはどこだ??

慶太:ははは(笑)。

――「A Trip in My Hard Days」は特に観客との距離が近く感じられ、一人一人に話しかけるようにラップをされていたのも印象的でした。

龍一:すでにCDに収録されていて歌詞カードを見たことがある曲と、ライブで初めて聴く曲は楽しむスタンスが違うじゃないですか。そういうことを意識してラップの詞を書いたし、涼平と僕のポジションをどうやって活かしていくかというのも気をつけました。この楽曲はレコーディングもさせてもらってCDに収録されるんですけど、発売までは歌詞カードを見ることができないので、お楽しみに!という感じでしたね。

――龍一さんのソロ楽曲「ORIGINAL LOVE」についてですが、ライブ全編を通してステージに立っているのが1人だったのは、あの楽曲だけでしたね。

龍一:僕もダンサーをつけようかいろいろ悩んだんですけど、ラップをしているところをカメラで撮ってステージに映してもらうというのがあったんです。だったら1人で良いかなぁと思ったんです。1人だと、何も考えずに自由にできますね。僕の想いを歌詞にして、ずっと応援してくださっている方に届けたいメッセージでもあったので、あのやり方でナチュラルにアウトプットできています。

――最新シングル「Time Has Gone」は複雑な振り付けも見どころですが、ステージングはどんなふうに決まっていきましたか?

慶太:「まずはこの曲を完璧にしよう」という話になって、照明をいちばん最初に完璧に作り上げた曲ですね。

――ちなみに「Time Has Gone」は、アルバム『INVISIBLE』に収録された慶太さんプロデュースのシングル「We Don’t Need to Talk Anymore」に続き、最新のエレクトロミュージックを取り入れた楽曲ですが、この方向にもう一歩深く踏み込もうと思ったきっかけはあったのでしょうか?

慶太:シングル「We Don’t Need to Talk Anymore」とアルバム“『INVISIBLE』を経て、「次はどういう楽曲でいこうか」とみんなで話し合いながら、実はいろんな路線の楽曲を作ったんですよ。その中でもアルバムの延長線上の「Time Has Gone」が、パフォーマンスも含めて今のw-inds.らしい魅力を出せるんじゃないかということになりました。

――3人それぞれが歌唱するパートについて、慶太さんは英語、涼平さんと龍一さんは日本語で歌っていますが、作詞した慶太さんの意図があるのでしょうか?

慶太:なんとなくですね。この曲はメロディーと歌詞を一緒につけたので、涼平くんと龍一くんのパートを日本語にして、僕は2番も全部英語でいくというのは、パッとした閃きですね。

Time Has Gone

――この楽曲のみ撮影が許可され、ライブを観に行った方たちがSNSにたくさん動画を投稿されていました。この試みに反響はありましたか?

慶太:SNSに上がってる「Time Has Gone」のライブ映像を観てツアーに行きたくなったという声もあったり、ツイッターでトレンドに入ったりもしたので、ありがたいですね。

千葉涼平 撮影=河上良

――ライブのラストスパートでは、過去にリリースした楽曲を最新のサウンドにアップデートしたリミックスが4曲。終盤で体力的にもきついところでもっとも激しいダンスナンバーが続きます。その中でも特に「実はめちゃくちゃ疲れる」という曲はどれですか?

涼平:「SUPER STAR」から「SAY YES」への流れは、隙間がないから疲れる……。

龍一:そうだね。「SUPER STAR」でめっちゃ疲れてるのに、「SAY YES」にはイントロがなくて、歌から始まるじゃん。すぐに慶太が「Everytime〜♪」って歌い始めるから、「マジか、やるな!」って。

涼平:あそこの慶太はほんとにすごいっすよ。

慶太:あれね、痩せ我慢(笑)。 あの息切れ状態で歌うのまじで辛いよ。

龍一:その慶太を見て自分も高まりますね。

慶太:呼吸が大変なんですよ、「New World」の時も。

龍一:最後に「New World」をやってから、傾斜のステージをのぼるのがキツイっていう……。

涼平:そう、ステージからはけるのさえキツイですね。

――そんな疲れを感じさせない、軽やかな去り際でした。 今回のライブは、『INVISIBLE 』= 「目に見えない」と題されたアルバムに収録された最新の音楽たちが、初めて目に見えるようになった2時間でした。

龍一:完璧にシマりましたね。

慶太:昨日の夜から考えてきたの?

涼平:うまかったっすね(笑)。

――ありがとうございます(笑)。 最後に、これまで常に新しい形に変化しながら活動を続けていらっしゃいますが、今後どんな方にw-inds.の音楽を体感してほしいですか?

慶太:僕たちは単純に音楽が好きなので、同じように音楽が好きなひとたちに輪を広げたいですね。もちろん今までずっと応援してくださっているファンも大切で、みなさんがいるからここまで活動できているんですけど、「音楽好き」が聴いてくれてキックの音ひとつでアガってくれたりすると、「このキックの音色を選んでよかったな」と思えるので。そんなふうにどんどん広がっていけば良いなと思います。

w-inds. 撮影=河上良

取材・文 = Natsumi. K 撮影=河上良

リリース情報
DVD/Blu-ray『w-inds. LIVE TOUR 2017 "INVISIBLE"』
2017年11月29日(水)発売

w-inds.の2017年夏の全国ツアー「w-inds. LIVE TOUR 2017 "INVISIBLE"」、
​国内最終公演 9/27@日本武道館でのライブの模様を収録。
■初回盤DVD ​[PCBP.53225]:¥5,926(tax out)
┗Live Photoやメンバーインタビューなどが満載のスペシャルブックレット(68P予定)同梱と、
   通常盤とは別内容の特典映像を収録したDVD付き。
■通常盤DVD ​[PCBP.53226]:¥4,907(tax out) 
​■​通常盤Blu-ray ​[PCXP.50541]:¥5,926(tax out)
┗ツアーのメイキングを特典映像として収録。
 

 

リリース情報
「Time Has Gone」
●初回盤A [CD+DVD] PCCA-04581/本体価格¥1,389+TAX 【税込1,500円】
●初回盤B [CD+スペシャルブックレット] PCCA-04582/本体価格¥1,389+TAX 【税込1,500円】
●通常盤 [CD Only] PCCA-70516/本体価格¥926+TAX 【税込1,000円】
  • イープラス
  • w-inds.
  • w-inds.が明かすツアーの裏側、ライブを超えた音楽体験が完成するまでに迫る