Kalafinaが世界遺産興福寺で歌った「歴史を超えて明日に向かう“やさしいうた”」
-
ポスト -
シェア - 送る
撮影:ハヤシ マコ
2017.10.9(Mon) 世界遺産Special LIVE -興福寺- 中金堂再建記念“Kalafina with Strings”興福寺東金堂前庭 野外特設ステージ
世界遺産でKalafinaが歌う。そう聞いたのは先日まで行われていた『Kalafina “9+ONE”』最終版あたりだった。9月30日に日光東照宮で、10月8日~9日に奈良興福寺という2か所の世界遺産でのスペシャルライブを行うとのこと。この機会を逃すとそんな場所で彼女たちの歌声を聞く機会はもう無いかもしれない。そう思い奈良へ飛んだ。
興福寺は710年に建立された法相宗の大本山。阿修羅像が有名な「乾漆八部衆立像」や「木造四天王立像」などの国宝や重要文化財が現存する世界的にも有名な寺院である。今回のライブは「銅造薬師三尊像」を本尊とする東金堂を前に見据えた形で組まれたセットで行われた。開場を待つ列を眺めてみると、ファンに混ざって寺社関係者の方も並んでいる。空間自体が静かで厳かな境内はライブに対する静かな期待で満ちている。
それにしてもKalafinaのライブのファン層は多種多様だ。彼女たちが主題歌を務める『歴史秘話ヒストリア』から年配のファンも増えた、というのは関係者から聞いていたが、若い女性から男性、ご年配のご夫婦までもが開場を待つ姿は彼女たちの歌の奥深さを物語っているようだ。
撮影:ハヤシ マコ
東金堂前のセットにピアノ櫻田泰啓と、今野均ストリングスの面々が入場。そして白いドレスに身をまとったKalafinaが入場してくる。
静かに一曲目「storia」、そして「未来」が響いてくる、少し涼しくなってきた秋の夜、屋外の心地よさと古都の空に響き渡る彼女たちの音楽。まず感じたのはやはりこの特殊な環境でのライブでも圧倒的に音がいいということ。とにかく中音域の伸びが素晴らしい。Kalafinaが語る音楽を支え続けるスタッフワークも賞賛したい。彼らが演者と観客のハブとなっているからこそ、Kalafinaが伝えたいものが伝わっているのだということを改めて実感した。
撮影:ハヤシ マコ
「昨日も今日もお天気に恵まれました、静かで美しい音楽をお楽しみください」
Wakanaがにこやかに語り、「fairytale」、「満天」、「symphonia」が連続して奏でられる。秋の夜に鑑賞するのにちょうどよい、というと語弊があるかもしれないが、聴きたかった曲を極上の環境で楽しめるのはなかなかないことだ。
「世界遺産と言いますが、遺産ではなく、今も手を加え続けているものなんだそうです」
WakanaがMCで話した通り、今丁度中金堂は復元工事の真っ最中だ。一度生み出されたものを、失われないように共に生き続けるその姿は、人の営みそのもののような気がする。
撮影:ハヤシ マコ
次に披露された「百火撩乱」もまさにそうで、『活劇 刀剣乱舞』ED主題歌として生み出された激しくも切ないこの曲も、アコースティックアレンジとしてまたガラリと違う一面を見せてくれる。曲も人も角度や見え方が変わると表現も変わってくる。それを感じる。
「とんぼ」「far on the water」「sandpiper」と聞かせる楽曲を連続して披露した後に彼女たちの代表曲の一つである「Magia」を熱唱。恐らくこれまでに数百回歌ってきたであろうこの楽曲も、曲そのものが持つ本質や魅力は何も失わず、まるで別のように聴こえてくる。
それはアコースティックアレンジされていることや、特別な空間で聴くという要因もあるかもしれないが、彼女たちの重ねてきた年輪が新しい側面を引き出しているような気がした。歌い続けることで見えてくる音楽の地平線も、確かにあるのだろう。
「五月の魔法」「夢の大地」を披露した後のMCで「初めて世界遺産で歌わせてもらって、柱一つとっても温もりと強さを感じました」と語ったKalafina。
撮影:ハヤシ マコ
「全てが誰かを想い造られ、建てられているんだなと感じて、人は自分のためではなく誰かのためだからこそ頑張れるんだなと改めて思いました」そういう彼女たちが最後の曲に選んだのは「into the world」。
遠くどこまでも旅をしていくようなこの曲で、悠久の時に思いを馳せたりもしたが、それ以上に筆者は“今”を感じた。
この古都に降り立って、歴史の教科書に乗っている出来事は、確かに今の僕たちに直結している過去だということを実感できた。そこに居ることで過去を感じてしまう僕たちの前に立ったKalafinaは、その身に歴史を纏いながらも悠然と“これからの未来につながる歌”を披露してくれた。
ほんの数ヶ月で10周年を迎える彼女たちはこの一年を通して、過去を捨てること無く、まっすぐ明日へ向かい続けている。人はいつだって1秒先の未来に進み続けている。1300年前も、1分前も全て過去だ。それを身に受けながらも歩く僕たちの横に、きっとKalafinaの音楽はあり続けるのだろう。
アンコールに現れた彼女たちが歌った「やさしいうた」はまさに今のKalafinaの気持ちを代弁してくれているような気がしているのは、筆者だけだろうか?「やさしいうた」が終わり3人がお辞儀をすると同時に万雷のスタンディングオベーションになった。音楽がここにあって、明日に向かって歌い続ける。それはきっと千年前も千年後も変わらず行われる人の営みなのかもしれない。だとしたら、長い歴史の中でKalafinaと同じ時代に生まれた僕たちは、とても幸運なのかもしれない。
終演後のKalafinaにインタビュー
撮影:ハヤシ マコ
――まずはお疲れ様でした。世界遺産でのライブいかがでしたか?
Wakana:日光東照宮とこの興福寺とで合計3公演やらせていただいたんですが、やっぱりどちらも静かな環境でしたね、特に東照宮は森に囲まれていて、木の間に隙間があるのに密集してる感じがして、守られてるような気持ちになったんです。今回興福寺に来させて頂いて、修学旅行以来ですってアンケートやお手紙をファンの方にもらったりして。私自身も修学旅行以来に鹿と弄れられたのもありますし、改めて子供の頃にはわからなかった建造物の偉大さや大切さを感じることが出来たので、Kalafinaや音楽と一緒に戻ってこられて良かったですね。
――世界遺産というのもありますが、この静かな夜の屋外でのライブというのも珍しい気がします。『めざましライブ』などで野外ステージの経験はあると思うのですが。
Hikaru:久しぶりに夜の野外で歌う機会を頂いたのですが、やっぱりKalafinaの曲って夜に合う曲も多いんだなって改めて思いました。月や星など夜に浮かぶ、自然のものが入ってくる歌詞も多いからかもしれませんね。世界遺産という場所をイメージして曲を選びもしたんですが、その景色がより深く見えるというか、今まで自分がイメージして作ってきた曲の世界がより立体的に見えるような。宿っているパワーだったり集まってきているだろう願いだったりの中で歌えたことはこれからの私達にとってもいい環境でコンサートさせて頂けたなって思いますね。
――「Magia」などはまるで別の曲のように聞こえるくらいみなさんの歌唱に対するパワーを感じてしまいました。この9年で肉体的にも進化している部分というか、変化もありますか?
Wakana:やっぱりみんなパワフルになってきているからこそ、自分もという気持ちはありますね、欲も出てきますし。最初の頃はCDを再現するというか、録音した音を再現することに必死だったんですけど、今は今回で言えば、ピアノとストリングスだけだからこそ出来る表現というのを探すようになったりしてますしね。まず野外でストリングスの皆さんと演奏する事がKalafinaのライブでは初めてなんですよ。すごい音が伸びるね!とか話してましたし。そういう環境に順応できるようにはなってきたんでしょうね。
――なるほど。
Wakana:バンドの時の音とストリングスの音、例えば櫻田さんのピアノだけのライブのときとか二人の歌い方も変わってくるので、それも楽しいですね。
――去年拝見した『“Kalafina with Strings” Christmas Premium LIVE TOUR 2016』と比べても、エネルギーをすごい感じました。こういうものを積み重ねていって、あっという間に10周年ですが、この年末に向けて何か思うことを頂ければ。
Hikaru:今年は“9+ONE”というコンセプトで活動を続けてきて、沢山の“+ONE”を感じましたが、まだまだ皆さんと作っていくつもりです。バンドスタイルも勿論なんですけど、アコースティック編成でのライブも自分たちにとってとても大切で、その両方があるからこそ今のKalafinaとしての音楽があると思うので。11月12月は、一公演、一公演アコースティックならではの音の楽しみと、気持ちを込めてツアーができたらと思っています。
Wakana:本当にそういう気持ちで全国を回れたらって思いますし、今年でアコースティックのライブは6年目になるんですかね。やっぱりやり始めたときには見えなかったものも見えてきてると思うんです。それは音の余韻だったり、今日だったら「百火撩乱」での造語の後のHikaruの歌の入りの部分。音が何もない“無”の瞬間。その“無”を聞くことを楽しめるようになってきたのはアコースティックを続けてきたからこそなので、例年だとこの時期にアコースティックライブは出来ていないので、今回の世界遺産のお話はとてもありがたかったですね。11月からのツアーにもこの経験を持っていきたいですね。
Keiko:初めて世界遺産で公演をさせて頂けると聞いた時から、色々なイメージを膨らませてはいましたが、日光東照宮も興福寺も想像していた景色を遥かに想像を超えた環境が私達を迎えてくれました。それは言葉にすると少し軽く聞こえてしまうかもしれないけれど、その地に宿る人の“気”に近い何かを肌で感じたんです。そして世界遺産の数々を見学させて頂く中で、MCでもお話ししましたが、誰かを想い造られ、建てられたと伺い、それは私達の音楽への想いと寄り添うものがあるかなと思いました。
――そのMCはとても印象的でしたね。
Keiko:今日のようなアコースティック編成では特に、ボーカルと弦のカルテット、ピアノ、全員が寄り添いながら1曲を奏でています。私の気持ちに2人が寄り添ってくれたから、今日、最後まで歌いきることができました。ステージにいる1人1人がその曲を彩り演出していくような時間もあったな……。演者とスタッフ全員がお客様へ向けていい音楽を“届けたい”と想う、その誰かを想う心が人の感動を生むのかな……って。世界遺産の数々も、私達の音楽も“誰かを想う”という、人の感情の中で1番穏やかな“優しさ”がそこには存在しているんだなと感じました。だから、アンコールを頂き“やさしいうた”が歌えて本当に嬉しかったです。
――最後の「やさしいうた」は本当に優しく響き渡りましたね。
Keiko:はい、お客様の優しさに感動しました。これから秋冬ツアーで音楽の旅をするうえで、自分達なりにその土地を知り、人柄を知れたらいいなと…… その心を持って歌いたい。今回の世界遺産公演があったからこそ、大切な事を気付かせて貰いました。今日の公演を胸に、歩んでいきたいです。
インタビュー・文:加東岳史 撮影:ハヤシ マコ
01.storia
02.未来
03.fairytale
04.満天
05.symphonia
06.百火撩乱
07.とんぼ
08.far on the water
09.sandpiper
10.Magia
11.五月の魔法
12.夢の大地
13.into the world
<<Encore>>
E01.やさしいうた
2017/11/13(月) 周南市文化会館
2017/11/15(水) 広島文化学園HBGホール
2017/11/22(水) 札幌市教育文化会館 大ホール
2017/11/26(日) 和田山ジュピターホール 大ホール
2017/11/27(月) 倉敷市民会館
2017/12/2(土) 電力ホール
2017/12/3(日) 東京オペラシティ コンサートホール
2017/12/9(土) 富山県民会館
2017/12/13(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
2017/12/14(木) 福岡シンフォニーホール
2017/12/19(火)・20(水) ザ・シンフォニーホール
2017/12/22(金)・23(土・祝) Bunkamura オーチャードホール
デビュー 10 周年記念ライブ開催決定 !
2018/1/23( 火 ) 日本武道館