人間国宝・梅若玄祥の新たな試み『~薔薇に魅せられた王妃~現代能 マリー・アントワネット』記者発表会レポート
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(左から)未沙のえる、植田紳爾、梅若玄祥、藤間勘十郎
人間国宝の観世流シテ方能楽師の梅若玄祥が、悲劇のフランス王妃として知られるマリー・アントワネットの生涯を能に仕立てた『~薔薇に魅せられた王妃~現代能 マリー・アントワネット』の記者発表会が、2017年10月25日(水)に東京・国立能楽堂で行われ、玄祥のほか、振付・長唄作調の藤間勘十郎、脚本を務める植田紳爾、女優の未沙のえる、プロデューサーの西尾智子が登壇した。
異分野とのコラボレーションも積極的に手がけ、「平成能」と呼ばれる新たな能の姿を見せてきた玄祥が新たに挑戦するのは、演劇の題材としても人気の高いマリー・アントワネットだ。宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』の脚本を手がけた植田が、アントワネットが亡霊としてフェルゼンの前に現れ、その生涯を語るという夢幻能(霊的な存在が主人公となる能)として本作を描く。
能とアントワネットという異色のコラボだけに、どのような形で上演されるのかという質問が挙がると、玄祥は「(一つの作品を二場に分ける)複式夢幻能の形をとります。前場はフェルゼンとの思い出になります。能には『楊貴妃』という亡くなった妃の魂とやり取りをする演目がありますが、そのような設定だと思っていただければいいと思います。また、間狂言(登場人物の紹介や物語の説明などを務める狂言)もあり、これも長唄の作品にもなります」と説明。さらに、植田は「王妃になってからの後半生を描く」と語った。
梅若玄祥
アントワネットの生涯を題材にしたときに、はずせないのが断頭台のシーン。それについて植田は「(以前に)『楊貴妃』を観たときに(この形ならばアントワネットも)やれるんじゃないかと思ったことがあったので、今回もそういう形でやってみたい」と、現時点での構想を明かした。
植田紳爾
宝塚時代には『ベルサイユのばら』にメルシー伯爵役で出演したこともある未沙。今回の出演について「伝統芸能である能に携わらせていただくだけでも、本当に光栄に思っております。ドキドキワクワクしています」と喜びをあらわにした。
未沙のえる
また、玄祥の息子であり、舞踏家・振付家としても活躍する勘十郎は、「(この作品の概要を聞いて)最初はなんのことやらわかりませんでした(笑)。いささか不安はございますが、数々の名作を生み出した植田先生がいらっしゃいますし、父(玄祥)はどんなものでも能にしてきておりますので『マリー・アントワネット』もきっと見事なものになるのではないかと思っております」と語った。
藤間勘十郎
能楽ファンはもちろん、宝塚ファン、マリー・アントワネットファンからも注目を集める本作。玄祥は、「今回は(複式夢幻能という)本当の能の形をとっていただいた作品なので、能のことをなんとなくでもわかってもらえるんじゃないかと思います。能の入口ということではなく、この作品を観れば能というのはこういう世界なんだということがわかる作品。僕自身も楽しみにしています」と語り、勘十郎は「こんなものがあるんだ!と、何かわからないけれど、感動するものがある作品になると思います。素晴らしいものは、わからなくても感動するものです。このメンバーなら、そういったものを作れると思います」と、能に初めて触れる観客に向けてメッセージを贈った。
取材・文・撮影=嶋田真己
■会場:国立能楽堂
脚本:植田紳爾
演出:植田紳爾・梅若玄祥
振付・長唄作調:藤間勘十郎
企画プロデュース:西尾智子
梅若玄祥・福王和幸・未沙のえる・北翔海莉
笛:松田弘之
小鼓:大倉源次郎
大鼓:亀井広忠
太鼓:林雄一郎
後見:小田切康陽・松山隆之
地謡:山崎正道・馬野正基・角当直隆・谷本健吾・川口晃平・坂真太郎
長唄:吉住友孝・吉住小三友
三味線:苫舟
唄:吉住小代英・吉住小十秀
■協力:公益財団法人梅若会、長唄吉住会、宗家藤間流 藤間オフィス
■企画制作プロデューサー:西尾智子(ダンスウエスト・芸術文化プロデューサー)
■公式サイト:http://blog.goo.ne.jp/umewakakai_info/e/49c231beb76f0fe62380fe681e94a8ca