押尾コータロー インタビュー メジャーデビューから現在までの15年を振り返る
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押尾コータロー
今年メジャーデビュー15周年を迎えた、人気ギタリスト・押尾コータロー。今年の2月からは最新アルバム『KTR×GTR』を携えた全47都道府県を巡るツアーを行ない、7月にその長丁場の舞台を見事成功に収めた。そこで今回、15年間の歩みや周年記念のツアー、そして12月に控えるスペシャルライブ……と、脱線しながらもあれやこれやとトークにカラフルな花を咲かせてくれた。
――15周年、おめでとうございます! 15年間を振り返ってみていかがですか?
感謝の気持ちが大きいですね。しかも15年、ステージを支えてくれているスタッフも変わることなく続けてこれたことは僕にとって財産です。僕の場合は、最近でこそ「あ、押尾コータローさん、知ってます」って言ってくれるスタッフが現地にもいるようになったんですけど、最初はそういう方がいなくて。押尾コータローのギターサウンドをなかなか分かってもらえなかった。押尾コータローは弾き語りをする人だと思われて音響の人に「歌わないんですか?」って聞かれたり(笑)。その説明などが必要になってくるので、押尾のセッティングを分かってくれる専門のエンジニアが必要でした。スタッフのみんなとは長い付き合いになります。
――最初はそういう状況だったんですね。そこからメジャーで15年続けられた秘訣とは。
冷静に分析すると、34歳という遅咲きのデビューが良かったのかもしれないです。これが24歳でデビューしてたら、もうちょっと天狗になってうまくいかなかったかも(笑)。実は34歳の時、メジャーデビューはもうないって思ってたんですよね。でも音楽は好きだし、CDは自分で作れる時代だから、「これからもインディーズでやっていこう!」と思っていて。そんな中でレコード会社から契約の話がきたので、今が縁なんだと思いました。だからその縁を大切にしたいって気持ちになれたんですよね。
――そこからギター1本でも広く聴かれるポピュラリティのあるサウンドを生み出し続けられたこともメジャーで15年続けられた要因かと。押尾さんのようになりたい人は多くいると思います。
最近は10代のギター少年とか若い人も出てきていて、「僕みたいに……」と思ってくれてる人もいるかもしれませんね。広く聴かれていると言ってもらえるのは本当に嬉しいことですが、僕が曲を作り続けられているのは聴いてくれるファンの方達のおかげです。「押尾さんの音楽で元気をもらいました」とか「毎日聴いて、癒されてます」と言ってもらえると、みんなが笑顔になる曲をもっと作りたいと思うんです。
――癒しの力、ありますよね。それに加えて、歌いたくなるようなパワーがある楽曲も。
もともとフォークソングやニューミュージックなどの歌が大好きで、それで育ってきましたから、僕自身やってることはギターのインストゥルメンタルですがメロディは大切にしています。
――そうなると歌を乗せたくなるのでは?
そうなんですよね(笑)。歌の方を一緒にやるのは好きですし、僕の曲に歌詞をつけてくださった方もいるんです。でも、僕自身はギターが好きなので、このジャンルでいきたい。師匠の中川イサトさんと出会って、インストゥルメンタルに目覚めてからは、ザ・ベンチャーズとかクロード・チアリさんとか、他にもフュージョンのカシオペア、T-SQUARE、高中正義さん、インストゥルメンタルの先駆者たちのギターサウンドがすごくカッコイイと憧れたので。歌でメッセージっていうより、ギターでメッセージを伝えるアーティストになりたいですね。それに、多分、僕と同じ気持ちの人がいるはずだって思うんですよ。“インストが大好き!”っていう人。
――なるほど。そんなギターで想いを伝える押尾さんの曲は、どのように作られるんでしょうか。
実は最初は曲が作れなくて、インディーズでライブを始めた頃は、即興演奏やカバー曲が多かったです。実際、最初に作ったアルバムに入れたオリジナル曲は、「こんな感じの曲」とイメージして即興で作ったものがほとんどでした。で、そんな即興で作った曲を、当時FM802でヒロ寺平さんが番組でオンエアしてくれたんです。めちゃめちゃ影響力のある番組なので、反響がすごくて。「今の誰や?」ってFM802で大騒ぎになって、「このままではまずい」と思って(笑)。それで次のインディーズ時代の2枚目のアルバムは、もっとしっかりした構成で曲を作ろうと思いましたね。今聴くと、即興で演奏していたのも若々しくて良いなとは思いますけどね。
――より構成を練るようになったと。
はい。イントロやAメロ、サビなどがわかりやすいことも大事だし、一旦作ってから、いらないところを削っていくのも大事なんですよね。あと、きれいな景色などのイメージで曲を作っていたのが、誰かに向けて作るというか、そんな曲が増えてきたのはファンの方からの手紙で「病気だったんですけど、押尾さんの曲に助けられました」といただいたのがキッカケでした。自分の音楽で人の気持ちを救うことができるのかと思ったんです。新潟県中越沖地震の時も、柏崎のFM局の方が速報や地域の情報を流す合間に僕のCDを流してくれていたんです。地元の方からメールを沢山いただいて知ったんですが、歌にはない寄り添い方ができたのかなと、インストゥルメンタルの持つ力を改めて教えてもらった気がしました。もちろんギターテクニックも大事にしてます。例えば、「(ギタープレイに影響されて)うちの無趣味の主人がギターを弾き出しました。押尾さんのおかげです」って主婦の方もいたり。あと、「初めて楽器屋さんに行きました」という女性の方も。高校生の息子さんが僕のファンだったけど、一緒に楽器店に行ってギターを始めたって聞きました(笑)。
――確かに、幅広い人をとりこにする華麗なギタープレイは大前提の魅力。さて話を変え、7月に終了したツアーのこともお聞きしたいです。
今年、2月から始まった47都道府県50公演ツアーは楽しかったです! ファンの方にも喜んでもらえました。行く先々で「やっと来てくれた。ありがとう!」って。感謝の言葉をもらえて嬉しかったです。
――2月から7月と長丁場のツアーですが、乗り切るためにしているルーティンなどはありますか?
ルーティンは大事です。本番日は必ず納豆を食べるとか、お風呂にゆっくり入るとか。リハーサルの前にはスタッフとみんなでラジオ体操をします。ご当地ラジオ体操のCDがあって「今日は山形弁でいこう!」とか言って現地スタッフさんと一緒に。逆に山形なら大阪弁でやったり(笑)。本番前はスタッフとはグータッチ(拳)で「よろしく」っていうのを毎回やってます。「今日も愛情いっぱいで!」って気持ちを込めます。
――そういう交流は、現地のスタッフの方々も嬉しいですよね。
そうですね。特にライブハウスになると喜んでもらえます。例えば群馬県の高崎はダルマが有名なんですけど、ライブの当日に「押尾さんの15周年にダルマ作りました!」って、ライブハウスの店長さんがサプライズでダルマをプレゼントしてくれて。嬉しかったですね。
――それは嬉しいですね。他にそういうテンションが上がることは?
その高崎のライブハウスclub FLEEZの本多さん(店長)は、僕と同じガンダム好きだったんです。なぜ気付いたかというと、楽屋に貼ってある2017年の出演アーティストが書いてるライブスケジュールの「2017」の前にUCって書いてあるんですよ。UCっていうのはね、ガンダム用語で宇宙世紀(Universal Century)なんです。これガンダム知ってる人しか、わからないっていう(笑)。でもオレは「わかった!」って(笑)。
――楽しそうですね(笑)。
そうやってこちらのモチベーションを上げてくれる、ライブハウスってそういう場所なんですよね。ホールは割と更地から始めるイメージなんです。うちのスタッフが入って機材も入れ込んで僕のセッティングになっていくんですけど、ライブハウスは店長がいて「いや~、待ってましたよ!」ってなりますね。
――なるほど。ではそろそろ12月にあるスペシャルライブ話へ。7月までのツアーとは違ったお楽しみもあると思いますが。
ツアーはアルバム『KTR×GTR』の曲を中心にやったんですけど、今度は懐かしい曲も含めてのセットリストになると思います。
――押尾さんはお話も上手なので、ファンの方はMCも楽しみなのでは。
座りのコーナーで曲の話とかをするんですけど、ツアーだと話がどんどん追加されていって自分でも「長いな~このコーナー」って思うときがありますね。一応(話すことは)決めているんですけど、いろいろ脱線してしまって(笑)。
――さすが関西人ですね(笑)。でも演奏でも客席はかなり盛り上がりますよね。拳が上がったりウェーブができたり!
そういうコーナーもありますね。客席のみんなにも参加してもらったり、ギター1本でも迫力ある演奏で重低音出しつつ、1人バンドでやっているような雰囲気(笑)。もちろん、ギター本来の繊細な音も楽しんで欲しいので、オールドのギターの音をシンプルにマイクで聴いてもらう場面もあります。
――メリハリあるライブになりそうですね。では最後に読者の方にメッセージを。
今回のライブは、押尾コータローのメジャーデビュー15周年を記念したコンサートです。東京はオーチャードホール、大阪はフェスティバルホールでのワンマン。初めて見る方にもこれを機に、インストゥルメンタルのギター1本の“押尾コータローのコンサート”を見ていただきたいです。アップテンポな曲、しっとりしたバラードなど15周年を締めくくる記念のライブとしてベストな選曲でお届けするんですが、とにかく音が良いです。僕のコンサートにはシステムエンジニアと言ってホール内の音場を設計するスタッフがいて、メインのオペレーターが僕の演奏に合わせて音作りをします。もちろん、僕の熱い想いがないと伝わらないので、そこも含めてグッと入ってくる、押尾コータローのギターサウンドを存分に楽しんでほしいです。照明にもこだわった演出で、ギターのことがわからなくても、全然大丈夫。会場全体で楽しんでもらえるコンサートにしますので、是非、見に来てください。お待ちしています!
取材・文=服田昌子 撮影=森好弘
【東京公演】
(平日 11:00-18:00/土日祝 10:00-18:00)