もはや押尾コータローのライフワークと言える豪華ゲストを迎えたクリスマスコンサート直前に、その見どころと思いを訊く

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押尾コータロー

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押尾コータローのライフワークと言ってもいい、2008年から続く「クリスマスコンサート」の季節が今年もまたやってきた。12月6日に東京・EX THEATER ROPPONGI、19-21日に大阪・なんばHatchで開催されるコンサートには、例年通り、いや例年以上に豪華ゲストが大集合し、1年を締めくくるハッピー&ピースフルな四夜になることは間違いない。コンサートを目前に控えた押尾コータローに、過去のエピソードや今年の見どころ、クリスマスソングへの思いなどを語ってもらおう。

――恒例のクリスマスライブも、20年近い歴史を重ねてきました。始めた頃には、どんな思いがありましたか。

2008年に、大阪のサンケイホールブリーゼでやらせていただいたのが最初だと思います。そこから、せっかくのクリスマスコンサートなので、趣向を変えてゲストを呼んでやろうということになったんですね。僕はソロライブが中心で、ゲストを入れて呼ぶというライブをそれまであまりやっていなかったので、「クリスマスはそれで行こう」と。そしてゲストを呼ぶなら1、2曲じゃなくて、もっとやりたいなと思って、だからゲストで来た方がみんなびっくりするんです。「こんなにセッションできるの?」「すいません!ぜひ!」みたいな(笑)。

――初回3公演のゲストは世良公則さん、綾戸智恵さん、ジェイク・シマブクロさんでした。いきなりすごい人たちが来ちゃいました。

世良さんは憧れの人だったので、ホストとしてちゃんと仕切らないといけないのに、最後の曲が言えなかったんですよね。「次が最後の曲です」と言ったほうが、締まるじゃないですか。それを言い忘れて、演奏が終わったあとに「最後の曲でした」って(笑)。それがずっと悔いに残っています(笑)。

――初々しいですね(笑)。初回だけに。ちなみに過去の最多出演は盟友・DEPAPEPEで、初めてクリスマスコンサートのゲストに来たのは2010年だったみたいです。

DEPAPEPEはそこから毎年出てもらっているんですけど…なんでこんなに呼んだんだろう(笑)。最初はたぶん、一番大変だと思ったんですよ。ギター3本のアレンジは意外と難しい。「スーパー・ギター・トリオ」というギタリストが集結したグループも有名ですが、それはどっちかというとギターバトルに近いんです。それでもやっぱり一緒にやりたいと思ったのは、DEPAPEPEのメロディアスな音楽性と人間的な魅力ですよね。関西人なので、ギター以外のこと、例えばMCやお笑いのコーナーも真剣に考えたりできることもあって、「3人ともギターを持たずに、アカペラでクリスマスソングを歌おう」というのにも付き合ってくれたりして。やっぱりDEPAPEPEとやるのは面白いなと思って、毎年やりたいという気持ちになりました。アレンジは毎回大変ですけど、やりがいがありますよ。

――ギター3人って、どんなふうに難しいんでしょう。

アレンジは、違う楽器のほうが音色が違うので、スパッと割り切れたりするんですが、ギターは音色が同じだから、2人だったら1人がメロディ、もう1人が伴奏にわけるとわかりやすいけど、3人だと役割分担が難しいんです。それでも毎年やるようになったのは、DEPAPEPEの二人の魅力に尽きますね。そんなふうにゆるくやっていたら、いつの間にか2組のユニット「DEPAPEKO」としてCDを2枚も出していましたね(笑)。

――DEPAPEKO名義のアルバムは、今年リリースした「PICK POP II ~meets the WORLD~」で2枚になりました。

今ではもうDEPAPEKOが楽しくてしょうがないですね。今回も、大阪の初日は「ゲスト・DEPAPEPE」と書いていますけど、ゲストではないですね(笑)。もうメンバーです。

――弦楽器の方も過去にたくさん出演しています。例えばバイオリンのNAOTOさん。

バイオリンはギターと一対一で、しかもバイオリンという楽器は歌手に近い存在なので、歌手を伴奏に回すのは無理じゃないですか。でもNAOTOさんのバイオリンは違っていて、伴奏にも回れて、一人なのに弦楽四重奏がいるような演奏をするんですよね。NAOTOさんはソリストしてだけでなく、バッキングも素晴らしいバイオリニストだなと思います。NAOTOさんのバイオリンで、僕が単音で弾くこともできるし、五弦バイオリンを使ったり、エレクトリックなエフェクターでオクターブ下の音を出したり。本当に凄いです。

――そして直近の2024年のクリスマスコンサートも、華やかなゲストがたくさん来てくれました。DEPAPEPEに加えてサックスの上野耕平さん、フラメンコギターの沖仁さん、そして渡辺美里さん。

美里さんは僕が高校生の時に大ヒットを飛ばして、みんなコピーバンドをやっていましたからね。カラオケでもよく歌っていた、よく知っている曲をやれるわけです。そんな美里さんの楽曲を押尾コータローならではのギター1本のアレンジでセッションできて、ものすごく幸せでした。美里さんも僕のギターを気に入ってくださって。僕にとって素晴らしい思い出の1ページになりました。いつか思い出の2ページ目も作りたいと思っています。

塩谷哲

――クリスマスコンサートならではの特別な企画、特別な時間ですね。さぁそして、今年のクリスマスコンサートのゲストは、4日間で5組のアーティストが発表されています。まず12月6日の東京公演は、塩谷哲さん。

塩谷さんのピアノは軽やかで超絶なんだけど甘く切ない、「どうやったらこんな、気持ちをコントロールするような和音が作れるのかな?」と思うんですね。坂本龍一さんにもそういう印象を受けていたんですけど、和音の魔術師というか、SALT(塩谷の愛称)にも同じ感じがしています。今はオーケストラのアレンジだったり、音楽プロデュースとしても活躍されていますけど、今回はピアニストとしてのSALTと一緒にできるのが楽しみです。

――DEPAPEPEはちょっと置いておいて。大阪公演2日目は、ミッキー吉野さんです。

ミッキーさんは、僕の中では雲の上の人なんです。中学生の時に『西遊記』というテレビドラマを見ていて、その音楽がゴダイゴだったんですね。「この人たちは今まで聴いてきた歌謡曲と違うぞ」と思って、めちゃくちゃハマって、外国人が日本語で歌っているようなタケカワ(ユキヒデ)さんの歌もすごくかっこいいなと思って、初めてレコードを買いました。僕は高校を卒業して音楽専門学校に行く事を決めた時も、大阪にも学校はあったけど、東京・代々木でミッキー吉野さんが学長として開校された「パン・スクール・オブ・ミュージック」に入学しました。とにかく大好きだったんです。

――ああー。なるほど。

ゴダイゴの吉澤洋治さんは講師をされていたので、「吉澤先生」と呼ばせていただいてましたが、ミッキーさんは「ミッキー吉野」なんです。そんなミッキーさんが、僕がデビューしてだいぶ経ってから、神奈川県のコンサートを見に来てくれて、その後に八ヶ岳高原音楽堂でのコンサートで共演が叶いました。その時も夢のような1日だったんですけど、逆に僕のほうからお呼びできるのかな?と思って聞いてみたら、「いいよ」ということで、今回の出演が決まりました。実は先日、打ち合わせも兼ねたお食事会があって、その次の日(11月1日)にゴダイゴの50周年ライブが大阪の新歌舞伎座であって、もともと見に行く予定だったんですけど、「明日出る?」とミッキーさんからのご提案があって、「え!?」って。なんとゴダイゴの50周年記念のライブですよ!ちょっと躊躇してしまったんですけど、「急に言われて、嫌だという人もいるけど、どっち?」と言われて、「出たいです!」と(笑)。そんな神聖な場に出ていいのかなと思いながら、翌日、「ガンダーラ」を一緒にやりました。

――夢のような経験ですね。

ミッキーさんは本当にいい方で、僕のクリスマスコンサートのチラシも置いてくれていて、「12月20日に一緒にやるんだよね」とゴダイゴのファンの前で言ってくださったので、これは愛だなと思いました。

――ということは、当日は「ガンダーラ」をやってくれますか。

もちろん、やるつもりです。

DEPAPEPE

ミッキー吉野

――そして大阪3日目が、リクオ(Key)さんと清水興(B)さんです。

リクオさんのピアノはすごく軽やかで、ブルースというかラグタイムというか、ホンキートンクというか、それで歌を歌って人を幸せに巻き込んでいくスタイルに僕はやられたんですけど、リクオさんに呼んでもらうことも多かったので、今回は僕のほうからお呼びしたいなと。そして清水興さんは、ナニワエキスプレスのベーシストで、この方も僕にとっては神のような存在。フュージョン界のレジェンドですね。レジェンドなのにフランクに接してくださるので、僕のラジオにゲストで来てくれたり、イベントでご一緒することも多かったんですが、クリスマスライブのゲストとしては、お二人とも初めてなのでそ素敵な1日にしたいなと思っています。

――大先輩や、リスペクトしているアーティストばかりですね。今年のクリスマスコンサートは。

だから大阪の初日、DEPEPEPEの日だけは僕が偉そうにできますね(笑)。先輩風を吹かせて。DEPAPEPEとはいろんなことをやってみたいですけど、DEPAPEKOもあるし、DEPAPEPEも今年で20周年だし、その間に三浦拓也もソロアルバムを出していて、レパートリーも多い。今年も3人のメロディアスでパワフルなステージを楽しんで欲しいです。

リクオ

清水興

――あらためて、押尾コータローにとって、20年近く続いているこのクリスマスコンサートは、自分の中でどういう存在ですか。

これがないと寂しいですね。「次は誰を呼ぼうかな」って、毎年素敵な出会いがあって、初めてご一緒する方でもステージで共演して、また一緒に何かができるというご縁もあったりする。毎年がワクワクの連続です。しかもこれだけ続けていると、このライブを楽しみにしてくれている人も多いので、会場でみなさんとお会いできるのも嬉しいです。

――クリスマスソングということで言うと、初期の「メリークリスマス・ミスターローレンス」や「ラスト・クリスマス」のカバーがあったり。押尾さん、クリスマスソングがお好きですよね。

好きですね。クリスマスソングにはいい曲がたくさんあるんですけど、1年に1回しかできないんですよね。でも、毎年この季節になると街中で聴こえてくるクリスマスソングに、心がほっこりしたり、幸せな気持ちになれるので。今回も愛をこめてギターで届けたいと思っています。

――押尾さんはクリスマスソングに、どんな思いを託していますか。

コンサートの最後にいつも、ジョン・レノンの「ハッピークリスマス」をゲストの方と一緒に演奏して、 “WAR IS OVER,IF YOU WANT IT”というところを会場の皆さんと一緒に歌うんです。みんなが望めば戦争は終わるというメッセージがあって。戦争を起こそう、あいつらをやっつけようというのは簡単なんですよ。でもその逆は難しくて、戦争をやめようというのはみんなが思えない。でもこの場所からでも、一人ひとりが思えば戦争は終わるんだよって、この思いがもっと広がればいいということを、ジョン・レノンは歌っているんだなと思うので僕も伝えていけたらなと思っています。こうやって笑って楽しめるのは日本が平和だからなんだよという、そんな気持ちでいつもやっていますね。クリスマスコンサートは。

――言葉にせずとも、それは音楽で伝わっていると思います。押尾さんがクリスマスコンサートを続けることが、メッセージになっていると思うので。最後に、来ていただくファンの方へメッセージをもらえますか。

忙しい時期ではありますが、ちょっと時間を作っていただいて、僕のクリスマスライブで音楽に浸っていただきたいですね。僕の大好きなアーティストの方々と一緒に、愛情100パーセントの演奏を届けます!ちょっとでも心を癒していただいて、来年が素晴らしい年になるような、そんな想いを持って帰ってもらえるコンサートにしますので、みなさんぜひ足を運んでいただければと思います。会場でお待ちしています!


取材・文=宮本英夫

押尾コータロ― クリスマス・スペシャルライブ2025

ライブ情報

押尾コータロ― クリスマス・スペシャルライブ2025
12月6日(土)EX THEATER ROPPONGI
開場16:00/開演17:00 ゲスト:塩谷哲(Pf.)
12月19日(金)なんばHatch
開場17:45/開演18:30 ゲスト:DEPAPEPE(A.Gt.)
12月20日(土)なんばHatch
開場16:45/開演17:30 ゲスト:ミッキー吉野(Key.)
12月21日(日)なんばHatch
開場16:15/開演17:00 ゲスト:リクオ(Vo./Pf.)/清水興(Ba.)
 
7,700円(税込/全席指定)※ドリンク代600円別途必要
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