藤原道山・松永貴志・大萩康司ら国や時代、ジャンルも超えて、音楽の原点に触れる~『題名のない音楽会』で「アーク・ノヴァから生まれる音楽会」
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『鶴の巣籠』は、道山(中央)が親鶴、4人が子鶴役で演奏
11月18日放送のテレビ朝日『題名のない音楽会』は「アーク・ノヴァから生まれる音楽会」。今年9月19日~10月4日に東京ミッドタウンの芝生広場に出現した可動式ホール「アーク・ノヴァ(新しい方舟)」で演奏するにふさわしい音楽を、尺八奏者の藤原道山やジャズピアニストの松永貴志ら出演者が、自ら選んで披露した。邦楽、ジャズ、童謡という興味深いプログラムとなったが、選曲の意図や思いはいかに。
「アーク・ノヴァ」は、音楽や芸術を通じて東日本大震災の復興支援をしようと、スイスのルツェルン祝祭管弦楽団の働きかけで誕生した。赤い巨大なテント風の建物で、ヘソを凹ませたまんじゅうのような不思議な外観をしている。空気を中に送り込んで膨らませて設置され、高さ18m、幅30m、奥行36m、キャパシティは約490席。中に入ると意外に落ち着ける。ステージとの距離が近くて、奏者に親近感を感じられるのもうれしい。
「昼間は赤くて、風が吹くとたゆたゆと揺れて、心臓みたいに思えましたが、夜になると色が変わって、紫色と闇というか・・・」などと、道山が感慨深げに感想を語る。「こういうホールなので、奏者が呼び交わしながら演奏する曲を」と『鶴の巣籠』を総勢5人で演奏した。鶴の一生を通じて「親の慈愛」の深さを伝える、尺八の古典名曲である。ひな鶴が生まれ、成長して巣立ち、親鶴の臨終を見とどけるまでが描かれ、鳴き声や羽音などがさまざまな奏法で表現される。親鶴役の道山と鳴き交わしながら、四羽の子鶴役の奏者たちがホールの四方から舞台に近づいてくるシーンも必見。
2曲目は、キンキラのズボンで元気よく登場した松永が「会場を揺らす演奏をしたい」と、チック・コリアの名曲『スペイン』を袴姿の道山とコラボレーション。対比的な出で立ちの二人が、ときどき申し合わせたかのように、右足の太腿を軽く上げて演奏する。一見、ノリノリの松永のアクションに道山が合わせているかのシーンだが、実情は全然違う。
大好きなゴールドの衣装で熱演する松永
尺八は、竹管の前面に4つ、背面に1つ、孔が開いているだけのシンプルな楽器。音階も西洋音階とは違う。そのため、指で孔を半分とか4分の1とか、かなり工夫して押さえて音を出しているのだが「それでも出ない音があるので、上げた太腿に尺八の端をあてて調整してるんです」と道山。なんと、神業的な奏法なのだった。しかし、観客の多くはそうとは知らないので、洋楽を披露した日などは「『今日は随分ノッて演奏してらっしゃいましたね』とか、終演後に言われて……」と苦笑い。会場は爆笑!
道山の「腿上げ演奏」に、瞬時に合わせてパフォーマンスしていた松永
二人の演奏にことのほか感動していたのは、ルツェルン祝祭管弦楽団のミヒャエル・ヘフリガー芸術総監督。「素晴らしい! スイスでも伝統音楽とのコラボはやるけれど、これぞ、アーク・ノヴァの音楽!」と絶賛していた。
盛り上がったところで、番組の司会者で歌手の石丸幹二が、山田耕筰の『この道』と『赤とんぼ』を、大萩康司のギター伴奏に乗せてしっとり情感を込めて歌い上げるのだった。石丸は「学生の頃、ヘフリガーさんのお父さんのレコードををいっぱい聴いていました」などと、童謡を選んだいきさつを話す。ヘフリガー監督の父は、テノール歌手のエルンスト・ヘフリガー。親日家で、日本歌曲を70曲以上ドイツ語でレコーディングしているほど。監督は「父も喜ぶと思います」と顔をほころばせていた。
『この道』と『赤とんぼ』を歌う石丸、ギター伴奏する大萩
大萩は曲に合わせてギターを持ち替えて演奏。『この道』では柔かな音色、『赤とんぼ』では広がりのある秋空を思わせる音を響かせ、美しい余韻とともに音楽会を締めくくった。
※系列局の放送日時は、番組ホームページで。http://www.tv-asahi.co.jp/daimei/
取材・文=原納暢子
■放送日時:日時:2017年11月18日(土) 午前10時~10時30分 (テレビ朝日)
■司会:石丸幹二、松尾由美子アナウンサー
■出演:藤原道山、松永貴志、大萩康司、ミヒャエル・ヘフリガーほか
作曲:不明
尺八:藤原道山、工藤煉山、村澤寶山、長谷川道将、風間禅寿
♪2:「スペイン」
作曲:チック・コリア
尺八:藤原道山 ピアノ:松永貴志
♪3:「この道」
作曲:山田耕筰 作詞:北原白秋
歌:石丸幹二 ギター:大萩康司
♪4:「赤とんぼ」
作曲:山田耕筰 作詞:三木露風
歌:石丸幹二 ギター:大萩康司
■番組ホームページ:http://www.tv-asahi.co.jp/daimei/