漫画史上の伝説的傑作、初のミュージカル化! 宝塚歌劇団花組『ポーの一族』制作発表会見レポート

レポート
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2017.11.17

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少女漫画界で、長年に渡り数々の名作を生み出してきた萩尾望都の代表作であり、漫画史に燦然と輝く傑作『ポーの一族』が、宝塚歌劇団花組でミュージカル・ゴシック『ポーの一族』として上演される(2018年1月1日~2月5日 兵庫・宝塚大劇場 2月16日~3月25日 東京宝塚劇場での上演)。

『ポーの一族』は、西洋に伝わる吸血鬼伝説を基に、少年の姿のまま永遠の時を生きるヴァンパネラ・エドガーを主人公に、200年以上の時を駆ける物語。1972年に「別冊少女コミック」にて第1作が発表されて以来、少女漫画の枠を超えた幅広い読者を、世界規模で獲得している大人気作品だ。

この作品に魅了され、いつかミュージカル化したいと夢見て宝塚歌劇団に入団し、現在、宝塚歌劇のみならず日本のミュージカル界を牽引する演出家となった小池修一郎の悲願が叶い、ついに宝塚歌劇の舞台に登場するとあって、宝塚ファン、原作ファンにとどまらず多くの人々から熱い関心が寄せられている。

そんな期待のミュージカルの制作発表会見が、11月16日都内で開かれ、宝塚歌劇団小川友次理事長、原作者の萩尾望都、脚本・演出の小池修一郎、エドガー・ポーツネル役の宝塚花組トップスター明日海りお、シーラ・ポーツネル男爵夫人役の花組トップ娘役 仙名彩世、アラン・トワイライト役の花組男役スター柚香光が登壇。公演への抱負を語った


まず、小川理事長から、宝塚が104周年を飾るに相応しい大作にご期待頂きたいという挨拶の後に、出演者によるパフォーマンスが行われ、劇中歌より「ポーの一族」が披露される。作曲者の太田健のピアノ演奏により、暗闇の中に真紅の薔薇を手にしたエドガー役の明日海りおが浮かび上がり、原作漫画に登場する詩も使われた歌が歌われる。続いてシーラ・ポーツネル男爵夫人の仙名彩世、アラン・トワイライト役の柚香光も登場。三人で、また仙名のスキャットで明日海と柚香が踊り、永遠に生きる一族の姿が描かれる。

曲調が変わり、1人残った明日海が「悲しみのヴァンパネラ」を熱唱する。滅びるからこそ美しい世界で、永遠に生き続けなければならない宿命と、悲しみを歌う明日海エドガーの美しさに、場の空気はすでに作品世界のただなかにあるかのようで、拍手と共に感嘆のため息が広がった。

その後、原作者の萩尾望都、脚本・演出の小池修一郎、パフォーマンスを終えたばかりの出演者三名と共に、トークショー形式での会見が行われた。

その中で、まず率直な感想をと問われた萩尾が「この世ならぬ者を見て、ちょっと頭がボーッとなってしまった」と正直な胸のうちを吐露。興奮を隠せない様子が、会場の空気そのもののようだった。

また、小池修一郎は宝塚歌劇団入団当初、ちょうど宝塚が『ベルサイユのばら』ブームに沸いていた時期でもあり、宝塚に入団したからには何が作りたいか?と自分に問うた時に、躊躇なく浮かんだのが『ポーの一族』だったと語り、とあるホテルの喫茶室で全く偶然萩尾望都氏と隣り合わせ、これは今言うしかない!と名刺を差し出し、「いつか宝塚で『ポーの一族』を上演させてください」と直訴したという、秘話を披露した。

それを受けて萩尾は、子供の頃に宝塚を初めて観て、カッコいい男の人は見たことがあるけれども、こんなにも美しい男の人を見たことはなかった!と衝撃を受け、現在も1年に2、3作品を観ていると話し、また小池修一郎の作品も、同じ吸血鬼を扱った『蒼いくちづけ』『華麗なるギャツビー』と観劇して、いずれも素晴らしい作品で、「宝塚で、小池先生が作ってくださるのならば、いつでも『ポーの一族』を上演してくれて良い、と言い続けていたので、私はむしろずっとこの日を待っていたのです!」と、実は原作者自らも、宝塚での『ポーの一族』上演を待ち望んでいたことが明かされ「私のイメージ以上に、美しい世界が繰り広げられる予感がします」と、明日海以下の出演者の美しさにも納得の様子。

原作者からそんな太鼓判を押された、エドガーの明日海は「原作を読めば読むほどその魅力にとりつかれています」と語り、演じるエドガーのすべてにも魅力を感じていて「オーラがあり、少年なのにセクシーでもあり、それをどう私の佇まいで表現していけるか。子供の姿であっても何百年の時を経ていくのだから、周りの少年たちとは全く別の感情が流れていると思うので、ヴァンパネラになってしまったことで、彼が失ってしまったもの、その悲しみを表現したいです」とひとつ、ひとつを噛みしめるように語った。

シーラの仙名は「シーラは大変美しい貴婦人であり、小池先生にも情熱的で妖艶な女性と言われているので、それを表現したいですし、自ら愛に生き、ヴァンパネラとなる選択をしたシーラの強さや、ポーツネル男爵とエドガーが度々衝突する、そのエドガーの悲しみに寄り添う母性も表現していきたい」と意欲的に語った。

アランの柚香は「アランの第一印象は、真っ直ぐで純粋な人だなというものでした。その中で彼の生い立ちからくる孤独や、救いを求めているエネルギーと、それを敢えて見せまいと意地を張っている部分も含めて、彼の色々な魅力を大切に表現していきたい。宝塚ファンの方にも、原作ファンの方にも喜んで頂ける作品になるよう、心をこめて役に向き合いたい」と真摯に話した。

作品への抱負として、明日海から「萩尾先生、小池先生、原作ファンの方々に納得して頂けるように演じたい。漫画には音声がないので、イマジネーションを働かせて、花組一同力を合わせて精一杯取り組んでいきたい」という力強い言葉があり、原作作品の中の「ポーの村」「メリーベルと銀のばら」「ポーの一族」から編み出されるという、宝塚版『ポーの一族』への期待が高まる時間となっていた。

取材・文・撮影=橘 涼香

公演情報
宝塚歌劇花組公演 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』

【兵庫】
日時:2018年1月1日~2月5日
会場:宝塚大劇場
出演者: 明日海りお、仙名彩世 ほか花組

【東京】
日時:2018年2月16日~3月25日
東京宝塚劇場
出演者:明日海りお、仙名彩世 ほか花組


 
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