竹中直人×生瀬勝久の演劇ユニット新作はホラー!?

インタビュー
舞台
2015.10.3

佐々木希の初舞台も話題、倉持裕の書下ろし怪奇コメディ!

おい、向こうの洋館の中を見ろ……俺達もいるぞ!

頼む!俺と替わってくれ―――。

竹中直人×生瀬勝久の演劇ユニット「竹生(たけなま)企画」が11月に大阪で新作公演を上演する。第2弾『ブロッケンの妖怪』は、人気作家の倉持裕が書き下ろす笑いと怪奇が入り混じるホラーコメディ。ヒロインに初舞台の佐々木希を迎え、共演に大貫勇輔、田口浩正、高橋惠子ら個性豊かなキャストが集結した。

孤島にぽつんと佇む洋館には、謎めいた母(高橋)と娘(佐々木)が暮らしていた。この島では時折、海から立ち上る濃い霧に島の洋館が映し出される“ブロッケン現象”が見られるとあって、絵本作家の打越(竹中)と担当編集者の黒柳(生瀬)は取材にやってくるのだが……。

倉持が得意とする不可思議な笑いに満ちた世界にどう挑むのか。大阪市内で開かれた取材会で、生瀬勝久に作品のみどころと大阪公演への意気込みを聞いた。

―――第1弾『ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日~』から4年振りとなる新作『ブロッケンの妖怪』の上演が決定しました!

真顔で面白いことをいう生瀬さん

真顔で面白いことをいう生瀬さん

「竹生企画」は僕から竹中さんにラブコールを贈って実現した企画です。第1弾がとても好評で、僕らもいい結果が残せたなぁと喜んでいたのですが。その後、とある俳優仲間から、竹中さんが僕のことを「俺、あのひと苦手なんだよな…」と話していたと聞いて凄くショックでした。先日、ご本人にその事を確認すると「違うんだ!」と。僕が凄く目をむいてしゃべることが怖かったというので、「あなたもでしょ!」と返したんですが。「だから、目力で負けないようにしようと思う」と言われて……僕との共演はバトルだと思われているようです。光栄というか、変わった人ですよね(笑)。他に同じような人を見たことがない。僕の中では完全に第1弾で終わったと思っていたので。第2弾が決まって嬉しいです。

―――(笑)。ラブコールを贈られたのも、唯一無二の個性に惹かれてのことですか?

僕は学生のころから竹中さんらが出演されていた「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」(80年代に活躍した宮沢章夫作・演出のギャグユニット)が大好きでよく観ていた。竹中さんはテレビでもモノマネやコントを披露されていて。一方、近年では大河ドラマ『軍師官兵衛』で豊臣秀吉役に扮したり。僕も竹中さんのように、ふり幅の広い“怪優”になりたいですね。なかなか共演の機会がない中、竹中さんが監督された映画『山形スクリーム』で初めてお誘いを頂いて。撮影現場で「僕と二人芝居をしてください!」と誘ったのがきっかけ。半年後に、「二人芝居は照れるから何人かでやりましょう」と今の「竹生企画」につながった。

―――実際に舞台で共演された竹中さんの印象は?

稽古を含めて2、3ヶ月一緒に過ごす中で、シャイで紳士、そして芝居がとても好きな方という印象を受けました。稽古も集中して常に芝居のことを考えている。僕なんかはすぐに飽きちゃうんですけど。そういう点は先輩として凄く尊敬できる。

―――また、新作『ブロッケンの妖怪』の作・演出は、前作と同じ倉持裕さんです。

倉持さんの起用は、竹中さんからのご指名です。お二人とも劇作家の岩松了さんとよくお仕事をされているので、その関係の流れなのかな。僕は前回で初めてご一緒させてもらったのですが、面白い作家さんだなと。会話の応酬というよりも、相手が「んん?」と一瞬戸惑うような台詞が上手いですよね。それぞれのキャラクターに考えがあって、それが微妙な会話のズレから最後にとんでもない事件になっていく。前回で信頼関係が築けたこともあったので今回も。だいたい3作品ぐらいは同じ作家さんと組んでやってもいいのかなと、今は思っています。

―――ホラーコメディというのも興味がそそられます。

今作では「おしゃべりな編集者」を演じる

今作では「おしゃべりな編集者」を演じる

インパクトがありますよね。台詞はコメディタッチで面白い。役者はホラーやコメディを意識せずとも、登場人物に徹していれば、おのずと作者の思い描く世界が作れると思う。キャラクターたちは目の前のことを楽しんでいるんですが、観ているお客さんは、なんとなく悪い方向へ展開しているのが分かる。ドリフで言うところの「志村後ろ!」状態になっていくんじゃないかな。

―――作品を依頼する上で、倉持さんにリクエストされた部分は?

僕はありません。竹中さんはどうなんだろう。第1弾の時は「僕はこういうことに興味があります」と作家を交えた3人での打ち合わせの際に話したんですが。竹中さんはタンゴを踊りたい。僕は犯罪者の話をしたかな。ただ、言ったことは反映されませんでしたね(笑)。

―――また、今作では佐々木希さんの初舞台も話題です。前作では山田優さんが同じく初舞台を踏まれました。今後もヒロインは初舞台の方に?

というより、竹中さんがキレイな人が好きなんですよ。

―――抜擢の理由は、そこですか!?

佐々木さんは美人ですしね…としみじみ印象を語る

佐々木さんは美人ですしね…としみじみ印象を語る

お芝居はどう出してくるでしょうね。初舞台なのに大したことあったら大変ですよね(笑)! 少し前に、僕の別の演劇ユニット「ねずみの三銃士」の『印獣』という舞台で、三田佳子さんに出て頂いたことがあって。大女優の三田さんが僕らの舞台に出るなんて意外というか、違和感がありますよね。ただ結果としては凄く効果的だった。既成概念とかを取っ払って「これはあきらかに失敗するな~」ということを、わざとやれば成功につながるんじゃないかなと。酢豚におけるパイナップルですよね。この食材絶対いれちゃダメだろうと思いつつ、見た目の華やかさに加え、お肉を柔らかくする効果もあるわけですし。

―――佐々木希さんの“パイナップル効果”にも期待が高まります!

もちろんあのビジュアルですから、舞台映えします。竹中さんもドラマで共演されて、とても魅力的な方だとおっしゃっていました。稽古場の雰囲気も絶対よくなりますし。みんないいとこ見せたがるので。多分、竹中さんもそういう効果を狙っての人選だと思うんですけど……違うのかな(笑)。

―――(笑)。生瀬さんは映像でもご活躍ですが、その間もコンスタントに舞台に立たれる理由とは?

やっぱり稽古ですよね。稽古場では自分の考えを演出家と話したり。それが正解だというのではなく、俳優同士のコンビネーションをいろいろ試すことができる。だから僕は舞台をやり続ける。鍛錬の場であり、それが楽しみでもあるから。

―――最後に、今作の見どころを教えてください。

学生時代は京都の劇団「そとばこまち」で座長も務めた

学生時代は京都の劇団「そとばこまち」で座長も務めた

「竹生企画」の面白さはキャスティングの妙につきるので。初舞台の佐々木希さんら魅力的なキャストがいる中で、竹中さんと僕がどうやり合うのか。作家と演出家が同じ現場は健康的なんですよ。作家が書いた“正解”を知っている本人が演出するわけですから。前回同様、不可思議で面白い作品になると思います。

そして、小劇場出身の僕としては、佐々木さんにぜひとも舞台の楽しさと魅力を味わって頂きたい。カーテンコールの達成感や、逆に拍手が少ない時の感じとか。お客さんの反応を肌で感じられるのは、舞台ならではの醍醐味だと思うので。実際に経験して、そこでまた舞台に立ちたいと思ってもらえたら嬉しいですね。

公演情報
「ブロッケンの妖怪」大阪公演

日時:2015年11月5日(木)~8日(日)、全5ステージ
会場:サンケイホールブリーゼ
出演:竹中直人、生瀬勝久、佐々木希、大貫勇輔、安藤聖、田口浩正、高橋惠子
作・演出:倉持裕
公式サイト:http://www.tohostage.com/brocken/

※全国巡回スケジュール(詳しくは上記公式サイトにて)
【東京公演】シアター1010 10月30日(金)~11月1日(日)
【広島公演】上野学園ホール 11月3日(火・祝)
【大阪公演】サンケイホールブリーゼ 11月5日(木)~11月8日(日)
【静岡公演】富士ロゼシアター 11月9日(月)
【東京公演】11月12日(木)~11月29日(日)
【名古屋公演】中日劇場 12月1日(火)
【福岡公演】福岡市民劇場 12月3日(木)
【鹿児島公演】宝山ホール(鹿児島県文化センター)12月5日(土)
【鳥取公演】鳥取県立倉吉未来中心 大ホール 12月6日(日)
【新潟公演】りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場 12月8日(火)
【岩手公演】岩手県民会館 12月10日(木)
【栃木公演】足利市民会館 大ホール 12月12日(土) 

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