“ほぼ初対面”にもかかわらず、LEGO BIG MORLとBase Ball Bearが深く共鳴した夜
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LEGO BIG MORL
「Thanks Giving」Vol.10 2017.11.16 TSUTAYA O-EAST
2009年以降恒例となっている、LEGO BIG MORLのファン感謝祭といえる企画ライブ『Thanks Giving』。このシリーズは基本的に不定期開催だが、今年は計4回にわたって開催。10周年プロジェクトを挟んでいたこともあって、例年にないスピード感だった。back number、UNISON SQUARE GARDENをそれぞれ迎えた1・2月に続き、この11月にはBase Ball Bear、雨のパレードを招聘。以下のテキストでは、東京・TSUTAYA O-EASTで行われたBase Ball Bearとの同世代ツーマンの模様をレポートしていこう。
先手は本日のゲスト・Base Ball Bear。それぞれ軽く音出しをしたあと、ドラム周辺に一旦集合。3人で何やら話してから立ち位置に戻り、スッと演奏を始めた。驚くほど飾り気のないスタートだ。現在彼らは弓木英梨乃(KIRINJI)をサポートに迎えた編成で全国ツアーをまわっているが、この日は3ピース編成での演奏。1曲目「17才」のシンプルさを基点にして、まるでその触手を伸ばすように、バンドサウンドはどんどん変貌していくこととなる。2曲目「そんなに好きじゃなかった」から早速、歌詞に描かれる喜怒哀楽に沿って、アンサンブルの縦と横をスイッチしていく3人。瞬間ごとに表情を変えるサウンドに楽しく翻弄されるオーディエンスの姿が、恋愛に一喜一憂するこの曲の主人公と重なる。
MCで明かされたのは、学年が1個下の関根史織(Ba,Cho)以外はレゴのメンバーと同い年であること(バンドキャリア的にはベボベの方が先輩)。しかしこれまで接点はほとんどなく、小出祐介(Vo.Gt)はアルバムを聴いたりインタビューを読んだりしてレゴの予習をしてきたのだということ。とはいえ、このあと続くライブが物語っていたように、その事実が意外に思えるほどこの2組は共鳴する部分が多い。例えば、“ギターロック”を軸にしつつ、趣向を凝らし、単一のフォーマットに留まらないサウンドを目指していく闘い方。きめ細やかに思考を巡らせてある歌詞の文学性。一筋縄ではいかない捻くれ具合。バンドとして大切にしてきた美学を貫き通す芯の強さ。あ、演奏とは裏腹なMCのユルさ、メインソングライターの毒舌っぷりもそうか。
ごく私的な情報まで飛び出したメンバー紹介(小出曰く「こういうことも知っていた方が楽しめるから」)を終えると『光源』収録曲「Low way」へ。新体制を機に、自らに課してきた“メンバーだけでバンドサウンドを鳴らす”というルールを解いたベボベだが、その変化は3人きりの演奏にも大きな影響も及ぼしているようで、会場の空気もここでガラッと塗り替わる。デビューミニアルバム収録曲「GIRL FRIEND」でも引き算のアンサンブルが冴えるなか、“2周目の青春”感を引き立てるようにステージが夕焼け色に染められていたのにはかなりグッときた。
クライマックスへ向けたノンストップの展開の最中に思ったのは、3人きりで鳴らすクリアなサウンドは「「それって、for 誰?」part.1」「十字架 You and I」のようなファンク~ブラックミュージック色の強い曲と特に相性が良いのだということ。小出がアタック強めの発音で唄えば、スラップを効かせた関根のソロが炸裂。腕を高く突き上げながら叩く堀之内大介(Dr,Cho)もどんどんノッてきている感じがある。
ソロ回しなども経てラストに演奏されたのは「PERFECT BLUE」。音源よりもギターが1本少ないため、全体的に音域が低く、また、前曲までの勢いそのまま突入したため、テンポがかなり速い。小出が腹の底から唄い上げた<僕は君の知らない季節を さぁ、いこう>という言葉がいつになく深く刺さってきたのは、原曲の持つ爽やかさよりも、今の3人だからこその泥臭さが勝る演奏だったからだろう。「俺たちがBase Ball Bearです」と小出が挨拶してから、3人はステージを去っていった。
転換を経て、本日のホスト・LEGO BIG MORLの登場。まず初めにヤマモトシンタロウ(BASS)とアサカワヒロ(DRUMS)が入場。前列のオーディエンスとハイタッチしてからスタンバイすると、長いドラムロールを機にセッションがスタートした。そうしている間にタナカヒロキ(GUITAR)、続けてカナタタケヒロ(VOCAL & GUITAR)も入場し、順に音を重ね始める。4人によるバンドサウンドが鳴りわたったところで「『Thanks Giving』へようこそ!」と、カナタ、堂々の開幕宣言。そうして始まったのは「君の涙を誰が笑えるだろうか」だった。聞くところによると、この曲、数日後の大阪公演ではセットリストに含まれていなかったとのこと。ここまでの道のりを順風満帆には歩んでこれなかったレゴから、メンバー脱退という青天の霹靂にぶち当たったベボベに対するメッセージが込められていたのでは――と深読みしたくなってしまうようなオープニングだが、その辺りは、果たして。
ゴリゴリとドライヴしていく冒頭2曲を終えてMC。「感謝祭なので、どんどん飛ばしていきます」(タナカ)という言葉通り、これ以降も猛攻が続くが、その先陣を切っていったのが、シングル「knock to me」会場限定盤のみに収録されている「LION」だった。このコアな選曲、さすが、ファン感謝祭の名に偽りなしである。そして間髪入れず突入した「Wait?」では、カナタがフロアへ下り、オーディエンスを一通り煽ってからのスタート。腕を上下してリズムをとるカナタのしぐさが激しい時は大抵彼がテンション上がってきている時だが、現にその歌声は会場狭しとばかりによく伸びている。互いに向き合いながらガシガシ弾きまくるタナカとヤマモトのフレーズ、そして押し寄せる波の如きアサカワのビートによりバンドサウンドはさらに白熱。そこにオーディエンスのシンガロングが加勢し、ダイナミックかつドラマティックな響きで場内が満たされた。ここで一旦暗転。カナタがエレキからアコギに持ち替えたところで、『Re:Union』収録曲「雨のタクシー」、そして『心臓の居場所』収録曲「美しい遺書」とミディアムテンポの曲を連続で届ける。
MCの内容は、互いのドラマーのキャラ被り問題、「小出くんが一人でやっていることを俺らは二人でやっている」というギタリストによる自虐、「ベボベの正しい発音はどれ?」という話など。関西弁特有の軽妙さも相まって、相変わらず友達にでも話しかけるかのような調子だったが、いつもと違っていたのは、最後にタナカが「小出くんとは気が合うんじゃないかなと思ってるんです。何でかというと、僕も好きなタイプ、ショートカットなんですよ」と巧みに切り出し、ベボベのカバー「short hair」へと繋げたこと。この日限りのスペシャルな展開に、場内がワッと沸いたのだった。各楽器陣の滑らかなフレージングや、透明度の高く輪郭がシャープなカナタの歌声も相まって、本家とはかなり違う響きをしていたレゴ版「short hair」。また、同曲ではベボベの『光源』ツアー成功祈願としてアサカワ&堀之内が二人で計1リットルの“高原”牛乳をイッキするという一幕も。苦しみながらも完飲したアサカワとは対照的に、堀之内はほぼすべてをこぼし、余裕の笑顔を見せるのだった。
虹色の照明が輝くなか、大きなシンガロングが起こる「RAINBOW」の光景はもはや鉄板となりつつあるが、この日はそれ以前の曲も含め全体的に、カナタがマイクから離れて、フロアの方を嬉しそうに見渡す場面が特に多かった印象。オーディエンスの表情が見たくて顔を上げたのか、みんなと一緒に唄いたくて思わずそうしてしまったのかは分からないが、その後にフロアから返ってきたのは温かな歌声であり、幸福な時間が生まれていったことには変わりない。ベボベのことを「音楽と言葉を曲げないバンド」と称し、それはレゴが前回のツアーで改めて向き合ったことでもあるのだ――とタナカは語っていたが、その成果を証明していたのが、フロアにいるオーディエンスの姿そのものであったというわけだ。映し鏡のようなその光景はこの1年で彼らが築き上げた財産であり、最新曲「一秒のあいだ」が、バンドとして今一度核に据えたその美学を、さらに強化させるような一曲であることもまた心強かった。
アンコールで告知があったように、来年の結成記念日には“心配と安心”と題した2デイズライブを開催。LEGO BIG MORLはいま、己と向き合い見出した確信を携えて、12年目の春へ踏み出そうとしているところだ。
取材・文=蜂須賀ちなみ
Base Ball Bear
1. 17才
2. そんなに好きじゃなかった
3. Low way
4. GIRL FRIEND
5. 「それって、for 誰?」part.1
6. 曖してる
7. 逆バタフライ・エフェクト
8. 十字架 You and I
9. PERFECT BLUE
1. 君の涙を誰が笑えるだろうか
2. Hybrid
3. LION
4. Wait?
5. 雨のタクシー
6. 美しい遺書
7. short hair(Base Ball Bearカバー)
8. RAINBOW
9. 一秒のあいだ
10. あなたがいればいいのに
11. バランス
[ENCORE]
12. nice to
2017/12/02(土) 群馬・高崎club FLEEZ
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/03(日) 栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/09(土) 新潟・新潟LOTS
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/10(日) 長野・松本Sound Hall a.C
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/16(土) 埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/17(日) 神奈川・横浜BAY HALL
開場 16:00/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/23(土) 香川・高松MONSTER
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2017/12/24(日) 高知・高知X-pt.
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2018/01/06(土) 大阪・なんばHatch
開場 16:00/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2018/01/14(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
開場 16:00/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2018/01/20(土) 宮崎・宮崎SR-BOX
開場 16:30/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2018/01/21(日) 福岡・福岡DRUM LOGOS
開場 16:00/開演 17:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2018/02/09(金) 東京・ZEPP TOKYO
開場 18:00/開演 19:00
料金 スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
2DAYS公演
3/27(火)~Acoustic Live~
3/28(水)~Rock Live~
会場:恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
2days Ticket \7,000(税込)
*2days Ticketをお買い上げの方には、Special Picture Ticketをプレゼント!