Base Ball Bear 結成25周年&デビュー20周年を迎えたバンドは今何を歌うのか、インターネット内の“不在”を哲学する詩的かつ知的興奮に満ちた最新ミニアルバム『Lyrical Tattoo』を紐解く

2026.2.19
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Base Ball Bear

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2026年、結成25周年とデビュー20周年のアニバーサリーを迎えてなお、フレッシュな刺激と発見を伝えてくれる、Base Ball Bearはやはり凄いバンドだ。前作『天使だったじゃないか』のコンセプトを引き継ぐ最新ミニアルバム『Lyrical Tattoo』は、シンプルでソリッドな90’sパワーポップを主軸に、歌詞はインターネット内の“不在”を哲学する、詩的かつ知的興奮に満ちたもの。時代に対して常にカウンターを仕掛けるバンド、Base Ball Bearは今何を歌うのか? 小出祐介(Vo&Gt)、関根史織(Ba)、堀之内大介(Dr)に話を訊いた。

――今回のミニアルバム『Lyrical Tattoo』は、どんなテーマを持って作った作品ですか。

小出:まだ(取材期間前だから)あんまり話していないんですよ。どういうところから話すのが、わかりやすいのかな。

――ゆっくりやりましょう。

小出:まず、今回はミニアルバムというパッケージになっていますけど、前作が『天使だったじゃないか』という作品で、サウンドコンセプトも含めて、その流れを汲んでいる作品になります。『天使だったじゃないか』で、自分がやりたいことは十分できたと思ってはいましたが、その流れで、まず「夏の細部」という曲を、ダウ90000の演劇公演の主題歌として作らせていただいて(2024年)。自分的にすごくいい曲ができたという手応えがあったので、次回作は「夏の細部」を含めたパッケージの作品にしようと。いわゆるパワーポップ的な考え方で曲を作ることを、もうちょっと追いかけてみたいというところから始めたんですけれども。

■なんで自分が「インターネットにいない存在になりたい」ということに興味があるのか?ということを突き詰めて考え始めたら、そもそも“存在”って何だろう?というところに考えが向いていった。(小出)

――はい。なるほど。

小出:前作の『天使だったじゃないか』は、全体的にアンニュイなんですよ。元々あったものが変わっていく寂しさが漂っていますね。下北沢の駅とかを見ていて、街は同じなのに中身がごっそり入れ替わっていく感じ。自分にとって特に親しみのある街だったので、近年急速に開発が進んで、踏み切りがなくなって歩きやすくなったことは良かったですけど、昔からある店がどんどんなくなって、古着屋さんばっかりになっているとか。自分らの出身のライブハウスもなくなっちゃったし、そこに新しいお店が入ってまた頑張っているんですけど、どうにも寂しかった。そういうところから始まったんですね。前作のテーマは。

――はい。

小出:で、「夏の細部」が橋渡しになるような形で、今回の作品の制作に入ったんですけど、去年の夏ぐらいに作り始めた段階で自分の中にあったのが、インターネットやソーシャルネットワークサービスに対して思うことがあって――今に始まった話じゃなくて、2015年に「それって、for 誰?」という曲を出してますから――もう10年以上、SNSに対してムカつきっぱなしなんですけど、この1年ぐらいかけて、「インターネットにいない存在になりたい」と思ってきていまして。

――というと?

小出:デジタルデトックスしたい、という話じゃないんですよ。それはそれでいいと思いますけど、「デジタルデトックスすればいいじゃん」で完結するようなことを、わざわざ音楽でやらなくていいわけで。なんで自分が「インターネットにいない存在になりたい」ということに興味があるのか?ということを、突き詰めて考え始めたら、そもそも“存在”って何だろう?というところに考えが向いていったんです。現代的な価値観で言うと、インターネット上やSNS上でいろいろ情報が出るとか、トレンドになっているとか、個人個人がエピソードを書いたり、写真を上げたりして、そこに発表して初めてそれがあったことになっているんですよね。みんながそれを観測して、あったことになる、みたいな。そうなると、じゃあインターネット上にないものはないのか?と。

小出祐介

――まず、表現する人は、全員いるでしょうね。

小出:この仕事をしている人は全員いるし、一般のお仕事をされている方でも、何らかの形で多くの方がいると思うんです。じゃあ、インターネットにいない人はいないのか?と問うと、正解は「いる」ですよね。いるのに、インターネット上では不在ということになる。

――そうなりますね。

小出:かつ、我々が日頃生きている中で、現実のほうが当然大事じゃないですか。皆さんそれぞれ生活があるけど、SNS上で観測されないと、なかったことになってしまう。プライベートの中にも(SNSで観測される)オンとオフがあるみたいな、その感じって何なんだろうな?と思ったんです。それで、“存在”ってなんだろう?ということを考え始めたんですけど。

――なるほど。

小出:自分はこれまでも、存在について曲にしてきたことがすごく多いんです。存在と不在というものを同時に取り扱ってきているんですけど、“不在”ということを考えると、まず一つは、いろんな理由でもう会えなくなった人。二つめは、存在していることはわかっているけど、例えば物理的な距離で会えなくなった人。この二つは、僕はずっと取り扱ってきていて。三つめに、さっきお話しした「インターネット上の不在」が加わるんですけど、一、二、三の不在は、本質的には全く違うことじゃないですか。でもこれらが混ざることで、「存在って何だろう?」という疑問がより深まるので、今回はそれらを混ぜて描写してみることにしたんです。現実かオンラインかという違いがあるけど、現代的な肌感覚では一、二、三は接続している。それらを同時に語ることで、見えてくるものがあるんじゃないか?ということを考え始めたんですね。ちょっと哲学風味ですけど。

――小出さんは、最初からずっとそういう人だと思ってます。今までの思考の上に現代的な、新たな要素が加わったということですね。

小出:今挙げた一、二、三で言うと、三だけを歌うのはあまりにも狭い話なんですよ。それは冒頭に言った、「デジタルデトックスすりゃいいじゃん」に帰結する。でもそこに元々自分が歌ってきていた一、二が接続されることによって、「これは歌う意味がある」と思った、ということですかね。

関根史織

■自分たちがバンドを組んだ頃に好きだった音楽の影響も感じるし、それをナチュラルに出せたことが、何か嬉しいなと思える作品になりました。(関根)

――そういう歌詞のテーマを、前作からのサウンドコンセプトである、パワーポップ的アプローチに乗せたのが、今回のミニアルバムだと。

小出:それを引き続きやりたいと思ったことにも理由があって。現代の日本の音楽の作り方や作られ方、そして出来上がったものを聴いていると、「J-POP的な在り方」が煮詰まってきているな、と思っているんです。いろんなパーツを考えて、それを組み立てることがみんなうまくて、だからどれもごちゃごちゃして、せかせかしている。そして、SNSで受けるためには最初の数秒で勝負を決める必要がある、という考え方で作っている人も多い。それはそれでいいと思うんですけど、そこに自分は加担したくない。自分はもっと有機的な――という表現が合っているかわからないですけど、聴き手に浸透するまでに時間がかかったとしても、いいメロディを書きたいと思ったのと、AメロBメロがあってサビがあって後半に向けてどんどん盛り上がっていく、みたいな形に抗いたいという思いがすごくあったんです。

――はい。

小出:自分の好きな音楽は、Aメロがサビ的なものになっていて、それをさらに膨らますものとしてBメロが存在する、という形になっているものが多いので。必要であればABCでもいいんですけど、イントロからAメロの流れをすごく大事にして、Aメロだけでも繰り返し聴ける曲にしたかった。今回制作した曲は基本的にそういう作り方になっています。そうなると、おのずから曲が短くなるんですよ。必要な要素をぎゅっと詰めたので、余分なものがないから、自然に短くなっちゃうんですね。その代わり、曲は2分強で終わるけど30秒のフィードバック音が入っているとか、余韻のために時間を使うことをやっているんです。

――それ、聴いていてすごく特徴的だなと思いました。最後にギターの余韻が残っているような曲が、何曲かあるんですよね。

小出:それは、あえてやっています。曲がバッと始まって、アウトロもなくバッと終わる、みたいな曲が多い中で、余韻というのは、Xタイム(長さを決めずに自由に表現する)じゃないですか。

――まさに、そうですね。

小出:速さが求められている時代の中にも、遅いものがあっていいと自分は思っているんですよ。情報の伝達速度も、曲の勝負を決める時間も速いし、みんなそれを待たなくなっているけど、僕は全然待っていいし、遅くてもいいと思う。それは、コミュニケーションについてもそうで。誰もがすぐに答えを求めたがるけど、もっと遅くていいし、会話もそんなに矢継ぎ早じゃなくていい。もっと相手が言うことを待っていいし、深く考えていいし、一個の話題についてじくじく話していてもいい。「遅さを演出する」ということも、同時に考えていましたね。今回のミニアルバムのテーマは、ざっくりと、そういう感じです。

――すごく思慮深く、現代的なテーマだと思います。こういう話を小出さんは、制作に入る前にメンバーに話してくれるんですか。

関根:しないですね。

小出:作りながら考えているからね。

関根:歌詞については、最後に見ることが多いです。ただ、「インターネットにいない存在になりたい」みたいなキーワードは制作中に聞いていたのと、「J-POP的な構成に抗いたい」みたいな気持ちは、私にもやっぱりあるので、考えていることは大体似ていたような気がしますね。自分たちがバンドを組んだ頃に好きだった音楽の影響も感じるし、それをナチュラルに出せたことが、何か嬉しいなと思える作品になりました。

堀之内大介

――今年で結成25年、デビュー20年。誰よりも先に四つ打ちのダンスロックを取り入れたり、ラップに接近したり、先鋭的なことをやって来たバンドが、今ルーツ回帰的な場所にいるのは、良い意味で感慨深いものがあります。

小出:Base Ball Bearというバンドも、自分という曲を書く人間も、結局ずっとカウンターなんですよ。今あるものは、今ある時点でもう過去ですから、それに沿ってやっていくのは全然面白くないんですよね。レギュレーションに縛られたくない、環境を脱したい、というものが常に自分の中にはあるし、批評的な目で今あるものを捉えて、それに対してどういうアプローチを考えるか。それは最初から繰り返してきたことですが、下北沢でやっていた時は、逆にみんな、こんな曲しかやっていなかったですから。

――今回のミニアルバムに入っているようなアプローチですよね。あの頃は、そうだった気がします。

小出:そこで、周りと差別化するためにはどうしたらいいかを考えて、16ビートへのアプローチとか、ディスコやファンク的な方向を目指しました。そしたらだんだん、別に自分らに合わせてそうなったわけじゃないかもしれないけど、結果的に自分らのような考え方でやっている人が増えていったから、「じゃあその次を考えなきゃ」という、そういうことをずっと繰り返しやってきてます。

――まさに。

小出:今回のミニアルバムは90’s回帰っぽく見えるかもしれないけど、そういうサウンドの考え方をしている人がいないからでしょうね。これだけジューシーなギターの歪みが聴けるアルバムがあんまりないので、それを今、作ったほうがいいのかな、という感じですね。「こういうの、どうですか?」というご提案です。

――堀之内さんのドラム、最高です。例えば「BLUE、たる」とか、こんなに空間が良く鳴っている豊かなドラムの音、めったにないです。

堀之内:嬉しいです。「BLUE、たる」は最後に録ったので、サウンドはだいぶこだわっています。今回は、あえて広いところで録って、狭くしているものもあるんですよ。物理的に広いスタジオの中に、すごい狭い部屋をまた作って、その中で録るとか。ただ狭いところで録るのと比べて、空間の鳴りも全然違うので、録り方はだいぶ考えました。

小出:ドラムで決まっちゃうからね、全部。ドラムの録り音が決まったところで、そのレコーディングの80パーセントは終わってますから。例えば、ドラムをすごく広く録ったら、絶対にタイトにならない。ドラムだけは不可逆で、竿もの(ギター、ベース)はあとからでも引き返せる可能性はあるけど、ドラムだけは絶対に戻れない。というか、バンドマンの良心として戻らない。直そうと思ったら一から録り直すしかない。出来上がりをイメージしながら、ドラムの音を決めることが重要です。

堀之内:ずっとそんな感じでやってます。録りよりも、音作りの時間のほうが長いです。しかも僕の場合、録りのテイクを重ねても良くなるものじゃないというタイプなので。

小出:2、3テイクだよね。ドラムとベースは一緒に録るので、そんな感じで終わっちゃいます。あとはギターダビングの時間になるんですけど、ギターも音作りがほとんどです。歌と合わせて、足したり引いたり入れ替えたり、1か月ぐらいかけて決めていく感じですかね。

 

――先行リリース、リード曲の「Lyrical Tattoo」はどうですか。プレイヤー的な楽しみは。

堀之内:今回のミニアルバムはイントロがめちゃくちゃいい曲が多くて、さっき話していた余韻の部分もそうですけど、歌が来るまで待つ感じとか、終わってから余韻を楽しんでいただく感じとかが、「Lyrical Tattoo」は一番わかってもらえる曲なんじゃないかなと思います。

――一個、聞いていいですか。歌詞の一行目に出てくる《1997年から遠く離れて》というフレーズには、どんな意味を込めていますか。

小出:そんなに意味はないです(笑)。“ナインティナインティセブン”という音が良かったからで、ただ時間が経っているよということだけ言えれば、何年でも良かったんですけど。そこは自由に解釈していただければ。

――二行目の《自転車で転ぶ》というのは、実話ですよね。去年の3月でしたっけ。

小出:ここは、さっき話した「遅さ」に繋がるんですけど、《遅延ない時代を突き進む/自転車で転ぶ》というのは、レイテンシー(遅延時間)のないところでずっと生きていて、自分が自転車で事故って、一旦立ち止まった時に、何に急いでいたのかな?とか思ったりしたんですよ。

――ああー。そういうことか。

小出:自分はその速度に加担しているつもりはなかったけど、一旦立ち止まってみるとなおさら、速いことの何がいいのかな?と。

■すごく久しぶりの場所が多いので、久しぶりに見に来たよとか、初めてだけどふらっと来てみたよでもいいので、ぜひ遊びに来てください。(堀之内)

――意図せずとも、テーマと繋がったということにしておきます。そんなミニアルバム『Lyrical Tattoo』を引っ提げて、2月15日からリリースツアーが始まります。何を見せたいですか。

堀之内:2年ぶりぐらいに全国15か所に行くので、すごく久しぶりの場所が多いんですよ。皆さんにお会いできるのを楽しみにしていますし、気楽に来ていただければ嬉しいかなと思います。久しぶりに見に来たよとか、初めてだけどふらっと来てみたよでもいいので、ぜひ遊びに来てください。

関根:演奏するのが楽しい曲ばかりで、グリッド(正確なテンポ)に合わすみたいなことではなく、そうじゃない部分でバンドの演奏に確信が持てる状態になってきたので、自信を持ってやりたいです。

――「Remains」、歌ってくれますよね? 『Lyrical Tattoo』に入っている、関根さんリードボーカルの素敵なバラード。

関根:歌います。いい曲ですよね。歌を録っている時に、エンジニアの方も「いい曲だな」と言ってくれました。自分がメインボーカルの曲って、今までにも何曲かあるんですけど、この歌が一番上手に歌えたかもしれない。あとはコーラスとか、いろんなアイディアが自分の中の頭に浮かんだんですよ、今回のミニアルバムは。いろんなことにチャレンジして、うまくいったなと思っていて、すごく満足しています。

――そこもライブで楽しみにします。そして9月4日にLINE CUBE SHIBUYAで、『SHIBUYA NONFICTION Ⅲ』の開催も決定しました。現時点で発表されているゲストアクトが、岡村靖幸さん、RHYMESTERの2組。どんなライブになりそうですか。

小出:岡村さんとRHYMESTERをどう引き立てるか、みたいな感じです。

――バンドが主役じゃないんですか。

小出:きっとみなさん、お祝いに来ていただけるんだとは思うんですけど、お迎えするからにはゲストをすべらせたくないというのが一番です。RHYMESTERとの曲(「The Cut-feat.RHYMESTER-」/2013年)を作った時もそれが一番大事でしたね。ライムスも岡村さんも、乗っかって楽しくパフォーマンスしていただけるような演奏ができたらいいなと思っています。


取材・文=宮本英夫

リリース情報

ミニアルバム『Lyrical Tattoo』
2026年1月28日発売
https://baseballbear.lnk.to/LyricalTattoo_AL
 
通常盤(CD):¥2,750(税込)/¥2,500(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-66118.html
 <CD収録曲>
1.Lyrical Tattoo 
2.caramel dog
3.TIME SHIFT GIRL
4.Remains
5.夏の細部
6.BLUE、たる
7.(The rise of) Offline Souls

 

ライブ情報

Base Ball Bear Tour 「Lyrical Tattoo」
2月15日(日)    愛知    BOTTOM LINE     16:15/17:00
2月27日(金)    大阪    BIG CAT    18:15/19:00
3月19日(木)    東京    Zepp DiverCity(TOKYO)    18:00/19:00
5月15日(金)    宮城    仙台darwin    18:30/19:00
5月16日(土)    新潟    GOLDEN PIGS RED    16:30/17:00
5月28日(木)    千葉    千葉LOOK    18:30/19:00
6月4日(木)    京都    磔磔    18:30/19:00
6月6日(土)    岡山    IMAGE    16:30/17:00
6月7日(日)    愛媛    松山Double-u studio    16:30/17:00
6月19日(金)    石川    金沢AZ    18:30/19:00
6月20日(土)    長野    ライブハウスJ    16:30/17:00
7月3日(金)    北海道    BESSIE HALL    18:00/18:30
7月5日(日)    青森    青森Quarter    16:00/16:30
7月10日(金)    福岡    DRUM Be-1    18:30/19:00
7月11日(土)    熊本    熊本B.9V2    16:30/17:00

SHIBUYA NONFICTION Ⅲ
9月4日(金)LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
OPEN 18:00 / START 19:00

出演>
Base Ball Bear、岡村靖幸、RHYMESTER 他


料金:全席指定 6500円(税込)
  • イープラス
  • Base Ball Bear
  • Base Ball Bear 結成25周年&デビュー20周年を迎えたバンドは今何を歌うのか、インターネット内の“不在”を哲学する詩的かつ知的興奮に満ちた最新ミニアルバム『Lyrical Tattoo』を紐解く