加藤和樹、革命に燃える青年役再び 『1789 -バスティーユの恋人たち-』主演への意気込みを語る

2018.3.21
インタビュー
舞台

加藤和樹『1789』取材会にて(撮影/石橋法子)

今春、ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』が東京、大阪、福岡で再演される。本国フランスで2012年に初演、開幕と同時にメガヒットを記録した、革命前夜の混乱と感動を描いた愛の群像劇だ。日本では宝塚歌劇団に続き2016年に東宝版が上演され、完売に沸いた超話題作。革命に燃える主人公の農夫ロナンには初演に引き続き加藤和樹、小池徹平がダブル主演を務める。本作が自身初の帝国劇場主演作となった加藤和樹に、再演への意気込みを訊いた。

●初演では泥臭く真っ直ぐに、主人公を演じました。再演では向上した内容でお届けしたい

ーー『1789』の再演が決定しました。初演の帝国劇場公演では、千秋楽のカーテンコールで「現実に戻っても物足りなさを感じるくらい、舞台上でロナンとして生きている感覚が強かった」とコメントする姿が印象的でした。

カンパニーの居心地がすごい良かったんですよね。作品にかける思いもそうですし、本当にみんなで分からないなりにも頑張ろうと、ゼロから体当たりで作り上げていったので。同じ釜の飯を食った仲間、そういう絆みたいなものはありました。自分にとって初めての帝国劇場での東宝主演作でもあり、再演はすごくありがたい。だからこそ、向上していかなければいけないと思います。

ーー作品や役柄について、ファンや周囲からの反響はありましたか。

「また死ぬんかーい!」という声はありました。劇中で、岡(幸二郎)さんから拷問を受けるシーンもあって、「ああいう場面を増やして欲しい」とも。(やってる方は)結構キツいんだよと(笑)。岡さんのムチ捌きが本当にスゴくて、怖いんです。目の前でバチーンとやるので、距離感を間違えると本当に当たっちゃう。そこは、再演でも気を付けたいと思います。

ーー初演で印象に残っている場面は。

クランプというダンスで役の感情を表現する場面です。みんなで初めてのことにトライしたので、すごく一体感がありました。カンパニーの仲の良さが舞台上でも出せたんじゃなないかな。

ーーダンスはお得意ですか?

いいえ。できれば勘弁して欲しい。めっちゃ苦労しましたから。(小池)徹平ちゃんと結構居残りで、ダンサーのみんなに教えてもらっていました。

ーーみんなで揃える群舞のセンターを務めるのは緊張感がありそうです。

逆にセンターだから「ひとりだけ違っても何とかなるか」ぐらいの気持ちでやっていました。実際はすごく目立ちましたけど(笑)。

ーー(笑)。ロナンを演じる上では、どんな点をポイントに?

もともと理不尽に父親を殺されて復讐のためにパリに行くんですけど、その過程で志をともにする仲間たちと出会い、彼自身も成長していく。ロナンは真っ直ぐな人間なので、彼の意思や目的を大切にしたというか。起こる出来事に対してリアルに反応していく。ムカついたり感動したり。ニュートラルな状態でいようと、常に思っていました。

ーー反対に苦労された点は。

農民感と言ったら変ですけど、小池先生から「もっと泥臭く、男臭く」とは言われました。それが志は同じでも、プチ・ブルジョワのロベスピエール、ダントン、デムーランとは身分の違いがあるというところに繋がっていたので。どう表現すればいいのか悩みましたが、演じているうちに形作られてきた感覚はありました。

ーー再演では、一部新たなキャストが加わります。マリー・アントワネット役で初参加する龍真咲さんは、日本初演となった宝塚版『1789』で月組トップスターとしてロナン役を演じられました。

龍さんとは初めてお会いします。今回はロナン役とは全然違うマリー役ですし、混乱しないのかなとは思いますね。個人的にはロナン役についての意見も聞いてみたいと思います。初演ではマリー役を花總まりさん、凰稀かなめさんが全然タイプの違うマリーを演じられました。今回は凰稀さん、龍さんがともに宝塚の男役出身の方なので、またどのような違いが出るのかすごく楽しみです。

加藤和樹

ーーロナンの同志のひとり、ロベスピエール役の三浦涼介さんも初登場です。

昔、舞台『bambino』で共演して以来ですね。彼がロベスピエール役だと聞いたときは、ぴったりだと思いました。一歩引いて周りを見る感じとか、彼が持っている資質や佇まいが役に合っているなと。彼は歌が歌えて、踊りも達者なので。

ーー初演同様、ダブル主演の小池徹平さんとは再演についてお話されましたか?

(取材の時点で)これからですね。とりあえず「再演よろしく!」と、伝えようと思います。

ーーロナンとは恋の行方も気になるヒロインのオランプ役は、初演に引き続き神田沙也加さん、夢咲ねねさんのダブルキャストです。

沙也加ちゃんには、初演で才能を見せつけられました。同じ楽曲でも僕と徹平ちゃんでは伸ばす部分であったり、歌い方が全然違う。そこにピタッと合わせてくる。オランプとしての佇まいや強さもありながら、一歩引いて男を支えるという部分が役にぴったりだと思いました。ねねちゃんは、少し粗削りな部分もありながらロナンや、マリーに対してすごく真っ直ぐに接してくる。その姿勢は印象的でした。彼女の芝居に引っ張られる部分もあったし、対照的なオランプでした。

●恋物語の一方で、革命の時代に生きた人々のすさまじいエネルギーを感じて!

ーー演出家・小池修一郎さんは、衣裳から音響まで初演時に細かく作り込まれたそうですね。

小池先生の中でも、完成度はすごく高いものだったと思います。衣裳も本当に直前までこだわって作っていたので。それらを改めて見て、小池先生がどう思うのか。今のところ演出面での大きな変更はないと聞いています。でも、お稽古が始まってみないと分かりません。

ーー衣裳にはどんなこだわりが?

俺と徹平ちゃんでも微妙にデザインや色味が違うんですよね。ベルトのデザインとか、髪の色や型も違う。でも結局俺のシャツは、胸元が開くんですよ。最近は俺だけじゃないと思います。昨年に観た舞台『ロミオ&ジュリエット』では、ほとんどのキャストの胸元が開いてましたから。胸というか、ほぼお腹のあたりまで開いてたんじゃないかな。僕としては、涼しくて助かるんですけどね(笑)。

ーー最後は、ロナンがあんな場所から登場するのも印象的でした。

あそこからの眺めが良いんですよ。あの舞台機構を考えた小池先生は天才だなと思いました。

ーー発想が天才的だと。

結果として、僕らが考え付かないようなところにまで辿り着くので。本当に頭の中で考えていることのスケールが大き過ぎて、最初はみんなすぐには分からないんですよ。これって何の意味があるのかな、芝居にどういう影響を及ぼすのかなとか。でも、実際に通して出来上がったものを見ると、「こういうことだったのか!」となる。点と点が線でつながるんですよね。やっぱり小池先生に着いていけば間違いないという信頼感があります。

加藤和樹

ーー小池先生から稽古中に言われた言葉で、印象に残っているものとは。

あまり良いことは言われないですね。ここを直した方がいいとか。それが、結果的に良いことにつながるんです。時には「このやろう!」って思うこともありますけど(笑)、でもそこが今の自分に足りていない部分だし、やっぱり言ってもらわないと自分では気付けない。役者って演出家に何も言われなくなったら、終わりだなと思います。

ーー2018年は年明けからミュージカル『マタ・ハリ』にダブル主演され、2役を日替わりで演じられました。本作では、初めてフランク・ワイルドホーンさんの楽曲にも挑戦されましたね。

色々と経験を積んでからの『1789』再演なので、今まで歌っていた楽曲に対して違うアプローチができると思うと非常に楽しみです。ミュージカルはストレートプレイに比べて圧倒的に台詞量が少ないので、その少ない言葉数の中で、役の思いをどれだけ伝えられるか。歌詞をどれだけ台詞として届けられるかというのは、いつも難しいことだなと思います。

加藤和樹

ーー『1789』の中で好きな楽曲は?

すぐ思い浮かぶのは、パリ市民が一丸となる「パレ・ロワイヤル」。ピエロでも王様になれる、娼婦でも聖女になれるとか、歌詞もすごく良い。夢と希望がつまったナンバーだと思います。ロナンがパリに来て、「仲間たちと出会ったんだ!」というナンバーでもあるので、ロナン役の自分としてもすごく好きですね。

ーー俳優活動と並行して、音楽活動にも積極的です。

夏からのツアー「Kazuki Katol Live "GIG" TOUR 2018」の日程も発表しました。音楽活動があるから俳優として頑張れる。すごくバランスが良いです。お芝居では役というフィルターを通すので、自分のやりたい表現や伝えたいことは、自分の音楽ライブでしかできないことだと思っています。ライブでは感謝の気持ちを伝えたい。その思いは昔から変わらないですね。

ーー2018年もノンストップな活躍になりそうですね。

自分が好きなことをやっているので、大変だなと思う以上に楽しいですね。

ーー『1789』大阪公演は、初演とは会場が変わって「新歌舞伎座」での上演です。

新しい劇場はワクワクしますね。どれだけ声が響くのか、舞台袖や楽屋の感じも気になります。新歌舞伎座はなかなか立つ機会が少ない劇場だと思うので、一つひとつが新鮮だと思います

加藤和樹

ーーちなみに、楽屋の鏡前はどんな感じですか。

楽屋はいつも綺麗にしています。鏡前では何をどこに置くか決めたり、自分の中にルーティンがあって、このタイミングで水を飲んで、シャワーを浴びて、舞台へ向かうとか。一つひとつを決めることで、それがズレた時に「今日はいつもと違うな」とすぐに分かるので。それにとらわれているというわけでもなく、自然に身に付きました。でも(ちゃんとしてるのは)舞台のときだけです(笑)。

ーー最後に、改めて『1789』の魅力を教えてください。

ロナンとオランプ、フェルゼンとマリーの恋物語の一方で、この時代に生きた人たちがなぜ暴動を起こしたのか、時代の根底にあったものは何なのかが描かれた作品です。それは、ロナンが理不尽に父親を殺されたことや、搾取されることの歯がゆさだったり。身分の格差などは今の時代にもあって、結局それが戦争が無くならないという所にもつながると思う。そういう思いを今の時代に生きる人たちに、自分たちがどれだけ伝えられるか。作品が放つエネルギーはすさまじいものがあると思います。絶対損はさせないので、楽しみに観に来て欲しいですね。

加藤和樹

取材・文・撮影=石橋法子

 

公演情報

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
■潤色/演出:小池修一郎
■出演:小池徹平・加藤和樹(Wキャスト)、神田沙也加・夢咲ねね(Wキャスト)、凰稀かなめ・龍 真咲(Wキャスト)、三浦涼介、上原理生、渡辺大輔、吉野圭吾、坂元健児、広瀬友祐、岡 幸二郎ほか
<東京公演>
2018年4月9日(月)~5月12日(土)
■会場:帝国劇場
<大阪公演>
2018年6月2日(土)~25日(月)
■会場:新歌舞伎座
<福岡公演>
2018年7月3日(火)~30日(月)
■会場:博多座
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